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ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
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印刷2013/09/03 13:03

テストレポート

ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた

HMZ-T3W
画像集#030のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 2013年9月3日,ソニーは,ヘッドマウントディスプレイ「HMZ」の第3世代製品「HMZ-T3W」「HMZ-T3」を発表した。
 720p解像度の有機ELパネルを両目用に1枚ずつ搭載し,原理的にクロストークの発生しない立体視に対応する点や,約20m先に750インチサイズの仮想画面が見える設計になっている点はシリーズ従来製品を踏襲しつつ,シリーズで初めて2ラインナップとなり,上位モデルとなるHMZ-T3Wでは「Wireless HD」準拠のワイヤレスHDMI接続に対応したのが特徴だ。また,ゲーム用途で懸案だった遅延にメスが入り,装着時のボケやズレた感じの軽減を実現し,装着感自体も向上したとされるのも大きな見どころとなる。

 価格はHMZ-T3Wが約10万円前後HMZ-T3が約8万円前後。11月中旬発売予定で,予約受け付けは後日開始となる予定だ。

従来のHMZは白と黒のツートンカラーと,本体前面が尖った形状が特徴だったが,HMZ-T3W(左)とHMZ-T3(右)は,基調色が黒となり,形状もより丸みを帯びた。これは「道具」としての機能美を追求した結果だそうだ。なお,本体外側側面の加工はHMZ-T3Wがメタリック調,HMZ-T3がピアノ調となる
画像集#002のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた


本体デザインとレンズの変更,装着感の改善に低遅延化。フルモデルチェンジに近い進化を果たした第3世代


新開発の専用LSI。公開された写真を見からは,型番らしき「OXD90024OO」(もしくはOXD90024OC)という文字列も読み取れる
画像集#006のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 その特徴を具体的に見ていこう。HMZ-T3シリーズでは,HMZ史上初めて,新開発のヘッドマウントディスプレイ専用LSIを搭載してきたのが,スペック面での大きな変更点となる。
 4Gamerでこれまで指摘してきたとおり,従来製品「HMZ-T1」と「HMZ-T2」では数フレームの表示遅延が存在し,それがシビアなアクションゲームではときとして致命的な問題となっていたが,この新開発LSIにより,60Hz表示時の遅延は,平面視時,立体視時を問わず,1フレーム(16.6ms)まで低減できたとのことだ。さらに,ソニーの最上位Blu-rayレコーダー「BDZ-EX3000」で搭載される映像エンジン「CREAS Pro」の回路とノウハウを継承したという「エンハンスエンジン」により,1280×720ドットのパネルを採用しつつ,フルHDの1920×1080ドットに迫る解像感を獲得できているという。

プロセッサボックス。いずれの写真も左がHMZ-T3W用,右がHMZ-T3用で,違いは,本体前面に用意されるワイヤレス接続インジケータの有無のみだ。HDMIのスルー出力を搭載するのは従来製品を踏襲しつつ,今回,3系統のHDMI入力に対応したのは,HMZ自体をセレクター的に使いたい人にとって朗報といえるだろう。ちなみにHDMI入力は,本体天面に用意されたボタンで切り替えられる
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クリアブラック調整のイメージ
画像集#011のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 細かい点では,暗部の視認性を改善する機能「クリアブラック調整」と,「ゲームプレイ時に画面が大きすぎて両サイドの視認性が悪い」という声に応えたアンダースキャン機能,そして,平面視表示時には,映画館のようにスクリーンを湾曲させて表示できる「スクリーン」モードを搭載してきたのを,新要素とまとめることができるだろう。アンダースキャン表示では,90%(660インチ相当),80%(610インチ相当),70%(530インチ相当)が選択可能だ。

画像集#012のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
アンダースキャン機能のイメージ
画像集#013のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
スクリーンモードのイメージ

