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“ガンパレ”芝村裕吏氏,初の書き下ろし長編小説「マージナル・オペレーション 01」が刊行。芝村的世界観の原点に迫るロングインタビュー
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印刷2012/02/25 00:00

インタビュー

“ガンパレ”芝村裕吏氏,初の書き下ろし長編小説「マージナル・オペレーション 01」が刊行。芝村的世界観の原点に迫るロングインタビュー

アフガンで出会ったタリバンの男達……

現代の若者が命を賭けられる金額はいくら?


4Gamer:
 本作は主人公の一人称視点で書かれていますが,主人公は常に淡々とした語り口で状況を語っていて,非常にドライな性格ですよね。

芝村氏:
 最近のリアルな若者って,こんな感じだろうなと。オタクで熱い作品や熱い展開が大好きな人は多いんですが,実際に話してみるとかなりドライで淡々としているんですよね。

4Gamer:
 確かに,そういった傾向はあるかもしれませんね。

芝村氏:
 私の若い頃は,もっと自分勝手な物の見方をしていたと思うんですよ。でも,最近の若者って凄く冷静じゃないですか。飲み会で話したりしていても,「フラットな物の見方ができて凄いな」なんて思います。それで思わず「そこまで冷静に物を見てしまったら,死にたくならない?」なんて聞いちゃうこともあるんですけど,それに対しても冷静な返答が返ってきたりして……。

4Gamer:
 ただ単に,物事に対する関心が薄くなっているというのもあるかもしれませんが……。

芝村氏:
 自分の世界の話なのに,まるで自分とは関係ないことのような話し方をするんですね。これを社会の病理みたいに言う人もいますけど,ある意味凄いことだなと思っています。私の若い頃と比較すると最近の20代って犯罪率もどんどん下がっていますし,ちゃんとリスク計算ができているんでしょう。
 なので,今の日本の若者は海外へ出たら成功すると思うんですよ。それだけ冷静に物事を考えられるんですから。

4Gamer:
 そのあたりって,本作の主人公と通ずるものがありますねぇ。

芝村氏:
 はい。それで主人公をどういう場所に配置すれば活躍するのかを考えてみたら,今の配役と相成ったわけです。最近の若者を極端な状況に置いたら,きっと強いんですよ。ゲームなどで鍛えられているので(笑)。

4Gamer:
 そういった特異なキャラクターの中で,メインヒロインのジブリールはなんというか……まさに天使ですよね。ジブリールちゃんマジ天使。

芝村氏:
 中盤まで出てこないので,シャウイーとソフィアの2人がメインヒロインになるんじゃないかと不安になりますよね。ジブリールが出てきて「安心した!」という声をよく聞きます。みんな,そんなに救いを求めていたのかと。

4Gamer:
 自分はシャウイーとソフィアも好きですけど,やはりいかにもヒロイン的なキャラクターが出てきてくれるとホッとしますね。

芝村氏:
 なかなか面白いのが,私よりだいぶ年齢が上の人に読ませても,同じような反応や感想がいただけたということでした。日本にどれだけ少女文化が根付いているのかがよく分かりますね。また,物語に「ここはこうなるべきだ」という様式美が存在するのも実感できましたよ。

4Gamer:
 様式美ですか。具体的には,どういった部分でしょう?

芝村氏:
 ヒロインというのは健気でなければならない,とか。暗黙のルールですね。海外ではそういったものはほとんど存在しないのですが,やはり日本ではパターンというものが大切なのだなと思いました。

4Gamer:
 なるほど。しかし,さすがにジブリールはリアルな知り合いを参考にした,ということはないですよね……?

芝村氏:
 直接のモデル……というのはいませんね。ただ,本作の舞台は,私がアフガニスタンへ行ったときに訪れた場所がモデルになっているんですよ。そこで子供を持つ父親のような立場の方とよくお話をしたので,それが元になっているのかもしれません。

4Gamer:
 本当にいろいろな経験をされているんですね……。アフガニスタンにはなぜ行こうと思ったんでしょうか。

芝村氏:
 昔から,どこからどこまでが餃子の国で,どこからどこまでがラビオリの国なのかという疑問を持っていたんです。イランではラビオリ,中国では餃子……ということは,その間にあるアフガニスタンに行けば,きっと何かが分かると思って実際に行ってみたんですよ。

4Gamer:
 凄まじい探求意欲ですね。

芝村氏:
 ですが,いざ入国しようとしたらビザが取れないと……。それでも行きたかったので,とりあえずパキスタンに入国したんですよ。パキスタンの北西部には,トライバルエリア(※アフガニスタン国境地帯)という場所があって,ここはほぼアフガニスタンによる自治地区となっていました。そこに住むパシュトゥーン人の方にご挨拶したところ「そっちに親戚がいるから送り届けてやるよ」と言っていただけまして。その時,危険だからという理由で護衛を2人付けてもらえたんです。

4Gamer:
 映画みたいですね……!

