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「ゲームの力で世界を救え!」が合言葉の「シリアスゲームジャム」レポート。第7回は「障がい者と健常者が対等に遊べる」をテーマに6作品が集う
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印刷2018/12/21 18:56

イベント

「ゲームの力で世界を救え!」が合言葉の「シリアスゲームジャム」レポート。第7回は「障がい者と健常者が対等に遊べる」をテーマに6作品が集う

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 2018年12月15日から16日にかけて,日本デジタルゲーム学会(DiGRA Japan)ゲーム教育研究部会が主催する「第7回シリアスゲームジャム」が,国立情報学研究所 (東京・神田神保町)で開催された。
 シリアスゲームとは,「エンターテイメント性のみならず,社会問題の解決も目指す」というゲームジャンルのこと。最も身近な例としては「英単語を覚えられるゲーム」のような学習ゲームが思い浮かぶだろう。そしてゲームジャムというイベントは,「限られた時間内で参加者が即席のチームを結成し,1本のゲームを作る」というのが一般的なスタイルである。つまりこの2つが合わさった「シリアスゲームジャム」とは,即席チームが短時間で1本のシリアスゲームを作り上げるイベント,ということになる。

 第7回となる今回は,テーマを「みんなのバリアフリー」とし,障がい者と健常者が同じ土俵で競えるデジタルゲームの制作を目指すというもの。与えられた制作期間は2日間だ。またゲームジャムの目的として,ただゲームを完成させるだけでなく,ゲームのアクセシビリティに対する理解向上を目指すという側面も有している。
 以下,イベントの模様をレポートしよう。

最終発表直前の追い込み。修羅場である
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「第7回 シリアスゲームジャム」特設ページ



6チームが6本のゲームを完成させる


 シリアスゲームジャムは2014年に開催された第1回以降,原則的に2パートに分かれている。最初にテーマについて専門家からレクチャーを受け,その1週間後にいわゆる通常の「ゲームジャム」が開催される,というスケジュールだ。
 今回もそのプログラムは変わらず,12月9日には国立病院機構八雲病院の田中栄一先生による「ゲームのアクセシビリティと病院での取組」と,ギフトテンインダストリの濱田隆史氏による「視覚情報を使わないゲームの事例」と題された講演が行われた。なお,濱田氏はCEDEC 2016で講演を行った方でもある(関連記事)。

ギフトテンインダストリの濱田隆史氏
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 さてゲームジャムというイベントの大半は,参加者がゲームの企画を話し合い,しかるにあとはひたすらコーディングしたり素材を作ったりプレゼン資料をまとめたりするという,一種のタイムアタック競技である。このため本記事ではこの「汗臭い」部分はオミットさせていただくことにして,成果発表と試遊の模様を中心にお届けしたい。

どんなゲームジャムに行ってもよく見る風景
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 第7回シリアスゲームジャムでは6チームが結成され,なんと6本のゲームが完成した。ゲームジャムでは「頑張りましたが完成しませんでした」という事態が決して珍しくはないので,全チームが問題なく動作するゲームを作り上げたという段階で,まずは大きな成果と言えるだろう(参加者の中には,ゲームジャム慣れした人物の顔がちらほら見受けられたので,その影響かもしれない)。
 それでは6チームが作ったゲームを以下に紹介していこう。なお紹介順は,くじ引きで決定された成果発表の登壇順となる。

(1)チーム:海の幸


作品名:とべっ!トビウオくん
ゲームの概要:2人対戦アクションゲーム。内外2つのリングの上を自機(トビウオ)が周回しており,ボタンで周回するリングが変更できる。リング上に餌がランダムで出現するので,その餌をよりたくさん獲得したほうが勝ち。

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 チーム「海の幸」が目指したのは,障がい者と健常者が一緒に遊べるゲームだという。対象年齢は幼稚園〜小学生で,障がいを負った子供はこの頃になると「障がいによって自分にはできないこと」に目が向いていくので,「家族(兄弟姉妹)と一緒にできること」をゲームの形で提供しようというわけだ。「バリアフリーというより,バリアフリーであることを忘れられる場所を提供する。兄弟喧嘩ができるような,対等なコミュニケーションを作るのが目標」というのは,優れた視点と言えるだろう。
 想定した障がいの範囲は運動障がいまでで,身体がまったく動かせなかったり,あるいは全盲の人は対象外となっている。操作はタップのみとシンプルだが,最低でもタップはできなくてはならないし,画面を見て操作する必要もある。

