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ボードゲームのお祭り「すごろくや祭 2018」が開催。会場で行われたボードゲームにまつわる講演の内容をレポート
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印刷2018/08/09 16:22

イベント

ボードゲームのお祭り「すごろくや祭 2018」が開催。会場で行われたボードゲームにまつわる講演の内容をレポート

 2018年8月5日,東京浅草橋の東京卸商センターにて,ボードゲームの老舗ショップである「すごろくや」が主催するイベント,「すごろくや祭 2018」が開催された。
 当日は多くの参加者が会場を訪れ,さまざまなゲームで遊んだり,ショップで新作ゲームや限定グッズなどの買い物をしたりと,イベントを楽しんでいた。

会場は多くの参加者が。女性や親子連れも多く参加しており,老若男女がさまざまなゲームを楽しんでいた。あまりの盛況ぶりに,プレイスペースが廊下まで広げられたほど
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 また会場では,ゲーム研究家の草場 純氏,ドロッセルマイヤーズの渡辺範明氏,「婚活ボードゲーム会」などを主催するニシヤマエリカ氏の3名による,アナログゲームの講演も開かれた。本稿では各講演の内容をまとめてお伝えしよう。


知られざる伝統ゲームの発掘とその魅力

草場 純氏(ゲーム研究家)


 ゲームマーケットの創設者として知られる草場氏は,各地で伝わっている伝統ゲームの魅力について語った。伝統ゲームというのは,地方地域のみで伝わっている「ごいた(石川)」「ゴニンカン(青森)」「投扇興(東京)」などのゲームを指したものになる。
 これら伝統ゲームには,1つ1つ独特の魅力があり,何百年も遊び続けられた結果として,システムとしては純粋化されているものも多く見られるという。

 例えば,フランスやイタリアなどに伝わる伝統ゲーム「クク」は,配られた1枚のカードの数字で勝負するという単純なルールだが,1度だけカードをほかのプレイヤーと交換するチャンスがある。そこに,交換を拒否できる特殊能力を持ったカードなどが加わることで,シンプルながらも戦略性を持ったゲームになっているのだ。

 地方の小さい地域でのみで広まっている伝統ゲームはまだまだ多く,最近知られるようになった「ごいた」も,全国的に知られるようになってからまだ10年ほどしか経っていない。プレイ人口が少なくても,500年以上遊ばれ続けているゲームもあったりするので,そのようなゲームをまだまだ探しているという。

手遊び「青山墓地」を参加者と一緒に遊んでみた。これは簡単な歌と手踊りをしつつ,最後にはじゃんけんをするというもの。ただの「じゃんけん」あってでも,リズムを持った手振りをつけることにより,小さい子とも遊べるなど,また別の楽しみ方が生まれている
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どんな感じ?ボードゲームのお仕事

渡辺範明氏(ドロッセルマイヤーズ)


 ゲームデザイナーでもあり,ボードゲームの通販ショップも経営している渡辺氏は,ボードゲーム業界にあるいろいろな仕事の紹介を行った。この講演は席がすべて埋まるほどで,ボードゲーム業界の仕事について興味を持っている人の多さを物語っていた。

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 渡辺氏はまず,国内におけるボードゲームの市場規模についての私見を語った。
 長年この市場を見続けてきた渡辺氏は,情報発信などをするコアなボードゲーマーが約3000人,欲しいゲームがあれば購入する層が30万人,機会があれば遊ぶというライト層が100万人ほどいると予測しているそうだ。

 そして,ボードゲームの現状の市場規模は,推定30〜40億円。ただ,大手メーカーのゲームやおもちゃの市場規模には届いておらず,まだまだ広がる余地もあるという見解だ。
 そういった市場規模を踏まえたうえで,ボードゲーム業界おける仕事を大きく「つくる系」「売る系」「遊ぶ系」と分類し,それぞれ説明を行った。

◯「つくる系」
 「ゲームデザイナー」「グラフィックデザイナー」「プロデューサー/編集者」「ゲームメーカー経営」など,ボードゲームの開発に携わる職種が「つくる系」となる。

