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「宮崎駿にはまだ見せてない」という巨神兵映画もお披露目。庵野秀明が館長を務める「特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」が7月10日から公開に。特別レセプションの様子をレポート
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「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」とは,日本の映像業界のお家芸とも言える“特撮”の面白さ,魅力を多角的に紹介しようという展覧会。ウルトラマンやガメラなど,数々の映画・テレビで活躍したミニチュアやデザイン画など,約500点もの資料を一堂に集めた大規模なもので,7月10日から10月8日まで実施される。
さらに目玉の一つとして,「平成ガメラ」シリーズで有名な樋口氏ら制作スタッフによる,約9分間の短編映画「巨神兵東京に現わる」も会場内のシアターで公開されるなど,見どころ盛りだくさんな内容になっている。
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庵野氏は「現場の監督達から,ミニュチュア技術や特撮を取り巻く現状を聞いて非常に危機感を持ちました。そして同時に,これは自分一人の力ではどうにもならないとも思いました」という。困った庵野氏だっただが,そこで相談を持ち掛けたのが,スタジオジブリの鈴木氏だ。「ジブリの鈴木さんに話を持ち掛けたことが幸いでした」と庵野氏は振り返りながら,「本当の功労者はこの人です。ジブリの鈴木さんがいなかったら,この企画は成り立っていなかった」という。
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そもそも「巨神兵東京に現わる」を作ることになった経緯について,鈴木氏は,「庵野君か僕か,どっちが言い出したかは忘れちゃったんだけど,なんか話し合っていくなかで,これは現代の技術で特撮映画を作った方がいいんじゃないかって話になって。そうしたら,庵野君が“巨神兵”でやるのがいいんじゃないかって言うんです」と語りながら,「じゃあ,すぐそこに監督がいるから,ちょっと許諾を取ってこようって聞きにいったんです」とコメント。宮崎駿監督に直接許可を取り付けにいったところ,思いの外,軽い感じで「いいよ」との回答を得られたという。「話が持ち上がって,宮崎駿の許諾が降りるまで,確か5分から10分くらいだったと思います」と鈴木氏は語っていた。
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樋口氏は,「巨神兵東京に現わる」の制作を振り返りながら,「今回は気心の知れたスタッフと撮影に臨み,非常に順調に進行しました。(メイキングを見ると)遊んでいるように見えるかもしれませんが,ちゃんと真剣にやってます」とコメント。さらに「でも,凄く楽しかった。まるで文化祭の前日のようで。これが永遠に続けばいいと思った」と,分かる人には分かる小ネタを披露していたのも印象的であった。
その後は,「この企画展では,出来上がった映画ももちろんですが,それがどのように作られているのか,展示物とセットで見て頂きたいですね。そもそも,なぜミニュチュアを使って撮影するのかなど,そういう部分が分かりやすくなっているので,そこを皆さんに見てもらいたいです」とコメントしながら,「今回は,気心の知れたスタッフと,自由に作らせてもらうチャンスを頂けてたいへん光栄でした」と,自身の仕事ぶりにも満足げな様子であった。
それを見た庵野監督も,「僕も制作過程のいろいろな事情を知っていますが,その中でよくぞここまで!という出来映えだと思います。樋口に頼んでよかったと思ってます。しんちゃん,ありがとう!」と,盟友に深く感謝していた。
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庵野監督は,この企画展について,「この企画を実現するために,本当に多くの方にご協力頂きました。本日,この日を迎えることができて感無量です。内容に関しては,なんというか,もう見て頂くほかないと思っています。口で説明するようなものじゃないんです。自分の目で見て,感じて頂きたい。特撮は,日本の誇る技術です。そういうものが,この企画展には詰まっています。樋口君が作ってくれた『巨神兵東京に現わる』も,いまここでしか見れないものなので,ぜひ足を運んで見に来てください」という。
そして少し茶化しながら,「実施にこぎ着けたからには,正直数字が欲しいです。数字があれば,文化庁さんとかとも掛け合いやすくなるので……」とコメントし,今回のみならず,「次への取り組み」に意欲を見せていたのも興味深い。庵野監督は,今回の企画展を一つの足がかりにして,日本の特撮文化を恒久的に残していく手段を探しているのだろう。
ちなみに,前述した「宮崎駿監督にまだ映画を見せていない」という件に関してだが,鈴木氏は,「お盆の終わりくらいに見せようかなって。その時期なら,もう後戻りできませんから」と語りながら,「これを庵野君に相談したら,庵野くんは『いや,終わってから見せましょう』って言うんです」と,オチまで披露。相変わらずの役者ぶりに,関係者の笑いを誘っていたのは「さすが!」のひと言であった。
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さて。肝心の展示内容についてなのだが,一言で言えば「盛りだくさん!」といった感じで,来場者を飽きさせない作りになっている。筆者も,懐かしさを誘う展示物に目を奪われ,ミニュチュアの精巧さにワクワクしっぱなしだったのだが,個々についての解説の豊富さも,この企画展の特色ではないかという気がした。
というのも,各展示物に庵野監督による解説文が添えられているばかりか,有料のラジオセットを借りれば,一尺2〜3分程度の音声ガイド(ナレーター:清川幻夢)を聞くこともできるのだが,これが内容,雰囲気共に抜群で,とても面白いのだ。それでいて,全部で70件以上にも及ぶボリュームになっているあたり,じっくりと見て回ると,相当な時間を要することになるのは想像に難くない。……もしや,1回だけじゃなくて2回,3回と見に来いという庵野監督の作戦なのだろうか。ともあれ,一般的な展覧会よりもやたらボリューミーなのは間違いない。
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また,注目の短編映画「巨神兵東京に現わる」についてだが,これは,宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」に登場する巨神兵が東京上空に突如飛来し,口から発射する電磁砲で東京を火の海にするというもの。ナレーションには,林原めぐみさんを起用し,重々しい雰囲気と共に,巨神兵にまつわる詩を呼び上げていく。火の海となった東京をバックに,光の槍を持った巨神兵達が行軍するシーンは,原作「ナウシカ」の映画に登場した「火の七日間」を彷彿させる描写となっている。
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ともあれ,昭和と平成の特撮技術の粋を集めたこの「特撮博物館」だが,特撮作品を懐かしく思う世代はもちろん,初めて特撮に触れる子供たちや若者など,万人にとって楽しめる展覧会になっている雰囲気。そう思うのは,懐かしさ云々を抜きにして,やっぱり特撮技術は“凄い”ということを,理屈っぽく解説しながらも理屈抜きに楽しめる内容になっているからかもしれない。興味がある人は,ぜひ一度足を運んでみることをお勧めする。
■「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」
2012年7月10日(火)〜10月8日(月・祝)
「特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」公式サイト
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「特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」公式サイト
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