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講演「ボードゲームのデザインとは?」レポート。Cranio Creations開発チームを率いるSimone Luciani氏が語るゲーム開発の考え方とは
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印刷2023/05/17 18:57

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講演「ボードゲームのデザインとは?」レポート。Cranio Creations開発チームを率いるSimone Luciani氏が語るゲーム開発の考え方とは

 アナログゲームイベント「ゲームマーケット2023春」が,2023年5月13日と14日に東京ビッグサイトで開催された。初日には,イタリアで活躍するゲームデザイナーのSimone Luciani氏による講演“ボードゲームのデザインとは?”が実施されたので,その様子をお伝えする。

Simone Luciani氏
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 まずは,Luciani氏がどのような人物なのか,簡単に紹介しておこう。同氏が商業作品のデザイナーとしてデビューしたのは2009年になる。そして,最初に名声を確立したタイトルは,2012年にDaniele Tascini氏との共同で発表した「ツォルキン」になるだろう。

 「ツォルキン」は,マヤ文明の“暦”をテーマにしたボードゲームで,歯車を使った特徴的なコンポーネントが収録されている。単にテーマや外見が特殊なだけではなく,「労働者を複数ラウンドにわたって“放置”することで大きな利益を生み出す」という管理が難しいメカニズムを,「時間経過によって動く歯車」による直感的な表現で実装していることが大きな特徴だ。

画像は「ツォルキン」公式サイトのもの。日本語ルールはDownloadページで参照できる
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 同作を含め,一見すると少し突飛であったり,テーマ優先で複雑そうにも見えるメカニズムを,各要素が有機的につながりあった“ゲーム的なジレンマ”へと組み上げるゲームデザインが,Luciani作品の魅力のひとつとなっている。

 「ツォルキン」以降には,「マルコポーロの旅路」「グランドオーストリアホテル」「バラージ」など,名作を次々にリリース。中量級から重量級ゲームの名手として人気を集め,現在はCranio Creationsの開発責任者として活躍している。

Cranio Creations 公式サイト


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 ステージに登壇したLuciani氏は,まずゲームデザインの原体験を語ってくれた。それによると,Luciani氏は10歳の頃からさまざまなゲームを遊んでおり,さらに当時からルールを改変して遊ぶことが多かったという。

 その後,オリジナルのゲームを作るようになった同氏。新しいゲームを作る際の方法は特に決まっておらず,特定のメカニズムを元に発想を広げていくこともあれば,テーマを元にメカニズムを構築することもあると話していた。
 とはいえ,テーマを再現するためにルールを構築するのはやはり難しいようで,「Darwin's Journey」のメカニズムは3〜4回も作り直したそうである。


 ここで,作り手から見る“重量級”と“軽量級”の違いについて聞かれたLuciani氏は「実際のところ,重量級ゲームの方が作るのは簡単なんです」と語る。
 複数の要素の噛み合いによって成立しているいわゆる“重ゲー”は,数値の調整によってバランスを取ることが可能で,時間をかければ完成までこぎつけられる。しかし,軽量級ゲームは根本的なアイデアの面白さが重視されるため,そのアイデアを見つける方が難しいという。

 しかし簡単だと言うものの,Luciani氏が手掛けてきた重量級ゲームが,相当な職人技で成立しているのは間違いない。本来はどちらも難しい技術のはずだが,重量級ゲームの開発に関する深い知見を持つLuciani氏だからこそ,「アイデアを出すことの難しさ」を重く受け止めているのかもしれない。

「あえてメカニズム(仕組み)とデベロップ(開発)に比重をつけるなら,どういった割合で考えているか」という質問に対して,Luciani氏は7割がメカニズムであると回答した。重量級ゲームにおいても,中核となるメカニズムが重要になるのは変わらないようだ
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 著名なイタリア人ゲームデザイナーは,2人以上の連名で作品を発表することが多い。Luciani氏も,先に挙げた「ツォルキン」や「マルコポーロの旅路」ではDaniele Tascini氏と,「グランドオーストリアホテル」ではVirginio Gigli氏,「バラージ」ではTommaso Battista氏と共同でゲームを開発している。

 作家性が強く出ることの多いボードゲームのデザインにおいて,タッグで作品を作るのは難しそうだ。Luciani氏もそう考えているようで,タッグを組むことの多いDaniele Tascini氏とゲームを作る際には,“喧嘩”もよくするらしい。しかし,そのアイデアの衝突によって生まれる新しい発想が,ゲームを面白くするのだという。

講演の後半には,Luciani作品の日本語版を多数出版する「テンデイズゲームズ」の店長・田中 誠氏が登場。よりマニアックな質問をLuciani氏に投げかけていた
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 イタリア人のデザイナーが,タッグやチームで作品を発表するケースが多い理由だが,イタリア国内に強固なゲームデザイナーコミュニティが築かれていることが要因として大きいようだ。

 Luciani氏いわく,イタリアには“ゲームデザイナー協会”にあたる組織があり,毎月イタリアの各地で会合が開かれているとのこと。その中では,「自分のアイデアを守ろうとするより,シェアした方が良い物が生まれる」といった考えが浸透しており,それがイタリアのボードゲームシーンに大きな影響を与えているという。

「自分のゲームをリメイクするならどれを選びますか?」という質問には,「ツォルキン」の名前が挙げられた。既に10年以上前のタイトルということもあり,調整したい部分もあるようだ
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 講演の最後には,「横濱紳商伝」や「ユグドラサス」などを手掛けたボードゲームサークル“OKAZU brand”の林 尚志氏が登壇した。そして,林氏が手掛けた「レイルウェイブーム」の商業版開発にあたり,デベロップメントをLuciani氏が担当することが明らかにされた。

 Luciani氏はこの発表について,「林さんのゲームは,私も非常に気に入っています。はじめて日本人デザイナーとのコラボなので楽しみです」とコメントし,今回のステージを締めくくった。

OKAZU brandの林 尚志氏
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ゲームマーケット 公式サイト

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