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西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話
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印刷2016/09/09 00:00

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西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話

画像集 No.004のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話
 米国・ニューヨークの観光名所であるタイムズスクエアには,「PlayStation Theater」という名の劇場がある。ソニーグループでその命名権を取得しているこの劇場が,北米時間2016年9月7日,「PlayStation Meeting」というイベントの舞台となった。

 Sony Interactive Entertainment(以下,SIE)の代表取締役社長兼CEOであるAndrew House(アンドリュー・ハウス)氏は,6月時点ですでに「高性能版PlayStation 4」の存在を公式に認めていた(関連記事)。それもあって,今回のイベントが新型PlayStation 4に関するものであることは確実視されており,当然のように,世界中の報道関係者が,このPlayStation Theaterに集まった次第だ。

PlayStation Theater(左)。普段は普通の劇場として,さまざまなライブなどが開催されている。ちなみに会場はそれほど広くはなく(右),E3 2016のSIEプレスカンファレンス会場に比べれば,むしろかなり狭い印象だ
画像集 No.002のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話 画像集 No.003のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話

 第一報でお伝えしているとおり,今回発表となったのは,ハイエンド版とも呼ばれる4K解像度対応モデル「PlayStation 4 Pro」(型番:CUH-7000シリーズ,関連記事)と,従来よりも大幅に薄く小さくなった新型「PlayStation 4」(型番:CUH-2000シリーズ,関連記事)の2製品である。
 本稿では両製品について,順番に,現地取材で明らかになった内容を,続報としてお伝えしたいと思う。まずはPlayStation 4 Pro(以下,PS4 Pro)からだ。


PS4 ProのCPUは約1.3倍の性能向上を果たす


PS4 Pro
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 PS4 Proの搭載するSoC(System-on-a-Chip)は,従来と同じくAMD製のカスタムAPUだというのは既報のとおりだが,その性能強化は,2つのアプローチで行われている。1つは「動作クロックの引き上げ」で,もう1つは「コア数の増量」だ。

 前者,動作クロック引き上げの恩恵をとくに受けているのは,CPU部である。
 PlayStation 4(以下,PS4)のカスタムAPUは従来,AMDのx86系64bit CPUコアである「Jaguar」を8基搭載しており,PS4 Proでもその基本仕様は変わらない。

こちらは型番「CUH-1200A」のPS4が採用するAPU
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 ただ,PS4 ProのカスタムAPU製造にあたってはSIEは,従来型PS4のカスタムAPU製造に用いていたTSMCの28nmプロセス技術ではなく,より微細化が進んだTSMCの16nm FinFETプロセス技術を採用した。
 プロセス技術を微細化すると,より小さな電流,電圧でプロセッサを駆動できるようになり,動作クロックも上げられるようになる。それにより,従来型PS4のCPUコアが動作クロック1.6GHzだったのに対して,PS4 Proでは2.1GHzと,従来比で約1.3倍となった。

 ちなみに一部では,PS4 ProのカスタムAPUが,Jaguarではなく「Tiger」コアを採用するという報道もあるようだ。そこで筆者がSIE関係者に確認したところ,「基本アーキテクチャは変わっていない」「構成トランジスタがFinFETベースになったことで,物理設計はリファインされている。よって,厳密にはJaguarコアと同一アーキテクチャといい切れないかもしれない」という,肯定とも否定とも判断しかねる答えが返ってきた。
 AMDは,主力のPC&サーバー向けCPUマイクロアーキテクチャを「Bulldozer」から「Zen」へと2016年中に刷新し,ZenベースのデスクトップPC向けCPU「Summit Ridge」(開発コードネーム)を出荷予定だ。ただ,“Jaguar改”なのかTigerなのかはともかく,PS4 ProのカスタムAPUに統合されるCPUコアで,BulldozerからZenといったような,大幅な刷新が入っていないことだけは確かである。

