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アイドルたちが届ける笑いと感動の新境地! 「劇団『ドラマティカ』」特別公演「お願いアラジン!ランプこすって!」「Oz’s wish」観劇レポート

 Happy Elementsがおくる「あんさんぶるスターズ!!」(以下,「あんスタ!!」)を原作とする舞台シリーズの1つ「劇団『ドラマティカ』」が,特別公演「お願いアラジン!ランプこすって!」「Oz’s wish」の2作品を上演中だ。

 両作は「あんスタ!!」10周年企画に合わせた短編ミュージカルで,2026年3月12日から3月29日まであうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)で,4月3日から4月12日までAiiA 2.5 Theater Kobe(兵庫県神戸市)で上演される。

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挑戦を続ける「劇団『ドラマティカ』」の最新作は
テイストの異なる2つの短編ミュージカル


 これまでのレポートでもお届けしたとおり,「劇団『ドラマティカ』」は,「原作に登場するアイドルたちが行う舞台」という設定のもと,現実の役者が2重構造で役を演じる作品だ。

 毎回さまざまなジャンルに挑戦するのも「劇団『ドラマティカ』」の面白さで,これまでに「西遊記」をベースとした旗揚げ公演「ACT1/西遊記悠久奇譚」(2021年),クライムサスペンス調のオリジナルストーリー「ACT2/Phantom and Invisible Resonance」(2022年),「不思議の国のアリス」をベースとした「ACT3/カラ降るワンダフル!」(2023年),「ヘンゼルとグレーテル」をベースとした「ACT4/魔女とお菓子の家」(2024年)と,コンスタントに作品を発表してきた。

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[2021/10/26 15:00]
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[2022/07/08 12:00]
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[2024/08/30 17:00]

 そんな彼らが,今年は「アラジンと魔法のランプ」と「オズの魔法使い」をベースとした2つの短編ミュージカルに挑戦する。さらに,出演者は全員が原作における「劇団『ドラマティカ』」のオリジナルメンバーで構成され,サークル色が極めて濃い舞台となった。
 今回も前回公演同様,ここからは「劇団『ドラマティカ』」が存在する世界のライターとしてレポートをお届けしたい。


振り切ったコメディで笑いが弾ける
「お願いアラジン!ランプこすって!」


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 アイドルユニット「fine」の日々樹 渉が主宰する演劇サークル「劇団『ドラマティカ』」は,これまでにアクションやサスペンス,ファンタジーなど,さまざまな舞台を発表してきた。
 今回はどんな新たな挑戦が? と思いきや,このたび上演される演目は,サークルメンバーであり,アイドルユニット「Switch」に所属する逆先夏目がプロデュースした短編ミュージカル2作品だという。

 まず1作目は,「アラジンと魔法のランプ」をベースとした「お願いアラジン!ランプこすって!」だ。タイトルからして愉快な雰囲気があふれる本作は,徹底的にコメディを追求した意欲作となっている。

 プロデュースを担当した逆先が演じるのは,主人公の「アラジン」だ。ただし,このストーリーに登場するアラジンは,願い事をかなえてくれるランプを手に入れても,すぐには願いが思い浮かばない無気力な人物である。
 そんなアラジンの願いをかなえようとするランプの精は5人。ほぼ全員が,アイドル活動でのイメージから見事にかけ離れた役どころにもかかわらず,しっかりとキャラクターを落とし込み(あるいは開き直って?),客席を笑いの渦で包み込んでみせた。

アラジン(演:逆先夏目)
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 ネガティブなランプの精「ネガティー」を演じた日々樹は,さすがの一言に尽きる。アイドルとしては,観客のテンションをグッと上げてくれるパフォーマンスでおなじみの日々樹が,本作では徹底的に笑いを追求した芝居と歌の実力で舞台をけん引してみせた。

 一方,「Eden」の乱 凪砂が演じる「アングリー」は,作品の刺激的なスパイスとなっている。ブチ切れたときの迫力には,普段のカリスマ性ある存在感が存分に生かされているし,そうでないときのコミカルな小芝居もかわいらしく,見どころがたっぷりだ。

ネガティー(演:日々樹 渉)
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アングリー(演:乱 凪砂)
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 「Ra*bits」の真白友也が演じた「ドリーミー」は,そこまで本人とのイメージが離れていないぶん埋もれてしまいそうなところだが,振り切った芝居で強い印象を残した。高校では演劇部に所属しているというが,今後の可能性と伸びしろを感じさせるパフォーマンスだ。

 “振り切った”といえば,「パリピー」を熱演した「紅月」の蓮巳敬人も凄まじかった。あの硬派なイメージの彼がここまで弾けてくれるとは……! と驚きつつ,大いに笑わされた。これからもぜひ,演者としての彼を見てみたい。

 「Trickstar」の氷鷹北斗は,「ツッコミー」という名前の,「そのまんまやないか!」と言いたくなる文字どおりのツッコミ役だ。氷鷹は折り紙付きの才能に加え,クールな見た目に反して漫才などの研究も怠らないという。その努力がしっかりと花開いていた。

ドリーミー(演:真白友也)
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パリピー(演:蓮巳敬人)
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ツッコミー(演:氷鷹北斗)
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 そんな個性のデパートのようなランプの精に囲まれながらも,自分の感情や願いにしっかり向き合えず戸惑うアラジンは,どこか現代人の姿と重なる。演じる逆先自身は“魔法”をテーマとしたユニットに所属し,自身も占いができるアイドルだ。
 ひょっとすると逆先は,これまでにそうした“迷える人々”をたくさん見てきたのかもしれない。だからこそ説得力があり,彼がランプの精たちに心を動かされていく姿が感動を呼んだ。

