レビュー
“第3世代X25-M”こと最新Intel SSDの性能をPCとPS3で検証する
Intel SSD 320
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現行のX25-Mは第2世代品で,店頭では「X25-M G2」と呼ばれることもあることを踏まえると,SSD 320は“X25-M G3”的な製品だともいえるだろう。
では,このSSD 320がX25-Mからどのあたりが変わったのか。SSD 510のときと同じく,PCとPlayStation 3(以下,PS3)を使って検証してみたい。
25nmプロセスの採用で容量は最大600GBに
公称シーケンシャルライト性能も大幅に向上
SSD 320が持つ最大の特徴は,搭載するNAND型フラッシュメモリの製造プロセスが25nmであるということだ。第2世代X25-Mや,上位モデルたるSSD 510だと同34nmなので,より微細化したプロセス技術が採用されていることになる。つまり,SSD 320では消費電力および製造コストの低減,そして大容量化の期待が持てることになるわけだ。
消費電力の検証結果は後ほどお伝えするとして,まず容量はSSD 510が最大250GB,X25-Mが最大160GBのところ,最大600GB。最小の40GBまで6モデル用意され,1000個ロット時の単価はそれぞれ下記のとおりとなる。
- 600GBモデル:1069ドル
- 300GBモデル:529ドル
- 160GBモデル:289ドル
- 120GBモデル:209ドル
- 80GBモデル:159ドル
- 40GBモデル:89ドル
もう1つ,性能面では,X25-Mと同じSerial ATA 3Gbpsインタフェースに留まりながら,シーケンシャルライト性能が大幅引き上げられている点もトピックとなるだろう。公称最大シーケンシャルリード/ライト性能もまとめてみたので,参考にしてほしい。
- 600GBモデル:リード270MB/s,ライト220MB/s
- 300GBモデル:リード270MB/s,ライト205MB/s
- 160GBモデル:リード270MB/s,ライト165MB/s
- 120GBモデル:リード270MB/s,ライト130MB/s
- 80GBモデル:リード270MB/s,ライト90MB/s
- 40GBモデル:リード200MB/s,ライト45MB/s
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その外観は「第2世代X25-Mとそっくり」と説明するのが最も手っ取り早いだろう。本体の厚みは7mmながら,2.5mm厚のプラスチック製スペーサーが標準で取り付けられ,一般的な2.5インチHDDと同じ高さを確保する点や,製品情報シールの貼られ方も同じだ。SSD 510と同様に,自作PC市場を意識したのか,容量の表記がより分かりやすくなっているが,違いはその程度である。
![]() SSD 310とX25-Mの外観比較。ラベルに型番と容量が大きく記載されており,仕様がわかりやすくなったといえる。Intelロゴは青から黒に変更 |
![]() 接続インタフェースにも変更はなく,どちらもSerial ATA 3Gbps対応となる。当然だが,物理的なコネクタ位置も同じである |
![]() 本体カバーを取り外したところ |
カバーを外すと,基板の表と裏に10枚ずつ,計20枚のIntel製NAND型フラッシュメモリチップ「29F16B08CCMEI」となるを搭載するのがまず目に入る。気になるコントローラはこちらもIntel製で,型番は「PC29AS21BA0」。――そう,X25-M G2が搭載するのと同じものである。先ほど,SSD 320シリーズはSerial ATA 3Gbps接続に留まると紹介したが,肝心のコントローラが変わっていないのだから,さもありなんといったところか。
なお,組み合わされるキャッシュメモリはHynix Semiconductor製のモバイル向けSDRAM「H55S5162EFR」が1枚。容量は64MBだ。X25-Mでは32MBだったので,倍増したことになる。
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表1は,今回入手したSSD 320の容量300GBモデル(以下,SSD 320 300GB)を,X25-Mの160GBモデル(以下,X25-M 160GB)や,SSD 510の250GBモデルおよび120GBモデル(以下順にSSD 510 250GB,SSD 510 120GB),そして市場において人気の高いSerial ATA 6Gbps対応SSDから,Lexar Media(Micron Technology)製「Crucial RealSSD C300」の64GBモデル(以下,C300 64GB)で,スペックを比較してみたものだ。
