レビュー
今や希少すぎ? 歯ごたえのある王道ターン制ファンタジーストラテジー「エルヴンレガシー 完全日本語版」のレビューを掲載
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エルヴン・レガシーの舞台は,エルフの一族に伝わる秘法を一人の魔術師が盗み出したため,破滅の危機にさらされている世界。この危険な状態を回避するために,エルフ族の魔術師ギルヴェンとサジテル卿が,国を裏切り反逆者となった魔術師を追って冒険を始めるという設定のもと,ストーリーが展開していく。
プレイヤーはサジテル卿としてゲームを進め,魔術師を追っていくことになる。プレイ中,時として選択を迫られることがあり,その結果によって物語の展開に変化が発生し,最終的にはエンディングにも影響を与えていくマルチシナリオ/マルチエンディングのスタイルが採られている。
ヘックスで描かれたマップ
地形効果にもしっかり目を通しておこう
エルヴン・レガシーのゲームマップは,「ヘックス」で区切られている。このマップ上で自軍と敵軍が交互に行動し,自軍と敵のユニット同士が隣接すれば戦闘が始まるという,ボードゲーム風のターン制ストラテジーのシステムが採用されている。敵を打ち破って自軍のユニットを進めていき,ステージごとに設定された勝利条件を達成すればミッションクリアとなる。
この基本的なシステム自体はそれほど複雑ではなく,ストラテジーゲームを普段あまり遊ばない筆者でも,すんなり理解できた。チュートリアルモードでは,操作しながら本作のルールを覚えられるので,本編に進む前にやっておくといいだろう。
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マップを構成するヘックスには,平原や丘,川などの地形が設定されており,ユニットによって相性のいい地形と苦手な地形がある。自軍の能力をフルに発揮できるよう,移動先の地形は常に確認しておきたい。
また,マップ内にある集落やお城は,「占領」することでお金を得られたり,拠点として使えたりできて便利だ。ただ,たいていの場合は敵がすでに占拠していることが多く,戦って奪い取ることになる。これらはゲームを有利に進めるうえでも重要な施設となるので,見つけたらぜひ確保していこう。
ほかに神殿や洞窟といったものがあり,こちらでは秘宝や回復アイテムなどが入手できる。
![]() 右側には敵ユニットがいるが,左側は暗くて様子が分からない。これが「戦場の霧」だ。味方ユニットを動かしてやれば,視界は広がって何があるかもはっきりとする |
![]() マップ内には街や砦,洞窟や神殿など,さまざまな施設がある。ここにユニットが到達するとアイテムやお金を入手できるので,余裕があればチェックしてみるといい |
自軍ユニットの視界範囲内は明るく表示されるが,マップ上のそれ以外の場所は「戦場の霧」に包まれて暗くなっており,様子が分からない。そこには敵ユニットがいるかもしれず,むやみにユニットを移動させると,敵の待ち伏せで大ダメージを受けてしまう。まずは飛行戦士などを斥候として出し,偵察させるという「索敵」が重要だ。
このほか,敵味方どちらにも共通する要素として,ユニットが大ダメージを受けると「戦意喪失」してしまうという要素がある。こうなるとユニットの性能は低下し,戦闘後は自動的に周囲のヘックスへ退いてしまう。強力なユニットでも,無茶をさせると戦意喪失して簡単に倒されてしまうし,かといって慎重に駒を進めると時間がかかってしょうがない。このあたりの舵取りが,なかなかシビアなゲームだ。
![]() ユニットにはそれぞれフラッグが表示されている。ブーツのアイコンは「移動可能」,剣のアイコンは「攻撃可能」を,それぞれ意味している |
![]() チュートリアルで,ゲームシステムを操作しながら学べるので,一度目を通しておくといい。ただし,ここでは触れられていない要素もあり,そのあたりはちょっと不親切かも |
キャンペーンとシングルミッションを搭載
二つのモードでシナリオを楽しめる
エルヴン・レガシーのゲームモードは,シナリオを順に進めていく「キャンペーン」,人間やゴブリンなど特定の種族を操ってステージ攻略に挑む「シングルミッション」,AIを含め最大4人で遊べる「マルチプレイ」の三つがある。難度は「簡単」「普通」「難しい」の三つから選択可能だ。
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キャンペーンでは「ワールドマップ」をベースにミッションが進んでいく。各ミッションの開始時にはCGムービーが挿入され,キャラクター同士のやり取りが見られる。主人公サジテルはエルフという長寿の種族のため,例えば人間から抗議されても,相手を子供扱いをして強引に事を進めようとするなど,必ずしもヒーローというわけではない描かれ方が面白い。
