東京ゲームショウ2026が開幕した2026年9月17日,4Gamerブースで,かつてソニー・インタラクティブエンタテインメントでインディーズ イニシアチブを務め,現在は自身の会社yospの代表である吉田修平氏と,4Gamer編集長の岡田和久による対談「なぜ日本のインディーは毎年大ヒットを生み出すのか――この10年とこれからの10年に向けて」が行われた。
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「作る・支える」側の吉田氏と,「伝える」側の岡田。それぞれの視点から,日本のインディーゲームが持つ特徴や今後の展望が語られたその模様をレポートしよう。
![]() 4Gamer 編集長 岡田和久 |
![]() yosp代表 吉田修平氏 |
ここ数年,国内外のインディーゲームイベントで顔を合わせるたびに「どのゲームが面白かったか」の“答え合わせ”をしているという2人。実際,4Gamerにも吉田氏へのインタビュー記事がイベントのたびに掲載されている。その吉田氏は「5年前ならこのステージは成立しなかった」と振り返った。つまりインディーゲームは,ここ数年で急激に盛り上がってきたというわけだ。
4Gamerが連載「インディーズゲームの小部屋」を開始したのは2007年(関連記事)。東京ゲームショウで,インディーゲーム部門を含む「メディアアワード」をファミ通,電撃と共同で実施したのは2014年からと,かなり早い時期から情報を掲載していた(関連記事)。
これについて吉田氏は,4GamerがPCゲームメディアとしてスタートしたことに触れ,インディーゲームとの相性がよかったことを指摘している。
だがそんな4Gamerも,2022年の年末に「空前の盛り上がりを見せるインディーズゲームとは何か」という企画記事(関連記事)を掲載している。ここ5年ほどの盛り上がりが,それまでとは明らかに違うものだったことが分かるだろう。
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岡田は,以前からインディーゲームの記事はよく読まれており,とくにここ2年ほどは大手メーカーのタイトルよりもインディーゲームの記事のほうが読まれる傾向すら感じている,と明かした。
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吉田氏は,そんな“日本のインディーゲーム夜明け前”にあたる2000年から2008年ごろまで,アメリカで仕事をしていた。その頃の欧米ではすでにインディーゲームのブームが起きており,2006年にスタートしたPlayStation Networkを利用して,小規模で実験的な作品をリリースするなどしていたそうだ。
そのため日本に帰ってきたときには,インディーゲームがあまりプレイされていない状況に驚き,社内の有志が始めたニコ生放送「Jスタとあそぼう」でインディーゲームのコーナーを作るなど,勝手に“インディー応援団”を始めた。
ときには,無茶苦茶辛い唐辛子を食べるとインディーゲームを紹介できるというYouTube番組に自ら出演し,涙を流しながらゲームを紹介するなど,体を張った活動もしたという。
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だが,状況がすぐ変わるわけでもない。当時社内でインディーゲームを担当していた「イトゥ」こと伊東章成氏は,「出世したいんだったらインディーなんかやってたらダメだよ」といった“温かいお言葉”をかけられたことを,吉田氏に愚痴ったそうだ。
吉田氏はそんなエピソードを紹介しながら,「作っている人も,周りで応援している人も,好きだからやるという熱意だけで動いていた」と当時を振り返った。
そのため,売り方やプロモーションなどの面でも,熱意のある担当者がいるかどうかで大きく差が出てしまう時代だったようだ。
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そんな10年ほど前の日本のインディーゲームに足りなかったものを聞かれた吉田氏は,「プロとしてインディーゲームを作る人」が圧倒的に少なかったと回答した。
仕事としてインディーゲームを作る人がいないから市場が成長せず,市場が成長しないから海外の優れたインディーゲームもローカライズされない。そうした停滞が続いていたわけだ。
これに対して岡田は,「僕らメディアのせいでもあるのですが」と付け加えつつ,「インディーの面白さをうまく伝えるシステムがなかったのだろうという気がしている」と話した。当時は個人サイトや同人誌の即売会が,インディーゲームの開発者とプレイヤーをつなぐ主な場となっていた。
そして岡田は,日本のインディーゲーム開発者について「たくさん売ってやろう,たくさん遊んでもらおうという気があんまりない」と指摘。
これには吉田氏も同意し,自身が住んでいたアメリカのインディーゲーム開発者について「ビジネスマインドがすごくある。自分で企業を立ち上げて,成功して大きな会社に買われるといったことが1つのルートになっている」と話した。
だがそのうえで2人は,その商売っ気のなさや,好きだから作っているところが,個性的な作品の数々にもつながっているとまとめた。
そして次の話題は,2017年に発売されたNintendo Switch。日本におけるインディーゲームの盛り上がりに大きく貢献したゲーム機だが,吉田氏はここでPlayStation Vitaの名前を出した。
2011年に発売されたPlayStation Vitaは,当時のインディーゲームをプレイするのにぴったりの携帯ゲーム機で,実際に海外のインディーデベロッパからも好評だったという。そして「そのVitaが短い人生を終えた頃に,颯爽と現れたのがNintendo Switch」だそうだ。
Switchは同世代の据え置き型ゲーム機と比べて処理性能が劣っていたため,サードパーティの大型タイトルがリリースされにくい状況にあった。
そこで任天堂はインディーゲームを歓迎し,「Indie World」などの取り組みも開始。Switch自体が日本でも大成功を収めたことで,インディーゲームの認知度も向上し,「インディーゲームが売れるハード」という評価を確立した。