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 もう一つ,興味深い視点としては,マネタイズの手段として広告モデルを想定していることだ。本作は必然的にアクセシビリティに興味関心の高いプレイヤーが触れることになるのだから,アクセシビリティに対して積極的なメーカーの広告を取ることで,独自の価値を持った広告枠となるのではないか,というわけだ。

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(2)チーム:Mission HY


作品名:キーボード海賊バトル
ゲームの概要:1対1のターン制ストラテジーゲーム。基本は「バトルシップ」で,プレイヤーはそれぞれ7マスからなるマップを保持する。ゲーム開始時,双方が自分のマップ上に宝を3つ隠し,各プレイヤーは交代で相手のどのマスに宝が隠れているかを探る。先に3つの宝を発見したプレイヤーが勝利だ。

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 チーム「Mission HY」が目指したのは,障がい者でも健常者でも楽しく遊べ,かつ視覚障がい者も楽しめるゲームとのこと。ゲームの骨子は「バトルシップ」だが,モチーフが「海賊が宝を探す」という比較的平和的なものに変更されている。また正確には「バトルシップ」より,その派生作品である「潜水艦ゲーム」に近くて,視覚障がい者でも楽しめるようリアクションが発声ベースになっている。

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 そしてもう1つの工夫は,特別なコントローラを使わずにプレイできる点だ。本作では7つのマスをそれぞれ指定する操作が必要だが,これがキーボードのボタンに一対一対応でマッピングれている。ほとんどのキーボードには,ホームポジションを示す突起がついているものなので,ブラインドタッチが可能なら目が見えなくても遊べる,という発想である。
 ちなみにこのチームにはギフトテンインダストリの濱田氏も参加していたので,盲人でも楽しめるボードゲームを作ったことがある濱田氏ならではのゲームデザインと言えるかもしれない。

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(3)チーム:グローバルフリー


作品名:Word Cross
ゲームの概要:1対1のリアルタイムターン制バトル。プレイヤーは5秒の持ち時間の間に画面に表示された3つの文字列から1つを選んで発声し,対戦相手を「褒める」。音声がきちんと認識されると褒め言葉が飛んで対戦相手の心を温める。先に相手の心を温めきったプレイヤーが勝利する。

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 チーム「クローバルフリー」もまた,特別な機材なしに障がい者でも楽しめるゲームを目指した。彼らが注目したのは音声入力で,これを活用した「音声入力による格闘ゲーム」を志向したという。しかし,「言葉で武器として戦う」というと倫理的にも問題がありそうなので,「相手を褒める」ゲームにしたとのこと。

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 音声入力とはいえ,画面に表示された言葉のどれかを発声するだけなのだから,ゲームとして簡単すぎないだろうか……という疑念はもっともなのだが,実際にプレイすると意外と音声入力が発声を拾ってくれないこともあり,5秒というタイムリミットとあいまって,ちゃんと対戦ゲームとして機能している。
 障がい者と健常者が一緒に遊べるという第7回シリアスゲームジャムの目標を越え,「外国語を学びたい人が,発声の練習として利用する」といった応用もできそうなのが面白い。

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(4)チーム:モラトリアリスト


作品名:がん2 シューティング
ゲームの概要:VRHMDを用いたFPS。射撃はエイムが合ったと同時に行われ,エイムは視線で行う。画面下には個性の異なる3種類の銃が用意されており,現在使っている銃以外のものに視線をあわせると武器交換&リロードが行われる。一定時間内でのスコアアタックで競う。

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 チーム「モラトリアリスト」が目指したのは,本格的なVRシューティングだ。ゲームの構造としてはVR ZONEでプレイできた「アーガイルシフト」と同じく,HMDでプレイヤーの頭がどちらを向いているかを取得して,それに追従するように照準が動く。照準が敵に合うと,弾丸は自動的に発射される。
 本作がゲームとして面白いのは,リロードの仕組みだ。銃は3種類(ハンドガン,SMG,ショットガン)あって特性もそれぞれ異なるのだが,弾を撃ちきってしまったら,当然ながらリロードしなくてはならない。リロードは「ほかの銃に持ち替える」=「画面下側のほかの銃に視線を向ける」ことで自動的に行われる仕組みなので,プレイヤーは必然的に複数の銃を使いこなす必要が出てくるのだ。

