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PCゲーム新作ガイド 2009「今年の注目作64本を一挙に紹介!」
アドベンチャーゲームは,ここ数年ヨーロッパ勢が圧倒的に強い。アクション要素が強いタイプであれ,ポイント&クリック型のクラシカルなものであれ,技術力やブランドに頼らずにストーリーの面白さで勝負する新興メーカーが,ヨーロッパに多いからだろう。
2009年内にリリースされる有力作品は,百戦錬磨の開発チームのものが多く,品質という面で非常に安心感のあるラインナップだ。 また,今回は紹介していないが,すでにドイツでリリースされた「Secret Files 2: Puritas Cordis」や「Memento Mori」のような,アドベンチャーゲームファンのハートをつかみそうな作品が,北米デビューを果たしそうである。
Alan Wake
一時期まったく音沙汰がなかった「Alan Wake」は,「Duke Nukem Forever」と同じような事態になっているのでは,とウワサされていたものだ。だが,2008年10月に公式サイトで公開されたムービーを見て,なぜ開発に時間がかかっているのか納得できた人もいるのではないだろうか。それほどクオリティが高いので,未見の人は,ぜひ見てほしい。
本作のストーリーは,Bright Fallという湖畔の村に妻と移住してきた主人公,Alan Wakeが妻の失踪をきっかけに悪夢に悩まされるようになることから始まる。やがてAlanは,妻を探していくうちに,過去に自分が書いた怪奇小説がそのまま現実になっていることに気がつく。
風に舞う落ち葉や,太陽の動きに合わせて影が動くといった表現などにリアリティがあるグラフィックスが特徴だ。また,光と影の描写は,単なる演出ではなく,ゲームに影響している。暗くなると悪夢に登場する妖魔が影から忍び寄ってくるので,車のヘッドライトや懐中電灯を使いながら切り抜けていくのだ。
Beyond Good & Evil 2
Ubisoftの誇るキャラクター,Raymanを生み出したMichel Ancel氏が,2003年に世に送り出した「Beyond Good & Evil」は,メディアや一部のファンからは非常に高い評価を受けたものの,プロモーションにあまり力が入れられていなかったことなどがあり,売り上げはあまり芳しくなかった。というわけで,続編の登場はあまり期待されていなかったのだが,2008年5月に「Beyond Good & Evil 2」が発表されたのだ。
Beyond Good & Evil 2は,発表時に公開されたムービー以外,ほとんど内容が明らかにされていない。ムービーでは,異世界の砂漠地帯を舞台にした映像で,故障した車の後部に傘を差した女性が座り込み,車の前側に,木陰で人型のブタが,雑誌で顔を隠して昼寝しているというシーンが描かれている。おそらく,この傘を差した女性が前作の主人公であるJadeらしいが詳細は不明。ブタは,Jadeの叔父という設定のPey'jというキャラクターで,政府や企業の不正を暴くジャーナリスト集団IRISのリーダーだ。
本作は3部作といわれているので,さらに新作も予定されているかもしれない。
Gray Matter
ドイツのパブリッシャdtp entertainmentは,アメリカの著名ゲーム作家とヨーロッパの開発チームが協力するプロジェクトをいくつか抱えている。そんな中で,一番の注目作はSierra On-Lineの名作「Gabriel Knight」シリーズを手掛けたJane Jensen氏の久々の新作「Gray Matter」だろう。
Gray Matterは,ポイント&クリック型のアドベンチャーゲームだ。得意の音楽でストリートパフォーマンスをする傍ら,バイクでイギリスを旅行していた主人公Samantha Everettが,ひょんなことから隠遁中の著名な神経生物学者Styles博士のもとで働くことになる。プレイヤーはこの二人のキャラクターを操作して,ストーリーを進めていくのだ。本作のテーマはかなり複雑なようで,「現実とは何か」「人間は世界をどのように認知するのか」といった内容を扱っているという。
またJensen氏の夫であり,Sierra On-Lineの全盛期を作曲家として支えたRobert Holmes氏も開発に携わっているのも,古くからのファンにはポイントが高い。
Machinarium
独特の画風が強烈な印象を与える「Machinarium」は,チェコのAmanita Designが開発を進める横スクロール型アドベンチャーゲームだ。
