― 連載 ―

ハーツ オブ アイアンII 世界ふしぎ大戦!
第4回:前進,前進,前進進。(中国共産党)

 全世界規模で展開された第二次世界大戦を,そのまま再現するストラテジーゲーム「ハーツ オブ アイアンII」で,“ぶっちゃけあり得ない”感じのリプレイを展開する「ハーツ オブ アイアンII 世界ふしぎ大戦!」。今回はここ,中国からお届けします。

 

 1930年代から第二次世界大戦にかけての,中国の政治情勢は,国民党,共産党,日本軍(とその傀儡勢力)の三極構造で成り立っていました。もちろん,日本軍は国民党/共産党共通の敵だったわけですが,事はそう単純ではありません。

 

 1911年に勃発した辛亥革命は,列強の侵略から中国を守れない清朝をあっけなく打倒しましたが,それに続いたのは各地の有力者が勢力争いを続ける,軍閥割拠の時代です。
 袁世凱の系譜を引く北洋軍閥政府を倒し,ばらばらになった中国を再度統一すべく,孫文が指導する国民党勢力は広州から北京を目指し,途上の軍閥勢力を糾合しつつ攻め上ります(北伐)。「連ソ容共扶助工農」のスローガンが示すとおり,孫文時代の国民党は共産党と協力関係にありました(第一次国共合作)。
 これに対し,北伐を指揮する軍事的実力者にして,孫文の死後その後継者となった蒋介石は,共産党との対決路線を選びます。北伐達成を目前にした1927年,蒋介石は共産党員を排斥する上海クーデターを敢行,ここに第一次国共合作は瓦解し,以後長期にわたる国共内戦に突入します。
 国民党軍は1928年には北京から張作霖を追い出し,北伐は一応の完成を見ました。そして,日本軍が東北軍閥の総帥たる張作霖を爆殺(満州某重大事件)したのをきっかけに,東三省を支配する東北軍閥は国民党の傘下に入り,国民党による中国統一事業はいよいよ達成されるかに見えました。
 しかし,日本の本格的な介入はこれからです。日本軍は1931年に満州事変を引き起こし,東三省を占領したうえ,清朝の末裔溥儀を担ぎ出して,傀儡国家「満州国」を成立させます。

 日本のあからさまな侵略行為に対する国民党の反応は,極めて緩慢なものでした。蒋介石は「安内攘外」,まず共産党を倒して国内をまとめてから外敵の侵略に対抗すべきだ,という路線を標榜します。これは,陰に陽に第二次世界大戦中をも通じてほぼ一貫した,国民党の基本政策となります。
 対する共産党は内戦中止を呼びかけつつ,抗日優先の立場を貫きます。この時点での軍事対決はどう考えても不利な共産党が,打ち出した路線としても意識する必要がありますが,国民の間に広がる抗日の機運は,共産党への支持を広げていきます。
 1936年に張学良が,蒋介石を監禁して内戦停止と抗日戦への注力を迫った西安事件,それを受けて成立した第二次国共合作の体制で,中国は日中戦争を迎えます。しかしながら,上述のような国民党と共産党の基本的スタンスは,戦争中も変わることがありませんでした。

 共産党が勢力を増せば,国民党は来たるべき内戦に備えて抗日戦争に本腰を入れられなくなる。すると,国民の支持が共産党に向かい,ますます共産党の勢力が増す……。日本軍を挟んだ国共対立は,国民党にとってまさに負のスパイラルとなりました。
 第二次世界大戦で米英は蒋介石政権を支援し,物資と兵員,軍事顧問を中国に送り込みます。中国に派遣された米軍を指揮するのは,米軍アジア方面司令官のスティルウェル中将でしたが,彼は後に蒋介石と対立し,解任されてしまいます。対立の最大の原因は,蒋介石が抗日戦争に必ずしも積極的でなかったことでした。
 スティルウェル中将の後任となったウェーデマイヤー中将が,気の利いた愚痴を連発する回想録「第二次大戦に勝者なし」で語るとおり,アメリカが当時の中国情勢――蒋介石の置かれた立場――を十分に理解していたとは思えません。場当たり的な実利主義と教条主義が,ときに自国の長期的な利益を損なう場合があるという,アメリカ外交の通弊が露呈した例といえるでしょうか。

