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TVドラマ「ノーコン・キッド」は,今だからこそ作れた作品。原案・シリーズ構成・脚本を担当した佐藤 大氏とプロデューサーの五箇公貴氏に思いの丈をたっぷり語ってもらった
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印刷2013/11/02 00:00

インタビュー

TVドラマ「ノーコン・キッド」は,今だからこそ作れた作品。原案・シリーズ構成・脚本を担当した佐藤 大氏とプロデューサーの五箇公貴氏に思いの丈をたっぷり語ってもらった

砂原良徳さんによる,徹底した“音”へのこだわり


4Gamer:
 ところで本作の音楽について,砂原良徳さん……いや,まりんさんにはどのようなオーダーをされたんですか?

画像集#016のサムネイル/TVドラマ「ノーコン・キッド」は,今だからこそ作れた作品。原案・シリーズ構成・脚本を担当した佐藤 大氏とプロデューサーの五箇公貴氏に思いの丈をたっぷり語ってもらった
佐藤氏:
 もともと映画を構想していた段階でも,まりんにはお願いしていたんです。それがTVドラマになったときに,あらためてお願いしたら,まりんが「やる」と言ってくれたので,そこからはもう半分以上は任せていました。彼は僕と同い年で,同じものを見てきた人間なので,言いたいことは分かってくれていると思っていましたから。
 各監督ごとの演出意図だとか,ドラマとして必要な調整をするときにも,しっかり話を聞いて合わせてくれたので驚きましたね。打ち合わせの時にそれを言ったら,「当たり前だろ」って怒られましたけど(笑)。

4Gamer:
 心配だったんですか?。

佐藤氏:
 いやもう,「使えない音がいっぱい上がってきたらどうしよう」と,勝手に戦々恐々としていたんですよ。彼の性格や作家性も知っているだけに。でもしっかり画面に寄り添う音を作ってくれました。劇中にかなりぶっ飛んだ話をする場面があるのですが,そこもカッチリと合わせた曲を作ってくれています。
 普段のまりんなら絶対に作らないであろう曲もあるので,ファンは要注目ですよ。

4Gamer:
 では,基本的に音楽に関してはスムーズに進んだんですね。

佐藤氏:
 1984年の曲は,1984年の段階で実在した機材だけで音を出すとか,音へのこだわりはさすがのまりんです。ドラマに合わせて曲を作るだけではなく,ゲームの音とBGMがぶつからないように音の数を減らしていたり。サントラ然としているというか,作品の画に合わせた物を作ってくれています。

4Gamer:
 やはり,映画とテレビドラマの音楽は違うものですか?

佐藤氏:
 まりんは映画音楽を担当したことはあるんですが,TVは今回が初めてで,やっぱり「映画とぜんぜん違う」とは言っていましたね。とくに今回は先にイメージだけを伝えて,画面ができる以前から作ってもらっていたので,苦労をかけてしまいました。それでもまったく外した曲がなくて,どれも素晴らしいできになっています。

4Gamer:
 第1話では,細野晴臣さんの「スーパーゼビウス」も劇中で流していましたよね。あのセンスにもしびれました。

佐藤氏:
 ゼビウスは僕らにとって,すごく重要な作品ですから。ゼビウスが無かったらまりんは電気グルーヴに入っていないでしょうし,僕も脚本家になっていないというぐらいに,さまざまな影響を受けていますから。

4Gamer:
 となると,第1話の題材がゼビウスだったことには,深い意味がありそうですね。

佐藤氏:
 普通に考えたら「スペースインベーダー」や「ブロック崩し」から話を進めるべきだと思うんですが,作品を“僕らのゲーム史”として考えると,やはり始まりはゼビウスだろうなと。第1話で流したスーパーゼビウスは,ゲームとテクノミュージックの融合の開始地点ですから,自分自身のキャリアの原点でもあるんです。だから,絶対に流したかったんですよね。この作品が,日本版24アワー・パーティ・ピープルだという理由の一つが,それなんです。
 ゲーセンの中では,細野晴臣さんのBGMが掛かってもおかしくないですよね。そこで音楽を作るといえば,やっぱりまりんしかいないと。

4Gamer:
 YMOカルトキングですし。
 そういえばオープニングテーマ曲がTOKYO No.1 SOUL SETの「One Day」ですが,こちらもアレンジをまりんさんが担当していますね。

佐藤氏:
 今回はTOKYO No.1 SOUL SETが上げてきた曲にまりんが音を足して戻して,それをソウルセットが完成させるという手法で作られています。だからこそ,まりんのエッセンスも加わり,曲がしっかりと“ノーコン・キッドの曲”だ! と思えるものになっていると思うんです。

