イベント
作り手が作り手のゲームを遊び,情報を共有し合う1日――100人近くの個人開発者が集ったクローズドイベント「ゲムダンもくもく百宴祭」密着レポ
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本イベントは,一言でいえば「開発者同士が,お互いのゲームを遊び,語り合うための忘年会」だ。
インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」,開発者が集まり制作に励む「インディーゲームもくもく会」,そしてインディーゲーム開発者向け試遊会「CREATORS'PLAYGROUND(くりぷれ)」。この3つが合同で開催している。
今年6月以降,各地で開催されている「くりぷれ」と同じように,開発者たちが互いのゲームを遊び,熱く語り合う場となった。
インディ開発者のためのイベント「CREATORS'PLAYGROUND」をレポート。開発者が共に遊び,語り合う大切さを確認できた場
インディーゲーム開発者に向けたイベント「CREATORS'PLAYGROUND」(くりぷれ)が,2025年6月8日に神奈川県の横浜デジタルアーツ専門学校で開催された。開発者がお互いのゲームをプレイして交流を図った,本イベントの様子をお届けする。
「東京ゲームダンジョン10」レポート(前編)。インディー? 同人? 小規模開発? ――ここでは区別なんて要らないと思う
個人や小規模チームによるゲーム展示会「東京ゲームダンジョン10」が,2025年11月9日に東京にある都立産業貿易センター浜松町館で開催された。今回も前編と後編に分けてレポートをお届けする。前編では,筆者が気になった作品や驚かされた作品を紹介していこう。
- キーワード:
- PC
- OTHERS:展示会/見本市
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- ライター:高橋祐介
会場となったのは,渋谷スクランブルスクエア内にオフィスを構えるMIXI本社。大規模な再開発工事が続く渋谷駅周辺を抜け,エレベーターで一気に高層階へ。
会場フロアの窓の外には,スクランブル交差点や109,ミヤシタパーク,文化村通りといった「いかにも渋谷」という景色が一望できる。
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そんな多様な価値観が交差し,つねに新たな熱気が渦巻くこの街に,個人や小規模チームでゲームを作る開発者約100人が集まっていた。
なお今回の会場提供は,MIXI社内で社員有志が趣味として小規模なゲーム開発に取り組んでいるサークル活動がきっかけとなり,そのつながりから実現したものだという。
ちなみにイベントのキービジュアルも,同社に所属する菱田志保氏の手によるものだ。
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「未完成」でも大丈夫な,開発者だけの場
東京ゲームダンジョンの主催としてお馴染みの岩崎匠史氏,そして氏とともに「くりぷれ」を共同主催する城雅音 武(しろがね・たける)氏による挨拶のあと,さっそく試遊がスタートした。
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| 岩崎匠史氏。逆光のためどこか「厳かな」雰囲気の写真になってしまった |
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| 「陰キャである我々は,身一つでの交流は難しい。だから作ったゲーム同士で語ろう!」などと会場を沸かせていた城雅音 武氏 |
一般的なインディーゲーム展示イベントとの大きな違いは,会場にいるほぼ全員が「開発者」であること。筆者がかつて他のイベントで取材した相手が普通に会場を歩いていたり,他のゲームを試遊していたりする。本来なら対談の場を設けないと実現しないような顔合わせに出くわした。
たとえば,それはこんな具合だ。
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「魔神少女」シリーズを手がけるNAN-A氏(@INSIDE_SYSTEM)が持ち込んだ試作ゲームを,「Dyping Escape」を制作するヘビサイドクリエイション(@HeaviCre)のたらひろ氏がプレイし,それを「CultureHouse」のフツララ氏(@yasukiwatanabe)が見守る……と,個人・小規模開発のゲームに興味を持っている人ならびっくりするような状況が,そこかしこで自然発生していた。
もくもく会(作る場)と展示会(見せる場)の中間にある,本イベントならではといえる光景だろう。
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続いて,会場で筆者の目を引いた作品をいくつかフラッシュ的にお見せしていく。「8番出口」「都市伝説解体センター」に代表されるような,独特のゲーム体験にフォーカスした作品が目につくようになったのは,最近の傾向かもしれない。
「ファミレスを享受せよ」などのパブリッシングでおなじみ,わくわくゲームズのブースでは,薙沢ムニン氏(@muninmumu)の「淀み海の溺れ歌」が展示されていた。
深海で生きる海魔の娘が,人間の娘に恋をする,異種族愛を描く作品となるらしい。