 まとめると,PS4 ProのCPUコアは,従来型PS4のCPUコアに対して,動作クロック約1.3倍分か,それプラスα程度の性能向上を実現したという認識でいいだろう。


PS4 ProのGPUは,コア数が2倍になり,動作クロックは約14%向上


 お次はGPUだが,PS4 ProのカスタムAPUに統合されるGPUコアは,従来型PS4のカスタムAPUと同じく,AMDの「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャベースとなっている。
 理論演算性能となる単精度浮動小数点演算性能は4.2 TFLOPSで,これは従来型PS4の1.84 TFLOPSと比べると約2.28倍の強化を果たした計算になるが,この数字を実現するPS4 ProのGPUが統合する演算ユニット「Compute Unit」の数は36基で,動作クロックは911MHz。従来型のPS4だと,Compute Unitの数は18基,動作クロックは800MHzだったので,演算ユニット数は2倍,動作クロックは約1.14倍になったわけだ。

 GCN系のGPUコアはCompute Unitあたり64基のシェーダプロセッサ「Stream Processor」を備えるので,GPUコア全体のシェーダプロセッサ数は,従来型PS4の1152基から,PS4 Proでは2304基に増えた。さらに,シェーダプロセッサは1クロックで乗算と加算を同時に行える2 FLOPS仕様なので,計算結果は

  • 2304(Stream Processor)×2 FLOPS×911MHz=419万7888 FLOPS

となって,公称値と符合する。

こちらはRadeon RX 470
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 ちなみに,4.2 TFLOPSというスペックは,最近のRadeonで言うと,4.9 TFLOPSの「Radeon RX 470」に近い。

 それもあり,一部では「PS4 ProのGPUコアは,Radeon RX 400シリーズと同じPolarisマクロアーキテクチャベースのもの」という報道もあるようだが,これは否定できるだろう。
 前出のSIE関係者が,「Polarisアーキテクチャそのままでは,従来のPS4と互換性がとれなくなる。なのでPolarisそのものではない。Polaris世代の一部機能を取り込んだものと解釈するのが正しい」と述べていたからだ。

 これには少し説明が必要だろう。
 まず,従来型PS4に統合されるGPUは,GCN 1.1世代のものだ。それに対してPolarisマクロアーキテクチャはGCN 1.3世代となるため,これが「そのままでは互換性が取れない」大きな理由となる。
 もう少し細かく見てみると,従来型PS4では,GPU側に,Cadence Design SystemsのTensilica部門が開発するDSP(Digital Signal Processor)「HiFi EP Audio DSP」を統合し,それに一部サウンド処理のアクセラレーションを任せていたが,PolarisではこのDSPが省略されたという違いもある。DSP機能の有無も互換性に影響するため,PS4用GPUではそのまま残してあるというわけだ。

 では,PolarisマクロアーキテクチャからPS4 Proへ継承された要素は何かだが,筆頭に挙げられるのはH.265デコーダである。PS4 Proでは4K解像度のビデオストリーミングサービスに対応するというのは第一報でお伝えしているとおりだが,それを実現すべくH.265デコーダを用意したのである。
 なお,Polarisマクロアーキテクチャが存在するH.265エンコーダは,PS4 Proにおいて搭載が見送られている。


PS4 Proはメモリ性能も約24%強化


CUH-1200Aシリーズで使われていたSamsung Electronics製のGDDR5メモリ
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 CPUとGPUで共有することになるメモリが256bit接続のGDDR5,総容量8GBという仕様はこれまでと変わらない。ただし,従来型のPS4だと,メモリクロック5.5GHz相当(実クロック1.375GHz)でメモリバス帯域幅が176GB/sだったのに対し,PS4 Proではメモリクロックが6.8GHz相当(実クロック1.7GHz)となったため,メモリバス帯域幅も218GB/sまで拡大となった。