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 「お願いアラジン!ランプこすって!」は,コメディ要素が極めて強い演目だ。6人で「こうしたらもっと楽しくなるかも」「面白いネタを思いついた」などと言いながら稽古する姿を想像するだけでも楽しいし,過去作の中でもっとも,いい意味で“若手のサークルらしい”手作り感やハチャメチャ感に満ちていたように感じる。

 だが,見終わったあとに残るのは,「ああ,面白かった」という満足感だけではなく,「自分にもあんなランプの精たちがいたらいいな」「自分ならどんなお願いをするかな」というワクワクでいっぱいの気持ちだ。きっと小さな子どもでも,アイドルとしての彼らを知らなくても楽しめる,まさに老若男女に広くおすすめできる1作といえるだろう。

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軽やかな笑いの奥にある深い感動――
「Oz’s wish」


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 2作目は,「オズの魔法使い」をベースとした「Oz’s wish」だ。こちらも1作目同様,ベースとなる物語はありつつも,ごくシンプルな内容にまとめられている。「ドロシーと仲間たちが,オズと呼ばれる大魔法使いに願いをかなえてもらうため,会いに行く」――というのが基本のストーリーラインだ。

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 ここでも各キャストについて述べていこう。まず,日々樹が演じたのは脳みそのない「かかし」だ。純朴な心を持つかかしの愛おしい雰囲気もさることながら,長い手足を真っすぐに伸ばした姿や動きの随所にかかしらしさを感じ,繊細な演技に舌を巻いた。
 同じく身体を使ったパフォーマンスが見事だったのが,「ブリキ」を演じただ。本気を出せば,よりブリキらしさを前面に出すこともできたのだろうが,コミカルさを強調した動きが見ていてとても楽しく,観客の笑いを誘った。

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 臆病な「ライオン」を演じた真白は,驚いて飛び上がる様子や,かかしとブリキの長身組に囲まれた姿があまりにもかわいらしい。だが,これまで逃げていた“勇気”と向き合う場面では,大いにカタルシスを味わえた。
 蓮巳が演じる「ドロシー」もまた素晴らしかった。どこか本人に通じるような,頑固すぎるリーダーシップが心強く,彼のセリフに励まされたのは決してオズだけではないだろう。
 それから,氷鷹が演じたドロシーの飼い犬「トト」は,みんなと付かず離れずの存在感が面白い。犬らしくはしゃぐかわいい様子が目を引きながら,ふと物事の本質を突くようなメッセージを届ける姿に,芝居の奥深さを感じた。

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 そして本作でもっとも興味深いのが,逆先が「魔法使いのオズ」を演じている点ではないだろうか。「お願いアラジン〜」では願いをかなえてもらう側の役どころだったのが,今度は願いをかなえる立場になるのである。
 偉大なる魔法使いと呼ばれるオズには,後悔を伴う忘れがたい記憶がある。アラジンとは別の意味で情熱を失っている彼が,どのように新たな一歩を踏み出すのか――ここが本作の肝となる部分だ。

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 我々のような観劇者は,逆先をはじめとしたアイドルたちにどのような過去があるのか,また彼らの間にどんなつながりがあるのかを,すべて知ることはできない。けれど,逆先の演じるオズを見ていて感じたことがある。
 それは,魔法使いや神さまに願いをかなえてもらう人や,占い師に運命を読んでもらう人たちは,一度でも力を貸す側の心を想像したことがあるのか,ということだ。誰かの望みをかなえるということは,誰にも知られない孤独や迷いを背負うことではないのかと。

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 今回上演された作品は,どちらも“願い”がテーマとなる作品だ。だからなのか,(勝手な想像ではあるが)どちらも逆先自らがプロデュースを申し出たのではないかという気がしている。アイドルとして歌って踊るステージではなく,物語をつづる舞台だからこそ,彼が伝えたかったこと……そこに思いをめぐらせたくなった。

 そうして,彼や「劇団『ドラマティカ』」のメンバーたちが選んだのは,両作ともあたたかく希望に満ちたフィナーレだった。「お願いアラジン〜」が老若男女におすすめできるコメディだとしたら,こちらは今を生きるすべての大人に見てほしい1作といえるかもしれない。
 我々の心の中に生き続けるドロシーたちが自分を励まし,どこかで生きているオズが光を与えてくれる。そんな,いつまでも余韻の残る舞台だった。

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※「Oz’s wish」の写真はオフィシャル提供によるものです。



 最後に,現実世界に戻ってもう少し語っておこう。本作は前作(「ACT4/魔女とお菓子の家」)に引き続き,山本一慶氏が演出を務めている。「あんスタ!!」やそれに伴う舞台のファンの1人として,演者自らが演出を担当しているところは,非常に「劇団『ドラマティカ』」らしく感じられるうれしいポイントだ。

 これまで長く「あんステ」に出演してきた山本氏だからこその解釈が素晴らしく,今回も実に楽しい舞台体験となった。「劇団『ドラマティカ』」は原作には登場しない題材の舞台を展開しているが,もはや観る前からの安心感も大きい。これもまた,舞台に関わるすべての演者や関係者の思いの賜物だろう。

 「劇団『ドラマティカ』」の舞台は,その裏にあるアイドルたちの思いや関係性を想像する楽しさに満ちている。だが,その魅力はそこにとどまらない。気づけば我々はその世界に足を踏み入れ,「“劇団『ドラマティカ』”という面白い劇団がある。新しい舞台が待ち遠しくて,この面白さを誰かに伝えずにはいられない」と感じてしまうのだ。
 そんな,まるで「あんスタ!!」世界の住人になったかのような没入感こそが,作品の大きな魅力のひとつといえるかもしれない。

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