お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名

LINEで4Gamerアカウントを登録
パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のインタビュー

メディアパートナー

印刷2026/08/15 17:06

イベント

パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 2026年8月14日,韓国のインディーゲームイベント「BIC2026」で,セッション「TALK with Shu: 'How Publishers Actually See Your Game'」が行われた。元ソニー・インタラクティブエンタテインメントの吉田修平氏が,韓国のインディーゲーム開発者2人と,事前に寄せられた質問をもとに語り合うトークセッションだ。

左から吉田修平氏,Doyoon Kim氏,Keunjae Yook氏
画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 進行役の吉田氏は,初代PlayStationの立ち上げ期からソニーでゲーム開発に携わり,SIEワールドワイド・スタジオのプレジデントを11年間務め,最後はインディーゲームの支援活動を担った人物だ。退社後はyospを設立し,インディーのパブリッシャやデベロッパのアドバイザーを務めている。

吉田修平氏
画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 今回トークに加わった韓国の開発者は2人。Keunjae Yook氏は,Steamでアーリーアクセス配信中のデッキ構築型ローグライク「マスター・オブ・ピース」を手がけるI M GAMEのマーケティング担当だ。同作は昨年のBICで遊んだ吉田氏が「このゲームはいいよ」とXに投稿した作品でもある。パブリッシングの提案は多く受けたが,経験とデータを蓄積するため,製品版までセルフパブリッシングで進める予定だという。

マスター・オブ・ピース
画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 もう1人のDoyoon Kim氏は,「#FF0000」として活動する21歳の大学生開発者だ。アクションゲーム「CRIMSON PANDEMIC」を高校1年から約4年間1人で開発し続けており,Steamでは2027年のアーリーアクセス配信が予告されている。パブリッシャと組むかどうかを悩んでいる最中で,「今日,展示をしながら名刺をいただきました。おそらくこの中の1社が,うちのパブリッシャになるんじゃないかと思います」と語った。

CRIMSON PANDEMIC
画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]


ピッチで見られるのは「ゲーム」「デベロッパ」「求めるもの」の3つ


 最初のトピックは「デベロッパがピッチをするとき,パブリッシャはどこを見るのか」だ。これについて,吉田氏は3つを挙げた。
 1つ目は,ゲームそのもの。ピッチドキュメントのゲームデザインや,添えられたビデオやデモから,ゲーム自体を評価する。
 2つ目は,デベロッパだ。ゲームを完成させた経験があるか,過去作の評価はどうか,その経験は新作に生かせるかを見る。
 3つ目は,パブリッシャに何を求めているのか。ファンディングか,パブリッシングか,ローカライズやQAか,マーケティングだけか。パブリッシャによってできることが違うため,「この3つを1つのドキュメントに入れておくのがベストプラクティス」だと語った。

 パブリッシャと協議した経験を持つYook氏は,重視されるポイントとして,トレーラーを見た瞬間に「遊びたい」と思わせるフックと,ウィッシュリスト数やデモのダウンロード数といった可視的な指標を挙げた。やりがちなミスは,多様な機能をガイドブックのように羅列してしまうこと。なぜ面白いのか,どうすれば売れるのかをアピールするほうが役に立つという。

Keunjae Yook氏
画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 これに吉田氏も同意する。ロゴやストーリームービーから始まる映像は,大量のピッチを見るパブリッシャにとって「面倒くさい」ものだという。すぐにゲーム画面が始まり,画面だけでどんなゲームか分かる映像が好まれるそうだ。

マスター・オブ・ピース
画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]


デモを遊んだ吉田氏から,学生開発者へのアドバイス


 セッションに先立ってCRIMSON PANDEMICのデモをプレイしていた吉田氏が,壇上でKim氏にフィードバックを送る場面もあった。1つは,言語が韓国語のみだったこと。冒頭の会話を1クリックごとにスマホのGoogle翻訳で確認しながら遊んだといい,「すごく時間がかかって,テンポが分からなくなってしまった。できるだけ早く英語に,可能なら中国語にも対応して,Steamのページでも英語と中国語の情報を出しておくといい」とアドバイスした。
 もう1つは,キーボードでしか遊べなかったこと。コンソールでの売り上げのポテンシャルを見るパブリッシャもいるうえ,アクションゲームをコントローラで遊びたいPCプレイヤーも増えているからだ。

CRIMSON PANDEMIC
画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 Kim氏は「学生なので,いま翻訳を依頼するお金も時間もありません。リリース後に資金ができたら英語や日本語,余裕があれば中国語まで対応するつもりです」と回答。コントローラも「キーバインドが多いので対応する気はなかったのですが,今日お話を聞いて考えが変わりました」と応じた。

Doyoon Kim氏
画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]


