CEDEC 2026の講演『コミュニケーションゲームとは 〜マーダーミステリーに学ぶ「対話」をメカニクスとして設計する方法〜』は,その問いに真正面から答えたセッションだ。登壇したのは,2026年7月1日に一般社団法人となったばかりの日本マーダーミステリー作家協会から3名。代表理事を共同で務める水井将太氏(しゃみずい名義で活動)と九尾まどか氏,そして編集部会 部会長の秋山真琴氏である。
水井氏は「ヤノハのフタリ」で知られるマーダーミステリー作家であり,ストーリープレイングというジャンルの創始者でもある。2026年2月には自作のマーダーミステリーを原案とした短編小説で第13回日経星新一賞グランプリを受賞し,内閣府のムーンショット目標1「Internet of Brains」のプロジェクトに体験型コンテンツ「瞳に棲む群青」を寄稿した。
九尾氏は本格推理ゲーム作家・デザイナーで,体験型推理小説「黒革の手帳はもう語らない」などを手掛ける。秋山氏は「ループ探偵の憂鬱」を代表作に持つマーダーミステリー作家であり,ボードゲーム作家でもある。
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講演はまず,水井氏がスライドを用いて単独で進め,後半の質疑応答から3名がそろって回答に加わる形で進行した。冒頭で水井氏が念を押したのは,この講演がマーダーミステリーというジャンルの紹介ではないことである。「その外側に広がるコミュニケーションゲーム全体の,ゲームデザインの共通構造をお話ししたい」「デジタルゲームにも流用できそうな共通構造を,今日皆さんに持ち帰っていただきたい」というのが趣旨だ。
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水井氏はまず,ゲーム一般をごくシンプルなモデルに還元してみせた。プレイヤーが入力し,ゲームシステムが処理し,結果が出力され,プレイヤーがそれを見て判断してまた入力する。この循環はアナログゲームでもデジタルゲームでも変わらない。カードをめくる,サイコロを振る,駒を進める――入力の手段が違うだけで,サイクルそのものは同じだ。
これが対人型になると様相が変わる。プレイヤーAの入力がゲームを経てプレイヤーBに出力され,Bはそれを見て判断し入力する。対戦格闘ゲームなら相手の技の発生という出力を見てガードや反撃を選び,FPSなら敵の位置と射線を感知してエイムやカバーで打ち返す。「ゲームシステムを翻訳者とした非言語的な対話」であり,「対人ゲームである時点で,すべてのゲームはコミュニケーションゲームなのです」と水井氏は言い切った。
さらに多人数型では,システムの外側にもう1枚の層が走る。MOBAやチームプレイでのボイスチャット,いわゆる「生の対話」である。これはゲームに影響を与えているが,ゲームシステムの処理を挟んではいない。ではゲーム的な体験ではないと切り捨てていいのか。水井氏の答えは明確な否だった。会話や身振り,視線のやりとり,そこから生じる信頼や交渉や騙し合いといった高次な意思決定の連続こそが「主体的な体験の核心である」というのである。
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問題は,この層が作り手にとって制御しづらいことだ。コントローラー経由の入力は完璧に予測・制御できるが,自然言語による対話は情報量が無限で自由度が高い。ゆえに多くのマルチプレイヤーゲームは,対話を「してもいいし,しなくてもいい要素」として扱う。
対話自体をゲーム要素として取り込んだデジタルゲームは,「Among Us」や「Goose Goose Duck」といった人狼系の派生がある程度にとどまる。「対話という要素をゲーム体験の中核に置く,そんなゲームがもっともっとたくさん生まれてもいいはずなんです」というのが,この講演の出発点である。
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「評価のラグ」がマーダーミステリーを情緒の装置にする
では,ゲーム処理そのものに対話を用いたゲームは存在しないのか。存在する。水井氏はTRPG,人狼ゲーム,マーダーミステリーの3つを取り上げ,「会話自由度」「評価タイミング」「主たる体験」という3軸で比較していった。
TRPGは会話自由度が最大で,あらゆる発言やアドリブ,システム外のやりとりまで許容する。ただしそれはゲームマスターの裁定次第であり,評価タイミングは緩やかで属人的だ。システムのコントロール力が弱く,体験価値がゲームマスターや同卓者の力量に依存しやすいのが弱点となる。