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Rabbit Soft Worker'sのコウサギ氏(@in_the_bunny)によるタイピングRPG「LOST WORD Ep2」は,いにしえのMSX turboR FS-A1GT実機とCRTモニタで展示されていた。往年のアーケードゲームを彷彿とさせる脱衣要素もある。
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「里山のおと」は「里山のおと 春さんぽ」(@satoyamanote)として,ポイントクリックのアドベンチャーに進化していた。スタートアップ創出事業「創風」にも採択され,期待が高まる。
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「DEATH A LIVE」は「百宴祭」のキービジュアルを描いた菱田氏も関わるゲーム。ストーリー要素もあるリズムゲームになる予定らしい。
ライブ中はノーツを叩くだけでなく,客席から投げ込まれるクスリや刃物(!)を回避する必要が。なかなかアンダーグラウンドなノリだ。
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社会人ゲームクリエイター集団・エンタロピーゲームズ(@enterropy_games)は,「ビートシャウト マンション」を展示。部屋に隠れたオバケに声かけ(音声入力)して隠れ場所を暴き,リズムゲームの要領でやっつける。「どこかな〜? 出ておいで〜」などと芝居っ気を出して遊ぶとより楽しい。
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ハネダ氏(@hanedaSK)は「こっくりさんのいうとおり」を出展。1人称視点で,こっくりさんをやめられない状況,そして教室で異変が起こるというシチュエーションが,不穏かつゾクゾクするストーリー体験を予感させる。
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3人称パルクールアクションの「Fall in Flowers」を手掛けるBuri氏(@buri_83)は,後述するライトニングトークで効果音の作り方に関する発表もしていた。確かに「高所から落下して敵をやっつける」ゲームにおいて,効果音が果たす役割は大きい。
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Neji. Games(@nejidotgames)による「駅前のカフカ」は,キーボードでコマンドを打ち込んでプレイするタイプのアドベンチャー。なんとも言葉にしにくい,いい雰囲気だったが,カフカ的な不可解で不条理な展開が待っている?
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OCTBUZZ(@OctBuzz)の協力&裏切りアクション「ZUBASH!」は,実はMIXI社員たちのサークルの作品だった。4人プレイでひとしきり盛り上がったあと,SNS「mixi2」のプロデューサー・岩野成利氏も関わっていたことを知りびっくり。
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3Dアクション(プラットフォーマー)と楽器を奏でるような楽しさを兼ね備える「MeloMisterio -play your melody-」(@MeloMisterio)。シンプルにアクションとしての面白さも増し,期待が高まる。
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「Non Eternals」の作者asiram氏(@asiramasiram)は,試遊する人の様子を見たり,話を聞きつつメモをとったりしていた。制作者同士の試遊会であることを役立てていた様子だ。
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会場を回っていて感じたのは,出展者たちの普段とは違う,どこかリラックスした表情や声のトーンだ。
一般の来場者やメディアの取材も詰めかける展示イベントでは,予期せぬバグや不具合の発生は開発者たちにとって大きな「恐怖」。万全を期したビルドを展示できるよう,その日に向けた開発と準備を進めていく。
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しかし「ゲムダンもくもく百宴祭」の空気はそれとは異なる。なにせ,この日は会場にいる全員が開発の苦労を知る“仲間”だ。
本来なら外部には見せないような段階でもここでは安心して展示できるし,調整中のビルドや実験的なプロトタイプもむしろその段階だからこそ見せようという人もいたかもしれない。
もし不具合が起こっても「なるほど,この処理で止まるんですね」などと,裏側の処理を察して会話がはずんだり,解決策を共有できたりする。これもクローズドな試遊イベントの価値のひとつだろう。
実は東京ゲームダンジョンも,会の終了後に交流会を設けたり,開発者自身が壇上で作品をプレゼンする機会を作るなど,開発者同士の活発な交流を模索してきた経緯がある。
城雅音氏はそんな岩崎氏の姿勢に感じるものがあり,その負担を少しでも分かち合うため協力しているそうだ。
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知見を共有するライトニングトーク