 抗日戦争を勝利で終えた中国では,ほどなく国共内戦が再燃,激戦のすえ共産党が国民党を打ち破り,国民党を台湾へと追いやります。国民党政権を支持していたはずのアメリカは,的確な推移予測と断固たる意思を欠いたまま,積極的な介入の機会を逸してしまいます。その後長らく共産党政権を認めなかったアメリカの外交姿勢からさかのぼって見るならば,これは明らかな失策でした。そしてそのツケを,アメリカは朝鮮戦争において「人民志願軍」という名の共産党軍(中国人民解放軍)と砲火を交える形で,支払うこととなるのです。

 ここでクエスチョンです。全体主義(ドイツ・イタリア・日本)打倒の戦列が敷かれても,諸外国の支援が国民党にばかり寄せられるなか,内戦を独力で勝ち抜いた中国共産党の軌跡は,まことにドラマチックなものでした。しかし,もし,張学良が西安事件を起こさなかったら? またもし,ディキシー・ミッションがアメリカと中国共産党の早期の接近を実現していたら? と,さまざまな想定を重ねていったとき,中国共産党が史実に匹敵する鮮やかな勝利を収められる可能性は,いったいどの程度あったのでしょうか?

 

中国共産党の解説――かと思ったら絵柄だけ共産党で,説明は国民党のもの。1936年段階で,画面上に用意されている担当国候補には国民党しかなく,国旗のどれかを右クリックすることで選べる“世界のそのほかの国”扱い。要は1936年のメキシコをやりたいな,とか思うときと同程度の位置付けである。うーむ

 

資源も工業力もない人民の軍隊

 中国共産党でプレイを開始して最初に絶句するのは,「何もない」ことについてである。人材なし,ICなし,技術なし,開発力なし。あるのはただ,黄河沿いに作られた要塞のみである。
 これで果たして日本軍を止められるのか? そのうえで,国民党から中国を解放できるのか? 正直言って何をどうしたものやら,というのが最初の印象である。

ゲーム開始時における,中国共産党の軍隊。毛沢東,朱徳がそれぞれ軍団を率いている

 圧倒的な劣勢下だが,とりあえず1947年12月末日のゲーム終了時に,地上に中国共産党の旗が残っていることを目標に定めよう。孫中山先生(孫文)の思想の正統な後継者は,ピーナツ頭の蒋介石などではなく我々であることを,世界に知らしめるのだ。

 なおこの連載は第二次世界大戦に関わったいかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていない。ときに過激な表現が出てくることもあるが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものである。あらかじめご了承いただきたい。

 さて,中国共産党に何ができるかを考えてみよう。1936年時点で中国共産党が持っているのは3プロヴィンス。そのうち資源やICを産出するのはイェンアン(延安)だけだ。3プロヴィンス全域には強度3の要塞,そしてトウ(「登」におおざと)小平,林彪,毛沢東の3人からなる研究チームがある。ただしスキルは3人で合計7。3人寄ってドイツのポルシェ社に及ばないのである。兵力は1936年式歩兵がちょっぴりだが,1936年式歩兵の技術自体は,ブループリントによる供与モノだ。事実上ほぼすべてまっさらな技術開発シートと,IC5。以上である。これで何をしろと……。

 最大の問題はIC不足だ。ICが修正込みで6ということは,物資生産や国民不満度対策などを念頭に置いた場合,工場を新たに建設するIC5.0が出ないばかりか,歩兵師団を生産するICすら捻出できないことになる。つまり,すでに工場が建っている他プロヴィンスを占領するのが最適解といえよう。
 1936年において,我が軍は国民党と戦争状態にある。第二次国共合作はまだ実現していない。総じて戦意の低い反動勢力に負けることはないが,仮にも正規軍と真正面から戦争したのでは,人民がこうむる被害もまた大きい。

 

共産党軍には,なぜか後年のホー・チ・ミン,つまりグエン・アイ・クオク(阮愛國)がいる。いや,いたにはいたかもしれないが,普通に指揮官として使っちゃっていいのだろうか

