オススメ機能
Twitter
お気に入り
記事履歴
ランキング
4Gamer.net
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
QRコードでLINEの4Gamer
アカウントを友達登録すると
月〜金の週5回,21時に厳選
ニュースをお届けします!
※購読にはLINEアプリが必要です
ソニー製ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T3W」「HMZ-T3」徹底検証。ゲームを前にした第3世代HMZの価値を探る
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー
印刷2014/01/27 00:00

レビュー

有機EL搭載の720pヘッドマウントディスプレイ第3世代モデル,徹底検証

ソニー HMZ-T3W,HMZ-T3

Text by 米田 聡


 ソニーが手がけるヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)シリーズ,「HMZ」。その第3世代モデルにあたる「HMZ-T3W」「HMZ-T3」を入手したので,今回はそのレビューをお届けしたいと思う。

HMZ-T3W(左),HMZ-T3(右)
メーカー:ソニー
問い合わせ先:総合サポート・お問い合わせ
HMZ-T3W直販価格:9万9800円,HMZ-T3直販価格:7万9800円(※いずれも税込,2014年1月27日現在)
HMZ HMZ

 2011年秋に発売されて話題を集めた初代機「HMZ-T1」以来の伝統となる,「720p解像度の有機ELパネルを両目用に1枚ずつ搭載し,原理的にクロストークの発生しない立体視に対応する」「約20m先に750インチの仮想スクリーンが見える」仕様はそのままに,上位モデルでのワイヤレス対応や,ゲーム用途を前提とした低遅延モードが追加されるなど,機能面での拡充がなされた第3世代モデルを,ゲーマーはどう捉えるべきだろうか。


3ピース構造で接続性を増したHMZ-T3シリーズ

利便性が増したかどうかでは意見が分かれる


 冒頭でも述べたとおり,第3世代HMZとなるHMZ-T3シリーズは,ワイヤレス/ワイヤード両対応の上位モデルとなるHMZ-T3Wと,ワイヤード接続のみの対応となる“無印”版HMZ-T3の2ラインナップ展開となる。
 2012年発売の従来製品「HMZ-T2」からの変更点はいくつかあるが,製品構成という観点からすると,HMD本体「ヘッドマウントユニット」と映像処理系のまとまった外付けボックス「プロセッサーユニット」(以下,プロセッサユニット)の2ピース構成から,ヘッドマウントユニット直結の「バッテリーユニット」が追加された3ピース構成になったのが最大の違いだ。HMZ-T2までのヘッドマウントユニットは,ワイヤード接続されるプロセッサユニットからの給電で駆動していたが,HMZ-T3シリーズではバッテリーユニットがヘッドマウントユニットを駆動する。プロセッサユニット側からの給電は行われない。

左がHMZ-T3W,右がHMZ-T3。ワイヤレス対応かワイヤードのみかという違いはあれど,3ピース構成という点で違いはない。念のため記しておくと,どちらの写真でも左から順にプロセッサユニット,ヘッドマウントユニット,バッテリーユニットだ
HMZ HMZ

黒が基調色となったHMZ-T3シリーズのヘッドマウントユニット。目を覆う側面部分の加工がHMZ-T3Wではメタリック調,HMZ-T3ではピアノ調という違いがあるが,それ以外の設計は同じだ
HMZ
 ヘッドマウントユニットは,色も含めたデザインが変わっている。使い勝手に関する部分は後述するが,ぱっと見ただけでも,HMZ-T2までは白と黒のツートンだったのが,HMZ-T3シリーズで黒ベースになったのは見て取れるだろう。並べてみると,HMZ-T2では本体の前方が尖った感じになっていたのに対し,HMZ-T3シリーズでは突起がなくなっているとか,HMZ-T2では本体の前面を覆うカバー部が側面まで伸び,ヘッドバンドが側面部分に収納されるデザインだったのが,HMZ-T3シリーズではぐっとシンプルなデザインになっているのも目を引くところだ。

HMZ-T3WとHMZ-T2を並べたところ。単純に色が変わっただけでなく,形状にもずいぶんと手が入っているのが分かる。本文でも触れているように,使い勝手については後段でお伝えしたい
HMZ HMZ

 ヘッドマウントユニットと直結され,着脱不可となるバッテリーユニットは,サイズが約80(W)×119(D)×26(H)mm,重量が約160g。型番は「HMZ-T3W-H」「HMZ-T3-H」と微妙に異なるが,基本的にはリチウムイオンバッテリーの容量も含めて同じと述べていいのではないかと思う。

いずれの写真も左がHMZ-T3W,右がHMZ-T3のバッテリーユニット。両者の違いはほとんどない。底面を確認すると,HMZ-T3Wのバッテリーユニットには無線の認証番号が記されていたり,小さな穴が開いていたりするのが分かるが,違いはその程度だ
HMZ HMZ
バッテリーユニットのインタフェース側。ワイヤレス接続に対応するHMZ-T3Wではワイヤレス接続時のステータスを示すインジケータが用意されているが,それ以外に違いはない。いずれもMHL(Mobile High-definition Link)対応のHDMI入力と,充電用のUSB Micro-B端子を持つ
HMZ