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岡田も「それまでのインディーの記事はインディーゲームが好きな人が読むものだったが,Switchによるインディーのプッシュ以降は,普通のゲーム好きの人が読むようになったという気がしている」と,Switchが日本のインディーゲームにおける大きな転換点だったと語った。
なお,Switch向けのインディーゲームで印象に残っているタイトルとして,岡田は「天穂のサクナヒメ」,吉田氏は「PICO PARK」を挙げた。
「PICO PARK」は東京ゲームショウの「センス・オブ・ワンダー ナイト」で受賞するなど高い評価を受けたが,先行してリリースされたPC版の売れ行きはあまり振るわず,Switch版で一気に跳ねたタイトルだ。
吉田氏は,ご家族が男性アイドルのYouTube番組で同作を知ったというエピソードを披露し,「ゲームやらない人も面白さに気づく」と,その広がり方に驚いたという。
続いて岡田から,「日本のインディーが海外で評価されたと初めて実感したのはいつか」という質問。これについて吉田氏は,もっぴん氏の「Downwell」を挙げた。開発中の同作を,海外のデベロッパから「いいゲームがあるんだ」と教えてもらったのだという。
そこから少し時間が空くが,「天穂のサクナヒメ」「ENDER LILIES」とヒット作が2年続けて出たときには,個々の評価ではなく日本のインディーとしての評価になりそうだと感じたそうだ。
一方,岡田が「日本のインディーが海外で評価された」と初めて感じたのは「洞窟物語」だったという。2004年にフリーソフトとして公開されたゲームだが,海外の有志が英語パッチを当てて広まり,家庭用ゲーム機版までリリースされた。サクセスストーリーを体現した存在だと語っている。
そして話題はここ数年の盛り上がりへ。2020年からの年表を見ると,本当に毎年ヒット作が誕生していることが分かる。
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こうなると,当然ながらインディーゲームを取り巻く雰囲気も変わってくる。岡田は「元大手さんとか学生さんとか,あとはビジネスマンとの兼業とか,インディーゲーム開発が職業の選択肢になったなと思いはじめたのが2023年ごろ」と話し,吉田氏も「昔はゲームの専門学校さんに行くと『優秀な人はみんな大手企業に入っちゃう』という話を聞きましたが,最近は『インディーでやります』という人も出てきているそうです」と続けた。
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時間がないということで,トークはここから一気に駆け足へ。「なぜ毎年ヒットが出るのか」「日本のインディーらしさとは何で,海外はどう見ているのか」といった問いについて,吉田氏は「やっぱりこだわりがありますよね。流行に流されないところもあります」と語り,海外でも「なんでこんなの作ったの? というのはだいたい日本のタイトル」といった評価が定着しつつあることを明かした。
吉田氏は「インディーゲームが続くための条件」を,岡田とのメールのやりとりを通してまとめたという。それが下の画像にあるのだが,この中で吉田氏が少々気になっているのは「パブリッシャ・ファンドの支援が続くこと」だ。集英社,講談社,PARCO,サンリオなど,異業種から参入したパブリッシャが増えていること自体はいいことだとしつつも,そういった会社はトップがゲームのことをよく分かっておらず,数字で判断してしまうのではないかと心配しているという。
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一方の岡田は,「2作目が作れない」開発者が気になっている。仕事としてではなく,好きでゲームを開発している人が多いためか,一度完成させてリリースしたあとの2作目に躊躇してしまうという話をよく聞くそうだ。「僕らも協力できること」として,今後のテーマに挙げていた。
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そして「10年後のTGSで日本のインディーはどうなっていてほしいか」という問いについて,吉田氏は,いちデベロッパだったレベルファイブが現在は東京ゲームショウに大きなブースを構えていることに触れたうえで,「でかいブースを出している人たちのメンツがガラッと変わっているといいですね」と希望を語った。
岡田は「インディーという言葉がなくなっていてほしい」と話す。その真意は,「インターネットやAIと同様に,完全に浸透して当たり前になって,言葉自体がなくなるのが理想」ということだ。
「“これから作る人”に向けてのメッセージ」として,吉田氏は「Öoo」を開発した生高橋氏の言葉を紹介した。「今ゲームを作りたいと思っている人で,作っていない人がいたら,もうあなた終わっています」。
つまり作れ,と。作って人に見せ,評価されたり批判されたりすることが一番の方法というわけだ。
岡田は,インディーゲームを追いかける記事は読まれても儲けにはなりにくい(広告収入にはつながりにくい)という企業としての事情を明かしつつ,「それでも4Gamerに限らず,ほかのメディアさんもインディーを追いかけ続けているのは,純粋に応援したい気持ちがまず1つあるから」と語る。
そして「なので記事にならなくてもめげずにリリースを送ってきてください。ちゃんと見ていますから」と呼びかけた。
イベントの締めとして,岡田はインディーゲームについて「日本のゲーム業界やクリエイターが持っている良い部分がすごくうまく機能しやすいジャンル」「今は過渡期なのでいろんな問題が出てくるかもしれませんけれど,怯むことなく続けばゲーム業界全体にはプラスになるんじゃないかな」と語り,吉田氏も「もう1000%同意」と笑顔を見せた。

















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