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ゲームエンジンを用いた都市空間シミュレーションシステムの研究が受賞となった「第16回FOST賞授賞式」をレポート
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印刷2023/03/10 14:03

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ゲームエンジンを用いた都市空間シミュレーションシステムの研究が受賞となった「第16回FOST賞授賞式」をレポート

 コーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川陽一氏が理事長を務める,科学技術融合振興財団(foundation for the Fusion Of Science and Technology,FOST)は2023年3月9日,優れたシミュレーション&ゲーミングの研究者・団体に対して授与される「FOST賞」の授賞式を帝国ホテルにて開催した。

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 第16回となる今年は4年ぶりのリアル開催となり,「FOST賞」「FOST新人賞」「FOST社会貢献賞」の3部門が3名1企業に授与された。本稿ではこの授賞式の模様をレポートする。

 同財団理事長の襟川氏は,FOSTを設立した1994年から約30年が経過し,ゲームの環境も大きく変わり,かつてはプログラムをしたり遊んだりするだけのものだったが,現在はeスポーツを通じての競技や教育分野にも広く浸透し,ゲームが社会的な存在の中で大きな用途を占めるようになってきたと述べる。

コーエーテクモホールディングス代表取締役社長,FOST理事長 襟川陽一氏
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 ゲームソフトのマーケットは世界で25兆円と,エンターテインメントの分野としても非常に大きく,コーエーテクモゲームスも常に世界を意識してゲームを発信している。国内のシミュレーション&ゲーミング研究者も,日本から世界に向けて活躍していくことを期待すると挨拶した。

FOST賞受賞者を発表したFOST理事 東海大学名誉教授 白鳥 令氏
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 最も優れたシミュレーション&ゲーミングの研究者に贈られる「第16回FOST賞」を受賞したのは,文教大学情報学部情報システム学科教授の川合康央氏だ。
 その研究課題は「ゲームエンジンとオープンデータを用いた都市空間シミュレーションシステムの基盤構築」となる。都市空間シミュレーション基盤システムをプラットフォームとして,さまざまな都市空間情報を追加,社会諸課題に関するシミュレーションシステムを実装。防災計画・交通計画・景観計画を主とした3つ領域において行い,国内学会や国際会議などで計48件の発表を行うとともに,地方自治体や地域への公開することで,多くのフィードバックを得たというのが,受賞理由となった。

文教大学情報学部情報システム学科教授 川合康央氏
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 川合氏はかつて学生時代に遊んだ「信長の野望」で,強い国を作るためには民や兵に米を施すことで強い敵を倒すことができるという,兵数などの数値だけでなく,忠誠心のような見えないパラメータが影響することを例に挙げ,今回の研究では防災や交通の領域も単に施設を作るだけでなく,住民の意識や自治体の努力といったものが影響することが分かったと語った。

 続いて若手研究者向けに贈られる「第10回FOST新人賞」は,立命館大学先端総合学術研究科のシン ・ジュヒョン氏と,日本大学大学院生産工学研究科数理情報工学専攻の進士多佳子氏の2名が受賞となった。

 シン氏の研究課題は「日本・韓国・台湾における“インパクトゲーム”に関する比較研究―制作側のリアリティの再現を巡って」。インパクトゲーム(社会的・政治的な問題を扱ったシリアスゲームの中で,とくに大きな衝撃を与えたもの)に着目し,歴史的出来事や事件の再現問題について明らかにすることを試みたものだ。

立命館大学先端総合学術研究科 シン ・ジュヒョン氏
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 インパクトゲームを教育の場で扱うときに配慮すべき点を考慮し,遊びながら学べるような多様なゲームが出てきてほしいということから,この研究を始めたというシン氏。この受賞を励みに,社会貢献ができるようなデジタルゲームの勉強をしていくことを誓った。

 進士氏の研究課題は「離れて暮らす家族による協調作業で家族の歴史を可視化するシリアスゲームの開発」だ。家族内のコミュニケーションの一環として,対話をしながら人生の物語を記録する“ライフヒストリ支援システム”を開発し,実際のユーザー環境で実験を実施することで,対話の動機を喚起し,家族の歴史の可視化に役立つシステムであることが示唆されたことが,受賞理由に挙がっている。

日本大学大学院生産工学研究科数理情報工学専攻 進士多佳子氏
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 進士氏は1999年よりライフヒストリーの研究をしていたが,このシステムを作るために大学院に入り,シリアスゲームのエキスパートの元で勉強したことで,完成させることができたという。このシステムは2065年まで続けることを1つの目標としていて「興味がある方がいたらぜひお声がけいただき,一緒に開発をしていきたい」とアピールした。

 最後に発表された「第12回FOST社会貢献賞」は,南海電気鉄道に授与された。プレイヤーファーストを掲げて継続して学生に寄り添い,依存症対策を講じる一方,啓発活動を通じて親世代への理解促進に取り組んだことが受賞理由だ。eスポーツの健全な発展と成熟社会文化へと昇華することを目指し,地域自治体と共創して,eスポーツを通じて社会課題の解決に新しい取り組みを継続していると評された。

南海電鉄執行役員eスポーツ事業部長 和田真治氏
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 南海電鉄執行役員eスポーツ事業部長の和田真治氏は,新規事業としてeスポーツに取り組み,町の公園のような明るい雰囲気を持つeスポーツ施設の開業・運営や,学生を主役とした大会,eスポーツ合宿の開催など,これまでに行ってきた活動を例に挙げた(関連記事)。これらを通じてeスポーツの健全性を普及させることに尽力し,個人が自律的にやりたいことをやり,それが認められる社会を作ることに貢献していくことを目指しているそうだ。かつて同社がプロ野球文化を日本に根付かせたように,eスポーツをコンテンツの1つとして,街作りに掛け合わせ,日本を元気にする文化にしていくと語った。
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