 つまりは従来比で約24%の性能向上ということになるが,GPU側の演算性能が2倍以上の強化を果たしたことと比べると,やや控えめとは言えるかもしれない。


プロセッサ関連以外のPS4 Proにおける改良点


 PS4 Proは,APUやその周辺だけでなく,それ以外にも細かい部分で手が入っている。

PS4 Proの背面インタフェース部
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 まずビデオ出力インタフェースだが,HDMI出力端子は,4K解像度の60fps出力に対応し,さらにHDR(ハイダイナミックレンジ)にも対応したHDMI 2.0b対応となった。4Kビデオコンテンツの出力へ対応するため,HDCP 2.2準拠ともなった。

 定格消費電力は310Wとのこと。最初期型のPS4は250Wで,省電力化を実現したCUH-1200AシリーズのPS4では230Wだったので,消費電力自体は少々増加してしまった。プロセス微細化によるメリットを,省電力化ではなく性能強化に回したということなのだろう。

 また,ネットワーク機能だと,有線LANが1000BASE-T対応なのは変わらずながら,無線LANは従来の2.4GHz帯を用いたIEEE 802.11n対応から,5GHz帯にも対応するIEEE 802.11ac対応へと変更になったのだ。
 Bluetooth通信機能も,従来型PS4ではBluetooth 2.1(EDR)までの対応だったのに対して,PS4 ProではBluetooth 4.0対応となっている。このあたりは,テクノロジーの現状に合わせた順当なアップデートといったところか。

 余談だが,従来型PS4も,システムソフトウェアのアップデートでBluetooth 4.0に対応させる計画があるとのことだ。

新型DUALSHOCK 4。本文で触れたワイヤード接続対応とは別に,プレイヤー認識用のカラーLED照明「ライトバー」の光をゲームパッド上部のタッチパッド部にまで導光板で導くことにより,プレイヤーが自分のプレイヤーカラーを簡単に把握できるようにするという仕様変更も入っている
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 もう1つ,PS4 Pro本体ではないが,標準のワイヤレスゲームパッド「DUALSHOCK 4」新型(型番:CUH-ZCT2)が登場したことは押さえておきたい。というのも新型DUALSHOCK 4では,USBケーブルでのワイヤード接続に対応し,かねてより一部ゲーマーによる懸案の対称だった「無線による入力遅延問題」が解消することになったからだ。

 従来のDUALSHOCK 4も,USBケーブルでPS4本体につなげばワイヤード接続できているように見えたが,実のところ,USBケーブルは給電にしか使っておらず,ゲームパッドとしては相変わらずワイヤレス接続だった。それだけに,ワイヤード接続対応は大きな仕様変更と言えるだろう。

 なお,新型DUALSHOCK 4は,近日リリース予定というPS4本体のファームウェアアップデートにより,従来型PS4でも利用可能になるという。

オプションの「PS Camera」もモデルチェンジした(左,関連記事)。一方で,「PlayStation VR」に合わせた新型の登場が期待されていたモーションコントローラ「PlayStation Move」は,現行モデルのまま継続となった(右)
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PS4 Proが対応しなかった4K Blu-ray


 さて,ここまではPS4 Proで新しくなった要素について説明してきた。だが,「新型PS4は,これに対応するだろう」と多くの人が予想しつつ,実際には搭載されなかった機能が1つある。それは「4K Blu-ray」こと,「Ultra HD Blu-ray」(以下,UHD BD)だ。

 前述したように,PS4 ProのGPUはH.265デコーダを内蔵しているため,UHD BDに記録された4K映像のデコードは十分可能である。
 しかしPS4 Proは,UHD BDが採用するディスクメディアである3層BD-ROM(BDXL)の読み出しに対応したBD-ROMドライブを採用していない――実際に採用するのは従来型PS4と同じ,読み出し6倍速のBD-ROMドライブ――ので,UHD BDの再生には対応できないのだ。

