インタビュー
エンタドライブは「モンスタートレイル オンライン」の第1次テクニカルテストを終えた今,何を考えているのか
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独立系デベロッパによる,国産タイトルということもあって注目を集めている本作だが,そのゲーム内容については,ほとんど明らかにされていない。テクニカルテストでも,ごく限られた要素しか公開されていなかったというのが実情だ。この背景には,どういった事情,あるいは戦略があるのだろうか。
4Gamerでは今回,エンタドライブの久永智之代表取締役に,このあたりを聞くべくインタビューを申し込んだのだが,スケジュールの調整がつかず,メールでのインタビューを重ねる形で応じてもらった。本稿では,その内容をまとめてお届けしよう。以下,久永氏と何度かやりとりを行ったメールに,必要最小限の修正を施して掲載してある。
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「モンスタートレイル オンライン」の第1次テクニカルテストの終了,おめでとうございます。まずは今回,“クローズドβテスト”ではなく,“テクニカルテスト”と銘打った理由を教えてください
■回答(1)
私がエレクトロニック・アーツで,オンラインゲームの始祖たる「Ultima Online」に関わっていた当時と,現在とでは“クローズドβテスト”の意味合いが変化していると考えています。現在,日本でサービス中のオンラインゲームの多くは,海外からのライセンスタイトルであり,それらのほとんどは現地での動作実績(クローズドβテストやオープンβテストはおろか,正式サービスの段階を終えているものも)を持っています。そのため,たいていの場合,クローズドβテストやオープンβテストが,純粋なテストというよりも,マーケティング的な側面が強くなっているのではないでしょうか。
しかし「モンスタートレイル オンライン」は正真正銘,自社開発の新作であり,動作実績やそれに伴うノウハウの集積もできていません。そこで正直に,「内容に対するご意見をいただきながら,動作,通信のテストを行うためのものである」という意味合いを込めて,“テクニカルテスト”としました。
テストに参加していただいた皆さんには,開発の一端を担っていただいているわけですから,今後もテスターやテスター候補となるオンラインゲーマーの皆さんに対して,誠実でありたいと思っています。
■質問(2)
また,テクニカルテストでは,どういった問題が発生しましたか? また,それに対応することはできましたか?
■回答(2)
初日からサーバー障害などのトラブルが発生しました。緊急で対策を行ったところ,さらに別の障害が出てしまったこともあります。
今回のテストは,11:00PMまでと時間を区切って行ったのですが,テスト終了後には連日,夜を徹して原因究明や一時対策などに当たってきました。その結果,完全に修正するまでには至らなかったものの,テスト最終日には一定の安定性を確保できたと考えています。
そういう意味では,初日からテストに参加してくださった皆さんにはご迷惑をおかけしましたが,ご協力いただけたことを非常に感謝しています。テスターの皆さんからのご意見やご要望を踏まえ,今後の導入仕様や導入スケジュールを検討するほか,運営面の課題などを改善していきたいと思います。
■質問(3)
テクニカルテストで,参加者から寄せられた意見などの一部を,一般に公開する予定はありますか?
■回答(3)
いただいたご意見や,その集計結果などは,テストに参加していただいた皆さんや,テスター登録をしていただいた方達だけが閲覧できるような形で情報公開するつもりです(※12月26日に公開)。
とはいえ,ほかの掲示板などに転載される可能性があることと思いますが,こういった形をとることでテスターの皆さんへの感謝と,今後も一緒にゲームを開発していきたいという気持ちを表現できれば……と考えています。
余談ですが,こちらで想像していなかったような遊び方を見つけてくださった方もいて,非常に嬉しかったです。
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「モンスタートレイル オンライン」の内容は,これまで概略しか公開されていません。その理由を教えてください。
■回答(4)
これまで概略だけを公開してきたのは,テクニカルテストなどで寄せられた意見を考慮し,細部を作り込んでいきたいと考えていたからです。ご了承ください。
概略の繰り返しになりますが,基本的には,
(1)モンスターを育成する
(2)モンスターをレースに出場させる(レース中にアイテムを使える)
(3)既定のレース数を走ると,モンスターは引退する
(4)引退したモンスターは,繁殖に上がる
という流れになります。第1次テクニカルテストでは,(3)までしか公開していません。
■質問(5)
「モンスタートレイル オンライン」の面白さは,端的に言ってどのあたりにあるのでしょうか?