 それに,新たな革命根拠地を手に入れるには,我が軍の陣容は十分でない。ここは長征における損耗からの回復を優先すべきなのだが,普通に軍隊を構築していくと,軍の維持費がICを圧迫,軍そのものの維持が困難ということになりかねない。
 考えに考えたすえ,まずは延安に工場を建て増しすることにした。工場は通常約1年で完成するが,IC不足のため2年近い期間が必要になるだろう。だが今軍隊を作ったところで,負のスパイラルが深くなるだけなので,ここは我慢のしどころだ。
 そもそも歩兵師団を1〜2個作ってみたところで,国民党&軍閥タッグの数にはまるで及ばないし,質的には日本軍に遠く及ばないのだ。

 もう一つの問題は技術開発の方針であろう。即座に思いつくのは歩兵と山岳歩兵を中心としたアップグレードであるが,ここで思い出さねばならないことがある。技術は,開発しただけではせいぜい外交的な交換材料にしかならない。開発した技術に基づき,新たにその兵種を生産するなり,既存の軍をアップグレードする費用=ICを投じるなりしなければ,実質的な効果はないのだ。そして,我々にそんなICはない。
 また,軽戦車の開発さえできていない現状を見て,ゆっくりでもいいから戦車開発を……などと思うのも軽率である。戦車は石油を消費するが,我が井崗山根拠地は石油など産出しない。貿易で調達するには交換可能な資産が必要だが,そんなものはどこにもないのだ。つまり戦車が開発できないのは不利な材料ではなく,必然だと知る必要がある。

毛沢東主義,その軍事的実践

共産党軍を強化するには,軍事ドクトリンの研究が有効。しかし,なぜか毛沢東の軍事思想は高く評価されていない。後年の文化大革命で割り引かれてしまったのだろうか

 では何をすべきか? 答えは一つ,ドクトリンの研究である。軍事ドクトリンは開発さえすればその効果があまねく及ぶし,その際にICは要求されない。タダで軍が強化されるとなれば,やるべきことはこれしかないだろう。幸い,ドクトリン研究においては林彪と毛沢東という世界に誇るべき2名がいる。革命戦士はすべからく毛同志の「遊撃戦論」「持久戦論」を読むべきなのである。もっとも,このゲームで毛沢東はスキル1なので,永久に出番がないことは我が党の最高機密だが。

 えー,とりあえず近い将来国民党と統一戦線を結成するはず,と主席が預言していたので,それまでの間,タイミングを見計らって遊撃戦を実践する。狙いはシャンシー(山西)軍閥だ。タイヨアン(太原)にIC6を持つほか,ベイピン(北平)にIC4,フフホト(呼和浩特)に1,さらに資源産出エリアも多い。シーアン(西安)にIC1程度で,ほかはナンキン(南京)に行くまでまともなエリアを持たない国民党とは大違いで,閻錫山はお金持ちのようである。この際,お隣にある金庫を開けに行く……じゃなくて,近隣の反動勢力から討伐するのが戦略の常道というものだ。

 

山西軍閥と講和。一気に領土を拡張したが,価値の低い土地ばかり。渤海まで進出できただけましかもしれないが

 そうこうするうちに太原は陥落,山西軍閥と和平交渉に入る。プロヴィンスをたくさんくれるというので,深く考えずに承諾するが,よく見ると太原と北平は入っていない。
 さっそく歴史を修正(編注:リセットです。タダのリセット)しようかとも思ったが,考えてみれば近い将来,日本軍が押し寄せてくること必定なわけで,どちらもそうそう長期の維持ができるとは考えにくい。それならば,延安のご近所にあるフフホトのIC1を死守する方針のほうが正しそうだ。
 だが,あにはからんや。それから間もなく日本が国民党と軍閥,そして我が軍に宣戦布告を行う。旧山西軍閥領は瞬く間に日本が席巻し,フフホトまでが日本軍の占領下に置かれた。
 しかしまあ,これはこれでよい。山西軍閥領のまま,まかり間違って山西軍閥が国民党に吸収されてしまい,その後で日本軍が山西軍閥領を支配した場合,そうしたプロヴィンスを我が軍が日本軍から解放しても,プロヴィンスの支配権は国民党に行ってしまう。直前まで我が領土であったフフホトが日本に占領された今回の場合,取り返せばまた我が国の領土に戻る。要は将来的な目標が設定されたということだ。