底面から。HMZ-T3W用のプロセッサユニットは「HMZ-T3W-P」,HMZ-T3用のプロセッサユニットは「HMZ-T3-P」と,やはり型番は微妙に異なる。ちなみに重量は順に244g,206g。無線対応の分だけ前者が重い
HMZ
 HMZ-T2のそれとほとんど同じように感じる人もいそうなプロセッサユニットだが,実はいろいろ変わっている。約180(W)×168(D)×36(D)mmだったHMZ-T2のプロセッサユニットよりも小さな,約150(W)×105(D)×27(H)mmというサイズにもかかわらず,HDMI入力は従来の1系統から3系統に増えてHDMIセレクター的に利用できるようになり,6.3mm標準ピン端子によるヘッドフォン出力にも対応してきたのだ。前述のとおり,プロセッサユニットからヘッドマウントユニットへの給電が行われなくなった関係なのかどうかは分からないが,電源部がACアダプターとしてユニットの外に出ているので,その分の内部的な余裕を機能面の拡張に回したのだろう。
 HMZ-T2まではプロセッサユニットの電源がヘッドマウントユニット側と連動していたが,HMZ-T3シリーズではそうなっていないこともあり,電源ボタン(とHDMI入力切り替えボタン)が天板の右手前側に用意されたのも,HMZ-T3シリーズにおける新要素となる。

いずれの写真も左がHMZ-T3W,右がHMZ-T3のプロセッサユニット。HMD向けの出力インタフェースが専用端子からHDMIに変わったり,ヘッドフォン出力が用意されたり,電源ボタンと入力切り替えボタンが用意されたり,HDMIの3系統入力に対応したり,ACアダプター端子が特殊形状で,付属の専用アダプターが必要になったりするところが新要素だ。別のHDMI機器に向けたスルー出力を用意するのはHMZ-T2から変わらず。HMZ-T3W用プロセッサユニットにはワイヤレス関連のインジケータが追加された
HMZ
HMZ

HMZ-T3シリーズにおけるワイヤード接続のイメージ
HMZ
 実際に3つのユニットをどのように接続するのかという話もここでしておきたい。
 HMZ-T3WとHMZ-T3の両方で利用できるワイヤード接続の場合は,まず,プロセッサユニット背面のHDMI入力1〜3にゲーム機などの映像ソースを接続し,HDMI入力切り替えボタンで適切な入力を選択。そのうえで,プロセッサユニット前面側のHDMI出力端子とバッテリーユニット側のHDMI入力端子との間を,一般的なHDMI(HDMI Type A)ケーブルで接続する格好になる。

 一方,HMZ-T3Wのみが対応するワイヤレス接続では,プロセッサユニットとバッテリーユニットをつなぐHDMIケーブルが不要になる。通信距離は,プロセッサユニットを平置きした場合は約5m,付属のスタンドを使って立てた場合だと約7mだ。

バッテリーユニット底面の穴に付属のスタンドを差して立たせ,天面がプロセッサユニットを向くように設置すると,最大約7mの通信距離を確保できる
HMZ HMZ

ワイヤード接続であっても,バッテリーユニットへの充電は必須だ
HMZ
 ここで重要なのは,HMZ-T3WとHMZ-T3でワイヤレス接続以外の仕様が共通化されているため,ワイヤード接続においてもバッテリーユニットからの給電が必須という点だ。HMZ-T3シリーズを利用するときは,ワイヤードであろうとワイヤレスであろうと,バッテリーユニットをユーザーの近くにおいて使う必要がある。
 バッテリー残量ゼロからフル充電の所要時間はスタンバイ時(≒使っていないとき)に約4.5時間,ワイヤードでの利用時に約5.5時間(※ワイヤレス充電時は残量が回復しない可能性あり)。動作時間はワイヤード接続時で約7時間,HMZ-T3Wのワイヤレス接続時では約3時間とされている。よって,ワイヤード接続時には「7時間ごとに充電する」か,「バッテリーが“ヘタる”のを覚悟で,常時充電し続ける」かを選択する必要があるだろう。

HMZシリーズ史上初めて,専用ケースが用意された。ヘッドマウントユニットとバッテリーユニットをまとめておける
HMZ
 なぜソニーがこのような仕様を採用したのかは,MHL入力とも関係がある。HMZ-T3シリーズは,バッテリーユニットとスマートフォンなどのMHL出力デバイスを直結すれば,プロセッサユニットを接続せずとも利用できるようになっているのだ。HMZ-T3シリーズには標準でヘッドマウントユニット&バッテリーユニット用の「キャリングケース」が付属しているため,やろうと思えば,キャリングケースに入れて持ち運び,移動中の電車や飛行機の中でHMDを使うこともできるのである。ただし,MHL接続時の公称動作時間は約3時間と,ワイヤレス接続時と同じだ。

新開発の専用LSI。型番らしき「OXD90024OO」(もしくはOXD90024OC,OXD90024CC)という文字列も,公開された写真からは読み取れる
HMZ
 ところで,バッテリーユニットにMHL接続すれば映像を表示でき,その場合のバッテリー駆動時間が短くなるという仕様からすると,映像処理関連の機能の大半はバッテリーユニット側に組み込まれていると見てよさそうである。
 実際,HMZ-T3WでもHMZ-T3でも,使用中にバッテリーユニットを耳に当てると,かすかにファンの回るような音が聞こえる――音が気になるとかいうレベルではなく,ごくごく微小なものだが――ので,ファーストインプレッション記事で紹介した新開発の専用LSIは,バッテリーユニット側に搭載されているのではないかと思われる。

 なら,プロセッサユニットは何をしているのかと思った読者もいるだろうが,単なるHDMI切り替え機兼無線送信ユニット……ではなく,サウンド処理,具体的にはサラウンド関連と音質の設定はプロセッサユニット側に残っているようだ。6.3mm径のヘッドフォン出力端子を持つこともあって,サウンド関係の処理はプロセッサ側に残っているのだろう。
 ちなみにこういった仕様のため,MHL接続時だと,サウンド関係の機能は利用できない。