会の後半では,開発者による自作の紹介や,開発のヒントが詰まったライトニングトーク(5分〜10分弱で終わるショートのプレゼンテーションや講演)も行われた。
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口火を切ったのは岩崎氏。トークの内容はXの東京ゲームダンジョンのアカウント(@TG_Dungeon)で行っている動画投稿について。SNSでの情報発信において,文字だけでは弱いと感じ,ショート動画を活用しているという。
氏はCM制作会社出身のキャリアを活かし,加工可能なフリー動画に字幕をつける方法で,コストを抑えつつ認知を広げている。ゲームの広報や告知を行う場合,動画の活用は視野に入れるべき時代かもしれない。
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「日本のデジタル赤字にブチ切れネキ」篇#大阪ゲームダンジョン https://t.co/HoetaYpezI pic.twitter.com/rQAC13168V
— 東京ゲームダンジョン | 25年11月9日(日)、東京・浜松町でインディゲーム展示会を開催 (@TG_Dungeon) December 11, 2025
「Ramen://protocol」の上下行氏(@jyoge_kou)は,本業で使用するアンケート分析の手法を用い,試遊版を遊んだ人の反応から,さまざまな分析を行っていた。
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- ラストに登場するボスを倒せた人は,ゲーム自体も面白いと回答しやすい
- 作品を面白いと回答した人は,UIなどの問題を指摘してくれる率が高い(まさに愛の鞭)
などなど,そもそもアンケート項目を適切に「デザイン」しておき,有益な情報とノイズをしっかり分離していたとのこと。
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「百宴祭」に込められた願い
イベント名に冠された「百宴祭」という言葉には,主催側のちょっとしたこだわりがあるという。
近年,世間では「忘年会」という言葉にどこかネガティブ,あるいは義務的な印象が漂うこともある。そこで開発者たちが純粋に交流を楽しみ,一年の労をねぎらい合う場にしたいという願いを込めて,この「百宴祭」なる名前が生まれたそうだ。
場所が公民館でも,コンベンションセンターでも,渋谷の高層オフィスでも,そこに集う開発者たちの「何かを作りたい」「誰かを楽しませたい」という思いは変わらない。ここで交わされた会話や手応えは,次の制作や次の出展へと確実につながるはず。
来たる2026年も,こうしたコミュニティが日本のインディーゲームシーンをより豊かにしていくだろう……そんな期待を共有できた一日だった。
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【タイトル出展者】
acey014,作っちゃうおじさん,Paradox_Toybox,松本ゲカイ,SketchyCeviche,sigeo,Amagata,hanedaSK,E月,jyoge_kou,まさごみ,白火,yuusuke_takeuchi_96,びわ,rokushou66,ドトエ,ookumaneko,mqtsuo02,doko,ZeF_games,だいきち,あるぅ,masa,柏ヰハヤト,KoujiOhno,col18a_memo,tori,pocgamez,やしへい,Buri,StudioMoraGames,nonuple9,asiram,pickee,コウサギ,KoOtani,INSIDE_SYSTEM,たらひろ/ヘビサイドクリエイション,take,N-Kbys_FCEI,MBDF,ShugoTANAKA / 田中,futurala,udonpa,aot89p,tsuranuki_games,9ja93bunE,きまぐれ絵かき,わくわくゲームス,Aritake,konohe12345,kani_crabray
最後に,12月27日に「マイドームおおさか 1階 展示ホール(A)」で開催される「大阪ゲームダンジョン」についてもお伝えしておこう。
初の関西圏での開催となる同イベントは,18歳以下は終日無料(小学生以下は保護者同伴が必須)で16:00以降の入場は無料など,若いゲームファンや未来のゲーム開発者を応援する施策も続けている。インディーゲーム制作者の熱気を肌で感じられる場となっているので,興味のある人は参加を検討してほしい。
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大阪ゲームダンジョン
開催日時 :2025年12月27日(土)12:00〜17:00
会場施設 :マイドームおおさか 1階 展示ホール(A)
〒540-0029 大阪市中央区本町橋2番5号
入場前売券:PassMarketにて販売中
入場料金 :1000円(税込)
※18歳以下は終日無料,小学生以下は保護者同伴が必須
※16:00以降の入場は無料
※2025年12月26日13:20,掲載後の主催側からの要望により,該当箇所を一部削除,修正を行いました
- 関連タイトル:
講演/シンポジウム - この記事のURL:


























































