インタビュー
ZUNTATA 30周年記念インタビュー。現&元メンバーの10人が,VGM黄金期の思い出や未来の展望などを語った
12月21日には,記念アルバム「reZonance world 〜ZUNTATA 30th ANNIVERSARY〜」の発売が予定されており(関連記事),楽曲の人気投票や一般公募型のアレンジコンテストが実施され,ファンの間で話題となった。
このアニバーサリーイヤーにあたり,ZUNTATAメンバーおよび元ZUNTATAメンバーへのインタビューの機会が,タイトーによって設けられた。参加したのは,現メンバーから3人,元メンバーから7人の,計10人だ。30周年に対するそれぞれの想いや,「reZonance world」の詳細などをうかがったので,その模様をお届けしよう。
■インタビュー参加者(敬称略)
●現ZUNTATAメンバー
石川勝久(効果音専門,5代目現リーダー)
代表作:
メタルブラック,ダライアス外伝,サイキックフォース,ダライアスバースト(効果音)
電車でGO! PS版CMソング「電車で電車でGO! GO! GO!」(歌唱)
MASAKI(コンポーザー)
代表作:グルーヴコースターシリーズ
下田 祐(コンポーザー)
2017年に加入した新メンバー
●旧ZUNTATAメンバー
なかやまらいでん(コンポーザー)
代表作:グリッドシーカー,ライトブリンガー,電車でGO!
Yasko(コンポーザー)
代表作:ニュージーランドストーリー,ドンドコドン,バブルシンフォニー
内田 哉(サウンドプログラマー,4代目リーダー)
代表作:各種サウンドドライバ,ダライアスバースト(CD,ライブプロデュース),ZUNTATA NIGHT(ネット放送)オペレーション
COSIO(コンポーザー)
代表作:スペースインベーダーインフィニティジーン,スペースインベーダーエクストリーム,グルーヴコースターシリーズ
TAMAYO(コンポーザー)
代表作:レイフォース,レイストーム,レイクライシス
SHU(コンポーザー)
代表作:ランディングギア,クレオパトラフォーチュン
Yack.(コンポーザー)
代表作:メタルブラック,カイザーナックル,エレベーターアクションリターンズ
石川勝久氏 |
MASAKI氏 |
下田 祐氏 |
なかやまらいでん氏 |
Yasko氏 |
内田 哉氏 |
COSIO氏 |
TAMAYO氏 |
SHU氏 |
Yack.氏 |
4Gamer:
よろしくお願いします。まず30周年を迎えたことについて,率直な感想をお聞かせください。
MASAKI:
僕は今30歳なので,このブランドが自分の人生と同じくらい続いていることにビックリしていますし,「これからも自分が引っ張っていくぞ!」くらいの気合を入れています。
下田:
自分は最近ZUNTATAに入ったばかりなんですけど,昔からファンで「野球の名門チーム」みたいな印象があって,そこに入れたことを嬉しく思っています。今回のように昔のメンバー達とお会いして歴史を知るたび,感慨みたいなものを覚えます。これからも一緒に盛り上げて行きたいです。
僕は27年タイトーにいて,現メンバーでは一番長いんですけど,正直言って「自分がZUNTATAにいる」と強く意識したのはここ最近のことなので,そんなに長い気はしていないというのが率直なところですね。なので,「まだまだ行けるんじゃね?」と思っています。
COSIO:
ZUNTATA在籍中に25周年のプロジェクトに関わらせてもらったのですが,30周年でもまた呼んでいただいて,すごく嬉しいです。また,今回はZUNTATAを卒業した人間として関わるので,少し新鮮な気持ちです。
TAMAYO:
30年,とても長いなーって思います(笑)。
SHU:
時の流れは早いものだなあ……という感じですね。僕が卒業してからもいろいろ苦労があったと思うんですけど,またリバイバル的に盛り上がってきていると思うので,美味しいところをいただけるとありがたいというか(笑)。
まあ,続いていることがやっぱりありがたいですね。こうして集まることができて嬉しいです。
内田:
僕はジャレコからタイトーに入ってきて,ZUNTATAに17年くらい在籍していました。自分の生きてきた過程に,その期間がドンと入っていると感じています。メンバーも変わりつつ,作風も変わりつつ,今日まで続いているのはすごいことですし,これからも40,50年と続いていったらいいなと思います。
Yack.:
この順番だと,話したいことをだいたい皆に言われちゃうから,どうしたもんかなあ(笑)。
なかやま:
Yack.さんの場合,1つネタがありますよ? 音屋(※)デビューが,ちょうどZUNTATAと同じなんです。
※ゲーム制作におけるサウンド関係の業務全般を担当する者の意。
Yack.:
そうなのか……全然意識してなかった。
30年も経つと,いろいろ変わっちゃいますけど,こうやって集まって「こういうことがあったよね」という話をしていると,そういった出来事が積み重なって今の自分ができているという感じになりますね。
なかやま:
私とYaskoさんはYack.さんの1年後輩になるので,来年で音屋を始めて30年になります。
私は今,専門学校の講師をしていて,ゲーム業界の音屋になりたい学生に教えていたりするんですけど,30年前と状況がまるで違うので,もし自分が今から新人として「ZUNTATAに入りたい」となったら,どういうことを勉強したり,どういう音楽を聞いたりすればいいんだろうと,よく考えます。それくらい30年の歴史というのは重いものだと思います。
Yasko:
このあいだ25周年アルバムを出したときに「もう25年!?」と思ったんですけど,あれから2日くらいしか経っていない気分なのに,もう30周年で,「早いね〜」と感じています。それと,自分もゲーム音楽を30年近く作っているということに驚いています。10年後も「えっ? 昨日30周年アルバムだったのに,もう40周年!?」みたいな話をさせてください(笑)。
時代とともに変わりゆくZUNTATAのメンバーとスタイル
4Gamer:
次に世代差的な話を聞かせていただければと思うのですが,まずMASAKIさんと下田さんはZUNTATAというものをどう捉えているのでしょうか。
MASAKI:
僕は内田さんの紹介からの流れでタイトーに来たんですけど,30年の歴史を持つZUNTATAにポンと入って,「なんかすごい船に乗っかったなあ」という印象を持っています。それと同時に,今は“ZUNTATAのMASAKI”なので,僕が何かやらかしたらZUNTATAの名に傷が付きますから。もう馬鹿もやれないな,と。あと,クオリティが低い作品も絶対に出せないので,いい意味での緊張感を保てています。
下田:
自分の中では野球の名門チームのようなイメージがあるので,その歴史に少しでも名前を刻めたらと思っています。ヒットやホームランを打ちたいです。
4Gamer:
元メンバーとしては“今のZUNTATA”をどのように見ているのでしょうか。
Yack.:
「うまいこと続いているなー」と思っています。変な意味じゃなくて。
ZUNTATAにも「ひょっとしたら,ここ潰れるんちゃう?」っていう危機が何回かあったと思うんですよ。それを,よくぞここまで続けて,しかも支持を得られているのは素直にすごいですね。
内部で「ZUNTATAをなくそうか」的な議論がこれまでに何度かあったりしたけど,それを乗り越えたからここまで来ているんでしょうね。
Yasko:
30年って,よく考えるとすごいよね。私は独立した後,ものすごい数の曲を書かなきゃいけない時期があって,2年くらいピンクレディーみたいな睡眠時間(※)でずっと曲を書いていたことがあったんです。
そのあと,自分の中にあったものが空っぽになっちゃって,「もう曲書けない」となったんですが,あるミュージシャンに相談したら「書ける・書けないじゃなくて,続けられるかどうかが意味のあることだよ。駄目だと思ってもいいから続けてみたらどう?」って言われて,そのお陰で今でもギリギリやれています。そう考えると,30年も続けるというのはすごいことなので,これからもずっと,300年くらいまでは続けてください(笑)。
※全盛期のピンクレディーには,あまりにも多忙なため1日に2,3時間程度の睡眠しか取れなかったという逸話がある。
私は「もっと人が増えるといいなー」って思ってます。
Yasko:
今は何人?