先ほど,SSD 320では,シーケンシャルライト性能がX25-M比で引き上げられているとしたが,SSD 320 300GBでX25-M 160GBの2倍というのは注目に値しよう。SSD 320の160GBモデルだとシーケンシャルリードが270MB/s,同ライトが165MB/sなので,そこまでのインパクトはないものの,しかし確実にスペックが引き上げられているのも確かである。
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SSD 510と同じ環境でテストを実施
Playstaton 3でのパフォーマンスも比較
では,実際に公称値どおりの性能は出るのか。今回はSSD 510のレビュー時とまったく同じシステムを表2のとおり用意し,テストすることにした。比較対象は,表1に示したSSDと,回転数7200rpmの一般的なHDD代表として用意したWestern Digital「WD Caviar Blue」(型番:WD5000AAKS)。要するに,SSD 510のときに用いた機材全部だ。X25-M 160GBだけは,先のテスト時と異なる個体でテストすることになったため,すべてのテストをやり直すことにしたが,それ以外だと,流用できるベンチマークスコアは積極的に流用しているので,この点は注意してほしい。
また,先のレビュー記事でもお伝えしたとおり,用いているマザーボードは,B2ステッピング版の「Intel P67 Express」チップセットを搭載するモデルだ。そのため,SSD 320のテストにあたっては,Serial ATA 6Gbpsに対応した0番ポートに接続してテストしている。こちらも併せてお断りしておきたい。
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スコアを流用する都合上,テスト内容もSSD 510のレビュー時と基本的には変わっていないが,今回はFuturemark製の総合ベンチマークテスト「PCMark Vantage」(Build 1.0.2)も追加している。
念のため説明しておくと,まず基本的なストレージ性能の検証には,定番の「CrystalDiskMark 3.0」(Version 3.0.1a)を利用。システムドライブを別途用意し,SSD 320などのテスト対象製品をDドライブとして,データサイズ1000MBのテストを2回実行。より高いほうのスコアを採用することにしている。
次にPCMark Vantageだが,ここでは「HDD Test」を用いた。システムドライブを別途用意した点などはCrystalDiskMark 3.0と同じだ。
もう1つPC環境では,SSD 320をシステムドライブとして用いたときの性能を見るべく,OSをセットアップして,その起動時間もチェックすることにした。OSの起動時間を3回連続で計測し,その平均をスコアとする。
そして,表2に示したテスト環境とは別に,PS3のストレージとして用いた場合のメリットを検証すべく,筆者私物の薄型PS3「CECH-2000A」で,「グランツーリスモ5」(以下,GT5)を使ったテストも行う。
GT5自体のインストールと,ゲームの起動,そして「オータムリング・ミニ」「筑波サーキット」のロードに要する時間をそれぞれ3回計測し,いずれも平均値をスコアとした。
X25-M 160GBからライト性能が格段に向上
リード性能は微増といったところか
以下,本文とグラフ中において,Serial ATA 6Gbps/3Gbpsの「Serial ATA」を省略し,グラフ中では括弧書きで続けることをお断りしつつ,グラフ1,CrystalDiskMark 3.0のシーケンシャル性能検証結果から見て行こう。
特筆すべきはやはりシーケンシャルライトである。SSD 320 300GBは,X25-M 160GBより116%ほど高いスコアを発揮しており,ほぼ公称値どおりの結果が得られた。また,シーケンシャルリード性能も「X25-M 160GBより若干高い」というスペックどおりの結果に落ち着いている。
3Gbps接続時だけで比較すると,SSD 510 120GBよりSSD 320 300GBのほうがスコアで上回るというのも面白いところだ。SSD 510の実力を真に発揮させたければ,6Gbps接続が必須,というわけである。
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続いてグラフ2はランダムリード性能の結果となる。512KBとファイルサイズが大きい場合,SSD 320 300GBは,X25-M 160GBに12%ほどの差を付けられてしまっている。さすがに4KBとファイルサイズが小さくなるとその差はなくなるが,NCQを活用するRandom Read 4KB QD=32では,その差が31%とさらに広がる結果となった。