新開発のレンズユニット
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 「見え方」にも進化がある。HMZ-T3シリーズでは,広視野角のレンズユニットを新たに搭載してきたのだ。
 従来製品だと,せっかくはっきりと見えるように本体の位置を調整しても,装着し続けているうちに少しでも本体が動いてしまうと,すぐに絵がズレてしまうという問題があった。そのために本体をキツめに装着して,結果,ヘッドパッドが額が押しつけられるような思いをした人は多いのではないかと思うが,HMZ-T3シリーズは,広視野角レンズユニットの採用によってスイートスポットが広がり,そこまでシビアな調整を行わなくてもよくなっているとされる。
 さらに,レンズユニット自体の重量も20%以上もの軽量化を実現できているとのことである。

画像集#032のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 レンズ位置合わせのシビアな調整が不要になったのと合わせて,ヘッドパッドを従来比で1.8倍に広げたことと,後頭部から頭を固定するためのヘッドバンドが可動域を広げ,調整しやすくなったのも見逃せないポイントだ。実際の装着感は後段で述べるが,ソニーは,ヘッドパッドとヘッドバンドの改良により,装着のしやすさと調整のしやすさ,そして長時間装着し続けたときの快適性が大きく向上したと謳っている。

上側のヘッドバンドは角度を調整できるようになった
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 サウンド回りでは,DTS-HD Master Audioと7.1chリニアPCMに対応した点,ヘッドフォン出力用に32bit D/Aコンバータを搭載した点と,プロセッサボックス側に標準(フォン)端子でヘッドフォン接続インタフェースを用意し,ケーブルが太くて重いハイエンドヘッドフォンをこちらに装着できるようになった点が,主な強化となる。

バッテリー兼レシーバーとなるユニット
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 そしてWireless HD対応だが,HMZ-T3Wでは,本体とケーブルでつながったバッテリー兼Wireless HDレシーバーユニットが用意され,プロセッサボックスとの間を無線化できるようになっている。HMZ-T3Wにバッテリーもレシーバーも内蔵されていないため,バッテリー兼レシーバーをぶら下げるような格好になるのはデザイン的にいまひとつだが,ヘッドマウントディスプレイ本体を重くするわけにはいかなかったので,このあたりは苦肉の策ということなのだろう。
 バッテリーは5.5時間の充電で3時間の動作という仕様なので,HMZ-T3Wを装着してゲームをプレイするわけにはいかない。見栄えもよろしくなく,バッテリー駆動時間も短いのに,それでもワイヤレス化してきたあたり,HMZにワイヤレス化を望む声は大きかったということなのだと思われる。

HMZ-T3WとHMZ-T3はいずれもバッテリー兼レシーバーユニットにHDMI入力端子を持っており,MHL(Mobile High-definition Link)対応のスマートフォンやタブレット端末と直接接続し,プロセッサボックスなしでモバイル端末の映像などを鑑賞できるようにもなっている。なお,バッテリー兼レシーバーでHDMI端子の隣にあるUSB Micro-B端子は充電用だ
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 なお,これらの仕様を実現するにあたって,ワイヤレスとワイヤードの両接続に対応するHMZ-T3Wだけでなく,ワイヤード接続のみとなるHMZ-T3でも,バッテリーユニットは本体からぶら下がる格好となる。
 ワイヤード接続時,バッテリーは5.5時間の充電で7時間動作。ワイヤードモデルとなるHMZ-T3であっても,利用にはバッテリーユニットの充電が必要なので,この点は要注意だ。

ちなみにこちらは,第3世代モデルにしてついに登場となる,別売りの「ヘッドマウントディスプレイケース」。バッテリー兼レシーバーユニットも一緒にしまっておけるという。なお,「HMZ-T1やHMZ-T2は,サイズ的に入らないのではないか」とはソニーの担当者談
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というわけで実際に使ってみる。装着性が非常に高い


ソニーのスタッフに装着してもらったところ
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 それでは,実際に試用してみた感想をお伝えしていこう。