 

日本が中国に宣戦布告。質,量ともに日本軍はかなり強い。あえて弱点を指摘するならば,やはり装甲車両の弱さか。決定的な突破力がないため,防衛線は比較的張りやすい

 

あっという間に黄河以北に押し込まれた共産党軍。南方ではすでに日本軍が黄河の渡河を完了,中国の将来に暗雲が立ち込めるが……
奮わない日本軍と,つけ込めない中国共産党

日本が対米宣戦布告。アメリカにはぜひがんばって日本を封じ込めていただきたいと思ったのだけれど……。とにかくこのプレイでアメリカは何もしなかった

 さてこのあたりで,毛沢東主席一流の戦略眼をもって,戦局全体を見つめ直してみよう。……どうも世界は,かなり変なことになっているようだ。
 日本はイギリスやオランダに宣戦布告したにもかかわらず,英領マレーシアや蘭領インドネシアは放置したまま。仏領インドシナはヴィシー政府から割譲を受けたものの,国民党がベトナムに侵攻するありさまだ。フィリピンは半分くらいを日本が占領するが,アメリカ傀儡政権はまだまだ元気だ。八紘一宇や大東亜共栄圏はどこへやらといった情勢である。

 

もっとも,日本のアジア侵攻状況がこんな有様では,アメリカも真剣に対日戦争をする必要はないと判断したのかもしれない。アメリカもがんばらなかったが,日本はがんばりが足りなすぎ

 中国大陸はといえば,やはり東南アジアの資源エリアを押さえられなかったためか,日本軍の攻勢は鈍い。日本軍は長江を越えられず,南京は陥落する気配さえない。これが帝国主義列強と闘う中国人民の強さである!
 いや,いや,待ってくれ。日本軍には1942年ぐらいまで,もうちょっとがんばって国民党を叩いてもらわなくては,我が軍がつけ入る隙が生まれないではないか。一応の同盟国である国民党の技術開発の様子を見ると,南京の膨大なICを背景として着実に水準を上げている。このまま質と量が揃ってしまうと,日本軍が多少攻勢を強めたところで,アメリカ参戦以降の巻き返しで我が軍がおいしいところを持っていくことさえできないではないか。
 ヨーロッパはどうかといえば,いつまで経ってもドイツはソビエトに宣戦布告する様子がない。いや,ファシズム陣営の低調を我が党は喜ぶべきなのか,悲しむべきなのか。
 そうこうするうちにアメリカが対日宣戦布告。日本は相変わらず東南アジアで負け,中国大陸ではなおも長江を越えられない。むしろじわりじわりと国民党の反撃が始まりつつあるようだ。

 

日本軍に対する記念すべき初勝利にして,貴重な1IC確保の瞬間。これからほぼ2年間,ひたすら耐える日々が続く 悪い夢の図。なんだかんだ言っても,日本軍は強大。反撃開始の時期を見誤ると,目も当てられない結果に

 

 こうしてはいられない。国民党に負けず,我が軍も中国の解放を目指して前進だ! まずはフフホト。周恩来率いる歩兵4個師団で攻撃し,フフホトを日本から解放,とりあえず人民の偉大な勝利を記録してから,西安を占拠する日本軍に二方面から渡河攻撃をかける。
 残念ながらこの攻撃は失敗,撤退する我が軍の背後から西安を防衛していた日本軍が延安に逆渡河攻撃,延安の要塞はこの攻撃に耐えられず……。
 はっ。夢か。……フフホトを占拠した我が軍はその後も慎重に守りを固める。

 その頃ヨーロッパではソビエトがドイツに宣戦布告,一進一退の攻防を繰り広げる。というか,まぁこうなったらよほどのことがないかぎりソビエトが勝つだろう。質で勝るが数で負ける軍が,先手を打たずに勝てるはずもない。

 