・「ゲームデザイナー」
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 ゲームの箱に名前がクレジットされているゲームデザイナーは,この業界の顔のような存在である。日本特の特色として,同人のゲームデザイナーがとても多いそうだ。
 というのも日本は,ゲームマーケットやコミックマーケットなどの影響で同人文化が強く根付いており,個人や少人数で「ゲームを作る」ということがやりやすい土壌になっているという。

 しかし,“プロ”のゲームデザイナーは数名しかいない。またそういう人達も,市場規模が桁違いのTCG製作に関わっていたり,TRPGの制作会社に所属していたりと,近いジャンルの仕事と兼業している人が多いとのこと。

 ゲームデザイナーになるのに必要な要素としては,どんなゲームを作るかを考える「企画力」,メカニクスのアイデアの「発想力」,組み立てていって商品クオリティまで上げていく「論理的実行力」が挙げられた。また,既存のゲームのメカニクスを構造的に理解する能力を持っている人のほうが,すでにあるゲームのシステムや構造を参考にせず,同じような物を一から作れるので,より向いているとのこと。

 そして,とにかく「ゲームの実物を作る」こと。コンポーネントが貧弱でも,ゲームさえつくればそれを商業化できる可能性もあるので,どのような形でもまずは完成させることが大事だそうだ。
 ただし,ゲームデザイナーとして継続的に活動するのは難しい面もある。商業デザイナーとして活動するなら,作家性よりも発注元の要望に応えられる器用さの方が重視されることもある。

・「グラフィックデザイナー」
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 カードや箱など,ゲームを遊ぶためのコンポーネントのグラフィックスデザインを行う人は,ゲームデザイナーと同じぐらい重要だという。

 デジタルゲームであれば,シナリオ,キャラクターイラスト,音楽という総合演出が必要だが,演出についてはミニマムな形になっているボードゲームであっても,グラフィックスデザインはデジタルゲームと同様に大切な要素とのこと。
 ちなみに,“グラフィックデザイナー”は“イラストレーター”であるとは限らないそうだ。カードに数字や記号だけが書かれている,イラストの無いゲームも存在しているが,それをゲーム的に見やすく配置したりするのも,グラフィックデザイナーの仕事だ。グラフィックデザイナーがイラストレーターを兼ねていることも多いので,このあたりは勘違いされやすいという。

 最近は作られるボードゲームの数が多くなっていることもあり,グラフィックデザイナーの需要も高まっているそうだが,一方でボードゲーム専業のグラフィックデザイナーは,ほぼいないとのことだった。

・「プロデューサー/編集者」「ゲームメーカー経営」
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 商売としてゲームを作るときに必要なのがこの2つの職種だ。ゲームデザイナーが個人で作ったゲームは「個人が面白いと思う物」であることが多いので,それを世の中の多くの人に興味を持ってもらうようにするため,題材を変えたり,ルールをわかりやすくする提案を行ったりする。そのため,この仕事をやるには,ものづくりと商売のバランスを考える力が必要だそうだ。

 プロデューサーに関しては,名乗っている人が少ないだけで,ゲームメーカーやショップなど,ゲームを販売しているところにたくさんおり,ゲーム担当者が事実上そうなっていることが多いとのこと。
 これらの仕事をするには,すでにある会社に入る以外にも,自分で会社を立ち上げるという選択肢がある。一見すると大変そうに見えるが,インディーズゲームが売れた結果,会社化を行ったケースもあるので,選択肢としてあり得ないわけではない。

○「売る系」

 ボードゲームの流通に関する仕事。「ボードゲームショップの経営」「ボードゲームショップのスタッフ」「輸入バイヤー/翻訳スタッフ」の紹介が行われた。

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 どの仕事においても,スタッフとしてのスキルが高い人は重宝されているという。お客に聞かれたときに,的確なゲームを紹介ができるのがベストだそうだが,そのためには数多くのボードゲームを経験している必要があり,その知識を仕事レベルまで持っていくのは,なかなか難しい様子。
 輸入バイヤー/翻訳スタッフもなり手は少ないが,英語が話せればすぐにできるというわけでもないので,こちらも難度の高い仕事になっているとのこと。