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対照的に,人狼ゲームは会話自由度が最も強く制限される。発言のわずかな矛盾や動揺が,翌日や翌晩の処刑・脱落というゲーム内ペナルティに直結するためだ。水井氏はこれを「極限の論理パズルデスマッチになりやすい」と表現し,情緒的な物語やキャラクターのドラマを保護する余地はほぼないと指摘した。
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その中間に位置するのがマーダーミステリーである。TRPGのようなメタ的視点での介入は許容しないが,人狼ゲームとは違ってキャラクターとしての会話や立場を楽しむ文化がある。そして決定的な違いが評価タイミングだ。マーダーミステリーでは対話の結果がすぐには勝敗に反映されず,終盤の投票まで持ち越される。水井氏はこれを「評価のラグ」と名付けた。
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ラグがあるからこそ,プレイヤーは最後まで躊躇し,葛藤し,推理し,悩むことができる。「この躊躇と葛藤こそが体験の本質」であり,「お仕着せではない,外からもらったものではない,プレイヤー自身の内側から湧き出る感傷,結果を得るまでの猶予こそが体験となる」と水井氏は述べた。
この構造をゲーム進行に沿って図解したのが評価ラグモデルだ。(1)発話・傾聴によって動機や根拠,嘘や真実を送受信する。(2)評価のラグが生まれ,「あのとき言ってしまって良かったのか」「さっきのあいつの言い分を信じていいのか」と全員が迷い,関係性が揺らぐ。この(1)と(2)を繰り返したうえで,(3)終盤の投票という1度きりの意思決定があり,(4)その結果として物語が決着する。
「ここに至るまでの(1)と(2)を繰り返すことが重要であり,この時間的猶予をどれだけ魅力的に過ごさせることができるのか。これがシナリオ設計の最大のポイントです」。
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ラグが生み出す心の動きは3つに整理された。「疑う」は,自分自身の判断が正しいかを推し量る内的行為であり,緊張感を伴う。「信じる」は,共通目的を見いだしたときや秘密を共有したときに生じる強い仲間意識で,水井氏は「共犯感覚」とも言い換えた。そして「迷う」は,疑うことも信じることもできない状態,つまり葛藤である。
重要なのは,これらがシナリオに「そうせよ」と書かれているからではなく,プレイヤーが真剣に取り組めば自然と湧き上がるという点だ。「悩んでいるのはゲームのキャラクターではありません。現にプレイヤー自身が悩んでいる。だからこそ没入的な体験となるのです」。
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MDAフレームワークで「ICO」とマーダーミステリーを分解する
では,その心象はどこから生まれるのか。ここで水井氏は,デジタルゲームのデザインでも知られるMDAフレームワークを持ち出した。Mechanics(システム),Dynamics(挙動),Aesthetics(心象)の3層でゲームを捉える枠組みである。
Mechanicsはルールやパラメータ,アルゴリズムなど,明文化された仕組みそのもの。Dynamicsは,そのシステムに基づいてプレイヤーが動き,駆け引きが生まれる中で発生する動的な現象。Aestheticsは,プレイ中にプレイヤーの心に立ち現れる情緒や愉悦,悲哀,没入的な体験を指す。
この3層構造で決定的に重要なのは,デザイナーが直接操作できるのはMechanicsだけだという点だ。挙動も心象も,Mechanicsという原因から間接的に生まれる結果でしかない。
したがってゲームデザインとは,「どんな感情体験を届けたいのか」を起点に,「そのためにはどんな挙動を生みたいのか」を考え,「ではどんなシステムを作るべきか」と逆算していく営みになる。
しかもプレイヤーの体験はこの逆順で進む。まず「面白い」というAestheticsを感じ,次に「このゲームはこういう動きだ」とDynamicsを実感し,最後に「これを支えていたのはこのルールか」とMechanicsを理解する。水井氏はこの非対称性を「MDAの順番で開発され,ADMの順で体験される」と表現した。