シナリオを進めていくと,ワールドマップ上でクエストが2か所同時に発生するという分岐が発生し,どちらを選ぶかで後のストーリーに影響が出るという仕掛けがある。また,キャンペーンのミッションでいい成績を残せると「ボーナスミッション」というものが出現する。こちらは必ずしもクリアする必要はないようだが,クリアすればレアな戦利品を得られるというメリットがあるので,腕試しを兼ねてやってみてもいいだろう。
各ミッションには,達成すべき「メインクエスト」と,クリア必須ではない「追加クエスト」の二つがある。多少ターン数を犠牲にしてでもサブ目標まで達成して完全クリアを目指すか,メインクエストだけクリアして手早く進めるかは,プレイヤー次第となる。
![]() ステージ内ではさまざまなイベントが起こる。それをクリアすると,ユニットが追加されるなどメリットが多い。ぜひともチャレンジしてみよう |
![]() クリアに要したターン数が少ないほど評価は高くなり,獲得ボーナスも増える。ここで獲得したアイテムは効果が大きいので,ユニットに装備させよう |
ステージクリア時には,クエストの達成率や,クリアに要したターン数によって,「黄金」「銀」「銅」の三段階でプレイが評価される。ランクによってクリア報酬が変化し,黄金なら資金,ユニット,戦利品を獲得できるが,銀なら資金とユニットのみ,銅だと資金しか得られない。ちなみに,難度によって報酬の額や戦利品が変化するということはないようだ。
実際に遊んでみて実感したが,序盤はともかく,ゲームは全体的に難しい。クリアランクで黄金を獲得するのは,規定ターン数も厳しく,かなりハードだ。苦しい状態でクリアすると資金繰りが悪化し,新規でユニットを徴用するのも難しくなり,結果として次も少ないユニットで戦うことを強いられ,悪循環に陥ってしまう。一度悪い流れになってしまうとそれを断ち切るのが難しく,人によっては途中で心が折れてしまうかもしれない。
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シングルミッションモードには,1話で完結するシナリオが全部で七つ用意されている。こちらは種族ごとに,さまざまなシチュエーションでのミッションを楽しめるのが特徴だ。ただ,クリアしたからといって何かご褒美があるわけでもなく,そこはちょっと寂しい気もした。
ユニットの使い方をマスターするのが勝利への近道
使用可能なユニットの種類は最初は少ないが,ステージをクリアすることで追加されていく。ユニットは軽歩兵,弓兵,飛行戦士など,全部で12種類あり,軍資金を使用して徴用可能だ。騎兵は一度に移動できる範囲が広い,魔術師は射程距離に関係なく,どこからでも魔法で敵を狙えるなど,ユニットそれぞれに特徴がある。またユニット同士の相性の良し悪しもある。
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お金で徴用できるユニット以外に,エルフ族の「サジテル」,魔術師の「ギルヴェル」など名前のあるユニットがあり,これらは「ヒーローユニット」と呼ばれる。
これらは一般のユニットと比べて能力が高く,また,ギルヴェルは成長によって多くの魔法を習得していくので,育てるとかなり強力になる。一般ユニットは一度倒されたら復活せず,また新たに雇う必要があるが,ヒーローユニットは倒されても,ステージをクリアすれば復活する。ただしサジテルに限っては,倒されるとゲームオーバーだ。
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ユニットはヒーローユニットなどの例外を除くと,10人で一部隊といった具合に複数の人数で構成されているが,戦闘を繰り返すうちに戦死者が出て,戦力が落ちてしまう。この回復には二つの方法があり,一つは「休息」コマンドを使う方法。これは兵士を休ませ回復を図るコマンドで,比較的損害が少ないときに有効だ。
そしてもう一つ,自軍の拠点(もしくは拠点に隣接)に移動させ,「兵募」コマンドを使って部隊の兵力を回復させる方法がある。こちらは兵力を全快することが可能だ。ただし,若干お金が必要なことと,新兵を補充するためユニットのレベルが下がる可能性があるというデメリットもある。なお,どちらのコマンドも,使用すると1ターン動けなくなるので,敵から離れた場所で実行するようにしたい。
ユニットを成長させレベルアップ!