石川:
僕らと土屋で4人です。
SHU:
女の子とか入れたらどうですか?
TAMAYO:
でも女の子が入ったら,揉めそうじゃない?
(一同笑)
内田:
バンドってすぐ女の子で揉めるからねえ(笑)
SHU:
作曲のセンスがよくて,半分声優みたいな人がいるといいですね。
石川:
今,社内声優の女性がいなくて困ってるんですよ。タイトーステーションとかの店舗なら声優をやっている方がクルーをしていたりすることもあるんですが。昔は芸達者が,サウンドだけじゃなく開発とかにもいっぱいいたじゃないですか。
内田:
社内オーディションで発掘したこともあったよね。得意そうな女性社員を集めて「しゃべってください」って。
あと外国人を入れるとかね。
(一同笑)
SHU:
刺激というか,アクセントになるんじゃないかなあと。
石川:
顔立ちの話? それは俺が東南アジア系でやってるよ?
SHU:
石川さんとはまた違うタイプで(笑)。
下田:
最近,Twitterでネタみたいな写真を載せることもあるのですが,ネット上では猫の画像がすごく人気あるので,ZUNTATAにも猫がいるといいんじゃないかと……。
石川:
猫メンバーも必要かなあ?
Yasko:
うち(リーブ)の営業部長も猫なの。Facebookで紹介しているんだけど,それでとくにアクセスが伸びたということはありません(笑)。
COSIO:
すでにやってる人がいた(笑)。
石川:
で,何だっけ……元メンバーがどう思っているか? SHUはどう?
SHU:
今までの伝統を窮屈に思わないで,自由に作曲してくれるといいですね。いい音楽が作れるなら,伝統を壊しても継承してもいいと思います。
内田:
皆,頑張ってやってますよね。僕が責任者をやっていたころも僕なりに頑張っていたつもりではいるんですけど。今では石川さんが皆を引っ張って,いろんな活動を続けてくれているので,すごくいい感じになっていると思います。30周年ということで注目を浴びられるのも,歴代の方々含めてメンバーが頑張ってきたお陰ですし,もちろんファンが支えてきてくれたことも大きいので,それらを全部まとめて偉業と言っていいんじゃないかなという気がしますね。
石川:
最近,小倉さんや高木(正彦)さんとも「今のZUNTATAを外から見てどう思う?」っていう話をしたことがあるんですけど,今の皆さんのお話も聞いて思ったのが……まあ皆さん,はっきり言って優しくなりました。
4Gamer:
ZUNTATAに在籍していた頃は厳しかったのでしょうか?
石川:
15年前とか20年前とかの僕のイメージで言うと,たぶんこんなことを皆さん言わない。ちょっとは言うかもしれないですけど,もっと全然厳しかったですよ(笑)。先日行った座談会でも,小倉さんも高木さんも厳しいことは言うんですけど,最後はちゃんと「でもね」みたいな感じで丸めてくれたりして。
なかやま:
忖度ができるようになりました(笑)。
石川:
嬉しくもあるけど,「腹に一物あるんじゃないか?」って勘ぐっちゃったりね(笑)。
皆さん,モノを作ることに対してすごく厳しくて,基本的にはこんな優しいことばかり言うような方々ではないので,まあ「優しくしてくれてありがとうございます」といった感じでしょうか(笑)。心の底では色々思っている気はするんですけど……でも,僕は負けない!