クオリティの高くないゲームで,売れるゲームはない


 続いてのトピックは,オリジナリティと商業性だ。「パブリッシャは,クオリティよりも売れるかどうかを見ているのではないか」という質問が取り上げられた。
 Yook氏は「良いゲームでありながら,よく売れるゲームを探しているのだと思う」,Kim氏は「もちろん売れてほしいが,結局は自分が望むゲームを作っている。私も結局はゲーマーなので」と回答。吉田氏は「クオリティの高くないゲームで売れるゲームはないと思います。クオリティの高いゲームは世の中にたくさんありますが,売れるゲームの数はとても少ない。まずはクオリティの高いゲームを作ること。そのなかで,運が良ければ売れるゲームになる」と断言した。

画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 オリジナリティについては「あればあるほどいい。それがないと,プレイヤーがそのゲームをピックアップする理由にならない」と明快だ。吉田氏がCRIMSON PANDEMICのビデオに感じた「いい意味で,どういうアクションか分からなかった。こんな画面見たことない」という驚きは,まさにその話だろう。


パブリッシャは「人」も見ている


 3つ目のトピックは,パブリッシャとの付き合い方だ。介入をリスクと感じるかという問いには,2人とも合理的な意見なら歓迎という立場だという。Kim氏は「作品性を妨げるようなものは少しためらう」とも語った。

 吉田氏が強調したのは,両者のタイプの一致だ。フィードバックやリソースの提供までして一緒に作りたいパブリッシャもいれば,パブリッシングに徹する会社もある。デベロッパ側にも,意見が欲しい人と「ほっといてくれ」という人がいる。どちらが正しいという話ではなく,相手がどう関わりたいのかをピッチの席で聞き,自分の期待と合う相手を選ぶことが大事だという。

 そして,初めてのピッチでパブリッシャが見ているのは,ゲームと実績だけではない。「人間として,自分はこの人たちと長く付き合いたいかどうかを見るんですね」と吉田氏は語る。開発ではうまくいかないことが必ず起きるからこそ,厳しい話をお互いに正直にできる信頼関係が重要になる。「すごくいい条件に見えても,契約書の下のほうに,すごい権利を取るいやらしい条項が入っているパブリッシャもいます。人として信用できるかを見て,疑問があったらやめてしまう。それでもいい」と述べた。


「ターンベースRPG」と言わなかったExpedition 33


 「パブリッシャはトレンドを気にしているか」という質問に,吉田氏はタイプによると答えた。完成間近のゲームを扱う会社は気にするが,3〜4年かけて一から一緒に作る会社は,発売のころには流行が古びかねないため,あまり気にしない。ニッチなジャンルへの逆張りさえあり得るという。

 ここで披露されたのが,吉田氏がアドバイザーを務めるKepler Interactiveの大ヒットRPG「Clair Obscur: Expedition 33」の逸話だ。発売の2年ほど前,GDCでプレイアブルデモに触れた吉田氏は,ターンベースのJRPGにタイミング入力のアクションを組み合わせたバトルに,自身がプロデュースした「レジェンド オブ ドラグーン」を思い出して好感を持った。ただ,当時はターンベースのJRPGが「古い」と言われていた時代だ。デベロッパのSandfall Interactiveには「すごくよくできているけれど,『ターンベースRPG』と言わないほうがいい。それだけでプレイヤーが見ない可能性がある」と助言し,実際に「リアクティブ・ターンベースバトル」のような呼び方が使われたという。
 そして同作が大ヒットした今,パブリッシャ各社には新しいターンベースRPGの企画が続々と届いているそうだ。「今流行っているから」とそこだけを見ても,成功するわけではないという1つの実例だ。


良いゲームを仕上げてSteamに置いておけば,次につながる


 終盤には,開発者側から吉田氏に質問する時間も設けられた。Kim氏の「本当に良いゲームなのに,注目されないゲームにはどんな対処が必要か」という質問への答えは,それでも最後まできっちり仕上げて,Steamに出しておくこと。知名度が低くても評価の高い前作は,デベロッパに何ができるかを示す材料として,次のピッチで大きな武器になる。「ヒットするのは,いいゲームを作るよりさらに確率が低い。まずは,いいゲームを作り続けるところに集中すればいい」と吉田氏は答えた。

 セッションの最後は,「ゲーマーとして,好きで遊んでいるゲームはあるか」という話題で締めくくられた。Yook氏は「Slay the Spire 2」,Kim氏は「Factorio」や「Satisfactory」,吉田氏は日本製アドベンチャーの「シュレディンガーズ・コール」と,会場にも出展されている「Finding Polka」を挙げていた。

画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / パブリッシャはインディーゲームのどこを見るのか。吉田修平氏が韓国の開発者2人と語った,ピッチとパブリッシャ選びの極意[BIC2026]

 ピッチの組み立てからパブリッシャの見極め方,契約書への注意まで,インディーデベロッパがすぐに生かせる実践的な話が詰まったセッションだった。

  • 関連タイトル:

    講演/シンポジウム

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:08月14日〜08月15日