特集:「三國志 Online」プロデューサーインタビュー

「三國志 Online」プロデューサーインタビュー クローズドβテストの反応と,見えてきた課題

Text by 星原昭典 Photo by kiki 

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 コーエーが現在開発中の「三國志 Online」は,「信長の野望」と並ぶ同社の看板シリーズ,「三國志」の名を冠したMMORPGだ。“モンスターを倒すことでキャラクターをどんどん成長させていく”というゲームの枠組みは既存のMMORPGにならったものだが,それに加えて,大人数同士の「合戦」が楽しめたり,三国志の物語を彩る人気の“武将”との関わりが実感できたりと,三国志モノならではの要素も盛り込まれているのが特徴である。また,武器を持ち替えることで“盾役”“攻撃役”“回復役”といった戦闘での役割を切り替えることが可能という,ユニークな特徴も持っている。

 

 2007年1月24日から2月6日までの期間,「三國志 Online」のクローズドβテストが行われた。このβテストの真っ最中である1月31日,本作のプロデューサー上野彰三氏にインタビューを行うことができたので,βテストの反応や手応え,そして今後の展望などについて話を聞いてきた。

 

 

ついにクローズドβテスト実施。その反応は?

 

KOEI ENTERTAINMENT SINGAPORE PTE. LTD.でシニアマネージャーを務める上野彰三氏。コーエーのオンラインゲームの歴史に,深く関わってきた人だ

4Gamer
 こんにちは,本日はよろしくお願いします。上野さんが日本に戻ってきたのは,当然,三國志 Onlineのクローズドβテストに合わせてですよね。クローズドβテスト開始から約1週間経ちましたが,状況はいかがですか?

 

上野彰三氏:(以下,上野氏)
 初日,二日目あたりはサーバーダウンもあって,対応に追われていました。ですが数日後にはサーバーも安定し,ホッとしています。

 

4Gamer
 “βの洗礼”というやつですね。初日は,私もなかなか接続できませんでした。あと,最初凄く“重かった”のですが,このあたりも徐々に改善されてきている気がします。開発スタッフの皆さんは,しばらく大変な日々を送っていたのでしょうね。
 いや,それはまだ続いているかな? 28日には,合戦のテストもありましたし。

 

上野氏
 合戦は,本作における重要な要素の一つなので,確かにスタッフ一同,ドキドキしながら見守りました。いきなり500対500で行ったのですが,「初めから人数が多すぎるかな?」と思いつつも,なんとかサーバーが持ちこたえてくれて,これもホッとしましたね。
 サーバーのほうのメドはつきましたので,今度はクライアントを改善していきますね。

 

4Gamer
 確かに,クライアントの重さは,まだまだ改善の余地があると感じています。

 

上野氏
 テスターの方からも,そういった要望が多く届いているので,さらに努力を続けていきます。

 

4Gamer
 毎日のようにアップデートされているので,さまざまな要望に細かく応えているのだろうな,というのは感じますね。

 

上野氏
 カメラの動きが少しおかしかったところなどは,即日直しました。あとは,操作方法ももっと整えていくつもりです。今回,いろいろな操作方法を同時に使えるようにしているんですが,やっぱりモデルケースみたいなものが選択できないと,とまどう方がいらっしゃるみたいです。
 今後はコントローラにも対応させたいですし,色々と手を入れなければならないポイントですね。

 

4Gamer
 操作は重要ですよね。ほかには,どういった意見/要望が届いていますか?

 

上野氏
 戦闘のテンポが,少しまったりしすぎているのではという意見をいただいています。あとはモンスターのアルゴリズムですね。今は,自分よりある程度弱い敵に攻撃すると,その敵が逃げちゃうことがあるんですよ。これ,最初は新鮮だと思うのですが,何回も逃げられると,さすがに大変だというご意見が多かったです。そういう部分も,今後検討/改善していきます。

 

4Gamer
 三國志 Onlineの場合,別の武器の技能を上げるために,自分のキャラクターレベルから見てかなり下の相手と戦うこともあるじゃないですか。そうした場合,結構な確率で逃げられるので,確かにつらいですね。
 あと私がびっくりしたのは,合戦で倒された後の復活までの時間が,最初凄く長かったことです。

 