 今回の発表会には,著名なAV評論家が招待されていたので,氏と会った筆者は,「氏がいるということは,新しいPS4はUHD BD再生に対応しているんだな」と勝手に思い込んでいた。ところが,蓋を開けてみれば非対応というオチで,とんだどんでん返しだったわけである。
 ちなみに,評論家氏は筆者以上に驚いていた様子で,「ある意味,今日の一番のサプライズでしたね」と呆れていた。

 さて,このUHD BD非対応については,SIE関係者によると,かなり早いタイミングで決定していたという。
 理由は明白で,コスト増を避けるためだ。3層BD-ROMを読み出すための関連部材自体は,数年前からBlu-rayレコーダ製品で使われており,今ではありふれたものである。しかし,PS4のBD-ROMドライブに比べると,多少はコストが高いのも事実であり,それが本体価格に上乗せされることをSIEは嫌ったようだ。
 前出のSIE関係者によれば,PS4 Proのメイン市場は北米であり,北米市場のユーザーは,「映像コンテンツをディスクメディアで楽しむ」ことから卒業してしまっているとのこと。多少のコスト増も,十分なユーザーニーズがあれば認められるわけだが,こうした事情で「ニーズは薄い」と判断されたわけだ。

 ソニーグループで映像コンテンツ事業を手がけるSony Pictures Entertainmentは,UHD BDの映画ソフトをいくつも発売しているにもかかわらず,現状では,UHD BD再生に対応したソニー製品がないのだ。だからこそ,「PS4 Proが,ソニー初のUHD BD再生対応製品になるはず……」と見込まれていたわけだが,実際にはそうならなかった。この事実は,UHD BD規格の今後に,何らかの影響を与える可能性もあるだろう。
 いま,先の評論家氏以上に驚き,残念がっているのは,UHD BD規格の策定者であるパナソニックかもしれない。


スリムになった新型PS4は従来型と何が違う?


薄く,小さくなったCUH-2000シリーズ
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 PS4 Proはこれくらいにして,スリムになったCUH-2000シリーズのPS4(以下,CUH-2000)についても触れておこう。
 結論からいうと,CUH-2000は,機能,性能の両面において従来型PS4とほとんど変わっていない。

 まずAPUだが,16nm FinFETプロセスの採用で微細化こそしたものの,CPUやGPUの仕様に変更はなく,H.265デコーダも搭載されていない。ただ,システム全体の消費電力は165Wにまで下がっている。性能向上を図らなかった分,プロセス微細化の恩恵を省電力化に使えたということだろう。
 メモリ容量は8GBで,8Gbit品のGDDR5メモリチップを8枚使用するとのこと,これはCUH-1200シリーズのPS4と同じだ。ちなみに,初期型PS4(型番:CUH-10xx〜11xx)は,4Gbit品のGDDR5メモリチップを16枚も使っていた。
 搭載するBlu-rayドライブにも変更はなく,HDMI出力端子も従来型PS4と同じHDMI 1.4a相当で,4K出力には対応しない。ただ,HDR出力は可能だ。

CUH-2000の背面側
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 一方で,従来型PS4が背面に備えていた光デジタル音声出力端子は,CUH-2000で省略となった。PS4 Proには残っていることからすると,使用率とコスト,スペースの兼ね合いから判断が下ったのではないかと考えられる。

 そのほかに改良された点といえば,PS4 Proと同様に,無線通信機能がIEEE 802.11acとBluetooth 4.0に対応したことが挙げられよう。


PS4 Proで,PS4のゲーム体験はどう変わるのか


 PS4 Proの登場で,PlayStationプラットフォームのゲーム体験はどう変わるのだろうか。

 その疑問に対してSIEが示した,最も重要な情報は,「今後も『PS4 Pro専用ゲーム』は登場しない」と明言されたことだ。
 また,PS4 Pro向けに開発したタイトルを,ダウングレードして従来型PS4版にするという開発スタイルも行わないのだという。ゲーム開発者は,これまで通り従来型PS4のスペックに合わせてゲームを開発し,上位モデルであるPS4 Proでは「+α」の体験を提供できるように,なんらかの仕様を付け加えるというような流れになる。
 あくまで軸足は従来型PS4にあり,PS4 Proは+αを楽しめる選択肢であるということだ。