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○「遊ぶ系」
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 ボードゲームを遊ぶ場を提供する仕事。最近はやりの「ボードゲームカフェ/プレイスペース」や,そこで働くスタッフ,ゲームを紹介する「ボードゲームジャーナリスト」,そして「ゲーム情報サイト」などが取り上げられた。
 ボードゲームカフェとプレイスペースのスタッフは,お客にゲームのルール説明をする必要があり,ショップスタッフとは少し方向性が違うとのこと。
 ジャーナリストやサイト運営は,まだ仕事としては小さいが,ボードゲームの情報が多くなってきているので,情報の取捨選択も行われ始めているとのことだった。

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縁結びのプロが伝える ボードゲームがつなぐ縁のお話

ニシヤマエリカ氏


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 すごろくやで「婚活ボードゲーム会」を主催したり,さまざまなボードゲーム会のアドバイスなどを行っている,ナレーターのニシヤマエリカさんは,婚活ボードゲーム会でオススメのゲームを紹介した。


 通常の婚活パーティは,男女ともに自由に話をするというスタイルが多いが,婚活ボードゲーム会ではゲームで遊ぶことをメインにしているそうだ。会話が主体となるコミュニケーション系のゲームなどを中心に遊ぶので,知らない男女でも自然に会話が生まれるという。

・「クク21」
草場氏の公演でも紹介された「クク」の発展型。ドキドキ感が味わえるのがオススメとこと。ニシヤマさんの会では,カードを交換するときにプレイヤーの名前を呼んでもらうようにしており,コミュニケーションが取りやすくなっているという。

・「スパイフォール」
正体隠匿系のゲーム。裏切り者はばれないよう,みんなの会話に入る必要がある。とにかく会話が多いので,プレイヤーの考えが見えやすい。

・「わたしの世界の見方」
答えをカードで出す大喜利ゲーム。感性が近い人が分かりやすいとのこと。

・「適当なカンケイ(Qui Paire Gagne)」
いろいろな種類のカードを分けて,同じように分けたプレイヤーが居れば勝ち,というゲーム。こちらも自分に近い感性の人を見つけられるのでオススメだという。

・「かたろーぐ」
カタログを使って好きなものをランキング付けするゲーム。婚活ボードゲーム会用に,デートスポットカタログを作って遊んでいるとのこと。

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・「テレパシー」
 婚活ボードゲーム会でよく遊ばれる「テレパシー」というゲームが実際に行われた。これは,主催が決めたテーマに合った“もの”を参加者がそれぞれ1つ書き,同じものを書いた人が1人だけという状態を目指すというゲーム。この講座を見ていた草場氏と渡辺氏でテレパシー成立するというミラクルも起きた。


会場内の様子


 最後に会場内の様子を紹介して本稿の締めとしたい。すごろくや祭はすでに終わっているが,すごろくやでは毎週のようにイベントが行われているので,興味があれば足を運んでみてはいかがだろうか。

参加者は持ち運びできる「どこでもスツール」を椅子にして,ゲームを楽しんでいた。ダンボール製だが普通の椅子とまったく変わらない座り心地で,折りたたむとコンパクトに持ち運びできる
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会場内には「お邪魔者」や「コードネーム」など,さまざまなゲームを模したフォトスポットが用意されていた。また,すごろくやだったりボードゲーム関係のキャラクターだったりを描いてくれるボディペイントのコーナーも
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数多くのゲームの貸し出しが行われ,会場内で遊べるようになっていた。ゲームはプレイ人数や傾向で分けられていて,選びやすく工夫されていた
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スモール出版から出ている,アナログゲームに関する本を読めるコーナーも。「クイズコーナー」は,8月5日に行われたイベント「ボードゲーム王選手権」の予選問題を体験できた。参加者の中には,マニアックな内容に悪戦苦闘している人も
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ボードゲームメーカーも出展していた。アークライトは新作「ニコニコの森」などを出展。ホビージャパンは話題の「アズール」の巨大版がプレイできるようになっていた
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「すごろくや」公式サイト

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