上野氏
 倒されたキャラクターはどんどんキュー(Queue=順番待ちの列)に並んでいって,一定の時間が経つと,一定の人数が復活する仕組みなんです。でもそうすると,最初の人はすぐに自分の復活順番が来るのですけど,一気に大量にどーんと倒されると,列の後ろの人はなかなか復活できないという……。

 

4Gamer
 ああ,なるほど,待ち時間が10分近くになってしまっていたのはそういうことだったんですね。

 

上野氏
 合戦の参加人数が250対250ならまだ短かったはずですが,500対500だったので,なおさら長くなっていました。10分はさすがに長いですから,もう少し常識的な時間に収めたいと思います。
 ただ,復活するまでの時間が,いま自軍で倒されている人数によって変化するという仕様は,本作のシステムでは必須だと考えています。例えば,100対200で戦っているときに,100側の人達がとてもうまく立ち回って,200側の大部分を倒したとしますよね。しかし,倒された人達がすぐに復活できてしまうと,倒しても倒しても常に「1 vs. 2」の人数比が続いてしまう。つまり,「人数の差を戦略やテクニックでひっくり返す」ことができなくなってしまうんですよ。
 私としては,そういうことにはしたくない。でもあまり長く待たされるのも確かストレスになってしまうので,そこは調整していきたいと思います。

 

4Gamer
 そういう理由だったんですね。では,今後に期待しています。
 さて,人数差の話が出たところで,クローズドβテストでの,3国の人数比を教えてください。

 

上野氏
 思っていたよりは偏っていないですね。あと“部曲”(編注:ギルドのような要素)も,もっと特定の武将,例えば関羽/張飛クラスの人気武将のもとに偏ると思っていたのですが,こちらも予想以上に,うまく分散しています。“大物”以外の武将の部曲もしっかり作っていただいていて,嬉しいですね。

 

4Gamer
 やはり「三国志モノだから」という理由でプレイしている人が多いんですかね。

 

上野氏
 そうですね。でも,圧倒的にそうか,と言われれば,そうでもないようです。三国志ファンとMMORPGファン,半々という印象ですね。

 

4Gamer
 ただ皆さん,舞台が「三国志演義」の世界というのはさすがに意識しているのか,キャラ名は漢字が圧倒的に多いですよね。

 

上野氏
 ゲーム側で,漢字の名前でないとダメというようにはしていません。でも,世界観との兼ね合いを皆さんのほうで考えて,そうしてくださっているようですね。

 

4Gamer
 そういえば,これも漢字名が多い理由の一つだと思うのですが,「キャラクターの“姓”がアカウント内のすべてのキャラクターで共有される」というシステムになっていますよね。これって,かなり珍しいシステムだと思います。どういう理由からですか?

 

上野氏
 一つのアカウントは,“一族”であるという解釈です。

 

4Gamer
 同じ名字は,同一サーバー上に複数存在できないんですか?

 

上野氏
 いいえ,名字の重複は問題ありません。名前と名字合わせての重複だけチェックしています。それでないと,“孫”ですとか“劉”といった有名な姓が使えなくなってしまいますからね。中国では,同じ姓の方が多いので,そのような仕様にしました。

 

4Gamer
 それもそうですね。納得しました。では,次の質問です。国や部曲に偏りが少ないという話でしたが,武器系統(戦闘能力)はいかがでしょう? 一番人気のある武器系統は,何ですか。

 

上野氏
 すみません,それはまだ集計していないのですが,現状では成長させやすい/させにくいということからくる偏りがあるようですので,そのあたりは調整します。
 ちなみに,私が個人的にプレイしているキャラは練丹なのですが,どうも今,練丹はあまり活躍できていないようです。ただ実際には,レベル21以降のスキルも考えると(編注:クローズドβテストでは,レベルが20までに制限されている),練丹は決して悪くないキャラクターなんですけどね。

 

4Gamer
 これまた,調整が大変そうですね。では,生産系ではどの技能に人気が集まっていますか?

 

上野氏
 今は金属系の人気が高いようです。ですが,消費アイテムの使い勝手がもっとよくなっていけば,薬の調合や霊符(魔法のスクロールのようなもの)の生産の人気も,きっと高まってくるでしょう。

 

 

キャラクターの成長について

 

4Gamer

 本作では,武器によって戦闘能力の系統が決まっていて,同時に装備可能な鎧の種類も決まりますよね。そうなると,例えば冒険に行った先で,どの武器を使うかを考えるという場合は,各武器に対応した鎧一式も持ち歩く必要が出てきます。これって,「みんなが6種類すべての武器と3種類すべての防具を持ち歩いているのが普通」という状態が想定されているということでしょうか?