 以上,HMZ-T3シリーズにおける外観上の特徴をまとめてみたが,もちろんHMZ-T3WとHMZ-T3の間には細かな違いがある。先に写真のキャプションで,ヘッドマウントユニットで外側の表面加工が異なるという話をしたが,基本的にはHMZ-T3Wが上位モデル,HMZ-T3が下位モデルという位置づけになっており,付属品も微妙に異なっているのだ。
 具体的には下の写真を見てもらえればと思うが,ワイヤレス接続が前提のHMZ-T3WではHDMIケーブルが1本なのに対し,HMZ-T3では出力機器とプロセッサユニット,プロセッサユニットとバッテリーユニットをつなぐための2本が標準で用意される。一方,付属のインイヤーヘッドフォンは,HMZ-T3Wだと実勢価格が8500〜1万円程度(※2014年1月27日現在)の「MDR-XB90」相当品なのに対し,HMZ-T3ではHMZ-T2から引き続き,同6000円前後の「MDR-EX300」相当品となっている。

左がHMZ-T3W,右がHMZ-T3の製品ボックスに含まれるもの一式。よく見るとけっこう異なっている
HMZ HMZ


ヘッドマウントユニットの装着しやすさと

使い勝手はHMZ-T2比で劇的に向上


 ここからは,ある意味でHMZシリーズにおける最も重要なポイントといえる,ヘッドマウントユニットの使い勝手と装着感を見ていこう。

新開発のレンズユニット
HMZ
 前段でも触れたように,HMZ-T3シリーズでは,ヘッドマウントユニットのデザインが従来製品からかなり変わっているが,実のところ,変わっているのは外側だけではない。1280×720ドット解像度の有機ELパネルを左右の目用として1枚ずつ搭載するという基本コンセプトは踏襲する一方で,光学系が一新されているのだ。ソニーによれば,新開発のレンズユニットは,従来より広視野角で重量も20%以上軽いとのことである。

 HMDでは一般的に,眼の焦点とレンズの焦点がずれると,正しい映像が得られないばかりか,目が疲れて利用にも支障をきたすことがある。そして,HMZ-T2までのHMZシリーズは,レンズの焦点が合うように装着するのがそもそも難しく,一度焦点が合ったとしても,ちょっと頭を動かした程度ですぐにずれてしまう問題があった。
 それに対してHMZ-T3シリーズでは,そもそもレンズの位置合わせで苦労することがほとんどない。レンズの幅を調整する機構が左右独立で,数mmステップ間隔になっているという点ではHMZ-T2から基本的に変わっていないのだが,ラフに調整しただけでも,焦点が簡単に合うのだ。これは,従来製品を愛用しているほど驚く変化だろう。

レンズユニットの幅を調整する機構は,凹みのある部分を標準として,外側に3段階,内側に2段階の,計6段階で動かせる。HMZ-T2比で1段階増えたが,焦点の合わせやすさが劇的に向上したので,従来と同じでよかったかもしれない
HMZ HMZ HMZ HMZ HMZ HMZ

 装着感もレンズに負けず劣らずというか,むしろレンズ周り以上に進化している。

  1. レンズの焦点を合わせやすく,ズレにくくなったため,ヘッドバンドをギチギチに固定する必要がなくなった
  2. ヘッドパッドが大きくなり,可動範囲も大きくなった
  3. ヘッドバンドの調整範囲が広がり,クッションが追加された

 ことで,もう別モノと述べてもいいほどに装着感が向上しているのだ。

HMZ
大きくなったヘッドパッド
HMZ
こちらは新設のヘッドバンド部クッション
 HMZ-T2までは目が少しでも焦点からずれると支障が出たため,頭にしっかりとヘットマウントユニットを固定する必要があった。そしてその場合,あまり大きくないヘッドバンドが額を圧迫してしまい,人にもよるが,1〜2時間で額が赤く腫れて痛くなり,装着し続けるのが困難になることも珍しくなかった。ユーザーの中には,ヘッドバンドを改造して大型化し,額にかかる圧をできる限り下げる対策を行った人もいたほどである。

 その点HMZ-T3シリーズでは,レンズユニットの改善により,そもそも頭部を締め付ける必要がなくなった。そのうえ,ヘッドバンドもさらなる大型化を果たしたのだから,HMZ-T2との違いは推して知るべしだ。しかも,ヘッドバンドの調整範囲も広がっており,HMZ-T2は前後に調整できるだけだったのが,HMZ-T3シリーズでは前後だけでなく,(斜め方向の)高さも調整できるようになった。これにより,額に必要以上の圧がかかることを避けられている印象だ。

ヘッドパッドは前後方向に4段階の調整が可能
HMZ HMZ HMZ HMZ
それに加えて高さも5段階で調整できるようになった
HMZ HMZ HMZ HMZ HMZ

 以上の変更点のおかげもあって,少なくとも筆者は,テストにあたって数時間の連続使用を行っても,額が痛いとか,焦点がズレて再調整が面倒といった思いはしなかった。

マネキンに取り付けた状態で比較。左がHMZ-T3W,右がHMZ-T2だが,並べてみるとヘッドパッドの大型化が分かると思う。ヘッドバンド部にクッションが2つ新設された点にも注目してほしい
HMZ HMZ

