現地時間の2017年4月20日から22日まで,クロアチア南部にあるアドリア海沿岸の都市
ドゥブロヴニクでPCゲーム技術のカンファレンス
「REBOOT Develop 2017」が開催されている。
「REBOOT Develop」には,一般のカンファレンスに比べて大きな特徴がある。それは,世界的なリゾート地の高級ホテルを会場として利用し,参加者相互の交流を重視していることだ。
場所ばかりでなく登壇者も豪華で
「Serious Sam」シリーズや
「The Talos Principle」(タロスの原理)を作った地元クロアチアのCroteamでCTO(Chief technology officer)を務める
Alen Ladavac氏がオープニングセレモニーの基調講演を行い,
「This War of Mine」を作ったポーランドの11 bit StudiosやスウェーデンのNordic Gameなど,東欧,北欧からの登壇者も多い。
さらに,
Chris Taylor氏や
Robin Finck氏(Nine Inch Nails/Guns N'Rosesのギタリスト)が登壇するほか,日本からは
五十嵐孝司氏(ArtPlay),
須田剛一氏(グラスホッパー・マニファクチュア),
SWERY氏(White Owls)の3氏がセッションを予定している。
ポーランドのCD Projekt REDが開発した「The Witcher」シリーズの高評価や,ベラルーシのWargaming.netの世界的な成功を挙げるまでもなく,東欧におけるゲーム開発は「こんな場所でも作られている」などというレベルをとうに超え,「東欧は世界有数のハイレベルなゲームデベロッパが密集する地である」という状況に変化しているし,現在もその状況は前進し続けている。
早朝5:00の浜辺
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(左)登壇したRobin Finck氏によるサービスショット。(右)浜辺側から会場となるホテルを見るとこんな感じ。天気があまり良くない
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ドゥブロヴニクってこんな場所
さて,普段なら,「会場となるドゥブロヴニクはこんな街」レポートを地元の博物館の紹介と合わせてお届けするところなのだが,今回は諸般の事情により博物館レポートはお休みしたい(改装工事中で入れなかった)。
ということで以下,ドゥブロヴニク旧市街の様子とオープニングセレモニー,そしてAlen Ladavac氏の基調講演の模様を写真を中心にお届けしたい。
ドゥブロヴニク旧市街編
ドゥブロヴニクの旧市街は,海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のロケ地であると共に,映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のロケに使われることが発表されている。街はこじんまりとしているが美しく,世界中の多くの観光客を惹き寄せている。
ドゥブロヴニクは古代ローマ(あるいはそれ以前)から海洋交易の拠点として発展してきた街で,14世紀〜19世紀初頭まではラグーサ共和国として独立,地中海の覇者であったヴェネツィア共和国のライバル的存在だった(
「Europa Universalis」シリーズのプレイヤーなら,「ラグーサ共和国」の名前にピンとくるはずだ)。
だがドゥブロヴニク旧市街は,ユーゴスラビアの崩壊とそれに続く内戦で,1991年から1992年にかけてセルビア・モンテネグロによって包囲され,激しい攻撃を受けた。当時すでに世界遺産に指定されていた旧市街は数千発にのぼる砲弾を受け,多くの市民が犠牲となり,また少なからぬ建物が破壊された。
戦後,旧市街は再建され,現在見られるような美しい街並みが復元されている。
旧市街に入る大きな門のうちの1つ。まさに城塞都市といった面持ち。ちなみに城壁の上にも登れるが,料金が必要
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(左)出城的な城塞も残っている。(右)とにかく壁が高い
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(左)これを抜けたら宝箱がある部屋にたどり着けそうな小道。だが,先にあるのは宝箱ではなく児童公園。(右)旧市街に対する攻撃と,その被害の模様が記録されている
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映画のロケ地になるのも納得の異世界感
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(左)地図上では,街の区割りは比較的キレイな碁盤の目状になっている。ここはメインストリート。(右)メインストリートに対して狭い路地が直交する
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(左)聖ヴラホ教会。(右)遠くに見えるのがドゥブロヴニク大聖堂
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山肌が街のすぐそこまで迫り,遠近感を失いそうになる。山の上まではケーブルカーが通っているほか,徒歩で登るルートも存在する。ちなみに「徒歩で登ろうかと考えたんだけど,ケーブルカーにしたよ」とスタッフに言ったら「徒歩!?」みたいな顔をされた
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城壁の外にあるマリーナからの風景
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(左)城壁沿いには,こんな感じの細い道が続く。(右)(おそらく)野良猫。旧市街では結構な数の猫の姿を見る
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(左)「これは,敵が待ち伏せしてる感じのデザインですね」と同行者に感想を述べるダメな大人とは筆者のこと。(右)バリアフリーを目指したらしき板が写真右に渡されている
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なかば迷子気味になりながら歩いた先には,なんとバスケットボールのコートが。世界遺産のど真ん中でバスケット!
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「我々は今,階段を降りているのか,それとも家の屋上を歩いているのか,どっちなのか?」的な状況
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(左)古い大砲が飾りとして残されていたりする。(右)ケーブルカーで山を登る
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手前の山を越えると,その奥に見える山はボスニア・ヘルツェゴビナ領
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山頂には,戦闘の跡も生々しい建物が残されている。内部は戦争博物館になっている
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山頂からは旧市街がミニチュアのように見える
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オープニングセレモニー&基調講演編
開会式に先立ち,REBOOTオーケストラによる演奏が行われた
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(左)開会式ではホールが満席になり,立ち見も出る状況に。(右)開会の挨拶をする,主催のDamir Durovic氏
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CroteamのAlen Ladavac氏
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上にも書いたように,初日の基調講演にはCroteamのCTOであるAlen Ladavac氏が登壇した。その概要を書けば,Ladavac氏はまず,「世界で最初の映画を見た観客が,迫り来る映像の列車を避けようとしたが,今,VRの世界で同じことが起こっている」と述べた。そして「今のVRはかつてのSF作家が描いた技術には劣るかもしれないが,月旅行がそうだったように,アーティストが抱いたビジョンは(次第にその完成度を上げつつ)現実になっていくことがある」と続ける。
そして,「実際のところ,ゲーム開発者は仕事中ずっとゲームを遊べるわけではないし,プライベートジェットを持てるほどの金持ちにもなれないし(例外が1人ぐらい思いつくが),e-Sportsの選手が勝ち取るほどの名誉も得られない。じゃあ何のために我々はゲームを作るのか?」と会場に問うた。
「しばしば
『ちゃんとした仕事』と認められないゲーム開発だが,ゲーム開発の現場で育っている技術は,世界的に見ても最先端の技術であることが多い。また,物語の分野においても,ゲームは非常に先進的な技術を切り開いている」とLadavac氏。「我々はプレイヤーに対し,これまで体験したことのない何かを届けようとしている。我々の人生は何を求めるかではなく,何を与えるかによって決まる。プレイヤーにより多くの驚きと幸福を伝えたい」と述べて,基調講演を締めくくった。
というわけで,いよいよスタートする「REBOOT Develop 2017」。これから興味深いセッションやニュースをお伝えしていくので,ぜひ楽しみにしてほしい。