 まずは,装着。
 本体重量は320gで,HMZ-T2よりも10g軽くなっているとのことだが,さすがに10g程度の違いだと,手に取ったところで,別段軽くなったという印象はない。HMZ-T2では軽くなったことが最大のトピックだったので,ここは「世代を重ねても重量が重くならなかった」と見るべきなのだろう。

レンズユニットを覗き込んだところ。外から見ただけでは分からないが,レンズユニットは刷新され,フォーカスの合わせやすさが劇的に向上している
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 むしろ注目したいのは,劇的に変わった装着感のほうだ。なんといっても,レンズの位置合わせでほとんど苦労しなくなった。装着してすぐに,映像がちゃんと見えるのである。
 これはHMZ-T1やHMZ-T2を使ったことある人でないと分からないかもしれないが,従来製品では,レンズのフォーカスがきっちり合うように装着するのは結構難しく,既述のとおり,一度合わせても,ちょっと本体が動いただけでフォーカスがズレてしまう問題点があった。ソニーによると,従来製品では画質最優先で,かなり高級なレンズを使っていたとのことなのだが,フォーカス特性はかなりピーキーで,装着時にはちょっと苦労させられたものだったのだ。
 それに対して今回は,レンズそのものの精度ランクは少し落ちるものの,幅広い範囲でフォーカスが合い,かつ軽いレンズセットが採用されているのだという。

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フロントヘビーなのは従来どおりだが,締め付けなくてよくなったため,装着感はぐっとよくなった
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本体正面から見ると,ヘッドバンド部の大きさがよく分かる
 装着感は,フロントヘビーなのは変わらない一方,前後のバランスが多少よくなったような気がする。そしてなにより,フロントヘビーだとか,バランスがといったことが気になりにくくなっている。これは,レンズのフォーカスが合いやすくなって,本体をギチギチに固定しなくてもよくなったのと,ヘッドパッド部がHMZ-T2比で180%に大きくなったのが大きい。

 ヘッドパッドが大きくなったことの恩恵というのも,従来製品をヘビーに使っていた人でないと理解しにくいかもしれない。
 HMZは第1世代モデルから一貫して,本体を額で支える仕様だったのだが,レンズのフォーカスが合った状態で固定しようとすると,ヘッドバンドをかなりキツくしめる必要があり,その場合,装着開始後数十分から1時間くらいで,額にかなりの痛みが出てくるのである。

 今回の試用では,もちろんそこまで長時間のテストは行えていないので,実地での検証は別途必要だが,短時間試した限り,HMZ-T1ユーザーであるaueki,HMZ-T2ユーザーである佐々山薫郁とも,この「痛みの低減」にはかなり期待できると感じている。

画像集#020のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 なお,HMZ-T3では,後頭部を支えるヘッドバンドの調整範囲が広がり,「1本のヘッドバンドが,途中から二股に分かれている」のではなく,「2本のヘッドバンドが用意されている」感じになった点も指摘しておく必要がある。上側のヘッドバンドが設置自由度を増したことで,ヘッドパッドと3点で支えるのが格段にしやすくなったからだ。
 また,ヘッドバンド部にクッションが用意されたのも,装着感の向上に寄与している印象を受けた。

仕様の変更により,ヘッドバンドの装着自由度は明らかに増した。実際に装着してみると,ヘッドバンド長調節機構の内側に用意されたクッションも装着感の向上に効果を発揮しているのが分かる
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HMZ-T3のライトシールドは,目の下から側面までを広く覆ってくれる
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ライトシールドは本体側の穴に差し込んで固定する仕様。取り付けやすさはあまり感じないが,取り付けた後の安定性は上がったように思う
 一方,HMZ-T3Wの重要な新機能であるWireless HD対応だが,試用した限り,ワイヤレス化を果たしたことの恩恵はあまり実感できなかった。
 その大きな理由となるのが,HMZ-T3では,外光を遮断するための付属品「ライトシールド」の完成度がかなり上がっており,簡単に着脱できるようになっているうえに,遮光性も向上していることだ。「それがなんでワイヤレスと関係があるの?」と思うかもしれないが,ここで重要なのは,ライトシールドに十分な効果があり,ライトシールド装着時には周囲がまったく見えなくなる点である。