 先ほど3.として挙げたヘッドバンドは,HMZ-T2がY字で,調整できる範囲も狭かったのが,HMZ-T3では,バンドの上下分岐部分を動かせる作りに変更され,好みの位置で違和感なく固定できるようになった。ヘッドバンドの長さ調整範囲自体も拡張されており,着脱時の自由度がかなり高まっている。

ここでは一例としてバンドの上下分岐部分をいろいろと弄ってみた。ヘッドバンドの設置自由度も,従来製品比で大きく向上している
HMZ HMZ HMZ
左がHMZ-T3W,右がHMZ-T2で,それぞれ後頭部側から。ゆったり感の違いが伝わるだろうか
HMZ HMZ

ヘッドバンドの調節範囲が大きくなった。これがメガネ派にとっては極めて大きい
HMZ
 また,これらの改善は,メガネで視力矯正を行っている人にとっても,重要なメリットをもたらしている。
 メガネ装着者がHMDを使うにあたっては,メガネの焦点とレンズの焦点を合わせることが必須なのだが,焦点合わせが極めてシビアなHMZ-T2だと,「一度設定したら身動きすらできない」という感じだった。それに対し,HMZ-T3シリーズは,それと比べるとクリティカルさの度合いが圧倒的に下がっているのだ。
 もちろん,裸眼やコンタクトレンズ使用時と比べるとどうしても焦点合わせの難度は高くなるのだが,柔軟さを増したヘッドバンドのおかげで,「ヘッドバンドをゆるめた状態でかぶって締めてから調節する」のが,メガネ装着者でも行いやすくなっている。筆者のような,メガネを常時着用している人からすると,HMZ-T3は,HMZシリーズで初めて「使える」ようになったHMDだとさえ言えるかもしれない。

操作系はヘッドマウントユニットの底面部に集中している
HMZ
 もう1つ,これはメガネとは関係ないが,HMZシリーズ伝統といえるヘッドマウントユニット底面の操作系に若干の変更が入った点も紹介しておきたい。HMZ-T2では,右手側にメニューボタンと十字キー,電源ボタン,ボリュームボタンが集約されており,片手で操作するのは楽だったのだが,電源ボタンとボリュームボタンが近く,音量調整しようとして電源を落としてしまうという“誤爆”が生じやすかった。その点で,HMZ-T3シリーズの実用性は上がっていると述べていいだろう。

HMD外の光が目に入るのを防ぐためのライトシールドは,上部ライトシールドが標準で取り付けられていた。これは使い勝手の面で○だが,下部はソニーが謳うほど取り付けやすいとは思えなかった
HMZ
 ……と,ここまで絶賛に次ぐ絶賛を行ってきたが,従来製品からあまり変わっていない部分もある。たとえば,ヘッドマウントユニットの重量は公称320gで,HMZ-T2比で10gの軽量化を果たしたとされているが,装着時の重量感がとくに軽くなったという印象は,正直受けなかった。また,遮光用のラバーシート「ライトシールド」は,標準で取り付けられている上部のものはともかく,従来よりも取り付けやすくなっていると謳われる下部も,確かに従来製品比で取り付けやすくはなったのだが,大きな改善を果たしているとまでは言いがたい印象だ。

レンズユニット向かって左端に3.5mmミニピンのヘッドフォン出力端子を持つのはHMZ-T2から変わらず。付属のケーブルホルダーで束ねておけるのも変わっていない
HMZ HMZ


レンズユニットの刷新による影響はほぼない

黒の表現調整機能はかなり有効


 前置きが大変長くなったが,ここからはHMZ-T3シリーズのテストに入っていきたい。まずは画質周りからだ。

HMZ-T3Wにおける虹色の出方を見たカット。レンズユニットが新しくなったことによる影響は,少なくとも筆者はまったく感じなかった
HMZ
 なんと言っても気になるのは,新しくなったレンズユニットだ。ファーストインプレッション記事でも触れてあるように,単純なコストだけで見れば,新しいレンズユニットは,従来製品比でグレードが落ちている。
 しかし,結論から先に述べると,HMZ-T3シリーズとHMZ-T2を順番に装着しながら映像で確認しても,レンズユニットの違いによる画質の違いは感じられなかった。ヘッドマウントユニットを頭から取り外し,少し斜めからレンズユニットを見たときに確認できる「虹色」の出方が多少変わっており,HMZ-T3シリーズのほうが,なんというか「虹色が強く出る」傾向にある。その意味では違いがあるものの,実用上,目に見えて画質が低下して感じられるとか,そういった心配は無用と断言していいのではなかろうか。

 もう1つ,画質を左右する新要素となるのが,ソニーの最上位Blu-rayレコーダー「BDZ-EX3000」で搭載される映像エンジン「CREAS Pro」の回路とノウハウを継承したという「エンハンスエンジン」の採用である。このエンジンを採用したことにより,1280×720ドット解像度のパネルを採用しつつ,1920×1080ドットに迫る解像感を得られるというのがソニーの主張だ。

 というわけでHMZ-T3シリーズとHMZ-T2を見比べてみたのだが,正直に言えば「よく分からない」。比較にあたっては着脱を挟むため,記憶を頼りに比較しなければならないので,比較するのは非常に難しいのだが,少なくとも,いくつかの映像やゲーム画面で見比べた限り,「ここがこうよくなった」「悪くなった」と断言するのは難しいというのが筆者の見解である。
 前段でも述べたとおり,映像エンジンLSIはバッテリーユニット側に搭載されている可能性が高い。新開発のLSIによって,バッテリーユニット側に搭載できるほど小型化,低発熱化できたことのほうが,HMZ-T3シリーズにとっては重要なのではなかろうか。

