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PCゲーム新作ガイド 2009「今年の注目作64本を一挙に紹介!」
すでに昨年(2008年)のうちにアナウンスされているタイトルが多く,新鮮味にはちょっと欠けるものの,それなりに遊び応えがありそうな作品が多いFPS。「F.E.A.R.2: Project Origin」や「Rage」「Wolfenstein」といった過去のヒット作の流れをひくタイトルだけでなく,「Borderlands」や「The Crossing」といったフレッシュなゲームもプレイが楽しみである。
2009年内の発売は見込薄だが,Raven Softwareには「Singularity」という,情報のあまり出てこないプロジェクトがあり,また昨年のE3 Media & Business Summitでアート画(のようなもの)が一枚だけ公開された「Half-Life 2: Episode 3」も新情報に乏しく,2009年にリリースされる可能性については不明である。発売時期が分からないといえば,いつ日の目を見るのか,およそ見当のつかない「Duke Nukem Forever」も,なんとなく見守っていたい。
Borderlands
「Borderlands」は,SFタッチのストーリーにRPGのスパイスを利かせたFPSだ。ゲームの舞台となるのは,ボーダーランズと呼ばれる銀河の果てで,危険を冒しながら一攫千金を夢見る男の姿が描かれる。プレイヤーはスキルタイプの異なる三つのキャラクターから一つを選択して物語を進めることになる。デベロッパのGearbox Softwareにとって,FPSは得意なジャンルであり,本作がヒットして,Brothers in Armsシリーズのようなオリジナルシリーズに発展するかどうかも興味の一つといえるだろう。
本作はFPSの「Halo」とRPGの「Hellgate: London」,そして映画「マッドマックス」の世界観を合わせたようなゲームになると言われている。レベルアップの概念があり,さまざまなパーツを組み合わせることによって,60万種にも及ぶ武器が自動生成されるというのは,すでに知られた特徴の一つだ。サブクエストやマップもランダムに生成されるので,遊ぶ人によって進行ルートや地形が異なるものになるなど,そのリプレイバリューは高そうだ。オンラインで二人までの仲間と一緒にゲームを楽しむことが可能で,バギーなどの乗り物も用意されているので,マップはかなり広いものになりそうだ。
The Chronicle of Riddick: Assault on Dark Athena
前作にあたる「The Chronicles of Riddick: Escape From Butcher Bay」は,2004年に公開されたアクション映画「リディック」をゲーム化したものだ。映画はさんざんな興行成績だったが,ゲームのほうは地味ながらも「映画以上に面白い」とコアなFPSファンから一定の評価を受けていた。
そこで,前作と同じデベロッパが続編制作の権利を獲得し,現在制作中なのが本作,「The Chronicle of Riddick: Assault on Dark Athena」である。
ゲームスタイルは,「Tom Clancy's Splinter Cell」を思わせるスニークアクションが基本で,プレイヤーは物陰に隠れつつ敵の背後に忍び寄り,ナイフで片付けていくのだ。もちろん,FPS本来の銃撃戦を楽しみたいのなら,スニークを使わないプレイも可能になるとのこと。
サブタイトルのDark Athenaとは,Revasという男が艦長を務める巨大な宇宙船の名前であり,奴隷売買にも手を染めているRavasによって,宇宙船の内部はサイボーグに警護された監獄のようになっている。グラフィックスエンジンは独自のもので,リディックらしい独特の雰囲気が漂っている。残虐描写も多い,ハードでコアなゲームになりそうだ。
The Crossing
Half-Life 2シリーズでおなじみのゲームエンジン,Sourceを利用した,一風変わったゲームが「The Crossing」だ。開発を手がけるのは,「Dark Messiah of Might & Magic」で知られるArkane Studiosで,ここにValveのアートディレクターや,「Deus Ex」のリードデザイナーなどが参加している。そんな布陣から,個人的にかなり気になるプロジェクトなのである。
ゲームの詳細についてはあまり情報がないが,パリを舞台に,14世紀と現代が交差するパラレルワールドがテーマになっているようだ。ただ,現代といっても政府が機能を失って無政府状態になった世界で,そこに十字軍の解散に反旗を翻して王朝を乗っ取ったテンプル騎士団の物語が絡んでくる。
本作はまた,「シングルプレイモードとマルチプレイモードの垣根を取り払う」というコンセプトで制作されている。つまり,シングルプレイモードで登場する敵キャラが,ネットにつながったほかの(現実の)プレイヤーになっていて,ゲームを進めるためには実在するほかのプレイヤーと協力したり敵対したりする必要が出てくるのである。
当然ながら強いプレイヤーを避けて進んで行ったり,逆に暗殺ミッションを受けたりするということも起きそうだ。試みとしてかなり野心的なので,注目したい。
Darkest of Days
「Darkest of Days」は,時空を旅しながら,実際に起きた歴史上のさまざまな戦闘に参加したり,大事件に遭遇するという,一風変わった設定のゲームだ。
本来は死ぬべきではなかった人物を救出するのが各ミッションの目的であり,プレイヤーはアメリカ南北戦争における有数の激戦だったアンティータムの戦いのほか,第一次世界大戦でドイツ帝国がロシア帝国を撃破したタンネンベルグの戦い,さらには火山の噴火で埋没したローマ時代のポンペイなど,世界のいろいろな土地を,時間と空間を越えて訪れることになる。
本作で特徴的なのは,普通のFPSのように,目の前の敵をひたすら打ち倒していくというプレイスタイルではないこと。歴史の流れを変えてしまう恐れがあるため,誰を殺すか,あるいは生かすのかといったことを慎重に考えて行動しなくてはならないのだ。
