4Gamer:
今回のβテストですと,ソロでレベル20まで到達できるようになっていますよね。そのためか,プレイしていて積極的にグループを組もうという気分になりません。そのあたりは今後どうなっていくのでしょうか。
上野氏:
そこがまた,サジ加減の難しいところです。徒党(パーティ)を組まないとまったく狩りができない,となってしまうと,例えば「30分だけプレイしたい」というような要望に応えられなくなってしまいます。
三國志 Onlineでは,現状でも,ダンジョンなどは,多人数で行ったほうが楽しめる場所になっています。多人数でのプレイには,多人数でのプレイの楽しみがあります。
ちなみに,今のところダンジョンは一つしか入っていませんが,その一つは攻略されるのが想像以上に早かったですね。初めは皆さん数人で挑んでいたのが,手強いと分かるとどんどん人数を増やして,最後にはフル人数
(編注:25人)の連合(徒党を束ねて,一つのグループとして活動している状態)になって,気分的にも盛り上がって攻略していただけたようです。
4Gamer:
実は,私はまだ石林は体験していないのですが,ダンジョンには良いドロップアイテムを落とす敵が配置されていたりするのでしょうか?
上野氏:
クローズドβではとくにないです。最終的にはそういうものも組み込むことになると思います。
4Gamer:
なるほど,ではいずれ,良いドロップアイテムを入手するために,グループを組んでダンジョンに行こう,という気持ちが生まれてくるわけですね。
では,グループを組むと敵から得られる経験値にボーナスがつくといったことはありますか? これを“グループへのモチベーション”にしているタイトルも多いですよね。
上野氏:
はい,三國志 Onlineでも,グループを組んだほうがソロより経験値が多く得られるようになっています。
ただ今のところ,ソロでも厳しさを感じずにレベルアップしていけるようになっています。このあたりが,まさに難しい部分で,徒党を組んだほうが圧倒的に効率が良いという風にしてしまうと,ソロでのプレイができなくなってしまいます。私としては,本作では,プレイスタイルを縛ることはしたくないと思っています。
4Gamer:
「ダンジョンに行くのであれば,徒党のほうが“どちらかといえば”オススメ」という程度なんですね。
でもソロでも十分に遊べてしまうのであれば,“グループを組んでダンジョンに行こう”と思わせるためには,何かダンジョンにしかない楽しさが必要だと思います。そうしないと,ずっとグループを組まない人が出てくるでしょうし,そういう人は,ずっとグループプレイの楽しさを体験できない。グループプレイから生まれる人間関係も得られないわけです。そうなってしまうと,プレイヤーのモチベーションが段々落ちて……という流れをイメージしてしまいます。
上野氏:
そうですね。なので,先ほどの経験値ボーナスやレアアイテムドロップにつながります。また,それに加えて,プレイヤーのモチベーションを高める要素として“ダンジョンでのプレイ自体の楽しさ”があります。例えば,フィールドの場合は制限なくどこまでも逃げられますが,ダンジョンは狭いので,逃げ切るのが難しくなります。ここに,攻略する面白さを見いだしてほしいと思っています。
4Gamer:
なるほど,そういうエキサイティングな難しさをみんなで切り抜けるところが楽しい,そこに魅力を感じてグループを組みたいと思ってほしいと。
上野氏:
はい,そうです。
4Gamer:
ただ,βテストで体験できるダンジョン「石林」は,グループごとのインスタンスが作られるわけではない,パブリックなダンジョンになっていますよね。
以前インタビューしたときには,「信長の野望 Online」でいうところのトライアルダンジョンのようなものも用意するとおっしゃっていましたが,それはどうなりましたか? レベル20以降のコンテンツなのでしょうか。
上野氏:
それは,今回のテストでは用意していないというだけです。製品版では,パブリックなダンジョンとプライべート(インスタンス)なもの,両方を揃えます。そしてそれはすべてのレベル帯で体験できるものにしますよ。
ただ今回の状況を見て,ダンジョンはかなりプライベート寄りに振ってもいいのかもしれないと考えています。どうやらテスターの皆さんの間では,「ダンジョンは連合を組んで行くところ」というような流れができてきているようです。それならば,システム的にもそういうところにしてしまっていいかもしれない,と検討中です。一人で入って,そこで仲間を見つけて,というのではなくて,まずは外で仲間を募って,という遊び方ですね。
4Gamer:
なるほど,とくに高レベル向けのコンテンツというわけではないんですね。
一応確認しておきたいのですが,レベルの上限が50になる製品版でも,ソロプレイでレベルキャップまで到達できることを想定していますか?