クラスアップさせれば,さらに戦力強化も
敵を攻撃する,敵の攻撃を受ける,イベントをクリアするなど,さまざまな行為で経験値が入り,ヒーローユニットはレベル10,一般のユニットはレベル5まで,RPGのように成長していく。レベルが上がると能力値がアップし,さらにスキルを身につけることが可能だ。
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スキルは,例えば相性の悪い地形に入ったときにマイナス補正が働かないようにしたり,弓矢の射程を延ばしたり,視界の範囲を広げたりと,さまざまなものがある。ただしどれほど強化しても,戦闘で全滅させると一般のユニットは失われてしまうので注意。
なお,ヒーローユニットのスキル「偉大なる師」を覚えたサジテルに隣接すると,そのユニットは得られる経験値が50%プラスされるほか,「いかずちの守護者」なるユニットは,隣接するだけで防御力が上がるといった効果を持つ。この能力補正は一見地味だが,実はかなり有効で,筆者の場合それまでクリアできずにいたステージが攻略できるようになったりもした。
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またユニットは一定のレベルに到達することで,クラスアップが可能だ。例を挙げると「エルフ猟兵」は「ベテラン猟兵」に,「エルフ槍兵」は「炎の守護者」「鹿騎兵」のどちらかになれる,という具合。さらに上位のクラスもあり,使い続けるほど強くなっていくという特徴がある。
クラスアップしていけば,レベルは引き継がれるし,新規で同じユニットを徴用するより,導入コストが抑えられるというメリットもある。このようにユニットを大事に育てていき,なるべく損失を出さずに高レベルのユニットで部隊を固めていくのが攻略のコツといえるだろう。
![]() ユニットは,レベルが上がるとスキルを習得して強化させられる。ここはシミュレーションRPGならではといった要素だろう。どれが必要かよく考えて選ぶといいだろう |
![]() 馬鹿にできない効果を持つのが,スキルやユニットの特性による補正。このユニットの場合は,サジテルと炎の守護者に隣接したため,それぞれから支援が入り,防御力が2ポイント増えている |
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参考までにだが,筆者は初回のプレイではユニットを使い捨て感覚で遊んでしまったため,育ちきったユニットがおらず,ヒーローユニットも敵を圧倒できるほどの力がなく,どうにもならないという事態に陥り,結局は最初からやり直すハメになってしまった。本作では,ユニットを育成を計画的に進めるのは重要ということである。
なかなか厳しい難度
ターン制ストラテジー上級者向けか!?
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ステージは全部で15あり,対戦用のオリジナルマップが使われている。ルールは自分の拠点となる城を守りつつ,相手の城を占領すれば勝ちというもの。ターン制ストラテジーなので,プレイ時間は長めになる。1ターンの制限時間を無制限〜20分の間で設定できるものの,ある程度は時間に余裕を持ったプレイが必要になるようだ。
インターネットプレイに関しては,ロビーに接続しても人がまるでいなくて閑散としているのが寂しいところ。野良プレイは難しそうなので,対戦用の友人を確保するほうがよさそうだ。
ローカライズに関しては,丁寧に作業がなされているようだが,フルHD(1920×1080ドット)の解像度だと,文字がかなり小さくなる。解像度を1600×900ドットまで落として遊んでみたら俄然,判別しやすくはなったので,読みにくくて苦労している人は解像度設定を調節してみよう。
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筆者にターンベース制ストラテジーの経験が少ないだけかもしれないが,ミッションによってはかなり厳しいターン数制限があったり,大量の敵に襲われて対処に困るというような場面があったりで,難度「簡単」でも結構な歯ごたえがある。歴戦のシミュレーションファンなら楽しめるだろうが,この難しさには,ちょっと閉口する人もいるかもしれない。
またスクリーンショットを見れば分かるように,最近のゲームにしては演出も控えめで,派手なゲームに見慣れた目から見ると,どうしても地味な印象はぬぐえない。攻撃魔法などは,それなりに見応えはあったが。
というわけで,本作はターン制ストラテジーに遊び慣れた人向け作品だ。この手のジャンルが好きな人なら,本作の歯ごたえのある内容に満足できることだろう。
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- 関連タイトル:
エルヴン・レガシー【完全日本語版】 - この記事のURL:













































