― 連載 ―

誰もがRPGを愛していた
船頭多くして船山に上る(日本のことわざ)

Illustration by よりと

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 1986年3月にボーステックからリリースされた「レリクス」は,精神体を操作して,数々の生物に“憑依”しながら冒険するアクションゲームだ。
 マニュアルには操作方法が記載されているのみで,目的などは明かされておらず,謎の多いゲームとして話題になった。ほかにもギーガー調の世界観,キャラクターの生々しい動き,クリスタルキングが担当したサウンドなど,当時,話題になる要素がてんこ盛りだったのである。
 また,セーブ機能なしの一発勝負で難度も高く,さらにマルチエンディングだったことから,真のエンディングを見るために筆者も相当な苦労をした記憶がある。
 その後,続編はリリースされなかったが,10数年の時を経た1999年にはアクションRPGとして「レリクス:リカーオブオリジン」が,さらに2001年には「レリクス:ザ・セカンド・バース」がリリースされ,オールドゲーマーを中心に話題となった。

 今回取り上げるアクションRPG「RINNE」は,このレリクスシリーズに,大いに関係があるタイトルだ。
 RINNEの開発元は日本ファルコム,発売元はソフトバンクBBと発表されている。ところが,画面レイアウトはレリクスシリーズを感じさせるうえ,ゲーム中にも,レリクスやボーステックを思わせる単語がふんだんに使われていて,ボーステックが関与していることは明白なのだ。公式には「レリクス」についてはまったく触れられていないが,事実上,日本ファルコムとボーステックのコラボレーションタイトルと言っても差し支えはないだろう。
 開発/企画が日本ファルコム&ボーステックとなると,なかなか豪華なコンビネーションだ。PCゲーム業界の歴史の中で,ゲームメーカー同士がコラボレーションすることは珍しく,そうしたことからも,イチ業界人として「RINNE」には注目せずにはいられなかった。
 では,実際にはどんなゲームに仕上がったのだろうか。

 

RINNE

メーカー:ソフトバンクBB
価格:オープンプライス

憑依して成長する楽しみ

 本作は,クォータビューのアクションRPG。左クリックが移動と攻撃を兼ねていて,敵をクリックすれば追跡/攻撃,地面をクリックすればその地点へ移動となっている。いわゆるDiabloタイプ(Diabloについては連載第6回を参照)というやつだ。
 また右クリックで特殊攻撃1,Ctrlキーを押しながら右クリックで特殊攻撃2を発動させられるので,多彩な攻撃が楽しめる。さらに本作(というかレリクスシリーズ)の最大の特徴として,倒した敵への憑依(ボディスナッチ)があり,これがゲームに大きな深みを与えているのだ。

 

オープニングシーンに登場するキャラクター達。レリクスシリーズを感じさせる独特のデザインは,旧作を知らなくとも引きつけられるものがある

 

戦闘を繰り返して経験値を溜めれば,進化して新しいボディを入手できる

 プレイヤーは,「MARX」という組織によって作り出された精神体を操作して,倒した敵に憑依しながら物語を進めていく。初代レリクスでは「倒す=憑依」だったが,本作では敵を倒しても強制的な憑依にはならず,倒して憑依できる死体がドロップされれば,任意でそれに憑依できる。そのため,すぐには憑依せず,後で憑依することも可能。このあたり,必要に応じて服を着替える感覚をイメージしてもらえば分かりやすいだろう。
 またゲームを進めると,一度憑依した体に変身するトランスフォームという能力や,Heaven族の鎧をまとうアイアンクラッドという能力も使えるようになり,プレイヤーは状況に合わせて,さまざまなスタイルで戦うことになる。ボディスナッチ/トランスフォーム/アイアンクラッドの特徴については,以下のとおり。

 

・ボディスナッチ
 死体に憑依して戦う。最初から特殊攻撃を利用可能で,また死んでしまっても精神体に戻るだけで,すぐにはゲームオーバーにならない。制限時間内にボディスナッチ可能な死体を見つければ,ゲームは続行するのだ。戦い続けて経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。

・トランスフォーム
 バリキリーに憑依しているときのみに使える能力。これまでに憑依したことのある生物に,自ら変身して戦う。ある程度戦うことで体とのシンクロ率が上昇し,一定の数値に達すれば,特殊攻撃が使えるようになる。経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。

・アイアンクラッド
 ゲーム後半で習得する能力で,Heaven族の鎧をまとって戦う。トランスフォームによく似ているが,アイアンクラッドで変身できるボディはどれも強力で,かなり使い勝手がいい。経験値を溜めれば,進化して新しいボディ情報を手に入れることもある。

 

同じ属性のモンスターに憑依してしまえば,会話も可能。アイテムがもらえることも
ボディごとに用意された特殊攻撃を駆使して,敵を打ち破れ。特殊攻撃はエフェクトなどもハデで気持ちいい

 

ゲーム中には,遊び方をムービーで学べる機能や,今何をすべきかを確認できる便利機能も

 これら憑依/変身を使いながら冒険できるので,常に新鮮な展開が楽しめるのだ。敵と戦うだけではなく,時には敵と同じ種族に変身して,情報を集めたり穏便に探索を進めたりするのもいいだろう。
 もちろん,国産ゲームらしいド派手な演出のボスキャラ戦も,たっぷりと楽しめる。最新のRPGと比較するとビジュアル的に見劣りしてしまう部分もあるが,ゲームとしての質を見るのであれば,遊べるタイトルであることは間違いない。

 

憑依/進化することでレイテンシー(一覧表)に登録されるモンスターは,95種類。ここに登録されないユニークなボディも多数存在する
ボーステック+日本ファルコム+ソフトバンクBB=?