上野氏:
なるべく,ソロではレベルを上げられないという状態にはならないように努力したいと思います。厳しすぎてはいけない。でも,厳しい場所もないといけない。その配置バランスを調整していきます。ソロでゆっくり狩れるような場所と,みんなで一気に攻め込むような場所,その両方が必要だと思っています。
4Gamer:
昔のMMORPGの中には,絶対にグループを組まないといけないものもありましたよね。
上野氏:
そうなると,プレイ時間を3,4時間確保できないと遊べないじゃないですか。逆にいえば,当時MMORPGは,その時間を確保できる人のためのものだったと思うんです。
しかし最近は,プレイヤー層が広がり,1日に1,2時間しか遊ばないという人も増えていますよね。おそらく,2時間のプレイでも長いと感じる人が,結構いるのではないでしょうか。三國志 Onlineでは,2時間かかる要素も用意しますが,大抵のことは,1時間程度でケリがつくようにしたいと思っています。そうしないと,家族の視線が痛い人もいらっしゃるでしょうし(笑)。
4Gamer:
それは確かにあるでしょうね。
上野氏:
現実でも同じで,例えばテレビドラマなどは,だいたい1時間で終わりますよね。「9時から1時間ドラマを観よう」というのと同じ感覚で,「9時から1時間ゲームをしよう」というふうにできないと,今後のネットワークゲームは厳しいのではないかと思います。
ですからグループでも,ソロでも,合戦も,そのような適度な時間で区切りがつくようなものになります。
4Gamer:
では続いて,それぞれの武器/戦闘能力について聞いていきます。これまで具体的な情報はあまりなかったので,ここであらためて,一通り教えてください。
まず双手武器(攻撃系統)ですが,これはメレー攻撃(連続してダメージを与えていく攻撃)のエキスパート,メレーでのダメージディーラーという位置づけですね。防具は革装備までなので,敵からの攻撃を受けないようにしながら,敵の体力を削っていくという。
上野氏:
はい,そうです。
4Gamer:
そして同じく攻撃役の弓(投射系統)ですが,これがβテストでは結構強いと評判です。
上野氏:
弓のロール(役割)は,遠距離からの攻撃役です。ちくちくと刺していくイメージだったのですが,いまは結構ドカンとダメージが入ってしまっています。もちろん調整を行っていきますよ。
4Gamer:
両手武器(戦術系統)は,ほかにはないユニークな技能を多く覚えていくところが特徴ですよね。主にデバフ(弱体系技能)を担当するロールということでいいのでしょうか。
上野氏:
デバフというよりも,“お邪魔系”といったほうがイメージに近いかもしれません。そして邪魔をしつつ「攻撃」することも,両手武器の役割です。例えば「頭震波」という,敵を呆然状態にする技能があります。これは単体だとそれほど効果があるわけではないのですが,そのあとに「強撃」(ダメージの大きな一撃)を持ってくると,戦術系でもかなりダメージが与えられます。呆然状態の敵に対しては,攻撃が確実に当たるからですね。さらに金属鎧も着られますし,両手武器なので,ちょっと攻撃可能範囲が広いという特徴も持っています。
4Gamer:
片手武器+盾(防御系統)のキャラクターは,文字どおり“グループの盾役”ですよね。だから防御力アップの技能と,敵の攻撃を引きつける技能を覚えていくという。
上野氏:
そうですが,今はまだ,回復の持つヘイト
(編注:キャラクターに対する敵対心を表す概念)のほうが高くなっていると思います。そこは調整が必要ですね。
4Gamer:
もっとグループで遊ぶ機会が増えると,そのあたりは重要な部分ですよね。
上野氏:
そうです。このままですと,徒党の中に,盾の人がいる戦略的な意味が薄くなってしまいますから。
4Gamer:
ちなみに「敵の攻撃を引きつける」系の技能って,対人戦……つまり合戦や局地戦でも効果があるのでしょうか?