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 障がい者向けゲームとしては,「障がい者にVRHMDが使えるのか? 重すぎないか?」という懸念があるかと思うが,この点は専門家から「問題なく使える」というお墨付きが出ている。ただあまりに激しい動きは困難なので,敵の出現範囲は前方35度の範囲に固定されており,上下の幅も小さく取っているとのこと。ちなみに首が上手く動かせない障がい者の場合は,車椅子を操作して体ごと左右に向きを変えるという例もあるそうだ。
 また,「健常者と障がい者が一緒に遊べるゲーム」というお題に対して,「必ずしも同時プレイでなくていいだろう」と判断したのも特徴的だ。本作は全盲だとさすがにプレイできないものの,健常者と障がい者が同条件で競いあえるなら,シングルプレイのスコアアタックもお題に対する一つの回答といえるだろう。

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(5)チーム:Yurayura


作品名:Yurayura
ゲーム概要:2台のスマートフォン(ないしタブレット)を同時に使うゲーム。2人が協力してステージをクリアしていく,シンプルなプラットフォームアクション。1台はコントローラで,1台は画面のみが表示されているので,画面を見ているプレイヤーが,コントローラを操作するプレイヤーに助言を与えることでステージをクリアしていく。

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 チーム「Yurayura」は,筋ジストロフィー症の人でも扱えるコントローラを模索した結果,専門家の助言も得て,「スマートフォンのジャイロを使う」というところに落ち着いた。スマートフォンの下にペンなどを置き,それを軸としてスマートフォンを前後に傾けることで,キャラクターが前進・後退するという仕組みだ。
 ただしコントローラ側には画面が表示されておらず,実際のゲーム画面はアドバイザー側のスマートフォンでしか見ることができない。アドバイザー側は「ゆっくり前進」「ちょっと待って」「バックして」といったアドバイスをすることで,さまざまな障がい物のあるステージを2人で協力して進んでいくことになる。ちなみにコントローラ側のスマートフォンでは立体音響によるある程度の情報提供がなされ,コントローラ側はイヤフォンをすることでより精度の高いコントロールが可能となる。

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 また本作の制作にあたっての,このチームの最初の分析である「健常者がわざわざシリアスゲームをやろうとは思わない」という視点はとくに興味深く,かつ現実的であったと言える。「有意義なゲームだから遊ぼう」という人はきわめて少数派であり,普通に遊んで面白いゲームでなければわざわざゲームを遊ぼうとはしないだろう。

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(6)チーム:シリアスギルダーズ


作品名:B.A.T. Castle of Rhythm
ゲーム概要:いわゆる音ゲー。音楽にあわせてタイミングよく画面をタップすることで,より高い得点が獲得できる。演出はアクションゲーム風で,迫ってくる障がい物を避けながらアイテムを取る構図。2人同時プレイで点数を競うシステムだが,1枚のタブレットの上下を使って2人が同時にプレイできる。

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 チーム「シリアスギルダーズ」もまた,プレイヤーへの操作負担を下げるにあたって,「タップのみ」の操作を選んだ。また音ゲーにすることにより,全盲でも音を頼りにプレイが可能となっているようだ(ちなみに音や映像以外に,バイブレーションも発生する)。
 本作の面白いところは,1台のタブレットで2人がプレイするというインタフェースだろう。2人のプレイヤーは1枚のタブレットを挟んで座り,上下分割された画面を使ってゲームをプレイする(このため,1P用と2P用で画面が反転している)。

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 このデザインの意図としては,もちろん「タブレット1枚でプレイできたほうが準備が楽」という側面もあるが,「1枚のタブレットを囲んで遊ぶことにより,一緒にゲームを遊ぶ空間を作る」という効果がある。プレゼンでは「一緒にゲームを楽しむことに障がいは関係ない」と語るとともに,「このゲームを使ってどう楽しむかを,プレイヤー自身でも工夫する」「ほかのゲームも一緒に遊んでみないか,と誘うきっかけとする」といった目標もまた示されていた。