芝村氏:
 そのとき護衛に付いてくれた2人は,イスラム教徒だと言っていたにも関わらず,普通に酒を飲んでました。

4Gamer:
 えええ!

芝村氏:
 宗教上の問題で酒は飲めないだろうと思っていたので,私自身は国境に入るときに酒類をすべて捨てていたんです。「ラビオリと餃子のラインを確かめるまで酒は飲まん!」という覚悟だったのですが……。

4Gamer:
 せっかくの覚悟が無駄に(笑)。

芝村氏:
 で,どうして普通に飲んでいられるのか聞いてみたら「なんでイスラム教徒が酒を禁じられているのか,君には分からないだろう」と言われ,さらに「本当に酒を禁じているのなら,飲んだ人間がいても“酒を飲んだ”という事実は分かるまい」なんて言うんです。そこはなるほど,と思いました(笑)。

4Gamer:
 というか,そのエピソードも本作に生かされていますよね。主人公がジブリールの村に訪れるシーンで同じような展開を見た覚えが……。

芝村氏:
 実はそうなんです。たとえアフガニスタンでも,キリスト教徒には信仰を証明する証明書のようなものがあって,それを持っているとお酒を買えるんですよ。だから,あちらではキリスト教徒の友人からお酒をもらっていたりするそうで。
 世の中,分かりやすく色分けされた社会というのは全部嘘で,一歩で色がガラッと変わるような世界が続いているんだなと思いましたね。

4Gamer:
 なんとも,深いお話ですね……。

芝村氏:
 そして実は,そのとき護衛をしてくれたのが,のちに大事件で話題になる前の“タリバン”の人達だったんですよ。彼らにはまるで荒れたようなところもなく,それこそチップなども一切受け取らないほどで。

4Gamer:
 実際に触れ合ったからこそ,分かることですね……。

芝村氏:
 ビン・ラディンが捕まったのも,そのトライバルエリアでした。あそこだったらみんなが匿ってくれるでしょうし,逃げ込んだ理由がよく分かります。あそこの人達は,アメリカが好きだの嫌いだのは関係なく,信仰を重んじているんですよ。

4Gamer:
 ちょっとしんみりとした話になってしまいましたね……。そういえば向こうの女の子は,実際にジブリールのような感じなのですか?

芝村氏:
 そうですね。まず,男の人とまともに話さないし隠れちゃいます。そういう意味では,否が応でも妄想が膨らむんですよ!

4Gamer:
 萌えますね……!

芝村氏:
 女性に関してですが,アフガニスタンへ行く前は,父親が子供を自分の都合で婚約させたり,物のように扱っているという印象が強かったんです。けれど,実際に現地の人々に会ってみると婚約もよく考えた末の結果だったりと,事情がしっかり見えてきて。そんな,ちょっと複雑な気分になった出来事も,せっかくだから読者に味わわせてやろうと本作に盛り込んでみました。

4Gamer:
 それにしても,本当に芝村さんのさまざまな実体験が作品に生かされているんですねぇ。

芝村氏:
 そんなことありません(笑)。ちゃんと嘘も織りまぜていますよ! 例えば,民間軍事会社に関しては給料からして嘘です。作中では600万円としてありますが,実際の年収って400万程度なんですよ。それ以下の場合もありますし……サラリーマンの給料とも,そう変わりません。

4Gamer:
 世知辛いですねぇ。

芝村氏:
 それじゃあ日本の若者は命かけられないですよね。だから「君が命を賭けられる値段は?」という題材で若者にリサーチしてみたら「600万円くらい」という答えが多く返ってきて。

4Gamer:
 かなり現実的な金額を提示してくるんですね……。

芝村氏:
 特別に変わった考え方を持っているわけでもない,いたって普通の若者達が,命を懸けられる値段を聞かれて,良くも悪くも時代を反映した数字を返してくることに,私もビックリしました。サラリーマンの平均年収くらいじゃ無理でも,600万くらいならって感覚がすごいなと思います。ただ,もしバブルの頃なら1000万とか2000万だったろうと考えると,「命の相場」もだいぶ安くなっていますね。こういうものも興味深かったので,設定として生かしてみました。

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