 冒頭で述べたように,「RINNE」にボーステックが絡んでいることは間違いない。「ボディスナッチ」「レリクスポイント」などの用語や,「HEAVEN」「HELL」などの登場する種族にも,レリクスシリーズに関係する言葉が数多く使われているし,とあるシーンでは「Bothtec」の文字が表示されたり,パスワードのナンバーが,かつてのボーステックの代表電話番号だったりする。
 ほかにも,ゲームに登場するウサギのジップ,チマチマなどは,ボーステックが昔に発売していた「トップルジップ」「妖怪探偵ちまちま」をもじったものだろう。また日本ファルコムからは,ブランディッシュの「ドーラ・ドロン」,ザナドゥのキングドラゴン「ガルシス」が友情出演(?)しているほか,音楽に関してもザナドゥのものが使われていたりする。これらの要素は,古参のゲーマーならニヤリとさせられるはずだ。

 

左の画像には,ドーラ・ドロンが。また,ボーステック系のキャラクターも多数登場する。名前に注目してもらいたい
もちろん,これら中ボスなども登場する

 

 RINNEのゲーム自体は,秀作と言っていいと思う。見た目には古さはあるけれど,これがなかなかに遊べるタイトルなのだ。敵に憑依しながらゲームを進めるという独特のシステムは十分に機能しているし,ボスキャラとの戦闘などもかなり緊張感があっていい。また,ボディスナッチやトランスフォームで敵の仲間になりすますことでイベントが発生するというのも,面白い要素だ。本作もマルチエンディングであるため,とことんやり込むことだって可能である。BGMに関しても,日本ファルコムらしいデキで仕上がりもよく,ファルコムサウンドが好きなら必聴といえるレベルだ。
 こうして考えると,コラボレーションタイトルとしてのRINNEは,成功したと言えるはずである。

 

 だが,ふたを開けてみると,「RINNE」は実力を出し切ることができなかったようにも思える。ボーステック+日本ファルコムによって企画/開発され,Yahoo! BBを要するソフトバンクBBがリリースする……。当初は,これだけのメンツが揃っているんだからと期待したが,公式サイトが作られることはなく,開発元である日本ファルコムの製品紹介ページにも,タイトル名すら掲載されてない。ちょうどこの時期,ボーステックがPCゲーム事業から撤退してしまったことも手伝ってか,世間に対するアピール度はあまりにも低くなってしまったのだ。
 また,初代をイメージさせようとしたのか,パッケージ版ではマニュアルが不親切(より詳しい,PDF版のマニュアルがCDに収録されていることは補足しておこう)ということも,多くの購入者には不満だったようだ。

 

 RINNEが,どういう経緯でこのような販売になったのかは分からないが,筆者としては,どうしても“不遇の子”に思えてならない。もっと積極的なコラボレーションや協力体制が敷かれていれば,世間の本作に対する評価は,より高くなったのではないかと思える。
 だからこそ,少しでも認知度を高められればと,今回筆を執った。この記事を見て,少しでもRINNEに興味を持ってくれる人がいたら,幸いである。

 

ボスキャラも多数登場。ブレスやレーザー(?)攻撃など,多彩な攻撃で,プレイヤーを楽しませてくれる

 

■■Murayama(ゲームライター)■■
2月3日掲載なので,何か節分ネタはないか聞いてみたところ,「追難の鬼とか,節分の原型を考えると,節分なんてやる気が起きないんだよね」とにべもない回答。ではバレンタインデーは? 「ああ,爺ちゃんの命日だからネタにしにくいなぁ」。気が早いですが,ひな祭りでもいいですよ。「ひな祭りは,ばあちゃんの命日」。なんだか,イベントごとをお祝いしにくい家庭なんですね。「そんなことないよ。クリスマスはオヤジの誕生日だし,正月は爺ちゃんの誕生日だもん」。……とりあえずMurayamaには,各種イベントのある日に,危険な場所へ立ち入らないようお願いしておこう。いや,子供が産まれるほうならいいんですけどね。
タイトル RINNE
開発元 日本ファルコム 発売元 ソフトバンクBB
発売日 2005/06/30 価格 オープン価格
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/400MHz以上,メモリ 128MB,空きHDD容量 2GB以上,ビデオカード VRAM4MB以上,DirectX 7.0以降

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http://www.4gamer.net/weekly/rpg/009/rpg_009.shtml