■回答(5)
現状のモンスタートレイル オンラインでは,レース時におけるアイテムの効果とモンスターの能力のバランスが,ゲームの遊び方のキモになっています。このバランスを,いかに面白く提案できるかについては,日夜議論を重ねています。ブリーディング(血統)が実装されるまでは,この要素こそが“面白さ”の重要なカギを握っていると考えています。
また,本作の重要なポイントは,「モンスターが育っていく楽しみ」と「プレイヤー同士の繋がりから生まれる発展性」だと考えているのですが,コミュニティについてはまだまだ弱いと感じています。カジュアルなMOタイプのコミュニティのあり方については,今後も模索していきます。
なお,モンスターが生まれ持った能力に応じた育成をしていても,なかなか能力が開花しないこともあるでしょう。それでも見捨てずに育てていくと,ある時期に思わぬ急成長を遂げることもあります。このあたりに楽しみを見いだしてもらえると嬉しいです。
■質問(6)
「モンスタートレイル オンライン」では,モンスター同士を掛け合わせて,子孫を残すことができるそうですが,プレイヤーにはこのシステムでどのように遊んでもらいたいと考えていますか?
■回答(6)
血統(ブリーディング)が正式に実装されると,「プレイヤーが最初に手に入れられるモンスターの卵は,誰かのモンスターと誰かのモンスターの子供」となります。つまり,新しくゲームを始めた段階で,ほかのプレイヤーとの繋がりが生まれているのです。
「友達のモンスターと自分のモンスターを掛け合わせ,自分達でその血統を繁栄させていく」「特定のパラメーター(能力)にこだわって,掛け合わせていく」といったプレイスタイルを,プレイヤーの皆さんが生み出してくれるのを楽しみにしています。
ブリーディングシステムの完全実装までは,少々時間がかかりそうです。しかし,なるべく早い段階でブリーディング要素の一部を実装し,このゲームならではの新しいコミュニティのあり方に,プレイヤーの皆さんには触れていただきたいと考えています。
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引き続き掛け合わせについてです。例えば競馬の世界では,血統をさかのぼっていくと三大始祖というものがあります。「モンスタートレイル オンライン」の血統にも,こういうものはあるのでしょうか?
■回答(7)
実は,「第一世代選出」というものを計画しています。これは,血統(ブリーディング)の第一世代となるモンスターを,プレイヤーの皆さんのモンスターから選ぼうというものです。つまり,ここで第一世代に選ばれると,その後の全モンスターの先祖となるわけです。
これは,初期からプレイしてくださっている方達が,今後のβテストから正式サービス初期に育てたモンスターの中から選出する予定です。正式サービス開始後,なるべく早い時期に行いたいと考えています。
■質問(8)
次回のテストの開始時期や,その内容を教えてください。
■回答(8)
次回のテストは,2008年の早い段階で実施予定ですが,まだ日付は確定していません。次もまた,テストを行うだけでなく,参加者の皆さんからの意見をさらに聞いていきたいと考えています。
テストの段階に応じて,モンスターやコース,トレーナー(キャラクター)は順次追加していくつもりですが,開発現場では現在,第1次テクニカルテストの結果を踏まえ,当初の予定を変更することになってでも,より良いモノに仕上げるべく,開発を見直しています。少しお待たせすることになるかもしれませんが,この方針が,必ずや将来につながると考えています。
今回の久永氏の発言でとくに注目すべきは,第1次テクニカルテストの結果を踏まえ「当初の予定を変更することになってでも,より良いモノに仕上げるべく,開発を見直しています」という言葉だろう。
見直しているのがゲーム内容なのか,プログラムなのかは不明だが,それほど規模の大きくない独立系のデベロッパにとって,スケジュールの遅延は致命的なはず。しかし,それをも辞さない覚悟と決意を持って,本作の開発にあたっているようだ。
最初のテストを,“テクニカルテスト”として行ったことも含め,オンラインゲームという文化,そしてそれを楽しむ人々達に,誠実に向かい合おうという姿勢は見えたと言える。
だが,いくら誠実でも,肝心なゲームの出来は別物……というのもまた確かである(いい人なのは確かだけど異性として魅力がないとか,そういうのに似ているかもしれない)。とはいえ,2008年のエンタドライブ,そしてモンスタートレイル オンラインが,オンラインゲーム業界に何らかの波紋を投げかけてくれることに期待したい。
- 関連タイトル:
モンスタートレイル オンライン
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