ゲームに登場するNPCは,それぞれに独自の思考ルーチンを持っており,プレイヤーが銃を撃ちまくると怯えたり,別の場所に逃走したりもする。ミッションによっては,いきなり100人以上のNPCが交戦している真っただ中に放り込まれることもあるようだ。FPSファンだけではなく,歴史ファンにもアピールしそうなタイトルである。
F.E.A.R. 2: Project Origin
Vivendi Gamesから名称に関する権利を買い取ったことで,晴れて正式な続編として制作されることになった「F.E.A.R. 2: Project Origin」。2005年にリリースされてスマッシュヒットを飛ばした前作「F.E.A.R.」と同様,日本のホラー映画に影響を受けたような,パラノーマルムード溢れる世界観が魅力だ。今回のストーリーは,F.E.A.R.のエンディングからスタートするので,Vivendiが制作した拡張パックと続編は“なかったこと”になったらしい。
プレイヤーの役どころは,デルタフォースの一員であるマイケル・ベケットという兵士。物語の途中で,前作の主人公だった名なしのポイント・マンと同様の,超人的な肉体と反射能力を得ることになる。もちろん,怪奇現象の原因である少女アルマとは,ゲーム中,何度も遭遇するようだ。
ゲームシステムの基本は,前作をほぼ継承する見込みだ。異なる部分としてしばらく,「ヘルスの自動回復」が挙げられていたが,最近「ヘルスパックによる回復」という前作と同じシステムに戻されたと報道されたり,非常にゆっくり回復するとレポートされたりと,いささか情報が錯綜している。
蹴り倒した本棚やテーブルを遮蔽物として応戦するというようなスタイルも取り入れられている。詳細は不明だが,小型メカに搭乗して戦うシーンも登場しており,前作に比べて戦闘は一段と派手なものになっているようだ。
Rage
FPSというジャンルを築いてきたJohn Carmack(ジョン・カーマック)氏の率いるid Softwareが,「DOOM」(1993年)以来5世代目となる3Dエンジン,「id Tech5」を使用して開発中のFPSが「Rage」だ。映画「マッドマックス」を思わせる荒廃した近未来の地球を舞台に,FPSに「Burnout」風のカーアクションの要素をミックスさせるという,シングルプレイモード専用の,かなり冒険的な作品なのだ。
一般の3Dタイトルは,小さめのテクスチャを何枚も張り合わせていくという方式でオブジェクトの外見を描くが,そのあたりのデキが悪いとテクスチャの繋ぎ目が見えたりする。しかし,id Tech5は,「Enemy Territory: Quake Wars」で開発されたMegatexture技術を使い,12万8000×12万8000ピクセルという一枚の巨大なテクスチャから,プレイヤーに見える部分を必要に合わせてストリーミングすることで,ハードウェアに負担を与えることなく,詳細な屋外の光景を描画できるとのこと。問題は,データ量が爆発的に増えてしまうことで,大容量のBlue Rayディスクを搭載したPLAYSTATION 3以外のバージョンは,DVD2枚組みになることか。このところメガヒットに恵まれていない老舗デベロッパ,id Softwareの久々の完全新作だけに,期待しているFPSファンは多いだろう。
THEY
テロが常態化した2012年のイギリス。すでに軍隊は壊滅状態にあり,唯一の生き残りとなったプレイヤーと相棒のパイロットが,次々に襲いかかってくるテロリストのロボット兵器に立ち向かうというのが,東欧で開発されている「THEY」のストーリーだ。
こう書くと,ありがちなSF系アクションにも思えるが,本作はアドベンチャーとしてのテイストを強く意識して制作されており,プレイヤーは撃ち合いだけでなく,さまざまな謎に挑んでいくことになる。
開発元のMetropolis Softwareは,ポーランドで設立されてすでに10年が経つ中堅どころのメーカーで,前作「Infernal」でかなりの実力を示している。NextNitrousと名づけられたゲームエンジンはなかなか秀逸で,THEY(奴ら)と呼ばれる敵のボディの輝きや透明感,ネオン効果など,DirectX 10で可能なグラフィックス機能を存分に駆使している。
ゲーム部分での特徴は,一つの武器をさまざまにカスタマイズできるところ。ショットガンやスナイパーライフルに変形させて利用したり,テクスチャまで変更できるので,「自分だけの武器作り」が楽しめそうだ。それが面白いかどうかは別の話だが。
Wolfenstein
「Wolfenstein 3D」といえばid Softwareの出世作だが,シリーズ最新作となる「Wolfenstein」の制作は,本家が現在,「Rage」ならびに「DOOM 4」の開発で手一杯である関係上,id Softwareと昔から関係の深いRaven Softwareが担当している。
超兵器で武装したナチスドイツの本拠地に突入していくコマンドーを描くのはシリーズ共通のテーマで,Wolfensteinでも踏襲される見込みだ。タイトルにシリーズ番号や副題をつけないのは,FPSの本家本元とも言える本作を,最新技術で華麗に復活させたいという意図からだろう。
Wolfensteinでは,主人公であるBJブラツコウィッツが「ブラックサン」と呼ばれるナチスの秘密プロジェクトを暴くため,秘密研究所のある要塞都市へと向かう。もっとも本作では,いつものようにたった一人で突撃していくのではなく,常に複数の仲間が周囲で戦っており,状況に応じて助け合ったりできるようだ。
仲間の兵士は死ぬこともあれば,援護射撃もしてくれる。敵が仲間の銃撃に気を取られている隙に,マンホールから下水道を伝って敵の背後に回り込むといった作戦を,臨機応変に立てていければ面白そうだ。マルチプレイモードは,クラスベースの「Enemy Territory: Quake Wars」的なシステムが予定されている。
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