埼玉県“SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ”内の映像ミュージアムにおいて,企画展
「あそぶ!ゲーム展 ステージ1:デジタルゲームの夜明け」が,2015年10月3日から2016年2月28日まで行われている。この記事では,会場の模様を紹介しよう。
この企画展が特集しているのは,最初期のコンピュータゲームが誕生してからファミリーコンピュータが発売される直前までの
ゲーム黎明期だ。展示品の多くが稼動しており,実際にゲームをプレイできる状態となっている(一部はエミュレータで動作。故障や混雑状態などによってプレイできない場合もある)。
「あそぶ!ゲーム展 ステージ1:デジタルゲームの夜明け」……会場:SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアム / 入場料:大人510円,小人250円(税込/常設展も観覧可能)
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「Tennis for Two」
“世界初のコンピュータゲーム”のひとつとされる
「Tennis for Two」。同年代のオシロスコープ上に再現されたものと,エミュレータで再現されたものが展示されており,後者はプレイ可能だ。
「Spacewar!」
“不特定多数の人に遊ばれた初のテレビゲーム”とされる
「Spacewar!」。こちらはエミュレータ再現に加え,プラットフォームであるミニコンピュータ「PDP-1」のレプリカも展示されている。
「Computer Space」
“世界初のアーケードゲーム”である
「Computer Space」。以前,長崎・ハウステンボスのゲームミュージアムで展示されていた際は非稼動状態だったが,今回はエミュレータで稼動状態が再現されている。
ブラストシティ筐体で稼動中の「Computer Space」実機。こちらはプレイ可能
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「PONG」
“世界初のヒットしたゲーム”として有名な
「PONG」。同作を含む一部の展示物は,内部構造の解説図も展示されている。
「DEATH RACE」
「ハンドルとペダルで車を操作してターゲットを轢き殺す」というゲームシステムが物議を醸し,筐体の打ち壊しまで行われたという(そのため,現存する筐体は非常に貴重)
「DEATH RACE」。
“世界初の残虐表現を採用したゲーム”と言えるが,現代の視点から荒いドットで描かれたキャラクターがチョコチョコと動くモノクロ画面を見ると,ファンシーにすら感じられる。
「MAN EATER」
「MAN EATER」は,映画「ジョーズ」に影響されて開発されたタイトル。これ自体は便乗商品だが,
“メディアミックスのはしり”と言えるかもしれない。サメの頭部を模した筐体は,ビデオゲームと言うよりエレメカに近いセンスを感じる。
「Space Fury」
表現上の利点から,1980年代までゲームに使用されていたベクタースキャン方式のディスプレイ。ベクタースキャンのゲームは多くがモノクロだが,セガ・エンタープライゼス(当時/米国法人)がリリースした
「Space Fury」は,
“世界初のカラーベクタースキャンディスプレイ搭載のアーケードゲーム”だ。
なお,“日本初のカラー液晶ディスプレイ搭載の携帯ゲーム機”のゲームギアをリリースしたのもセガ・エンタープライゼスで,“世界初のホログラフィックディスプレイを搭載したアーケードゲーム”の「Hologram Time Traveler」をリリースしたのも同社米国法人。いろいろと実験的なメーカーだ。
写真では伝わりにくいが,ベクタースキャン特有のキラキラとした発光が複数のカラーで踊るディスプレイは非常にキレイ
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「スペースインベーダー」
開発者である西角友宏氏のインタビュー映像が対面で流されていたため、写真では筐体内のハーフミラーに西角氏の顔が写り込んでいる
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“世界初の「敵キャラクターが攻撃を仕掛けてくるゲーム」のヒット作”であり,日本国内で社会現象となった
「スペースインベーダー」。写真のアップライト筐体に加えて,テーブル筐体も展示されていた。
ブーム当時の解説,基板,仕様書なども展示されている
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「パックマン」
日本国内はもちろん欧米でも大ヒットして,2005年にはギネス・ワールド・レコーズから
“最も成功した業務用ゲーム機”として認められた
「パックマン」。こちらも「スペースインベーダー」同様に基板や仕様書など,貴重な資料が多数展示されている。
前述の「スペースインベーダー」もそうだが,非常に筐体のコンディションが良好。コンパネはもちろん純正だ
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仕様書の一部と関連グッズの山。アメリカにおけるパックマン関連グッズの売り上げは,一時期ミッキーマウス関連グッズを凌駕していたという
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Brown Box
Odyssey
ゲーム&ウオッチ
今回の企画展では,1983年のファミリーコンピュータ発売から爆発的に普及した家庭用ゲームの取り扱いは控えめ。その中で展示されていたのが,
“世界初の家庭用ゲーム機の試作品”である
「Brown Box(レプリカ)
」と
“世界初の家庭用ゲーム機”である
「Odyssey」,そして
任天堂初の携帯ゲーム機である
「ゲーム&ウオッチ」だ。
PlayStatoin 4やXbox Oneなどの先祖……と思うには,かなり現行ハードと掛け離れた姿の“世界初”たち
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一方,ゲーム&ウオッチにはニンテンドー3DSやWii U GamePadに通じるデザインラインを感じられる
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その他
来場者を最初に迎えるのは,富山玩具製作所(現タカラトミー)やサービスゲームズジャパン(現セガゲームス)などの設立から始まる,ゲーム史の年表
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「スペースインベーダー」を生み出した西角友宏氏や「パックマン」を生み出した岩谷 徹氏のインタビュー映像が上映されている
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展示品を見ただけでは分かりにくいテクノロジー的な部分は,パネルで解説されている
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「クレイジー・クライマー」や「スクランブル」などもプレイ可能
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貴重な品々を揃えてゲーム史上の重要なポイントを押さえた,非常に見応えのある今回の企画展。「ATARI GAME OVER」や「Video Games: The Movie」といったドキュメンタリ映像作品がリリースされ,「ゲームセンターCX THE MOVIE 1986 マイティボンジャック」や「ピクセル」といったレトロゲームを題材にした映画が公開されるなど,“ゲームの歴史”がちょっとしたブームになっている近年。そういった作品からゲームの黎明期に興味を持った人は,SKIPシティまで足を運んでみてはいかがだろうか。
会期中には,ゲームデザイナー,ゲーム研究者,ゲーム好き著名人などを迎えた多数のイベントも行われるとのこと。現時点では,2016年1月23日にトークイベント“ゲームデザイナーの仕事”の実施が決定している。詳細については,
SKIPシティ公式サイトにて確認してほしい。
なお,タイトル通り今回は“ステージ1”。ファミリーコンピュータ発売後から今日までの歴史は,今後の“ステージ2”および“ステージ3”で特集される予定だ。
最後に,企画展のディレクションを担当したデジタルSKIPステーションの澤柳英行氏からメッセージをいただいたので,以下に紹介する。
映像コンテンツとしての「デジタルゲーム」の進化の歴史を辿ると同時に,会場のゲーム機を来場者自身がプレイすることによって,その時代性や先進性を体感していただくこと意図し,この展覧会を企画いたしました。
この機会を逃すと,いつプレイできるか分からない,デジタルゲーム黎明期の重要アーケードゲーム機の数々がプレイアブルな状態で展示してあります。是非ご自身でプレイして,その時代の雰囲気や開発者の思いなどを感じていただければと思います。
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