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概念だけでは実践から遠ざかるとして,水井氏が実例に挙げたのが「ICO」だった。2001年にPlayStation 2向けに上田文人氏率いるチームが手掛けたアクションアドベンチャーである。
「ICO」のMechanicsは極限まで削ぎ落とされている。R1ボタンを押し続けることでヨルダの手を握って歩けること。ヘッドアップディスプレイを排除し,体力ゲージもミニマップも画面上に置かないこと。そしてヨルダがプレイヤーの意思と無関係に自律行動すること。この3つだけだ。
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ここから生まれるDynamicsも明快だ。R1ボタンを押し続けるという動的操作が「手を握っている」という触覚の疑似体験を生む。UIがないため,プレイヤーは自分の視覚で生存確認をせざるを得ない。ヨルダは思いどおりにならないため,とっさの対応を強いられる。そしてその挙動の積み重ねが,言葉を超えた関係性,孤独と愛おしさ,もどかしさと使命感というAestheticsを植え付ける。
「多くのゲームは,テキストやムービーによってストーリー体験をプレイヤーへ直接伝えようとします。もちろんそれも有効な方法の1つです。ですが,『ICO』は物語を説明するのではなく,プレイヤー自身の操作を通してその感情を内側から立ち上げているわけです」。水井氏は同作を「引き算の美学の結晶」と評したうえで,「要素を抜き出すことが簡単なだけであって,この着想,この実装を果たすのは実際とてつもない偉業です」と付け加えた。
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同じ手つきで,今度はマーダーミステリーが分解される。Mechanicsは初期条件,カード情報,シナリオ文章。Dynamicsは調査箇所の選定,嘘,密談,告白。そしてAestheticsが疑心,信頼,葛藤である。
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ここで水井氏が強調したのは,Dynamicsに指図をしてはならないという原則だった。「ここで嘘をつけ」とシナリオに書くことはできるが,それはゲームからの指図でしかなく,プレイヤーの自発的な行動にはならない。Aestheticsも同様だ。「はい,ここで泣きましょう,なんていう指図はできないのです」。
では,マーダーミステリー固有のMechanicsは何か。カードの配布枚数や行動回数制限,タイムリミット,投票の手順といった古典的なボードゲーム的規約に加え,ほかにはない大きな違いとして「初期の情報格差」と「ゲーム中の会話制限」が挙げられた。会話制限によって,ある人物には周知のことがほかの人物にはまったく伝わっていない状態が生じ,初期の情報格差がゲーム中もいびつに拡大していく。
この2つが強力なのは,そこから自然にDynamicsが導かれるからだ。情報格差は隠し事や探り合いを生む。会話制限は嘘や告白を生む。全員の前で証言して後から嘘つき呼ばわりされれば,それ以降の発言は信用されない。「会話に制限があるからこそ,今ここであなたにだけ話す,という選択肢が生まれるのです」。
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対話を4つに分節し,「情報格差」で駆動する
講演の核心は第4部だった。水井氏はマーダーミステリーにおける対話を,全体会議,密談,推理発表,読み合わせという4つに区別する。それぞれ「共有の場」「非対称の場」「保障の場」「同期の場」であり,いずれもルールによって性質が規定されている。
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全体会議は,ルールにより全員が同じチャンネルに集い,すべての発言が等しく伝播・観測される場だ。これが相互監視と相互検証を生み,公明正大さを装う圧力が働く。結果として,法廷での証言のような緊張感と,合意形成に向かう納得感が生まれる。
