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ゲームマーケット出展の注目作をスペインの人気パブリッシャ社長がピックアップ。「ThunderGryph Games賞 in GameMarket2023」レポート
ThunderGryph Gamesは,透明感のある美しいアートワークのゲームで知られる出版社だ。オリジナル作品はもちろんだが,テーマやビジュアルを一新したリメイクも人気が高く,「王と枢機卿」のリメイク作「Iwari」のクラウドファンディングでは38万9552ユーロ(約5700万円)を集めている。
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今回のイベントは,ThunderGryph Gamesの社長であるGonzalo Aguirre Bisi氏が,自分の足でゲームマーケットを巡回して見つけた注目作を紹介しつつ,“ThunderGryph Games賞”を決定するというものだ。
ステージに登壇したGonzalo氏は,ゲームマーケットについて「ずっと前から興味を持っていました。日本語が分からないのにカタログを買って,友人に頼んで気になったゲームを買ってきてもらったこともあります」とコメント。前日には同人ブースを中心に見て回り,その活気に驚いたそうだ。
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Gonzalo氏が最初に紹介したゲームは,X Ur HourSによる3人プレイ専用のセットコレクションゲーム「COPET」。箱に小さな丸い穴が空いているのが特徴で,トークンを箱から“振り出す”ギミックが取り入れられている点が目に留まったようだ。
なお,各作品の写真のキャプションにはゲームマーケット公式サイト内の紹介ページへのリンクを掲載している。詳細が知りたい人は参考にしてほしい。
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続いては,ドイツゲーム喫茶B-CAFEの「KANBAN Menu」が紹介された。カフェを経営するオーナーとなって人気メニューを開発するカードゲームで,今回のイベントに出展されたのはゲームバランスが調整された2nd Edition(第2版)にあたる。
初版がリリースされたのは2019年だった。テーマとマッチしたオシャレなアートワークで話題を集めた作品だが,そうした良さがGonzalo氏に響いたようだ。「日本のゲームデザイナーが扱う作品はテーマが幅広い。その良さをよく発揮した作品だと思う」と,本作をピックアップした意図を語っていた。
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3本目には,PLAY MARKETが出展した「ガブル」がピックアップされた。本作は,最大6つの列に駒を並べて,各列で勲章を奪い合う2人プレイ専用ゲームだ。名作「バトルライン」に近いメカニズムを採用しているが,本作は“列が埋まりきるまで置いた駒が公開されない”というルールが特徴になっている。
Gonzalo氏は「新しいアイデアを出すのは素晴らしいことですが,既存のアイデアを使って新しいゲームを作るのも大切です」「ガブルは馴染み深いメカニズムを用いて,手軽で面白い作品を作ることに成功していると感じました」と,その出来を称賛した。
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続くタイトルは,MOGURA GAMESによる「うんちの背比べ」。カードを使って“うんちトークン”を積み上げ,最上部を占拠したプレイヤーがトークンの山を獲得できる……。パッと見では,ネタ味のあふれる作品だ。
予想外のタイトルの登場に来場者から笑いが漏れたが,壇上のGonzalo氏の面持ちはいたって真剣だった。これもまた,既存のメカニズムを再解釈した作品であり,Gonzalo氏は「このスタイルで新しく感じられるものを作るのは,簡単なことではありません。これはよくできたゲームです」とコメント。第一印象に惑わされずにクオリティを見極める,プロの仕事の一端を垣間見た気がした。
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5本目は,2人専用のトリックテイキングゲーム「PEAS」。10回ぶんの勝負を同時に行うという,独特なシステムを持つ小箱のゲームだ。Gonzalo氏は「箱は小さいけれど,遊んでみるとかなりの奥深さがありました」「遊んでみて,もう1回やりたいという気持ちを強く感じられた」と,感想を語っている。
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6本目に挙げられた「リクレイム」は各自に配られるシートに,カードをめくって得た情報を書き込んでいく“フリップ&ライトゲーム”と呼ばれるジャンルの作品だ。
シートには未開拓の土地が描かれており,プレイヤーはカードに示されたピースでマップを埋めることで領地を広げていく。広げた領地の中にある土地は資源として活用することが可能で,どの土地を資源にするかによって得点効率が変化するメカニズムを採用している。
Gonzalo氏は本作のメカニズムを気に入ったらしく,「このゲームをベースとしたデベロップメント(開発)を行う可能性が高い」と発言した。今後,ThunderGryph Gamesからリクレイムに関連する作品が登場するもしれない。
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最後に,ThunderGryph Games賞に輝いた作品として紹介されたのは,東京ゲームメイカーズの「エレメンタルトランクマン」だ。
エレメンタルトランクマンは,11種類の“精霊コマ”から最大8個を組み合わせてプレイするビルド要素と,コマ自体を振って効果を発揮させるロール要素,宝箱を開封するためにリソースを配置していくリソース管理要素など,複数の独自システムを採用した作品だ。
Gonzalo氏はなかでも“コマを振る”というアイデアに感心したようで,「最初は大丈夫かな? と思いましたが,実際に遊んでみると非常に面白かった」と,新しいシステムに出会った驚きを表現していた。
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Gonzalo氏はゲームマーケット全体の感想として,「この同人文化は絶対に守っていってほしいです」と述べた。出展者には「ぜひ,1つのアイデアにこだわらず,いろいろなデザインコンセプトやアイデアを試してみてください。そうすれば,絶対に良いゲームができますよ」とメッセージを送り,ステージを締めくくった。
ちなみに,ThunderGryph GamesのTwitterアカウントでは,前日(5月13日)に講演を行ったCranio CreationsのSimone Luciani氏と,Gonzalo氏による記念撮影の写真が掲載されている。以下のリンクから講演の記事も合わせてチェックしてほしい。
講演「ボードゲームのデザインとは?」レポート。Cranio Creations開発チームを率いるSimone Luciani氏が語るゲーム開発の考え方とは
アナログゲームイベント「ゲームマーケット2023春」のステージで,Simone Luciani氏による講演“ボードゲームのデザインとは?”が実施された。OKAZU brandの「レイルウェイブーム」のデベロップメントをLuciani氏が担当することも明らかになった,その講演の様子をお伝えする。
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- ライター:蒼之スギウラ
At the Tokyo Game Market in lovely company! I'm already so impressed with how refined is the self-publishing scene here in Japan! Thank you very much @ArclightGames ?? #tokyogamemarket pic.twitter.com/Z45O54tAXn
— Thundergryph Games (@tgryphgames) May 13, 2023
ThunderGryph Games 公式サイト
ゲームマーケット 公式サイト
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