業界動向
Access Accepted第442回:欧米での発売から1年が経過したPlayStation 4とXbox One
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Sony Computer EntertainmentのPlayStation 4と,MicrosoftのXbox Oneが北米で発売されて,1年が経過した。販売台数としてはPlayStation 4の優勢が伝えられているが,Xbox Oneも本体価格を値下げするなど,果敢な追い上げを図っている様子。北米ではいよいよホリデーシーズンが始まり,年末に向けた両社の販売合戦にメディアやユーザーの話題が集まりつつあるが,今週はそんなPlayStation 4とXbox Oneの北米における現状をまとめておきたい。
アメリカは,いよいよホリデーシーズンに突入
アメリカでは,11月第4木曜日の“感謝祭”の翌日が正式にホリデーシーズンの初日になる。場合によっては年間売上の50%以上を感謝祭からクリスマスまでの5週間に挙げる業種もあり,本連載でもこの季節になるたびに書いていることだが,各商店が軒並み黒字になるため,感謝祭の翌日は俗に「ブラックフライデー」と呼ばれている。
日本でもたまに報道されるようだが,お目当ての商品に向かって我先に店内を駆けまわける人々をテレビなどで見るにつけ,アメリカ経済を支える個人消費の大きさを痛感する。もっとも,最近はオンラインショッピングが一般化していることもあり,この年中行事も昔ほどではないようだ。
ちなみに,オンラインショッピングを好む筆者は,どんなに家族に懇願されようが,なるべく人混みには近寄らないようにしている。
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さて,昨年(2013年)のホリデーシーズンに北米で発売されたPlayStation 4とXbox Oneも,早いもので1年が経過した。本連載の第418回「欧米ゲーム市場におけるXbox Oneの現状」でもお伝えしたとおり,2013年のブラックフライデーには,PlayStation 4が210万台,Xbox Oneが200万台の販売を記録し,さらにクリスマスの直後には,PlayStation 4が420万台,Xbox Oneが390万台になるなど,互角の戦いを演じていた。
しかし,その後は次第に差がつき始め,Sony Computer Entertainmentが2014年9月末までの販売台数が1350万台に到達したことをアナウンスのに対して,Microsoftは2014年1月に390万台のセールスを発表して以降,具体的な販売台数を明らかにしてこなかった。
もっとも最近,「Xbox Oneがほぼ1000万台の販売に到達しようとしている」ことをMicrosoftがアナウンス,セールスが好転していることがアピールされている。依然として差はあるものの,PlayStation 4とXbox Oneともに,発売後1年以内に1000万台に到達するというのはゲーム史上初で,特記すべきだろう。現在までの累計で1億5500万台という記録を持つPlayStation 2でさえ,発売年の販売台数は920万台だった。
以下,そんなPlayStation 4とXbox Oneの現状をお伝えしよう。
PlayStation 4:社運を背負うハードウェアの勢い
スタートダッシュを決めた後,この1年間を順調に推移したSony Computer Entertainment。現在アメリカでは,「Grand Theft Auto V」や「The Last of Us Remastered」をバンドルしたパックが399ドルで販売されているが,Xbox Oneのような直接的な値下げは行っていない。最新コンシューマ機は今や「ライフスパンは10年」といわれており,そんな長期間の展開を見据えて,短期的な値下げは行わない余裕があるということだろう。
需要が鈍化したスマートフォン事業の苦戦により,厳しい経営を迫られるソニーだが,そんな中,映画事業とPlayStation 4の予想外の黒字は明るい話題だ。同社にとって,久々の大ヒット商品だといえる。
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マルチプラットフォームで発売されるタイトルを,ライバルに優先してプロモーションする「エクスクルーシブマーケティング」は,Xbox 360時代のMicrosoftの得意技だったが,Sony Computer Entertainmentは,この手法をPlayStation 4において盛んに利用するようになった。例えば「Destiny」でMicrosoftに差をつけたのは(敵失ではあるが),本連載の第435回「Xboxと香水。独占的マーケティングについて考える」でも紹介したとおりだ。