密談は対話人数が制限され,対話相手を自己決定できる場である。ここから非対称な取引と派閥化が起こり,情報格差を利用した個別交渉や真実の隠蔽,全体会議に持ち帰らない密約が結ばれる。そこに生まれるのが「共犯関係の安心感と背徳感」だ。「私たちだけが知っている秘密でつながっているという強烈な連帯感と,秘密を共有するゾクゾク感」である。水井氏はここで「私は密談が大好きです」と明かし,デザイナーとしては情報の偏りが生まれてもなお破綻しないアーキテクチャを模索するのが好きなのだと語った。
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推理発表は,割り込みを受けない発言権が保障される場だ。全体会議の激論に割って入れなかったプレイヤーも,ここではゲームへの影響が保障される。告発と弁論のカタルシス,物語への主体的な介入がここで得られる。
読み合わせは,カードや台本のセリフを記述どおり読み上げることで全員の状況認識を同期させる場である。「このキャラクターだったらこう言うかな」「自分だったらこう言いたいな」とキャラクターらしさと自分らしさを重ね合わせることで,演劇的な没入感が生まれる。
4種の対話を分析したうえで,水井氏は改めて釘を刺した。「はい,ここで嘘をつきましょう」という指図はゲームからはできない。ではどうすればプレイヤーは自分の意思で対話するのか。答えが「情報格差」である。
「私は知っている,けれどあなたは知らない」。この状況に置かれたプレイヤーは,自分の情報の価値を推し量りはじめる。公開して信用を買うのか,密談時の交渉カードとして使うのか,徹底的に秘匿して自分の利益を追求するのか。逆に「私は知らない,けれどあなたは知っている」なら,相手しか持たない真実を引き出そうと躍起になる。
「私たちが設計しているのは対話の文言そのものではありません。対話はルールに書いてあるから生まれるというわけではないのです」。設計すべきは,どうしても会話を交わしたくなる極限のシチュエーションのほうだ。
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まとめとして水井氏は,対話は設計できるのかという問いに「もちろんできます」と答えた。プレイヤーのセンスやアドリブ能力に依存せず,「会話を楽しんでくださいね」という丸投げでもなく,システムが対話を駆動する設計の仕方はある。「情緒体験そのものを命令することはできません。ですが,その情緒体験が立ち上がらずにはいられない条件を緻密に整えることはできます」。
最後に語られたのはコミュニケーションゲームの未来だ。大規模言語モデル(LLM)を使ったエージェントが自然言語でリアルタイムに心理戦を仕掛けてくる未来。アイコンタクトやジェスチャーなどの非言語データがオンラインで共有される空間。そして脳波や生体データを送受信するダイレクトなコミュニケーションゲーム。
水井氏が参加した内閣府の研究開発事業は,まさに頭に電極を埋め込んで情報を送受信する技術を扱うものだという。「こんな未来って来ますかね」と研究者に尋ねたところ,「ああ来ますよ,2050年くらいか,もっと早いかもしれませんね」とさらりと返されたのだという。
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「果たして,人と人との間で起こる出来事を,私たちはどこまでゲームとして設計できるのだろうか。どうかコミュニケーションとゲームを愛するすべての開発者の皆様に,どうか考えてほしいのです」。水井氏はそう課題を投げて講演を締めくくった。
続く質疑応答では,会場から2件,オンラインから2件の質問が寄せられ,3名がそれぞれの立場から答えた。
1つ目は,MDAに基づいて設計すると「このMechanicsでこのAestheticsが生まれるに違いない」という設計者バイアスがかかるのではないか,それをどう検証しイテレーションしているのか,という問いである。水井氏は,マーダーミステリーは1人で最初から最後まで作り上げられる規模なので,まず作り切ってからテストプレイし,そのフィードバックをつかんでもう1度作り直すのが自分のやり方だと答えた。
秋山氏は「重要なのはテストプレイ」としつつ,思ったとおりに響いていないと分かったときは,メカニクスにてこ入れするよりシナリオのほうを直すと語る。「なんかそれが笑えるシーンになってしまったのであれば,より笑えるシーンに仕立て上げていったほうがいい」という考え方だ。
九尾氏は,感じ方は個人の人生経験に依存するため設計どおりに行くことはまずないと述べ,男女で受け取りが真逆になる場合はキャラクター配分に制限をかけるシナリオもあれば,そのブレを利用して両極の感情のどちらを選ぶかでエンディングが変わるシステムに作り替えることもあると明かした。