10年前の「ZUNTATA終了の可能性」と,その克服
4Gamer:
20周年くらいのころに「サウンドチームの名前を変えようか」という動きがあったと聞き及んでおります。そこで変えずに10年やってきて,実際いかがでしたでしょうか。
内田くんがZUNTATAの責任者だったころ,ここにいらっしゃる皆さんも既にいなくて,小倉さんも抜けられて,「ZUNTATAという名前を僕らが引き継いでいいのか。引き継いでもやっていけるのか」という気持ちになっていました。そして「僕らが新しい名前で再スタートした方がいいんじゃないか」という話になり,僕と内田くんとCOSIOの3人で,ネーミング会議をやったんです。僕達がちょっと,「何かやったって,どうせZUNTATAとして見てくれないだろう」みたいなネガティブな思いから意固地になっていた部分もあったんですよね。
COSIO:
僕らが発信していくことで,逆にZUNTATAというブランドに傷がつくんじゃないかとも考えてました。
石川:
いっぱい考えて考えて,考えまくったんですけど,やっぱりZUNTATAに勝る名前もそうないし,話しているうちに「名前を変えなくてもいい」と考えるようになっていきました。「もうここは覚悟を持ってZUNTATAという名前を受け継いでいこう!」という方向性がまとまってきたんです。
COSIO:
逆風もあえて受け入れようと。否定的な人ばかりだったら,やっぱり変えていたと思うんですけど,逆に待ってくれている人や,僕らを支持してくれる人もいたので。
ただ,ロゴは今のものに変えたんですけど。でも,これにした1年間くらいは割りと酷かったよね。
COSIO:
酷かったっていうか,新しいロゴに対する厳しい反応がけっこうありましたね。
石川:
全体的な評価も低かった。
内田:
そうだね。実際しっかりと注目され始めたのは「ダライアスバースト」からかな。
石川:
あれを転機として,「今のZUNTATAも悪くない」みたいな雰囲気になって。
内田:
そして「グルーヴコースター」が出て,さらに注目されて。
石川:
やっぱり,ブランドイメージがどうこうよりも,サウンドチームは自己主張できるゲームがあるかどうかなんですね。
4Gamer:
ところで,新しい名前はどのような候補があったのでしょうか。
内田:
Z-Berg(ズィーヴェルク)とか「Z」に関係したものが多かった。ちょっと香りを残そうというところが未練がましい(笑)。
石川:
あとTick-T……“チキチー”から。
(一同笑)
石川:
ZUNTATAって名前はリズムの「ズンタッタ」から来てるじゃないですか。じゃあ別のリズムから拾ってみるかと思って……でもダサくて(笑)。
内田:
いやあ……変えなくて良かったね……。
ファンに愛されているブランドであることを認識できているし,「ダライアスバースト」や「グルーヴコースター」で歴史を積み重ねることができてZUNTATAのイメージをさらに大きなものにすることもできているし,時代に応じて「変化していかなければならない」ってところもあるしね。
石川:
「ZUNTATAでやっていこう」と決めた時点で初めて,「僕はZUNTATAなんだな」って思えたんですよ。それまでは正直「ZUNTATAさん」みたいな,ちょっと引いたイメージでした。僕より先輩の皆さんがやっているのがZUNTATAで,僕はまあ「サウンド課の人」という感じでやっていたので,あのとき初めて僕はZUNTATAになれたのかなあと。
だから,「僕のZUNTATAは始まったばかりだ!」みたいな感じですね。次回作にご期待ください!!
COSIO:
いや,それだと打ち切られちゃう(笑)。
内田:
よく不思議だなあとか面白いなあと思っているのが,新作のゲームなどが発表されたときに「音楽はZUNTATAが担当!」みたいなアオリが付くんですよ(関連記事)。言うなればただの会社員ですよ? だからあれって「タイトー新作の音楽は,タイトー社員が担当してます!」って書いているのと意味はほとんど同じなんですよ。なのに,ファンに「おっ」と思わせる何かがそこにあるんでしょうね。
石川:
「サウンドはサウンド課が担当!」みたいな感じですもんね。
内田:
イベントもそうだけどさ,「ZUNTATAがやってくる!」みたいな。例えばMEGARAGE(関連記事)にタイトー社員がやってくるのは当たり前じゃないかと思うんですけど。面白いブランドだと感じますよ(笑)。
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