澤氏:
主張なさっているのは「RMTに付随する問題をなくせる」ということなんだけれども,なくすための一番簡単な方法は,RMT業者さんがサイトを閉じることなんですよ。
RMTは根絶できるかという論題に対する,ジーエムエクスチェンジの見解。MMORPG自体の構造や,実効的な取り締まり手段の点で,根絶は難しいという主張だ
宇田川氏:
それは簡単だと思いますよ。ただ,現実的ではないですよね。
澤氏:
いや,「商売やめて」と言うだけであって,運営会社の人が食べていけなくなるわけでも,プレイヤーがゲームできなくなるわけでもないですよね?
4Gamer:
“力と力”の話をしたいか,したくないかの問題にすぎないわけですか。
澤氏:
そう,そうなれば「やめて」と言うしかない。
宇田川氏:
裁判でそういう結論が出れば,ジーエムエクスチェンジは当然サービスを停止する。じゃあ,すべてのサイトが停止するのか? というお話ですよね。
澤氏:
法律でないから,やめてと言っても誰もやめない。商売だし,やめる理由もないしね。ただ,目指すところがあるなら――心底そう思っているのか,話としてそう言っているだけなのかはともかく――そこで発生する詐欺事件から,プレイヤーの感情面まで,どうにかしていきたいと思っているなら,店を畳むのが一番早かったりするわけです。メーカーからはそう見えるんですね。
4Gamer:
もしくは逆に,表から見えるように“暴走族”をなくす努力をするとか。
宇田川氏:
では,RMT業者側から述べるとすると,Botやチートなどはシステム的な問題なのだから,解決したいのであれば自分達の庭でできる問題ではないですか,と。
澤氏:
そう,できますよ。
宇田川氏:
でも,どっちも理想論でしかないんですよ。
澤氏:
いや,Botを使えないようにするのは,ジーエムエクスチェンジさんに言われるまでもないことなんですよ,最初から。
4Gamer:
そこはメーカーの責任のもとで行われていることなので,RMT業者さんが言うことではないんじゃないでしょうか。
宇田川氏:
いや,どちらにせよオンラインゲームの上でしか成り立たないビジネスですから,RMT業者の立場を強い/弱いで語るなら,いつまで経っても弱いのです。ただ,今出てきた意見一つ一つは心情的によく分かる一方で――僕もオンラインゲームプレイヤーですから――どのソリューションを採っても,解決策が理想論しかない状況が続く。
4Gamer:
おっしゃることはよく分かるし,オンラインゲームについては,詐欺だの,悪口言っただの,他プレイヤーの家に押し掛けただの,「いったいどこに明るい話があるんだ?」という状況だし,なんとかしなければならないのもよく分かる。しかし,なぜわざわざRMTというアプローチなのかが分からないのです。
宇田川氏:
単に,アプローチがほかにないから,です。
4Gamer:
ほかにアプローチがない?
宇田川氏:
実を言うと,僕がちょっと期待しているのは,メディアの存在なんですよ。啓蒙活動を主体とするのなら,メディアは最も効果的な存在です。今回初めて4Gamerさんともお話しできましたし,こちら側が記者説明会をやって,それでようやく来られた方々もたくさんいる。
それまで,いかに「取材してほしい,話を聞いてほしい」と言っても,門戸を閉ざされてしまう。理由もよく分かります,そりゃRMT業者だからです。ただそれだけで門戸を閉ざされてしまう。
現実としてそういう状況があるからこそ,RMT業者自身が動く必要があるんです。物陰に隠れてこそこそやっていればいいものを,です。
これを叩くのは簡単だと思います。ただ,叩いたことで解決できる問題でないことも理解してほしいです。
4Gamer:
なるほど。臭いものにフタしてるだけの業界が悪いと。
澤氏:
でも,叩けば少なくとも解決1個めなんだよね。
澤氏:
そういう話になると,ほかのメーカーさんも結局同じようなことになるから,交渉のテーブルすら持てないわけです。そこは何度話してもどうどうめぐりなので脇に置くとして,ジーエムエクスチェンジさんとしては,最終的にRMTはどういう風になればいいとお考えですか?