4Gamer:
 そういえばまりんさんが過去に在籍していた電気グルーヴの石野卓球さんは,TOKYO NO.1 SOUL SETの川辺ヒロシさんとInKというユニットをやっていましたが,まりんさんはありませんでした。

佐藤氏:
 そうなんです。One Dayは,いい具合に川辺サウンドと,まりんサウンドのミックスになっていて,「プロだなぁ」と感心させられました。今回のコラボって,どちらも40歳を過ぎているからこそ実現できたことだと思うんですよね。

4Gamer:
 あ,なんとなく分かります。

佐藤氏:
 20代では提案するだけで怒られるレベル,30代では検討はしてもらえてもやっぱり断られたでしょう。でもお互いがいい感じに年をとって,お互いを認め合っているからこそ,あのOne Dayの素晴らしいサウンドが生まれたんだなと。

4Gamer:
 渡辺俊美さんとBIKKEさんの声も含めて,1990年代のTOKYO NO.1 SOUL SETだ! という感じに仕上がってる気がしました。懐かしくて新しいというか。

佐藤氏:
 ゲームとTOKYO NO.1 SOUL SETの間に親和性があるわけではありませんが,サブカルの象徴として高野文美というキャラクターを描くにあたって,やはり彼らの存在は外せませんからね。
 最初に上がってきた曲を聴いた瞬間,「川辺さん,やってくれたな!」と思いましたよ。BIKKEさん,俊美さんの歌の感じも含めて,まさに「これこれ!」という,聞きたかった曲に仕上げてもらえました。

4Gamer:
 ゲーム好きでなくとも,1990年台のサブカルや音楽が好きだった人にとっては,テーマ曲がフックになりそうですね。

佐藤氏:
 ええ。年齢層的には,テレ東深夜ドラマ枠の視聴習慣が付いているお客さんに対しても,一つのサービスになっていると思います。実際,音楽の発表をしたときにちゃんと話題になってくれましたし。音楽をきっかけに作品の味方になってくれた人は,かなり多かったように感じます。
 題材的には,世界の半分を敵に回すことになるので,やっぱり味方は多いほうが良いですよ(笑)。

4Gamer:
 音楽に限らず,スタッフリストは見る人が見ると,本当に驚くべき豪華な布陣ですよね。

佐藤氏:
 そうですね。グラフィック・マニピュレータやTARといったストリートファッションブランドも,そんな“味方”としてチームに入ってくれています。今回は僕の中の開けられる引き出しを全部開けて,味方を作品に引き込みましたから(笑)。

4Gamer:
 佐藤さんの人脈をフル稼働させたんですね。

佐藤氏:
 実はそれは僕だけではなくて,五箇さんをはじめとしたスタッフの皆が,さまざまな部分で本来の立場以上に動いてくれた結果なんですよ。


10年前でも未来でもない,今だからこそ作れた作品


4Gamer:
 そういえば,今期は同じテレビ東京で「大東京トイボックス」が放送されていますね。こちらもゲームに関するドラマですが,やはり意識してしまいますか?

佐藤氏:
 大東京トイボックスの原作は読まずに,ノーコン・キッドの脚本を書きました。一回だけ気になって単行本を開いてみたんですが,ちょうどそれがゼビウスの話で,すぐに本を閉じましたよ。
 もちろん撮影が終わったあとに全巻読みましたが,ホント「先に読まなくてよかったぁー!」という感じです(笑)。

4Gamer:
 作品が面白いと,どうしても影響を受けてしまいますからね……。

佐藤氏:
 先日,作者のうめさん達とお話させてもらう機会があったんですが,本当に話が合ったんです。いろいろな部分で「やっぱりそうだよね!」と意気投合できました。
 結果として,プレイヤーのストーリーであるノーコン・キッドと,クリエイターのストーリーである大東京トイボックスは,うまく住み分けができているので,二人で「被らなくてよかったね」なんて話してましたね。

画像集#017のサムネイル/TVドラマ「ノーコン・キッド」は,今だからこそ作れた作品。原案・シリーズ構成・脚本を担当した佐藤 大氏とプロデューサーの五箇公貴氏に思いの丈をたっぷり語ってもらった

4Gamer:
 具体的には,どういった話で盛り上がったのでしょう?