2つ目は「PICO PARK」の三宅氏からの質問だった。会話とゲームデザインを10年考え続けてきたが,ほかの作り手の話を聞く機会がほぼなかったという前置きのうえで,講演で挙がった背徳感や疑心暗鬼,告発のカタルシスはマーダーミステリー全般に共通する要素なのか,新作をどう個性づけているのかを尋ねた。
九尾氏は,マーダーミステリーとストーリープレイングとARGの境目はもはやなくなっており,疑心暗鬼がまったくない作品もすでに何作もあると回答。完全協力型のマーダーミステリーや,「ウサギとか猫のふりをして,モフモフするだけのマーダーミステリー」まで実在すると語った。
秋山氏は自身を「推理派」と位置づけ,プレイヤー間の駆け引きより,物語が進むにつれて新しい真相が分かっていき最後に大きなカタルシスが来る構造を好むと述べた。
水井氏も,自身が「立派なマーダーミステリーができたぞ」と友人に見せたら「これがマーダーミステリーなわけがあるか」と言われ,新しいジャンルを創設する羽目になったことがあると笑わせた。
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三宅氏はさらに,3名それぞれが考える「面白い会話」を尋ねた。水井氏が挙げたのはアンジャッシュのコントのような会話だ。AはAの認知に基づいて話し,BはBの認知に基づいて受け取っているため,互いに伝わっていないのに会話が成立してしまう。「そんなアハ体験を,プレイヤー自身が最中は気づいてなくて,後になって気づくみたいな」体験をさせたいのだという。
秋山氏は,理性ではなくついポロッと言ってしまう言葉にその人の本質が宿ると考えており,「そういう素の言葉を引きずり出したい」「そういう言葉が一瞬でも多く出るようなデザインがいいマーダーミステリー」だと答えた。
九尾氏は記憶に残るセリフを持ち帰ってもらいたいとして,読み合わせで「殺したい」と読まされたセリフが,最後になって「殺したいほど愛している」の意味だったと分かり,プレイヤー自身の口から「愛してる」と言えたら完璧だ,という設計を語った。
オンラインからは,マーダーミステリー未経験者向けの入門作を問う質問と,シナリオごとの有利不利や運の要素のバランスをどう取っているかという質問が寄せられた。前者について水井氏は自作「ヤノハのフタリ」に加え,量販店でも買えるコンパクトなパッケージ作品を勧め,秋山氏はグループSNEの2人用作品を挙げた。
後者について秋山氏は,「ゲームが致命的に壊れてしまう」ことだけは絶対に避ける必要があるとしたうえで,100点や120点が出れば理想だが80点や60点でもやむを得ないと語る。プレイヤーの習熟度やその日の気分に左右される以上,60点あたりが及第点であり,避けるべきは40点や30点が出ることだという。
むしろ振れ幅を残しておくことで140点や160点がごくまれに叩き出せるのであり,「その日その日の傑作が生まれることを祈りながら,ある程度この遊びを残している」と説明した。
九尾氏は,推理小説なら謎がすべて解明されることが最大のカタルシスであり,解説まで物語に入れてしまうため犯人側が勝てないのだと明かす。「犯人側が気持ちよく,どうやったら負けられるかなっていうシステムを作る」シナリオを手掛けたこともあるとして,「必ずしも真ん中のバランスが一番いいというわけではなくて,どういう遊びにしたいのかを考えて,そのバランスになるようにゲームを設定することが大事」だと述べた。
最後に水井氏が挙げたのは,デジタルゲーム側からの逆輸入だった。RPGでは初期レベルで行けるエリアが決まっており,中間イベントをクリアするとエリアが広がる。水井氏はこれを「パイロン」(カラーコーンのこと)と呼んでおり,折り返し地点を回るたびに別のビジョンが見えてくる構造だと説明する。
マーダーミステリーでも同じメカニクスが使え,イベントによる区切れ目で前半と中盤・後半の公開情報量をコントロールできる。「これは多分ね,デジタルゲームのほうが発展してると思うんで,デジタルゲーム的な考え方を導入することで,普通にこのバランスを取るってことはすごく丁寧にできるんじゃないかな」。アナログからデジタルへ持ち帰るための講演は,最後にデジタルからアナログへの矢印を1本引いて終わった。





















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