日本ではPlayStation 4のエクスクルーシブタイトルとしてリリースされた「Destiny」だが,両機種向けに販売された地域の合計では,Xbox Oneの倍近い成績を収めているという。
すでに1000万本以上というヒット作になった「Call of Duty: Advanced Warfare」は,シリーズ従来作に準じてMicrosoftのエクスクルーシブマーケティングタイトルであり,北米でのセールスはXbox Oneの後塵を拝しているものの,その差は数万本。グローバルではXbox Oneの252万本に対して,PlayStation 4は393万本とされており,たとえ十分な宣伝活動ができなくとも購入してくれるユーザー層があることを証明している。このことは,今後のパブリッシャとのタイトル交渉でも有利に働くはずだ。
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機能や操作にあまり不満は聞かれず,リモートプレイなどのユニークな機能もゲーマーに対する大きなアピールポイントだろう。しかし,PlayStation Networkに関してはシステムソフトウェアに当初から多くの不具合が報告され,その対処も遅れ気味だ。
「DRIVECLUB」は2014年10月上旬のローンチ時点でサーバーに多くの問題を抱えており,あの「SimCity」を思わせるほどゲーマーの批判を浴びてしまった。8月に「テクニカルな問題」を理由に発売を延期していただけに,十分なテストが行えなかったのか疑問が残る。
Sony Computer Entertainmentは,12月6日〜7日,北米では初のファンイベントとなる「PlayStation Experience」をラスベガスで開催し,新作発表や,2015年の発売を予定しているさまざまなタイトルをプレイアブル展示するという。
エクスクルーシブタイトルやインディーズ作品など,今後も充実したラインナップに期待できそうで,今やソニーの社運を担うといえるPlayStation 4の未来を占うこのイベントは要注目だ。
Xbox One:果敢なプライスダウンで
ホリデーシーズンに狼煙を上げろ
発売前から「エクスクルーシブタイトルで差別化する」ことを表明していたMicrosoftだが,結果としてPlayStation 4に差をつけられた理由の1つに,ライバルより100ドルも高い価格設定があったのは間違いない。そのため,ローンチから半年後の2014年5月には,ファンや業界の声に押される形で,早くもKinectを同梱しないバージョンを100ドルダウンの399ドルで発売することになった。クリスマス商戦に先駆けた11月2日からは,さらに期間限定で50ドルの割引を行うなど,かなり積極的な価格攻勢に出ている。
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Microsoftが当初期待をかけていたエクスクルーシブタイトルについて言えば,Electronic Artsの「Titanfall」が注目されたとはいえ,全体的には魅力的な作品に欠けていたと言わざるを得ない。とはいえ,「Forza Horizon 2」や「Halo: The Master Chief Collection」,そして「Sunset Overdrive」といった作品の登場により,そうした状況も変化しつつある。
また,「Assassin's Creed IV: Black Flag」や「Call of Duty: Ghost」などで,PlayStation 4版に比べて低い解像度が性能差として指摘されていたが,こちらも「FIFA 15」「Grand Theft Auto V」,そして「Alien: Isolation」などの新規タイトルで1080pが実現されるなど,着実に改善されているようだ。
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ほぼ毎月のようにシステムやXbox Liveのユーザーインタフェースのアップデートを行うなど,Microsoftのサポートは高く評価されている。しかし,例えば「Halo: The Master Chief Collection」のマッチメイキングで,酷いときは1時間以上もゲームに参加できない問題が報告されるなど,修正すべき点はまだあるようだ。
いずれにせよ,価格調整などを含めてファンの声を真摯に聞く姿勢はよく伝わってくるので,今後の反撃に期待したいところ。「Halo 5」や「Quantum Break」などの注目作品が,2015年をどのように盛り上げてくれるのだろうか。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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