Amanita Designと聞いてもピンと来ないかもしれないが,彼らは美術学校の生徒だった2003年に,無料公開したFlashゲーム「Samorost」が大評判となり,さらに2007年にリリースした「Samorost 2」もイギリスやアメリカで高い評価を得たという経歴を持つチームだ。
その新作Machinariumは,彼らが本格的に販売目的で開発する,最初のゲームである。Machinariumは,ポイント&クリックタイプのゲームで,アクション性はほとんどない。ユニークな世界観を楽しむような感覚のゲームである。
本作は,ロボット達が暮らすMachinariumという名の遠い星を舞台に,Black Hat Brotherhoodという悪党一味によってスクラップヤードに投げ捨てられてしまった主人公が,街の中への潜入を試み,仲良しだった女の子(ロボット)を助け出す,というストーリーが展開する。それほど捻りが利いたプロットではないが,温かみのある独得のグラフィックスで描かれる世界に浸りたいものだ。
Still Life 2
「Still Life 2」は,FBIに挑戦状を叩きつけ,“East Coast Torturer”(東海岸の虐待魔)と名乗る連続殺人犯が引き起こす事件に絡んだストーリーのアドベンチャーゲームだ。
本作の特徴は,プレイヤーがEast Coast Torturerを追うFBIエージェントのVictoria McPhersonと,TVレポーターであるPaloma Hernandezという,二人の女性キャラクターそれぞれの視点で描かれていることだろう。犯人を追うVictoriaのディテクティブストーリー,犯人に追われるPalomaのサバイバルホラーという二つの要素が1本のゲーム内に混在しているのだ。また,ときおりビデオ撮影が好きな犯人の視点で語られるムービーが挿入されるといった,映画的な演出も見ものの一つだろう。
なお,Still Lifeシリーズを開発するGameco Studiosは,「Syberia」や「Post Mortem」などを手がけたスタッフが集まって設立した会社だ。
Tom Clancy's Splinter Cell: Conviction
シリーズ5作目となる「Tom Clancy's Splinter Cell: Conviction」は,もともと2007年11月に発売される予定だったものが,突然,開発の遅延が発表され,それ以後長らく消息を絶っていた。とはいえ,開発が完全に中止されてしまったわけではないようで,最近では「2009決算年度」,つまり2009年4月から2010年3月までという,いささか漠然とした発売時期が発表されている。今のところ,今年の夏頃にはリリースされるだろうという説が有力だ。遅延の理由は,「Tom Clancy」という人気の小説ブランドをUbisoftが高額で買収したことで,ゲームにさらに高いクオリティが要求されたことなどがあるのだろう。
そんなConvictionだが,所属する秘密組織,Third Echelonが崩壊してしまったことにより,隠遁生活を余儀なくされてしまった主人公サム・フィッシャーが,たった一人で悪に立ち向かう姿が描かれる。組織の援助を失ったサムには,頼りになる最新兵器もない。そのため,部屋の椅子やバットなど,さまざまなオブジェクトをうまく使って敵と戦うという,これまでのSplinter Cellシリーズとはかなり雰囲気の異なる内容になっているのだ。
Wallace & Gromit's Grand Adventures
「Wallace & Gromit's Grand Adventures」は,2005年度のアカデミー賞長編アニメ部門を,あの「ハウルの動く城」を抑えて受賞したクレイアニメーション「Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit」(邦題 ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!)を原作としたゲームだ。開発元は,エピソード式のアドベンチャーゲーム「Sam & Max」で大成功したTelltale Gamesだ。
本作は映画と同じように,とぼけた発明家のウォレス博士と,文字まで読めてしまう天才ビーグル犬グルミットのコンビが起こすドタバタ劇が描かれている。
ゲームは,当然ながら粘土細工のストップモーションではなく,CGだが,画面写真を見た限りでは,映画の世界を忠実に再現しているといえるだろう。
本作もSam & Maxシリーズと同じようにダウンロード販売が計画されており,2か月程度の間隔でエピソードが順次リリースされる予定だ。
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