上野氏:
対人戦では,標的を固定する技能を用いることで対処できます。ヘイトを上げる技能と,標的を固定する技能はちょっと違うわけですね。そのあたりも今後さらに考えていきます。
4Gamer:
分かりました。次に妖術武器(妖術系統)ですが,遠距離からの攻撃役という点では,弓と似ていますよね。どういった部分に差が出てくるのでしょうか?
上野氏:
通常攻撃の性質が大きな違いですね。妖術系が獲得する技能は全部遠距離攻撃ですが,通常の直接攻撃は近距離です。でも弓は,通常攻撃も遠距離となっています。あと妖術のほうには,火炎柱のようなエリアの攻撃がありますね。範囲攻撃が行えることも,妖術の特徴になっていくと思います。
4Gamer:
なるほど,確かに弓では範囲攻撃ができませんものね。では,続いて練丹について。回復と体力のバフ(強化系技能),そして治療以外に,何か特徴的な技能を覚えますか?
上野氏:
これもいま調整中です。クローズドβテストでは,「気の障壁」というバリアーを張る技能を追加しました。練丹はかなりの部分で,初期の妖術技能も使えますので,回復だけじゃなくて妖術での攻撃も可能です。
4Gamer:
練丹と妖術は防具も一緒ですし,相性が良さそうですね。
上野氏:
今装備している武器の技能と,一緒に使える(ほかの武器の)技能をどれにするかという部分は,慎重に考えていくべきところです。例えば現在,「簡易回復」はどの武器を装備していても使えますが,あれがなかったら,きっとポーションが必須なゲームになってしまうんですよね。
4Gamer:
そういえば,弓(投射系統)に「練気の矢」という技能がありますよね。あれって,ほかの武器を装備しているときに使えて,遠距離攻撃ができるので,プル
(編注:敵を自分の近くまでおびき寄せる行動)をするのに凄くいいですよね。だから,多くの人が取っているようです。この「練気の矢」やその「簡易回復」など,ほかの武器系統をメインにしている人も欲しくなる技というのは,今後レベル30,40になってからも出てくるんでしょうか。
上野氏:
あまりそれをすると「どれもこれも上げなきゃ」となりますし,メンバーの募集でも「ナントカを持っているナニナニさん」とかになってしまいますので,正直,あまりやりたくはありません。
その練気の矢にしても,ソロプレイ時には確かに欲しくなりますが,徒党を組んで,弓や妖術のプレイヤーが別にいるのであれば,プルはそのプレイヤー達に任せられるようになると思います。
4Gamer:
レベル10くらいまで上げるのは,あまり大変ではありません。なのでほかの技能のこれが欲しい,となったときに,簡単に目的のレベルまでその技能を伸ばせます。でもレベルレンジが上がっていくにつれて,それは大変になっていきますよね。
上野氏:
だからこそ,慎重になる部分です。正直なところ,技能が存在する以上は,その話が出てくるのは避けられないことだと思います。ですが,狙いとしてそれをするつもりはありません。
ただ,実装しているだけで効果のあるパッシブ系(自動技能)は,ちょっと欲しくなるかもしれませんね。それを覚えるために,ほかの武器をレベルいくつまで上げていくという人が出てくるかもしれません。
4Gamer:
実は,そのあたりがまだ,うまくイメージできないのですが。30,40と,ある程度までレベルが上がってきたら,ほかの系統のレベル30,40技能は欲しくなくなってくる……つまり,一つの技能に集中するようになる,ということでしょうか?
上野氏:
そこは,“本当にもう好きなように,自由にしていただきたい”ところです。例えば私はなんでもやってみたいタイプなので,レベル10になったときに,まだレベル1の技能がいくつもあったりすると,「うーん,こっちも上げようかな?」と思います(笑)。
4Gamer:
確かに経験値のリストを見ると,そういう気分になりますね。なるほど,だいたい分かってきました。とにかく本作は,一貫して「こうすべきだ」とか「こうしたほうがいい」というのはなるべく出さずに,「枠組みと選択の幅は用意するので,その中で自由に遊んでほしい」というスタンスで,いま世界を作っているところなんですね。