連載


今回はヨーロッパのおとぎ話に登場する妖精,ブラウニー(Brownie)について紹介してみたい。
ブラウニーは,主にスコットランドやイングランドで信じられている妖精である。くしゃくしゃの髪の毛に帽子をかぶり,褐色の肌を持つ,身の丈1mほどの妖精だ。
彼らはひっそりと,人間と共に暮らすことがあり,家の住人が寝ている間に掃除をしてくれたり,小麦を刈り入れしてくれたりするが,とくにやることがないと,部屋を散らかしてしまうこともある。基本的に良い妖精だが,若干イタズラ者なのだ。
彼らを題材にした物語は非常に多く残されているが,その中でもとくに知名度が高いのが,グリム童話の「こびとの靴屋」だろう。寝ている靴屋の老職人の代わりに,妖精が靴を仕立ててくれるという話だ。最後は老職人とその妻が,お礼として服や帽子を妖精にプレゼントするのだが,その結果,妖精は二度と姿を見せなくなってしまう。
この童話は広く知られているので,そのストーリーラインをなんとなく憶えているという人も少なくないだろう。最初の説明と照らし合わせてみると,これに登場する妖精の性格/特徴を考慮すると,その正体はブラウニーである可能性が高そうだ。
ゲームにモンスターとして登場することはあまりないので,ブラウニーと戦う機会はまずないであろうし,たとえ敵として目の前に現れても,追い払うのは簡単で,別段,脅威にはならないはずだ。
しかし彼らが本領を発揮するのは戦闘ではなく,いたずらだということを憶えておいてほしい。戦闘で痛手を被ることはなくても,ブラウニーの天才的ないたずらによって,間接的に大きな損害を被るかもしれないのだから。
ブラウニーと仲良く付き合うコツは,彼らの仕事に適切なお礼をすることである。それは,一杯のミルクであったり,バノック(クッキーの一種)だったりする。しかし,これらのお礼をするときには,あるルールを守らなければならない。それは,お礼を彼らに見付けさせること(直接あげてはいけない)と,彼らを束縛してはならないことだ。このタブーを犯すと,ブラウニーは二度と姿を見せないとされている。
先述した「こびとの靴屋」に関しても,最後は老夫婦がお礼として,服という「束縛するアイテム」を与えてしまったために,妖精は姿を消してしまったのだ。また,産気づいた女性を助けるために,ブラウニーが嵐の中,産婆を捜して連れてくるという伝承があるのだが,この伝承のなかで人々はその功績を称え,ブラウニーにキリスト教の洗礼を受けさせようとしてしまう。そして,聖水を振りかけて儀式を執り行おうとするのだが,当然ブラウニーは姿を消してしまった。これは,宗教への入信=束縛と判断されたためであろう。
またブラウニーの仕事にケチをつけるのもタブーといえる。ある伝承では,ブラウニーが手伝ってくれることを当たり前と感じるようになってしまった家族がいた。そしてある時,ブラウニーの仕事が雑だとケチをつけてしまうのだが,その日を境にいたずらが増え,二度と仕事を手伝ってもらえなくなったという。
こうしてふて腐れてしまった(?)ブラウニーを,ボガート(Boggart)と呼ぶとする説もある。ブラウニーと同種族と見るか,別種族として考えるかは微妙なところだが,ボガートになってしまったブラウニーは,家族が引っ越ししても付きまとっていたずらをし続けるそうだ。

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