SSD 320とX25-Mで搭載するコントローラが変わっていない以上,コントローラと25nmプロセス世代のNAND型フラッシュメモリとの間にある相性か,はたまたファームウェアか,あるいは両方が原因なのかもしれない。いずれにせよ,こういう結果になった点は憶えておく必要がありそうだ。
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グラフ3はランダムライトのスコアとなる。ランダムライトでは,512KBのファイルサイズにおいて,SSD 320 300GBがX25-M 160GBより107%高い,2倍以上というスコアを叩き出しているのが目を引く。4KBや4KB QD=32では若干下回るものの,総合的にはライト性能の大幅な引き上げが図られていると述べて問題ないだろう。
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PCMark VantageのHDD Test総合結果がグラフ4だ。その詳細は表3に別途まとめてあるが,ここではSSD 300 320GBが非常に高いスコアを示した。というか,SSD 510シリーズのスコアが奮わない。なぜこういう結果になったのかは正直分からないのだが,SSD 510シリーズのレビュー時に指摘した「ランダムアクセス4KBおよび4KB QD=32におけるスコアの落ち込みやブレ」が影響している可能性はあるかもしれない。
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グラフ5は,Windows 7の起動に要する時間を比較したもの。SSD 320 300GBはSSD 510やC300にかなわない結果ではあるものの,X25-M 160GBと比べるとわずかに高速化している。起動時間が高速化した理由は,公称スペック的にもリード性能が引き上げられていることによるものだと考えるのが妥当だろう。
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グラフ6とグラフ7はGT5をHDDにインストールしてプレイするにあたってのパフォーマンスを比較したもの。グラフ6はまさにそのインストール所要時間,グラフ7はゲームの起動とコースのロード所要時間をそれぞれまとめたもの。SSD 510のレビューでも指摘したように,HDDに対するSSDの効果はハッキリ表れているものの,SSDごとの性能差は見られないのが分かる。PS3で使う限り,SSD 320 300GBでもオーバースペックとなってしまうようだ。
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プロセスルールの微細化の恩恵により
消費電力はX25-Mから低下
最後に消費電力のテストを実施しておこう。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,PCの起動後30分間放置した状態を「アイドル時」,CrystalDiskMark 3.0実行時に最も高い値を記録した時点を「CrystalDiskMark 3.0実行時」として,各時点におけるシステム全体の消費電力を測定した。
その結果はグラフ8のとおり。アイドル時こそX25-M 160GBと大差ないSSD 320 300GBだが,CrystalDiskMark 3.0実行時の消費電力は前世代品から確実に下がっているのが分かる。プロセスルール微細化の効果はあると述べていいだろう。
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大容量モデルは性能&使い勝手の両面で魅力大だが
最大のハードルはその価格
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最近のオンラインRPGクライアントだと,HDDのボトルネックを隠蔽するように少しずつ読み出したり書き込んだりするように動くものが多く,いわゆるゾーニングがほとんどないため,それほど性能面の向上は感じられないはず。ただ,大容量化によって,これまでだとHDDにインストールしなければならなかったような大型のクライアントなども積極的にSSDへ“突っ込める”ようになることはメリットになりそうだ。
課題は1にも2にも価格だろう。300GB,600GBという容量はたしかに魅力的だが,予想実売価格は順に4万7000円前後,10万円前後。万人向けとはとてもいえない。かといって160GB以下のモデルだとX25-Mとそれほど変わらないわけで,このあたりがなんとも悩ましいところである。
- 関連タイトル:
Intel Solid-State Drive - この記事のURL:




































