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子ども時代に触れた「ポケモン」が科学への入り口に。学術誌「Nature」,シリーズ発売30周年を特集
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シリーズの原点となる「ポケットモンスター 赤・緑」は,1996年2月27日にゲームボーイ向けタイトルとして発売された。本作は日本のゲームクリエイター田尻 智氏が,子どもの頃に熱中していた昆虫採集から着想を得て生み出した作品で,その世界観は生態学や化石学,進化論,生物多様性研究,さらには教育分野とも深い関わりを持つものとなっている。
記事によれば,現在世界各地で活躍している科学者の中にも,子どもの頃にポケモンのゲーム,アニメや映画,さらにはトレーディングカードゲームに触れた経験が,科学への興味を抱くきっかけになったと語る人が少なくないことが紹介されている。
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米国イリノイ州シカゴのフィールド自然史博物館で,化石魚類や初期四肢動物の研究に携わる学芸員補佐のArjan Mann氏もその1人だ。Mann氏は子どもの頃にテレビアニメを通じてポケモンに触れたといい,「現実の動物を知るより前に,動物や博物学とは何かという考え方に影響を受けました」と語っている。
同博物館では2026年5月22日から特別展が開催予定で,ポケモンとそのモデルとなった古生物の化石を比較展示するという。例えばシリーズ作品に登場する「プテラ」は,翼竜プテラノドンなどをモチーフとしており,2014年に発見されたある翼竜の属名は,プテラの英語名「Aerodactyl」にちなんで命名されたという。
カナダのグエルフ大学で研究を行うSpencer Monckton氏も,ポケモンに親しんで育った科学者の1人だ。Monckton氏は,ポケモンを集める体験は昆虫学者の仕事とよく似ていると語り,「ゲットだぜ」という感覚は,実際の標本採集にも通じるものがあると指摘する。また,ポケモンを分類して図鑑を完成させていく要素は,分類学者の仕事そのものに近いとも述べている。
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そのうちの1種は「馬やドラゴンの鼻先のように突き出した」細長い顔を持つことから,人気ポケモン「リザードン」の英語名にちなんで「Chilicola charizard」と名付けられている。
ポケモンは教育分野にも影響を与えている。2002年にイギリスで実施された,4歳から11歳までの子ども109人を対象とした調査では,子どもたちは地元の野生動物よりも多くのポケモンの名前を覚えていることが明らかになった。この結果は,現代の子どもたちが自然から離れつつある状況を示すものとして研究者の注目を集めた。
その後2010年には,この研究結果を受け,ポケモンから着想を得たカードゲーム「Phylo」が開発された。食物連鎖を構築して安定した生態系を作りつつ,相手の生態系を妨害することでポイントを競うという内容だ。
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さらに記事では,ポケモンが粗悪な学術誌,いわゆる「ハゲタカジャーナル」のチェック体制を試すための「おとり調査」にも利用された例が紹介されている。
2020年,国立台湾大学の昆虫学者薛馬坦(Matan Shelomi)氏は,こうした学術誌に対してポケモンの名前を多数盛り込み,さらに架空の人物であるオーキド博士(Samuel Oak)を共著者として記載した論文を投稿した(外部リンク)。結果として論文は査読を受けることなく掲載され,それらの学術誌の審査体制のずさんさが明らかになったという。
これまで,現実の生物をモチーフに数多くのポケモンが生み出されてきたが,今では逆にポケモンに由来する名前が現実の生物の学名に使われる例も見られる。ポケモンはもはや単なるエンターテインメントを超え,一種の「共通言語」となりつつあるといえそうだ。
- 関連タイトル:
ポケットモンスター ウインド・ウェーブ - この記事のURL:




















