ドイツを担当して,アメリカの状況を見てみる。「我が国との関係」は,なんとも絶望的な−200。第二次世界大戦テーマだけに,アメリカの好戦性が0というのも(心情はともかく)納得できる
さて,多くの国が登場するだけあって,それぞれの内政や外交のオプションも多彩だ。国内政治の方針は,「民主的 ←→ 独裁的」「自由経済 ←→ 中央計画経済」「介入主義 ←→ 孤立主義」といった二項対立のスライドバーで表され,1年に1項目,1段階分だけ変化させられるという,Paradox Entertainment作品でお馴染みの方式。これにより,国民の不満の持ち方,例えば強引な参戦にどのくらい抵抗感を持ち,反政府運動が起こる可能性があるか,といった事柄が変わってくる。その初期設定が各国の個性というわけだ。
このように国全体の傾向を変えるのは容易でないが,プレイヤーは国務大臣を任免するという形でも,国政に自分の方針を反映できる。大臣の能力によって,特定分野の兵器の生産や研究が進んだり,国民がより窮乏生活を堪え忍んでくれたりするのだ。
国内の政治体制の違いは,外交感情にも大きく影響する。第二次世界大戦が「イデオロギーの戦争」という側面を持つことは,今さら説明するまでもないだろう。自由主義陣営はファシズムとは共存できないと考えたし,共産主義陣営との間も,暫定的な協力関係に過ぎなかった。
政治的な傾向によって,外交努力の成果も変わってくる。ただし,イギリス,ソ連,ドイツなど,それぞれの陣営の「盟主」たることがゲーム上定義されている国同士では,外交関係がほとんど機能せず,結局のところ相手を屈服させる以外にないのは,少々シニカルなところだが。チェンバレン(チャーチルの前のイギリス首相)やダラディエ(フランスの外務大臣。チェンバレンと並ぶ対ドイツ宥和論者)がいようといまいと,最終的には戦うしかないらしい。また,アメリカが最初連合国でないこと,ソ連が連合国と別陣営になっていることなど,なかなか唸らせられる外交システムといえる。
外交では国の「好戦性」もキーポイントになる。これは正当な理由を欠く状態で他国に宣戦布告したり,他国を併合したりすると上がり,ほかの国からの外交感情が悪化する。無駄に侵略者の汚名を着ると損をするという,至極もっともなルールだが,ちょっとドイツの立つ瀬がない気もする。
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ちなみにこんな国も入っている。もう内閣の顔ぶれからして,日本からの独立など考えづらいことこのうえない国だが |
1944年6月時点で,ドイツが統帥権を持つクロアチアを見てみる。別にナチが好かれているわけではない,らしい |
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地味な画面で恐縮だが,ちょっとドイツの資源事情を覗いてみる。石油は産出も買い付けもなく,すべて化学合成。大バクチに出た背景が少しだけ分かる |
1944年における,ドイツの空軍部隊を表でまとめて見てみる。V1飛行爆弾と迎撃機ばかりというのがなんとも。Bf109が迎撃機扱いなのは航続距離ゆえか |
このように,実に多岐にわたるゲーム内容を持つハーツ オブ アイアンII。操作性があまりよろしくない,AIの担当する国が,必ずしもその国らしい政策を採ってくれない(例えば,まるで戦車に興味のないドイツ軍を見かけることがある)など,いくつか弱点もある。ただ,前者はともかく後者については,ゲームとして,また“何があり得たかという歴史実験”として,より興味深いと見ることも可能だ。
そしてその,Paradox Entertainment作品の醍醐味たる歴史実験の成果を,次週からお届けする。第1回は第二次世界大戦のオープニングにふさわしい(?)ポーランドでお送りしよう。史実では1か月足らずでドイツの電撃戦の前に屈したポーランドに,起死回生の策はあるのか? 次週を楽しみに待ってほしい。