 続いて機能面では,冒頭でも紹介したとおり,ゲーム用の画質設定が拡充されたというのがHMZ-T3シリーズにおけるトピックとなる。
 HMZ-T3シリーズでは,OSDの「画質・映像設定」メニューに用意された設定項目「画質モード」から,プリセットされた画質設定を選択可能だ。HMZでは初代機から画質モードに「ゲーム」が用意されていたが,HMZ-T3シリーズには「ゲーム1」「ゲーム2」「ゲーム3」「ゲーム4」と,一気に選択肢の数が増えている。

 この4つのモードで何が違うかだが,「ゲーム1」が最も弱く,「ゲーム4」が最も強く,それぞれ,暗部の視認性を引き上げる方向の設定が行われる。実際どの程度の違いがあるのかを確認すべく,今回はあえて,無理を承知でPC版「バトルフィールド 4」の1シーンを使って,HMZ-T3のレンズに映る映像を撮影してみた。その結果が下の4枚だ。ピントが非常に合わせづらいため,ボケているのは勘弁してもらえればと思うが,暗部の“持ち上がり方”に違いがあるのは分かると思う。とくに「ゲーム4」はかなり極端で,画面が白っぽくなるレベルにまで持ち上げているのが分かる。

HMZ
画質モード「ゲーム1」
HMZ
画質モード「ゲーム2」
HMZ
画質モード「ゲーム3」
HMZ
画質モード「ゲーム4」

 ちなみに,4つのプリセットは,「画質モード」の詳細設定を組み合わせたものになっており,黒の沈み方を調整する「クリアブラック」,太い輪郭などに対する中域と細部に帯する高域とで2種類用意された「シャープネス」,俗にいうコントラスト設定を行う「ピクチャー」,黒浮きや白沈みを押さえるべくコントラストを自動的に補正する「コントラストリマスター」などを組み合わせたものになっている。なので,プリセットをベースとして,ユーザーがさらに設定を追い込んでいくことも可能だ(※プリセットを標準状態に戻す機能も用意されている)。
 たとえば,暗部視認性をクリアブラック設定でさらに調節するといったことが行える。クリアブラックは暗部の輝度を画質が破綻しないよう引き上げる機能で−3〜+3の7段階設定が行えるため,設定を詰めたい場合には試してみるといいだろう。

 なお,画質モードには1〜4の「ゲーム」以外に,スポーツなどメリハリの効いた映像に適しているとされる「ダイナミック」,映画向きの「シネマ」,ユーザーが画質をカスタマイズできる「カスタム1」「カスタム2」,それと標準的な画質に調節された「スタンダード」というモードもある。ゲームのプリセットを残しつつ,「カスタム1」や「カスタム2」の設定に自分なりのゲーム向きの設定を追加するのも手だろう。

 もう1つ,OSDメニューに「スクリーン」という設定が追加されている点にも触れておきたい。これは平面視表示時のみに利用できる機能で,簡単にいうと,映画館のように,スクリーンがカーブして見えるようにするかどうかを設定できる項目だ。設定「ノーマル」だと従来どおりの長方形画面となるのに対し,「シアター1」だと映画館風に画面の両サイドが縦方向へ少し広がる。そして「シアター2」だとシネスコサイズ向きに画面の両端が縦方向へさらに広がる感じとなる。

 説明だけで映画用というのは分かってもらえると思うが,ゲームだとどう見えるだろうか。ここではPC版のBF4だけでなく,PlayStation 3(以下,PS3)版の「The Last of Us」でも試したが,いずれのタイトルにおいても,「シアター1」「シアター2」設定では,開けたシーンで臨場感が増す印象を受けた。両サイドの映像が広がって,包まれている感が増すからだろう。
 ただ,室内のシーンだと,画面両サイドの映像の歪みが少し目立つようになるため,あまり向いていないようにも感じられた。いずれにせよ好みの問題という気はするので,興味があれば試してみるのがいいだろう。なお,念のため付け加えておくと,2D表示のゲームは画面が歪むので,あまりオススメできない。


サウンドは機能面が向上したが

ゲームにおけるメリットは?


PS3接続時の「音質・音声設定」メニュー。DTS-HD Master Audioの対応を確認できる
HMZ
 画質に触れたついでに,サウンド面についてもここで触れておきたい。
 サウンド関連では,DTS-HD Master Audioと7.1chリニアPCMの新規対応がウリで,PS3で確認したところ,DTS-HD Master Audioの対応を確認できた。7.1chリニアPCMはPS3側がサポートしていないようだったが,いずれにせよゲームで採用されるようなフォーマットではないので,あまり気にする必要はないだろう。ビデオを見るときに,選べるなら選んでおく,くらいの認識でいい。

 HMZ-T3シリーズでは,バーチャルサラウンド出力が従来の5.1ch対応から7.1ch対応へグレードアップしたとされているが,これも正直,ゲームをプレイする限りはよく分からなかった。批評的にチェックすれば分かるのかもしれないが,少なくとも,一聴して分かるような違いはないと述べていいのではないかと思う。