 HMZ-T2までは「それほど効果がないから付けるのはやめておこう」ということで,ライトシールドを装着しないケースも多く,その場合は目を下に向ければ手元のキーボードやゲームパッドなどを見ることもできた。それに対し,HMZ-T3のライトシールドにはしっかりした遮光性があり,没入感の向上に大きな効果が出る。取り付けないのはちょっともったいない感じなのだ。

HMZ-T3Wを使うときは,本体を頭に装着しつつ,手元にレシーバー兼バッテリーユニットを持っておく必要がある。レシーバー兼バッテリーユニットのサイズ自体は,80(W)×119(D)×26(H)mmとそれほど大きくなく,その点は救いだ
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 そのため結果として,HMD装着時はまったく“動けなく”なった。付け加えると,これまではベストな位置でレンズのフォーカスを調整できている場合,トイレなどへ行きたくなったとき,「外さずに移動できたらなあ」と思うことも多かったのだが,レンズの位置合わせがシビアでなくなったHMZ-T3では,むしろ遠慮なく本体を頭から外せるようになった。そのため,いよいよワイヤレス化のメリットが薄くなってしまった印象なのである。
 ワイヤレス化によって,どういう利用形態を提案できるのか,ソニーの出すメッセージに期待したい。


画質の改善とゲームモードもチェックする


HMZ-T3W一式。新しいLSIや信号回路は,当然のことながら写真左下のプロセッサボックスに入っている
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 さて,前段でレンズユニットのグレードが落ちているという話をしたので,この点が気になっている人もいるかもしれない。採用している有機ELパネルは変わっていないので,「じゃあ画質が落ちたのか」という疑問も出てきそうだが,ソニーによれば,むしろ映像回路側の改良で画質は向上しているという。これまで複数個に分かれていた各種LSIを1チップ化してノイズを低減し,信号処理bit数も上げたことで,フルHDに迫る解像感が得られるというのがソニーの言い分だ。
 短時間の試用となる今回,そこまで厳密なチェックはできていないが,少なくとも,ゲームの映像を見た限り,「レンズのグレードが落ちた」ことを確認できるような瑕疵は見当たらなかった。これまた前段で触れたように,ただただ扱いやすくなった感動のほうが大きい。

 ちなみに今回の試用では,ソニーの開発チームによる説明を受けながら,画質部分ではなく,ゲームモードの新要素であるクリアブラック調整,つまりは暗部の視認性改善機能を主にチェックすることになったのだが,暗いシーンの明るさを“持ち上げる”ことが,ボタン操作だけで簡単に行えるようになったのは,確かに便利だと感じた。
 液晶ディスプレイを前提とした絵作りのなされたゲームを自発光デバイスである有機ELパネルで表示させると,バックライトがない分,本当に暗いのだ。ゲーム開発者の意図を超えて暗くなっている可能性は否定できないため,暗部の視認性が勝敗を左右するようなタイトルでは,クリアブラック調整を積極的に試したほうがプレイしやすくなるだろう。