ソビエトの対独宣戦布告。その後東部戦線は一進一退を繰り返す。ドイツ軍は一時キエフ前面まで迫ったが,そこが限界だった
新天地に向けて,新たな「長征」を

国民党の大反攻。数の暴力でじわじわと戦線を北上させていく。このプレイにおいて,人海戦術は国民党の得意技になったらしい

地道に輸送艦を作っていく。だがこの時期の共産党には,この艦を配備できる港はなく,そのまま数年が経過する。どこに置いてあったのか,そもそもどこで建造したのか謎だ

 さて,では意気軒昂ながらも装備状態と数で国民党にも日本軍にも水を空けられてしまっている我が軍は何をすべきか。このまま日本軍を打倒したところで,中国解放レースが国民党優位で進んでいる以上,その後に来る国民党との衝突で,勝ち残ることは難しい。さりとて今国民党と雌雄を決したところで,単純に勝ち目がない。日本軍に腹背を突かれて,目も当てられない結果に終わるだろう。

 

 そこで一計を案じる。このまま国民党が日本軍を駆逐すれば,軍港を含む旧山西軍閥領は共産党の手に返ってくる。そのときに活用する前提で,こっそり海軍と海兵隊を整備しておく。何に使うかはお楽しみだ。とにかく延安では,世界最高水準の海兵隊を合言葉に,日夜研究と訓練が続く。いや,どんな研究でどんな訓練だったのか,想像しがたいが,トウ(「登」におおざと)小平は見事最新式の海兵隊を完成させる。よく分からないが,市場経済の仕組みを生かした訓練方法だったに違いない。
 そうしたうえで,軍隊の生産をすべて停止し,余剰ICをすべて工場の拡充と軍需物資生産に回す。このゲームにおいて,軍需物資は貿易で資源を入手する方法として有効なうえに,効率的な資金稼ぎの方法ともなる。そうして手に入れた資金を外交に充て,国民党との冷えきった関係を改善するのだ。

 

延安も1946年には「工場」10個が建ち並ぶ大都会に。もっとも,ここまでくるうちに戦争はあらかた終わってしまったが

 工場の増築を重ねていたせいで,気がつけば延安は単独でIC10を生み出す,大阪並みの大都市となった。この膨大な(?)ICをことごとく軍需物資に変えて,ドイツを単独で撃破せんとするソビエトに売りつけ,そこで得た資金を国民党との関係改善に投入した。ちなみに対独戦争に加わったアメリカはデンマークに上陸したが,そこでドイツ軍に封殺されていた。今回のプレイは,もう本当に先が読めやしないのである。
 外交努力の結果,国民党との関係は−200(最低)から+200(最高)に。いや,これで中国の統一が近づいたのか遠のいたのかは,判断に窮する限りだが。

 

 そうこうするうちに,ソビエトはヨーロッパを完全制圧。イタリアは枢軸国の首班として領土を確保していたが,その領域はイタリア半島とバルカン半島に限られていた。フルシチョフ vs. キッシンジャーという,西欧諸国をめぐる戦後米ソのさや当ては,どう考えても生じそうにない情勢だ。
 中国戦線はといえば,中国軍が長く苦しい戦いのすえ,日本を黄河以北に追い込み,ついには黄河の渡河に成功した。時を同じくしてソビエトが対日宣戦布告。この段階で日帝勝利の展望は失われたも同然であろう。

 

アメリカがヨーロッパに上陸作戦敢行。ついに逆転が始まる! って……その……なぜデンマークに。進めやしないったら ヨーロッパを席巻したドイツ,ソビエトに敗れる。対抗勢力がいないので,あとはソビエトがヨーロッパを赤化していくのみ

 

ソビエトによるヨーロッパの解放と新秩序は,何をどうしたものかフランスを三つ作る結果に。ソビエト占領下の北フランス,ヴィシー政権による南フランス,そしてスペインがドイツから奪った土地にひっそり建国された「フランス」。もう,何が何だか

 

ソビエトの対日宣戦布告。日本があからさまに中国大陸で負けムードになるまで,決して宣戦布告しない態度はある意味ヒストリカル。虎視眈々と狙っていた満州をあっさり奪われて,少々げんなり

 