左がHMZ-T3Wの付属インイヤーヘッドフォンと交換用イヤーカップ。右がHMZ-T3の付属インイヤーヘッドフォンと交換用イヤーカップとなる。付属品も含め,ぱっと身の違いは大きいのだが,実使用上の違いは見た目ほど大きくない
HMZ
 サウンドといえば,HMZ-T3Wで新たに採用された,MDR-XB90相当のインイヤーヘッドフォンも気になるところだが,これも,ゲームやビデオのサウンドを聞くに当たって,HMZ-T3やHMZ-T2に付属する,MDR-EX300相当のものとの間で大きな違いがあるようには感じない。HMZ-T3Wの場合,サイズ違いのイヤーカップが用意されているだけでなく,より遮音性が高いとされる,スポンジ付きのイヤーカップも付属しているが,違いといえばその程度ともいえる。

 なお,余談気味に続けておくと,HMZ-T3シリーズでは,装着するヘッドフォンがインイヤー型がオーバーイヤー型かでバーチャルサラウンド設定を切り替える機能「ヘッドホンタイプ」が用意されている。そこで,設定を切り替えたうえで,筆者私物のソニー製オーバーヘッド型ヘッドフォン「MDR-7506」を試してみたところ,サラウンド感があまり得られず,少し驚いた。「バーチャルサラウンド出力はヘッドフォンを選ぶ」というのはよく聞くが,本当のようである。


表示遅延はHMZ-T2比で大幅に改善

ワイヤレス接続でも低遅延に


 ワイヤレスにも対応するHMDとしての基本機能と性能を見てきたが,ここからは,HMZ-T3シリーズの大きな特徴でもある,「60Hz表示で,平面視か立体視かを問わず1フレーム(約16.67ms)」とされる遅延をチェックしていこう。HMZ-T2は4Gamerのテストで2フレーム以内,言ってしまえば一般的な液晶テレビのHDMI入力並みの表示遅延だったわけだが,HMZ-T3で本当に低遅延は実現されているのか。「LCD Delay Checker」(Version 1.4)を使って調べてみることにした。

 比較対象として用意したのは,4Gamerのディスプレイレビューにおけるリファレンス機となっているBenQ製の24インチワイドモデル「XL2410T」。ビデオ出力用のPCからDVIでGefen製のDVIスプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)と接続して2系統に分け,片方をDVI−HDMI変換ケーブル経由でHMZ-T3シリーズと,もう片方はXL2410TとDVIでそれぞれつなぐ。その状態でLCD Delay Checkerを実行し,ニコン製デジタルカメラ「D80」を使って,2つの画面表示が映り込むように撮影するというのがテストの流れだ。
 XL2410Tでは,「FPS」モードを選択のうえ,いわゆるパススルーモードにあたる「Instant Mode」,さらにオーバードライブ機能に相当する「AMA」も有効という,最も低い表示遅延が期待できる設定にしてある。

 まずは,ワイヤード接続となるHMZ-T3の結果から見ていこう。HMZ-T1の画質モードは「ゲーム1」,解像度は1920×1080ドット,垂直リフレッシュレートは60Hzで設定したときの結果が下の写真だ。
 HMZ-T3のレンズを覗き込みつつ,奥に置いたXL2410Tの画面も撮るという“無理な”撮影を行っているため,やや見づらいが,テスト結果は「最良のケースだとほぼ遅延なし,ワーストケースだと約22ms」というものになった。遅延には揺らぎがあるので,最小は遅延ゼロ,ワーストケースでは1.5フレーム程度の遅延があると理解しておけばいいだろう。ゲーマー向けを謳うディスプレイでも1フレーム程度の遅延が見られることは珍しくないので,良好な結果と述べていい。

HMZ-T3:画質モード「ゲーム1」,1920×1080ドット@60Hz
ベストケース0ms,ワーストケース22ms
HMZ HMZ HMZ

 今回は「ゲーム2」「ゲーム3」「ゲーム4」でも撮影を行ったが,暗部の視認性以外に違いはないようで,遅延傾向はまったく変わらなかった。

 ゲーム以外の画質モードでは「スタンダード」も試した。下に結果を示しておくが,ワーストケースは21msだ。前述のとおり,遅延には若干のゆらぎがあるので,「たまたまそうなった」という可能性はあるが,「スタンダード」とゲーム向けのモードの遅延に大きな違いはないようである。

HMZ-T3:画質モード「スタンダード」,1920×1080ドット@60Hz
ベストケース12ms,ワーストケース21ms
HMZ HMZ HMZ

 ところで,HMZ-T1では「コントラストリマスター」という機能の利用で遅延が増える傾向が見られていた。この問題はHMZ-T2で改善されていたが,HMZ-T3では映像エンジンが変わっているということもあり,念のため調べておこう。
 なお,コントラストリマスターはコントラストを自動的に調節してくれる機能で,選択肢は「オフ」「弱」「中」「強」の4つ。標準は「オフ」だ。今回は,画質モードを「ゲーム1」,コントラストリマスターを「強」にした状態でテストを行ったが,その結果は下に示したとおり。ワーストケースで1.5フレームほど(22ms)なので,影響はないと述べていいだろう。

HMZ-T3:画質モード「ゲーム1」,1920×1080ドット@60Hz,コントラストリマスター「強」
ベストケース11ms,ワーストケース22ms
HMZ HMZ HMZ

 ここまで解像度1920×1080ドット入力のテスト結果を示してきたが,今回は,HMZ-T3にとってのネイティブ解像度である1280×720ドットでも同じテストを行っている。テスト結果は下に示したとおりで,1920×1080ドット時と比べても大きな違いはないようだ。