従来製品だと[MENU]ボタンを押してから使うことになる方向ボタンが,HMZ-T3では[MENU]ボタンを押さずに操作することで,暗部の視認性改善機能用ショートカットボタンとなる
画像集#026のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 なお,クリアブラック調整は,HMZ-T3の装着時に右底面へ用意される方向ボタンを押すだけで切り替えられる。メニューを呼び出す必要なしに,思い立ったらぱっと変更できるわけだ。選択肢は標準プリセットを除くと3つで,最高レベルのものは,ちょっとやりすぎじゃないかというくらいに明るさとシャープネスが引き上げられ,ほとんど真っ暗のシーンが「こんなに見えていいのか」というくらい鮮明になってしまう。なので,ほどほどにどうぞ,といったところか。
 もちろん3段階のプリセットは自分で設定することも可能。単にガンマを持ち上げるだけではなく,輝度の中域と高域を別に制御したり,それぞれシャープネスを加減したりと,細かな設定が行えるようになっていた。

 ここで重要なのは,クリアブラック調整において,明るさとシャープネスの設定が併用されていること。そのため,画面が暗いままでも,シャープネスを強めにして,多少リンギング気味にオブジェクトのエッジが見えていると,それだけで状況把握が格段にしやすくなったりする。
 このあたりは,ゲームの画調との相性や個人の好みによるところが大きいと思われるので,プリセットのもので納得がいかなかったら,各自で調整してみるのがよさそうな気配だ。

付属のインイヤーヘッドフォンは,HMZ-T3Wが「MDR-XB90」(MDR-XXB90EX)相当,HMZ-T3がHMZ-T2から引き続き「MDR-EX300」相当とされている,MDR-XB90は実勢価格6500〜8000円程度(※2013年9月3日現在)で販売されている,MDR-EX300はかつて3000円台前半から4000円中盤で販売されていた製品だ
画像集#027のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 なお,サウンド周りは,今回は(もともと高ビットレート処理がされているわけではない)ゲームでしか試していないので,あまり語ることがない。ソニー独自の「VPT」(Virtual Phones Technology)を用いたバーチャルヘッドフォン機能は従来の5.1chから7.1chへと拡張され,本稿の序盤でも触れたようにマルチチャネルサラウンド対応の可逆圧縮フォーマットやリニアPCMにも対応しているが,このあたりの違いを感じられるのは,基本的に映画を見たときということになるだろう。7.1chのほうは,ゲームでも多少メリットがあるかもしれないが。


レンズ位置合わせと装着感の改善で

「普通の人」にも勧められそうな感じに


 以上,問題点の改善を確実に果たし,とくにレンズの位置合わせ回りと装着感の改善によって,第3世代モデルの登場で,HMZはようやく“普通の人”にも勧められそうなデバイスになってきたという印象だ。

画像集#035のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた 画像集#036のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた

画像集#028のサムネイル/ソニーの有機ELパネル採用ヘッドマウントディスプレイ最新作「HMZ-T3」発表。第3世代モデルで何が変わったのか,さっそく触って確かめてみた
 ただ,厳しい見方をすると,デバイス全体としては多少のちぐはぐさもある。
 たとえば,ここまで説明していない進化ポイントとして,「目幅の調整が1段階増えた」というものがあるのだが,レンズの改善で,このあたりの調整はほとんど不要になっている。また,HMZ-T3Wでワイヤレス対応を果たしたのはいいとして,ワイヤード接続でないと機能しないHMZ-T3であってもバッテリーユニットが必要で,いちいち充電しなければならないというのも,やはりどうかと思われる。

 以上,全体としては完成形にかなり近づいた気配だが,それだけに,「HMZ-T3Wがワイヤレスであることのメリット」が示されておらず,なんとも中途半端であり,ワイヤレス(とバッテリー)周りは今後の課題として残ったというのが,短時間触れた時点での感想となる。
 妄想を膨らませておくと,別途HMT-T3Wに位置と角度を認識できる“角”を付けて,PlayStation 4のカメラと組み合わせたりすれば,部屋を丸ごとVR空間にできてワクワクするような展開も期待できるのだが,どんなものだろうか。

将来的に本体にアウトカメラが付くようなことになってくれば,ワイヤレスの実用性は上がってくるはずだが,なまじ使えるようになると今度は安全性の問題が浮上してくるかもしれない
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