中国共産党は沖縄を解放し,台湾に上陸作戦を敢行する。ここが新たな革命の発火点となる……かどうかは,正直定かでない

 だが,我々の戦いはここからである。旧山西軍閥領ティエンチン(天津)に軍港を築いた我が軍は,そこに輸送船団4隻を配備する。そして,朱徳と周恩来が率いる精鋭海兵隊が乗り込む。
 最初の上陸地点は奄美大島。我が海兵隊は無人の海岸にやすやすと上陸,そのまま小船に便乗して,沖縄本島に攻撃を仕掛けた。沖縄守備隊にもはや抵抗力はなく,奄美に続いて沖縄の人民を解放。そう,中国共産党は中国共産党らしく,国民党と正面からぶつからないやり方で抗日戦争を進めるのである。

 

毛主席御自ら台湾上陸。蒋介石の事績を讃える中正紀念堂の代わりに,毛同志紀念堂が建つのか,紅軍博物館が建つのか

 沖縄航空隊の脅威を絶った,朱徳らの率いる海兵隊は,さらに進んで台湾南部のカオシュン(高雄)に上陸。橋頭堡を確保したところでついに毛沢東主席率いる本隊も台湾上陸を果たす。合計12個師団(このとき我が軍は全軍で17個師団)による攻撃で,タイペイ(台北)は陥落,台湾の共産革命は完了した。ときに1947年12月のことである。

 ゲーム終了まであと1か月に迫ったので,東京上陸作戦も試してみたが,さすがに船の数が足りないようだ。とはいえ,あと少し輸送船があれば,成功した可能性もある。
 華北から東北,飛び地として台湾と沖縄,南西諸島まで前進した状態で,我が党は終戦を迎えた。世に「長征」というが,今回はいささか長すぎたかもしれない。とりあえず戦勝国の一員にはなっていると思うのだが。

 

ヨーロッパに続き,ソビエトによる東北アジアの解放。朝鮮半島もすっかり真っ赤に。アメリカさん,戦後世界は本当にこれでいいんですか?

 金門島を挟んで向かい合うことがよくよく好きであるらしい,ゲーム内での国民党と共産党が,その後どういった道を歩むかは予断を許さない。中国にはまだ軍閥勢力が三つも残っているし,この状態で国共が衝突したら,どう見ても国民党が勝つので,大陸に残った根拠地の命運はおぼつかない。このうえはおとなしく海空戦力の充実に尽力して防備を固めつつ,「大陸反攻」を目指すべきなのだろうか?

 

中国の覇権は握れなかったとはいえ,プレイとしては十分勝ちといえる……かもしれない。とりあえず言葉にするのは割と難しい満足感はあった
■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
周知かどうかは定かでないが,このゲームの前作「Hearts of Iron」は,中華人民共和国において発売禁止となっている。ゲーム内における満州やチベットの扱いが焦点なのだが,幸か不幸か今回のリプレイは,チベットどころの騒ぎではなくなってしまった。「いや,1936年スタートのシナリオでやると,史実からかけ離れることも多いですよ」というのが氏の意見だが,中国共産党でのプレイはその典型も典型といえよう。
タイトル ハーツ オブ アイアンII 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/12/02 価格 8925円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/450MHz以上[Pentium III/800MHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:4MB以上,HDD空き容量:900MB以上

Hearts of Iron 2(C)Paradox Entertainment AB and Panvision AB. Hearts of Iron is a trademark of Paradox Entertainment AB. Related logos, characters, names, and distinctive likenesses thereof are trademarks of Paradox Entertainment AB unless otherwise noted. All Rights Reserved.


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/hoi2/005/hoi2_005.shtml



関連商品をAmazon.co.jpで
満州アーカイブス 満映作品集(映画編) 迎春花
満映こと満洲映画協会が制作した作品で,李香蘭も出演。同シリーズにはほかの満映作品および記録映像も。

参考書籍をAmazon.co.jpで
ヒトラー暗殺計画と抵抗運動
山下公子著。ナチの政権獲得過程とさまざまな勢力との関係を描き,「7月20日事件」および,そのほかの反ナチ運動を解説。

参考書籍をAmazon.co.jpで
第二次大戦に勝者なし(上)ウェデマイヤー回想録
アルバート・C・ウェデマイヤー著。欧州方面兵站計画の担当から中国戦線米軍総司令官に転じた軍人による回想録。戦後体制まで見通した分析が見どころ。