HMZ-T3:画質モード「ゲーム1」,1280×720ドット@60Hz
ベストケース14ms,ワーストケース20ms
HMZ HMZ HMZ
HMZ-T3:画質モード「スタンダード」,1280×720ドット@60Hz
ベストケース14ms,ワーストケース19ms
HMZ HMZ HMZ
HMZ-T3:画質モード「ゲーム1」,1280×720ドット@60Hz,コントラストリマスター「強」
ベストケース14ms,ワーストケース20ms
HMZ HMZ HMZ

 続いてはHMZ-T3Wだ。まず,ワイヤード接続時の傾向だが,これはHMZ-T3と変わらない。ワイヤード接続時のHMZ-T3WはHMZ-T3とほとんど同じ製品なので,この結果は当然だ。
 念のため,画質モードを「ゲーム1」に設定したうえで,HMZ-T3Wをワイヤード接続したときの結果を下に示しておきたい。

HMZ-T3W(ワイヤード接続):画質モード「ゲーム1」,1920×1080ドット@60Hz
ベストケース11ms,ワーストケース22ms
HMZ HMZ HMZ

 では,ワイヤレス接続時はどうか。まずは画質モード「ゲーム1」で1920×1080ドット設定したときの結果からだが,ワーストケースでは21msの遅延が見られた。前述のとおり,ワイヤード接続時はベストケースでXL2410Tとほぼ同じフレームが表示されている例が確認されたが,ワイヤレス接続時は10〜21msの遅延がコンスタントに見られるという違いもある。
 とはいえ,ワーストケースでも1.5フレーム以内には収まっているわけで,ワイヤレス接続時でもワイヤード接続時と遅延状況に違いがないとは述べていいだろう。

HMZ-T3W(ワイヤレス接続):画質モード「ゲーム1」,1920×1080ドット@60Hz
ベストケース12ms,ワーストケース21ms
HMZ HMZ HMZ

 1920×1080ドット設定でHMZ-T3W側のテスト条件を変えながら撮影した結果も掲載しておくが,ベストケースで10ms台,ワーストケースで約1.5フレームという点は画質モード「ゲーム1」のときと変わっていない。ワイヤレス接続時でも,遅延状況に違いは出ないと述べてよさそうだ。

HMZ-T3W(ワイヤレス接続):画質モード「スタンダード」,1920×1080ドット@60Hz
ベストケース12ms,ワーストケース22ms
HMZ HMZ HMZ
HMZ-T3W(ワイヤレス接続):画質モード「ゲーム1」,1920×1080ドット@60Hz,コントラストリマスター「強」
ベストケース11ms,ワーストケース22ms
HMZ HMZ HMZ

 本稿の序盤でも指摘したように,HMZ-T3シリーズで,映像関係のプロセッサは,バッテリーユニット側に内蔵されていると考えられる。映像のスケール変換もバッテリーユニット側で行われているはずだ。
 したがって,HMZ-T3Wにおいては,情報量が多いフルHD解像度の映像がそのままワイヤレスで送信されていると考えるのが妥当で,ワイヤレス接続では遅延が大きくなっても不思議ではない。にも関わらず,ワイヤレス接続時の遅延が高速な液晶ディスプレイと比べて1.5フレーム未満に収まっているというのだから,かなり衝撃的な結果と言えるだろう。

 なお,情報量が減る1280×720ドット入力時なら,表示遅延は短くなることはあっても長くなることはないと想像できるが,事実そのとおりで,1920×1080ドット時と比べても大きな違いはない結果となった。あまりにも変化がないので,ここでは画質モード「ゲーム1」で撮影したものだけ掲載しておきたい。

HMZ-T3W(ワイヤレス接続):画面モード「ゲーム1」,1280×720ドット@60Hz
ベストケース13ms,ワーストケース20ms
HMZ HMZ HMZ


HMZ-T3Wのワイヤレス接続とバッテリー運用は

意外に(?)実用性が高い


 最後に,HMZ-T3Wのワイヤレス接続と,それに関連したバッテリー周りのテスト結果をまとめておこう。

 HMZ-T3Wのワイヤレス接続は,「WirelessHD Consortium」(ワイヤレスHDコンソーシアム)という業界団体が策定した「WirelessHD 1.1」規格に準拠したものとなっている。WirelessHD 1.1は,60GHz帯(※HMZ-T3Wでは59.40GHz63.72GHz)という極めて高い周波数を用いて4Gbpsの帯域幅を確保し,1920×1080ドット,リフレッシュレート60Hzのビデオを非圧縮で伝送できるというものだ。

OSDメニューから「インフォメーション」を選ぶと,最大4本のアンテナインジケータで,受信強度を確認できる
HMZ
 本稿の序盤で,付属のスタンドを用いれば最大で7mの無線到達距離を確保できるというスペックを紹介したが,実際に使った印象だと,8畳程度の部屋なら,バッテリーユニットの平置きか縦置きかをあまり気にすることなく利用できる。電波の周波数が非常に高いため,直線性が強く,遮蔽に弱いと考えられるが,同じ部屋の中にプロセッサユニットとバッテリーユニットがあるなら,壁面や天井からの反射波を拾って受信できるようだ。部屋着のポケットに入れた程度なら,受信強度は多少弱くなるものの,映像は途切れずに利用できたことも述べておきたい。

 ただ,ヘッドマウントユニットとバッテリーユニットを持って部屋の外に出ると,とたんにまったく受信できなくなる。木製のドア1枚隔てた状態でこれなので,壁のようなものに遮られるとアウト,という理解でいいだろう。
 なお,挙動はオンかオフという感じで,「電波が弱くて映像が乱れる」という,中途半端な状況は経験しなかった。