ジーエムエクスチェンジが問題だと認識している,ゲーム内経済の不安定化とインフレーションの発生
宇田川氏:
理想形は……そうですね,RMTが引き起こす問題のなかでプレイヤーとして心情的に一番納得いかないのは,「昨日まで1000ゴールドで売られていたものが2000ゴールドになってしまった,だから自分はまた一生懸命稼がなければならない」などと,RMTがゲーム内経済に影響を与えることだと思うんです。
だからメーカーさんも,RMTの動向をある程度知っておく必要があると思います。またそこで「サービスをやめろ」と言われたら従えませんけど,「今こういう訳でゲーム内経済に問題が発生している。その調査に協力してくれないか」と言われれば,それにはもちろん協力できます。
それが,普通のプレイでない方法で通貨を稼いでいるプレイヤーを特定することに役立つなら,MMORPGを健全化していくことにつながるでしょう。
4Gamer:
ふむふむ。
宇田川氏:
認可制は理想的ではありますが,正直言って難しいと思います。ただ,情報交換の場を持つことで,我々が問題視しているものを小さくしていく,そういった環境を作りたいな,と思っています。
4Gamer:
でも,情報交換って,お互いプラスだから成立するものですよね。たぶんメーカーさんはそれをプラスだと思っていないんだと思うんですが。
宇田川氏:
うーん,いや,そうだと思います。これはあくまでRMT業者の視点でしかなくて,「そんなものは全部分かっているんだよ」というのがメーカーさんのお立場だと思います。
4Gamer:
そもそも「RMTが引き起こした問題を打ち消すことができます」と言われても,それはメリットと呼べるのかどうか。そうではなくて,RMTがあることによって,ゲームの世界が広がるとか,よくなるとか,そういうポジティブな提案をしてみるというのはどうですか?
宇田川氏:
ポジティブな提案としては,例えばうちを利用してくれる人は初心者が多いんですよ。ゲームを始めたばかりで,取引方法とかよく分からないといったような。
それというのは,新規プレイヤーの開拓になっているんだと思います。それを実数として出すことも可能ですが……プラスには受け止めてもらえないですよね。
4Gamer:
うーん,先ほどのたとえ話に戻すと,床屋さんの店先に最新スタイルのリーゼントのポスターが貼ってあるようなものでは。
宇田川氏:
ああ。
4Gamer:
それを学校に「認めろ」と言っても。
澤氏:
協力してくれるのはいいんだけど,その協力している人が,規約で禁止しているRMTを助長しているというのが,どうしてもねえ。バーターにならないですよね。
それは……なんと言うべきか,情報をくれるから見逃してやっている,みたいなことになっちゃう。
4Gamer:
そう取られかねないですね。
澤氏:
提携するとしたら,先ほど述べたR.O.H.A.Nみたいなのが,究極の形なのかもしれないなあと。通貨量もすべて計算のうえで,プレイヤーからお金を引き出せるだけ引き出して,循環させるという。
現実のお金と等価だと思われているゲーム内通貨をどんどん与え,ゲーム内で増やさせたり減らさせたりして,また,現金化させる。これが一番理路整然としていて,分かりやすい。なんの矛盾も持たないというか。
ところが,RMTを認めないメーカーがあった場合に,手を握る相手がRMT業者であるあなたである時点で,矛盾のない世界を作るのは無理なんですよ。情報提供といっても,それは調査会社を使えば済んでしまうようなことだし。
宇田川氏:
禁止している以上,近寄れる距離は限られているんですね。だから,あくまで理想論ですが,RMT業者としては最終的にRMT禁止という項目を外してほしい。ただし,それには現状があまりにも遠すぎる。
澤氏:
じゃあ,外してもらうためにと考えた場合,どこがクリアされれば外れるか。それはメーカーが考えればよいことで,先に勝手に商売を始めちゃった人に言われたんでは,動けないんだよね(笑)。
RMTがなぜいけないかについては,今まで挙がったようなさまざまな問題が絡み合っているだけでなく,ゲームのコミュニティを維持するのに邪魔な部分が非常に多い。あっちゃいけないものだから禁止しているんだよね。