 ちなみにここでいう+αとは,4K映像出力やフレームレートの向上,シェーダの品質向上といった要素となる。
 グラフィックスを構成するテクスチャデータや3Dモデルデータは,従来型PS4でもPS4 Proでも,基本的に同じものを使うとのこと。つまり,「従来型PS4用とPS4 Pro用とで,アセットを2種類用意することはしない」のである。
 アセットをハードウェア別に2種類も用意すると,工期や予算の増大につながり,開発コストが上がってしまう。また,そもそもの話として,メモリ容量は従来型PS4と同じ8GBしかないため,「PS4 Proだからといって高解像度のデータを積極的に用意する」ことは,あまり現実的ではない。

 なお,HDR出力は,PS4 Proの+α要素ではなく,今後のPS4ファミリー全体が対応する仕様となる。初期型のPS4であっても,システムアップデートでHDR出力が可能となるのだ。HDR出力は,現行のフルHD解像度(1920×1080ドット)出力と組み合わせても利用できるので,PS4 Proに限定する理由はない。

 実際に会場では,2017年発売予定の「Horizon Zero Dawn」で,4K解像度およびHDR出力に対応バージョンのデモが披露されていた(関連記事)。

4K解像度とHDR出力に対応したHorizon Zero Dawnのデモ
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 ところで,4K解像度はフルHD解像度の縦横2倍,計4倍の解像度となる。それに対してPS4 Proの持つGPU性能は,従来型PS4に対して2.3倍弱にしかならない。これではPS4 Proといえども,4K解像度でのレンダリングは無理なのではないか,と思う人もいるだろう。
 その指摘はとても鋭い。実際のところ,PS4 Proは4K解像度の出力に対応するものの,必ずしも4K解像度でレンダリングを行えるわけではないのだ。

 PlayStation 3(以下,PS3)のゲームを思い出してほしいのだが,PS3は,フルHD解像度での出力に対応している一方,大半のPS3対応タイトルは,フルHD未満の解像度でレンダリングを行い,その映像をアップスケールによってフルHD解像度化していた。
 たとえば「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」は,1024×768ドットでアスペクト4:3のフレームバッファにレンダリングを行い,これをアスペクト比16:9になるよう伸長しつつ,1920×1080ドットへアップスケーリングしていたのだ。

画像集 No.016のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:PS4 Pro,そして新型PS4はいかなるゲームマシンなのか。現地取材で分かった新型機の深い話
 PS4 Proで行うのもこれと同じ。たとえば2560×1440ドットでレンダリングしてから,これを4K解像度にアップスケーリングして表示するといった処理を行うのである。

 おそらく,真に4K解像度でのレンダリングを行うタイトルは,少数派になることだろう。従来比でGPU性能が約2.28倍,メモリバス帯域幅が約1.24倍の範囲で実現可能なグラフィックスを考えた場合,フルHDよりも高い解像度で描画したうえで,アップスケーリングして4K出力というパターンが現実的で,主流となるはずだ。
 2560×1440ドットのピクセル数は,フルHD解像度のおよそ1.8倍で,2840×1600ドットなら約2.2倍となる。PS4 ProにおけるGPUやメモリの性能向上分を考慮すると,このあたりが適当なレンダリング解像度になるのではないだろうか。

ソニー,「PlayStation 4 Pro」を発表。噂の4K対応ハイエンドPS4は4万4980円(税別)で2016年11月10日発売

従来比で約67%にまで小型化した新型PS4が2万9980円(税別)で9月15日発売

PlayStation公式Webサイト


  • 関連タイトル:

    PS4本体

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