 さて,バッテリーユニットを身につけた状態であれば,ヘッドマウントユニットを装着した状態で,ユーザーは室内を自由に動き回れるわけだが,当然のことながら,ヘッドマウントユニットを装着した状態だと周囲の視界が著しく悪化する(※ライトシールドを装着した場合はほぼゼロ)なので,現実にはうろうろするわけにはいかない。
 「ならば無駄ではないか」と思うかもしれないが,実はそうでもない。HMZ-T2までのシビアな装着感から脱却したHMZ-T3Wは,ケーブルを引っかけたりしてヘッドマウントユニットがずれてしまう心配なしに頭部や身体を動かせるようになるのだ。これがもたらす精神的な余裕は存外大きいのである。

 もう1つ,いい意味で裏切られたのが,バッテリー駆動時間だ。プロセッサユニットとバッテリーユニット間の距離を2mほどとし,電波状況が極めて良好な状況を作ったとき,バッテリー駆動時間は公称値の1.5倍となる4.5時間利用できた。ワイヤード接続時も,HMZ-T3WとHMZ-T3は使用開始後8時間を超えても映像出力が行えていた(※バッテリーインジケータは残量0を示していたので,それ以上はテストしていない)。Xperia Aを用いたMHL出力時も3時間30分と,若干ながら公称値よりも長時間動作したことになる。基本的には公称値以上のバッテリー駆動時間を期待できると述べてよさそうだ。

鼻が来るところに四角い形状のセンサーが搭載されている
HMZ
 ちなみに,HMZ-T3シリーズでは,バッテリー駆動を採用するのに合わせて,ユーザーが装着していないときには自動的に画面表示が無効化される仕組みが採用されている。見る限り,ヘッドマウントユニットの鼻が来るところに埋め込まれた光学センサーによって「装着しているかどうか」を検出しているようで,ヘッドマウントユニットを外して少し時間が経つとに画面がオフになった。どの程度の時間で画面がオフになるかは,センサーによる光の検出具合によって変わるようで,はっきりしたことはいえないが,数秒という感じではなく,HMDを外してから画面表示がオフになるまでは1〜3分程度かかっていた。


使い勝手と表示遅延の大幅な改善が魅力

「いかにも過渡期」な仕様に納得できるなら買い


HMZ
 びっくりするほど長いレビュー記事になってしまった。ゲームを意識した画質モードと,低遅延の効果は,確かにあると述べていいだろう。とくに,ワーストケースでも高速な液晶ディスプレイ比で1.5フレーム程度にまで収まった表示遅延は大いに評価していいと思う。コンスタントに2フレーム以上遅れていたHMZ-T2と比べると,遅延状況には(プレイし慣れているゲームなら)体感できるレベルの違いがある。HMZ-T3Wのワイヤレス接続時にも遅延状況が変わらないという点もプラス材料だ。

 また,なんといっても素晴らしいのはヘッドマウントユニットの装着性だ。まだ「重さ」というハードルはクリアできていないので,これが完成形とまでは言わないが,HMZ-T2とはまったく異なる。「装着するごとに焦点を調整して,頭をぎゅっと固定する」作業から解放されたのは,従来製品のユーザーなら感動モノ。また,筆者のようなメガネ利用者からすると,ついに登場した「マトモに使えるHMZ」であり,この点も強調しておきたい。

HMZ
 ただ,HMZ-T3シリーズ全体から滲み出ている“こなれてない感”も否定はできない。
 理想を言うなら,HMZ-T3Wのバッテリーユニットは,ヘッドマウントユニット側に集約されているべきだろう。ヘッドマウントユニットとケーブルで直結されたバッテリーユニットが存在することで,ケーブルからの完全な解放は実現できていない。ワイヤレス接続が前提となるはずのHMZ-T3Wで,プロセッサ側にヘッドフォン出力を備える仕様もちぐはぐだ。また,ワイヤード接続でもバッテリーユニットの利用が必須というのは,「HMZ-T3Wのアイデアが先にあって,それをベースに低価格したのだろう」というのはよく分かるが,それでも,「理にかなった仕様」とは到底言えない。

 もちろん,ヘッドマウントユニットにバッテリーを内蔵してしまえば,ただでさえ軽くはないヘッドマウントディスプレイがさらに重くなってしまう。ヘッドバンド部に取り付けるとしても,重量バランスの再考は必要と思われ,一筋縄ではいかないはずだ。その意味では将来に期待といったところだが,それだけに,ワイヤレス対応は時期尚早だったのではないか,という気もする。

 その意味でHMZ-T3シリーズは,HMZ-T2までの集大成的な存在であると同時に,次世代モデルに向けたα版,もしくはβ版的な要素も詰め込まれた製品であると言えるだろう。いかにも過渡期モデルといった部分は確かに存在し,また,完成度のそれほど高くない新要素によって実勢価格が上がってしまっているのも残念だが,歴代のHMZで最も万人向けであり,最もゲーマー向けのモデルであるのも確かだ。こなれていない部分に納得できるなら,買う価値のあるHMDだとまとめておきたいと思う。

ゲーム方面に舵を切ったのだから,次はぜひあと一歩踏み込んでヘッドトラッキング機能とカメラを搭載してほしいと思うが,どうだろう
HMZ

ソニーストアのHMZ-T3シリーズ販売ページ

  • 関連タイトル:

    HMZ

  • この記事のURL:
line
4Gamer.net最新情報
トピックス
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:05月27日〜05月28日