佐藤氏:
 やっぱりゼビウスや「ドルアーガの塔」に対する見方は僕達と同じです。あの時代を生きていた人達ならではの見識は,誰にでも通じるものだと思いました。
 いや本当に,金曜と土曜の同じ局で良かったです。おかげで世間では「テレ東はどうかしてる」なんて言われていますが。

4Gamer:
 同じ時期にゲームを題材にしたドラマが二つも放送されるなんて,空前絶後の出来事でしょうね。

佐藤氏:
 でしょうねぇ。それもうめさんと話しました。でも,このタイミングで二つの作品が同じ局で放送されるのは,むしろ良いことだったと思っています。違う局だと内容を潰し合うことになりかねませんが,同じ局で同じタイミング,かつ内容が同じ方向性を向いている作品ですから。お互いに寄り添って,協力するしかないだろうと。

4Gamer:
 ドラマというメディアがゲームに対してここまで積極的にアプローチをかけることは,過去にありませんでしたからね。どのような効果を発揮するのか実に楽しみです。

佐藤氏:
 あらかじめ覚悟していたんですが,ノーコン・キッドという作品は,ゲームという誰にとっても身近で,かつ熱狂的なファンがたくさんいるものを題材にしているがゆえ,ヘタしたら世界の半分を敵に回すことになると思っています。でも,それを受け止めていく覚悟があります。思ったことはすべて突っ込んでもらって構いません。でも,そこに愛があることだけは,ちゃんと分かってもらえると思っています。
 ファミコン30周年,ゼビウス30周年,バーチャファイター20周年と,いろいろな運や時期や出会いが味方になってくれているからこそ,今,放送できています。そういう意味でもノーコン・キッドは,10年前でも未来でもない,今だからこそ作れた作品なんです。

4Gamer:
 そこに視聴者として立ち会えるのも,ラッキーなことだと思います。

画像集#018のサムネイル/TVドラマ「ノーコン・キッド」は,今だからこそ作れた作品。原案・シリーズ構成・脚本を担当した佐藤 大氏とプロデューサーの五箇公貴氏に思いの丈をたっぷり語ってもらった
佐藤氏:
 ありがとうございます。これは僕とまりんで話したことなんですが,何よりもスタッフ各人がそこそこ人脈を動員できる存在になっていて良かったな,と。オープニング映像で,スタッフとしてまりんと僕の名前が映し出された時には,二人して「うん」と頷いて。ちょっと良い気分になりました(笑)。
 お互い何者でもない人間だった頃から脚本家と音楽家というそれぞれの道を歩み,今は一つのドラマを作るにあたって二人で自分の名前という看板を背負えたわけですから。

4Gamer:
 作品の外側にもドラマが盛りだくさんですね……。
 一方で,「このドラマは俺達がやりたかった!」みたいに悔しがっている人も多そうな気がします。

佐藤氏:
 いるかもしれませんね。そういう人はぜひ,それぞれの“ゲーム史”をバンバン作ってほしいんですよ。映画でもいいし,小説でも,漫画でもいいんです。実際のところ,今は小説が多く出てるじゃないですか。「僕と彼女のゲーム戦争」とか。あれはあれで良いなぁと思います。作品の中で「HALO」なんかをバリバリ遊んでいるのを見ると,羨ましいことこのうえないんですよ。今回は洋ゲーには一切触れられませんでしたから,なおさら(笑)。

4Gamer:
 では,ノーコン・キッドをドカンと成功させた暁には,またぜひとも洋ゲーまで含めて新たな“ゲーム史”を作り上げてください!

佐藤氏:
 そうですね。まだまだ掘れる場所はいくらでもありますから。その時は,またよろしくぜひお願いします。

4Gamer:
 ありがとうございました!


 この記事が掲載されるタイミングでは,第5話の放送を52分後に控えているノーコン・キッド。この先,ますますの盛り上がりが期待できそうだ。
 まだ見たことがないという人や,残念ながら視聴可能地域に住んでいないという人は,「テレビ東京オンデマンド」が各種動画配信サービスを通じて第1話から有料配信しているので,そちらを利用してみてほしい。
 なお,2014年2月4日には,Blu-rayボックスおよびDVDボックスのリリースも決定しているので,こちらもお楽しみに。

「ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜」Blu-ray・DVD 発売情報
セル DVD-BOX 15,200 円(税抜)6 枚組(5DVD+1CD)/
セル BD-BOX 19,000 円(税抜)4 枚組(3BD+1CD)
発売日:2014 年 2 月 4 日(火)
発売元:「ノーコン・キッド」
製作委員会/販売元:ハピネット

【収録内容】
◎本編全 12話
◎特典映像(予定):
■撮影の舞台裏に潜入!ゲーセンわたなべ30年間の軌跡を描いたメイキングムービー
■キャストスペシャルインタビュー&オフショット集
■シークレットゲスト特集
■あなたのお家がゲーセンに!珠玉のゲーム映像集
■番宣スポット集 ほか
◎封入特典(予定):特製ブックレット、オリジナルサウンドトラック CD
※商品のデザイン、仕様は予告なく変更となることがございます。

「ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜」紹介ページ

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