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オランダ大使館からもアワードが出た表彰式


 さて,講評でも「レベルが高かった」「すべての作品に賞を与えたい」(実行委員長の岸本好弘氏)とほぼ最高の評価が下された第7回シリアスゲームジャムだが,ともあれいくつかの作品にアワードが与えられた。

・特別参加者賞:三代大氏,Ku Yohan氏,Cho Younghyun氏


 第3回シリアスゲームジャムから,今回の第7回まで連続して参加した三代大氏には,特別参加者賞が贈られた。初参加時は学生だったそうだ。また第7回シリアスゲームジャムのために韓国から駆けつけたというYohan氏とYounghyun氏にも,同じく特別参加者賞が贈られた。

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・優秀賞/Excellent Design Award:Mission HY


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・優秀賞/Excellent Research Award:Yurayura


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・特別賞/Dutch Embassy Award:モラトリアリスト


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・最優秀賞/Grand Prix Award:グローバルフリー


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 講評で岸本氏は,「今後も作り続けて,完成度を上げていってほしい」と語っていた。というのも第7回シリアスゲームジャムはこれで完全に終わりというわけではなく,まずはこの冬の台北ゲームショウに出展が行われるほか,病院での試遊とフィードバック,全盲の人による試遊,また来年のTGS出展も視野に入れているなど,先の長いプロジェクトとなっているからだ。即席チームで長期間にわたって開発を続けるのは決して簡単なことではないが,ぜひ頑張ってほしいところである。


「他人事」としてではなく


 最後になるが,今回のゲームジャムを見て筆者が少し疑問に感じたことをまとめておきたい。先に断っておくが,第7回シリアスゲームジャムの成果が素晴らしいものだったことは,予め強調しておきたい。以下の苦言は,そうしたレベルの高い作品が揃ったからこそ,感じたポイントなのだ。
 あくまで個人的にではあるが強く疑問に感じたのは,(おそらく初日の講演でそういう示唆があったと思われるが)多くのチームが「障がい者向けのゲームのコンセプト」として「非暴力的なゲームであるべき」という姿勢で臨んだところだ。

海外からの参加者もちらほらと
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 もちろん,日本の病院や学校に納入するのであれば,暴力表現はCEROレーティングで最も厳しいラインを基準とすべきだろう。子供に遊んでほしいという場合も同様だ。しかしながら,これらはいわば「どこに(誰に)売り込むか」という話であって,無条件に「障がい者に楽しんでもらうのだから非暴力的なゲームであるべき」と語られてしまうと,「それはむしろ新しいバリアを設計しているのでは?」という疑念がよぎってしまう。

 障がい者という言葉であたかも他人事のような気分になってしまうが,目が見えなくなる,耳が聞こえなくなる,手が動かなくなる,足が動かなくなるといった「障がい」は,「健常者」であっても明日には抱える可能性のある「障がい」だ。障がい者と健常者を隔てる壁は,驚くほど薄い「偶然」という壁でしかないのだ。
 であるなら,例えば昨日まで健常者だったゲーマーが,障がい者となった翌日から「障がい者なのだから非暴力的なゲームを遊びましょう」と言われたとしたらどうだろう。これ以上の「バリア」はあり得ないのではないか。バリアフリーを目指すゲームジャムが,この点を見過ごしているように見えたのは,少し残念に感じられた。

 繰り返しになるが,健常者とは明日の障がい者でもある。自分が明日,目が見えなくなったら? 片手が動かなくなったら? そのとき,自分が遊びたいゲームとは何なのだろうか。筋ジストロフィー症や先天的な盲目といった「症例」に過剰にとらわれることなく,まずは自分達自身が目を閉じ,「突然視力を失った人間」としてどんなゲームを遊びたいのかを考えてみる。そういった道筋のほうが,より現実的な気がしてならないのは筆者だけではないはずだ。
 ゲームジャムという環境においてはいろいろな制約も多く,それこそ多くを求めすぎているのかもしれないが,そんなことを感じさせられた取材でもあった。今後のシリアスゲームジャム,そしてそこから生まれる成果に期待したい。

実行委員長の岸本好弘氏(左)と副実行委員長の日本大学生産工学部 古市昌一氏
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