本作は,クォータビューのアクションRPG。左クリックが移動と攻撃を兼ねていて,敵をクリックすれば追跡/攻撃,地面をクリックすればその地点へ移動となっている。いわゆるDiabloタイプ(Diabloについては連載第6回を参照)というやつだ。
また右クリックで特殊攻撃1,Ctrlキーを押しながら右クリックで特殊攻撃2を発動させられるので,多彩な攻撃が楽しめる。さらに本作(というかレリクスシリーズ)の最大の特徴として,倒した敵への憑依(ボディスナッチ)があり,これがゲームに大きな深みを与えているのだ。
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オープニングシーンに登場するキャラクター達。レリクスシリーズを感じさせる独特のデザインは,旧作を知らなくとも引きつけられるものがある |
戦闘を繰り返して経験値を溜めれば,進化して新しいボディを入手できる
プレイヤーは,「MARX」という組織によって作り出された精神体を操作して,倒した敵に憑依しながら物語を進めていく。初代レリクスでは「倒す=憑依」だったが,本作では敵を倒しても強制的な憑依にはならず,倒して憑依できる死体がドロップされれば,任意でそれに憑依できる。そのため,すぐには憑依せず,後で憑依することも可能。このあたり,必要に応じて服を着替える感覚をイメージしてもらえば分かりやすいだろう。
またゲームを進めると,一度憑依した体に変身するトランスフォームという能力や,Heaven族の鎧をまとうアイアンクラッドという能力も使えるようになり,プレイヤーは状況に合わせて,さまざまなスタイルで戦うことになる。ボディスナッチ/トランスフォーム/アイアンクラッドの特徴については,以下のとおり。
・ボディスナッチ
死体に憑依して戦う。最初から特殊攻撃を利用可能で,また死んでしまっても精神体に戻るだけで,すぐにはゲームオーバーにならない。制限時間内にボディスナッチ可能な死体を見つければ,ゲームは続行するのだ。戦い続けて経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。
・トランスフォーム
バリキリーに憑依しているときのみに使える能力。これまでに憑依したことのある生物に,自ら変身して戦う。ある程度戦うことで体とのシンクロ率が上昇し,一定の数値に達すれば,特殊攻撃が使えるようになる。経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。
・アイアンクラッド
ゲーム後半で習得する能力で,Heaven族の鎧をまとって戦う。トランスフォームによく似ているが,アイアンクラッドで変身できるボディはどれも強力で,かなり使い勝手がいい。経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。
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同じ属性のモンスターに憑依してしまえば,会話も可能。アイテムがもらえることも |
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ボディごとに用意された特殊攻撃を駆使して,敵を打ち破れ。特殊攻撃はエフェクトなどもハデで気持ちいい |
ゲーム中には,遊び方をムービーで学べる機能や,今何をすべきかを確認できる便利機能も
これら憑依/変身を使いながら冒険できるので,常に新鮮な展開が楽しめるのだ。敵と戦うだけではなく,時には敵と同じ種族に変身して,情報を集めたり穏便に探索を進めたりするのもいいだろう。
もちろん,国産ゲームらしいド派手な演出のボスキャラ戦も,たっぷりと楽しめる。最新のRPGと比較するとビジュアル的に見劣りしてしまう部分もあるが,ゲームとしての質を見るのであれば,遊べるタイトルであることは間違いない。
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憑依/進化することでレイテンシー(一覧表)に登録されるモンスターは,95種類。ここに登録されないユニークなボディも多数存在する |
冒頭で述べたように,「RINNE」にボーステックが絡んでいることは間違いない。「ボディスナッチ」「レリクスポイント」などの用語や,「HEAVEN」「HELL」などの登場する種族にも,レリクスシリーズに関係する言葉が数多く使われているし,とあるシーンでは「Bothtec」の文字が表示されたり,パスワードのナンバーが,かつてのボーステックの代表電話番号だったりする。
ほかにも,ゲームに登場するウサギのジップ,チマチマなどは,ボーステックが昔に発売していた「トップルジップ」「妖怪探偵ちまちま」をもじったものだろう。また日本ファルコムからは,ブランディッシュの「ドーラ・ドロン」,ザナドゥのキングドラゴン「ガルシス」が友情出演(?)しているほか,音楽に関してもザナドゥのものが使われていたりする。これらの要素は,古参のゲーマーならニヤリとさせられるはずだ。
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左の画像には,ドーラ・ドロンが。また,ボーステック系のキャラクターも多数登場する。名前に注目してもらいたい |
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もちろん,これら中ボスなども登場する |
RINNEのゲーム自体は,秀作と言っていいと思う。見た目には古さはあるけれど,これがなかなかに遊べるタイトルなのだ。敵に憑依しながらゲームを進めるという独特のシステムは十分に機能しているし,ボスキャラとの戦闘などもかなり緊張感があっていい。また,ボディスナッチやトランスフォームで敵の仲間になりすますことでイベントが発生するというのも,面白い要素だ。本作もマルチエンディングであるため,とことんやり込むことだって可能である。BGMに関しても,日本ファルコムらしいデキで仕上がりもよく,ファルコムサウンドが好きなら必聴といえるレベルだ。
こうして考えると,コラボレーションタイトルとしてのRINNEは,成功したと言えるはずである。
だが,ふたを開けてみると,「RINNE」は実力を出し切ることができなかったようにも思える。ボーステック+日本ファルコムによって企画/開発され,Yahoo! BBを要するソフトバンクBBがリリースする……。当初は,これだけのメンツが揃っているんだからと期待したが,公式サイトが作られることはなく,開発元である日本ファルコムの製品紹介ページにも,タイトル名すら掲載されてない。ちょうどこの時期,ボーステックがPCゲーム事業から撤退してしまったことも手伝ってか,世間に対するアピール度はあまりにも低くなってしまったのだ。
また,初代をイメージさせようとしたのか,パッケージ版ではマニュアルが不親切(より詳しい,PDF版のマニュアルがCDに収録されていることは補足しておこう)ということも,多くの購入者には不満だったようだ。
RINNEが,どういう経緯でこのような販売になったのかは分からないが,筆者としては,どうしても“不遇の子”に思えてならない。もっと積極的なコラボレーションや協力体制が敷かれていれば,世間の本作に対する評価は,より高くなったのではないかと思える。
だからこそ,少しでも認知度を高められればと,今回筆を執った。この記事を見て,少しでもRINNEに興味を持ってくれる人がいたら,幸いである。