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メーカー vs. 業者。RMTがはらむ問題と可能性をめぐる座談会

Text by Kazuhisa/Guevarista,Photo by kiki 

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RMT業者の在庫管理とリスクとは?

4Gamer
 うーん,こうしていろいろと考えてみると,ビジネスレイヤーの部分は,まだ比較的手が着けやすいですよね。どこかが動けば,解決できる気がする。

 

澤氏
 でも,運営者が明日インフレを起こしてしまえ,とか,発生させたものを回収したりとか考えた場合……。

 

4Gamer
 なんの約束も裏付けもないから,できてしまう。

 

宇田川氏
 それは自由にできるべきですよね。

 

澤氏
 そうなった場合,RMT業者は成り立たないですよね? 今度は経営者として聞くんですが,自分達の持っているゲーム内通貨が,明日無価値になるリスクには,どう対応するんですか?

 

4Gamer
 確かに,気になりますね。

 

宇田川氏
 このビジネスを立ち上げるときに,いくつか考えられるリスクを想定したのですが,その中ではかなり上位のリスクですね。例えば,サーバーが飛びました,サービスが1週間停止しました,その間に取り引きが何百件も入っていました,それでサーバーが復帰したら,キャラクターはレベル1でお金はゼロになっていたということは,あり得ます。その意味で,在庫管理を完全に他人に任せている状況なんですね。

 

澤氏
 そうだよねえ。実際にはないんだもん。

 

宇田川氏

同じくジーエムエクスチェンジのサイトでの,アンケート結果より。年齢が上がるほどRMTを許容する傾向にあるのは,収入差によるものか

 結局それは回避できないので,最小化するしかない。例えば,ゲーム内通貨の取引単位が10万で1口だったとすると,うちでは500口くらいしか在庫として持てないんですね,恐くて。ほかの業者さんは1000口とか,1万口とか持っておられたりしますけど。
 そうしたことはどうしてもできないので,「このゲームのこのサーバーは,プレイヤーがこのくらいいるから,これだけの取り引きが生じるだろう」というふうに,最低限の流通量を予測して,1週間で終わる程度の在庫をキープするのです。
 自分達で生産することも考えたけれども,ビジネスとしてはやはり考えられない。まず,明日どうなっているか分かりませんし,僕自身ゲームをやっていて,そうした生産行為が腹立たしいですから,これはあり得ない。
 その代わりに,すぐに供給してもらえる体制を作ったのです。ジーエムエクスチェンジにゲーム内通貨を売ってくれる人を第一に集めまして,現在は8000人弱の登録があります。

 

4Gamer
 ほお。

 

宇田川氏
 そうした方々を会員登録制で募っておき,在庫がなくなりそうであればすぐにメールを出すことによって,できる限り在庫リスクを負わないようにしようと。これくらいしか対応策はないんです。

 

澤氏
 サービスをやめてしまうゲームについては,どうするんですか?

 

宇田川氏
 そこは,ある程度リスクとして仕方ないなと思っているのと,先にニュースリリースを出していただけるので,格安で販売します。食べ物でいえば,傷んだものと同じ状況です。
 そういったリスク管理方法を採っていれば,通常のビジネスと同じくらいのリスクにまで,抑えることができます。

 

澤氏
 先ほど言った「他人の庭」も,永遠ではないですからね。

 

4Gamer
 とりわけ会社ともなれば。

 

澤氏
 実を言うと,なんでそれを会社としてやろうと思ったのかが不思議で,RMTで組織化されているところは,大学生のサークル的なものを超えないと想像していました。サイトもしっかりしていますしねえ。

 

4Gamer
 blogに書いてらっしゃいましたね。

 

宇田川氏
 法人化については,どちらかというとニーズありきなんですよ。RMTのビジネスをやるべきかやらざるべきかについては,半年くらい悩んでいたんですけど,あっちこっちで詐欺が頻発していて,RMTは恐い,危ないというのが,いろいろな掲示板に書かれていたのです。であれば,しっかりとした形で運営していることがウリになるんじゃないかと。
 人件費の安いところに“生産工場”を持っているところとの競争では,価格優位性の点で負けてしまう。でも,サービスや安心感である程度そうした競争を回避できると考えて,法人化してスタートしたのです。
 実際に始めてみたら,価格よりも安心感を求める人のほうが圧倒的に多かったので,今なんとか回っている,ということです。

 

4Gamer
 もともとが危ないものだから安心を求めるっていうのも皮肉な話ですね。

 

宇田川氏
 禁止って書いてありますしね。

意外に容易な,規約違反者の追跡

澤氏
 やや脇道に逸れる話題になりますが,以前手がけていたタイトルで,オトリ捜査(?)をやってみたことがあるんですよ。スタッフに「2〜3千円だったらオレが出してやるから,買ってみ。それでアカウントを停止したら,どう反応するか見てみよう」ということで。

 

一同:(笑)

 

澤氏
 で,実際に売買するときには,素人を演じるために「アイテムは本当にあるんですか? 見せてください」とか「アイテムの性能を最初に教えてください」とか質問をしたところで,出てきた話をデータと突き合わせると,そのアイテムがそのサーバーには1個しかないことが分かりました。
 それで,そのIPをもとに,そのプレイヤーが持っている別のアカウントを探っていったら,大量のゲーム内通貨やレアなアイテムををもらったり出したりしていることが分かった。

 

4Gamer
 お約束の展開ですね。

 

澤氏
 それで,これはもう常習者だなと判断して,アカウントを止めました。プレイヤーは「急にゲームができなくなりました」と。規約違反をしている自分を棚に上げて,「昨日までできたんです」とか,「大事な先輩にもらったアイテムが入っているんです」とか,もう盗人猛々しいとはこのことです。
 こちらとしては「規約に違反したところがありましたので」と伝えたんですが,まあそれでも,食い下がってきますよ,メシの種ですからね。

 

4Gamer
 ふむふむ。

 

澤氏
 結局,現実というのはそうしたところにありまして,規約違反だと分かっていてもやってしまうプレイヤーがいて,それを助長している業者さんがいる。
 別のRMTの会社の人と面識があって話すときも,分かり合えないんですよ。抽象的な話もいっぱい出たけど,結局「オレの庭」,その一点なんですよ。自分の庭である以上,手入れとかはできるんだけど,明日庭がなくなるかもとか,ゲーム内通貨の価値がなくなるかもとか,そこまでは守れないですもん。提携しようが,公認しようが。
 だからそれを「リスクを覚悟でやってます」と言われたら,「やってれば?」と答えるほかない。プレイヤーさんに「売るのはいいけど,買わないでください」と言っていくことで,潰していくしかない。ひどい話オトリも使うし,名指しで「ジーエムエクスチェンジの利用はとくに禁じます」と言ってもいい。
 法律とか資産とかより……だって,ゲームの世界なんですから。そこで商売すんなよ,というのが正直なところです。

 

宇田川氏
 うーん。

 

澤氏
 今回,いろいろな要素が出てきたけど,きちんとメーカー側が集まって勉強会みたいなものをして,政府の問題とか,プレイヤーの心理とかをいっしょくたにしないで考える機会を作るとする。そこで意識が統一されれば,RMT業者さんが歩み寄ろうと思っても,結論は一つです。
 実のところゲームメーカーって,横のつながりでRMTの勉強会をやろうとか,そういう動きはないんですよ。禁止しておしまい。それ以降どうするといった意識の統一がないですから。

 

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http://www.4gamer.net/specials/060426_rmt/060426_rmt_005.shtml