 

上野氏
 レベルが上がってきたときに,六種類全部を均等に上げているという人と,一つか二つを集中的に上げている人に分かれていくと思うんです。後者の場合,効率がいいのは,鎧が共通する系統の武器(能力)を伸ばしていくという形ですよね。それならば,手に持つ武器を取り替えるだけです。

 

4Gamer
 つまり三國志 Onlineでは,「装備可能な鎧が同じである,二つの武器系統を伸ばしていくのが標準的なプレイスタイルである」ということですか?

 

上野氏
 そのスタイルだと便利だとは思います。ただ,それはいろんな人がいていいと思いますし,もちろん六種すべてを平均的に上げていく人もいるでしょう。おそらくは……そうですね,最初は何か1系統に絞って伸ばしていくというプレイが,標準になるのではないでしょうか。βテストでも,まず1系統がレベル20になって,そのあとにほかの系統を育てるという方法で楽しんでいる方が多いようです。

 

4Gamer
 一つの武器技能を集中して上げる人もいるだろうし,六つの武器技能をまんべんなく上げる人もいる。つまり,いろいろな上げ方/遊び方の幅を残しておきたい,ということですね。「初めはこの組み合わせで二つのスキルを伸ばしていくのがお勧めです」みたいに道筋を用意しておくのでなく,本当にそこは好きにできますし,やってくださいと。

 

上野氏
 そうです。お好みで自由に遊んでもらいたいと思います。

 

4Gamer
 ただ,レベルの上限が20のうちはいいですが,それが40,50となってくると,スタイルも固まってくるかもしれませんね。30くらいまでは一つの武器に絞ったほうがいいけど,それ以降は補助の武器系統も……といった風に。ちなみに,正式サービス時には,レベルの上限はいくつになる予定ですか?

 

上野氏
 50です。まぁ上限に関係なく,多彩なプレイを楽しめるようにしていきたいですね。

 

4Gamer
 分かりました。では武器技能の話に戻りまして,レベル21以降は,どうなっていくのか教えてください。いまあるもののアップグレードが中心になるのでしょうか?

 

上野氏
 いいえ,まったく新しいスキルがまだまだ用意されています。でも“技能がもの凄く多いゲーム”にはしないつもりです。

 

4Gamer
 その新しい技能というのは,今ある技能を上書きしている形になりますか? 例えば,(通常の)「回復」を覚えたら,今ある「簡易回復」はまったく使わなくなる,といったように。

 

上野氏
 いいえ,それはありません。練丹として「回復」を覚えたとしても,それで「簡易回復」をスロットから外すことにはならないと思います。状況に合わせて,強いヒール(回復)と弱いヒール(簡易回復)を使い分けていくことになるでしょう。

 

4Gamer
 なるほど,成長することで“死んで”しまう技能はないということですね。本作の場合,キャラクターの成長が結構早いので,ほとんど使わない技能が出てくるのではないかと心配していました。そういえば,この成長速度は,製品版でも同じになるのでしょうか?

 

上野氏
 製品版よりは,少し成長しやすくなっています。ただ,製品版でもそれほど成長させにくいゲームにはしないつもりですよ。テンポよく上がって,比較的早めに合戦に参加してもらえるようにします。
 また,2キャラ目の育成に関しては,序盤が単調になってしまうことがありますので,そういうところをちゃんと考えていきます。

 

4Gamer
 しかし三國志 Onlineの場合,2番目のキャラクターというより,2番目の武器系統を上げる,という状況のほうが多いと思うのですが,その場合,1番目のときに比べ,ずっと簡単に上げられますよね。もう総合レベルが高くなっているわけですから。

 

上野氏
 そうですね。防具の“装備可能レベル”は,武器のレベルではなく総合レベルで設定されていますので,武器レベルが低くても防具はいいものが着られます。それに気力と体力の総量も総合レベルで決まります。
 バランス取りは難しいですが,どういう育て方でも許容できるように。必勝法や定番みたいな育て方がなるべく生まれないバランスにしたいです。

 

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タイトル 三國志 Online
開発元 コーエー(KOEI ENTERTAINMENT SINGAPORE PTE. LTD.) 発売元 コーエー
発売日 2007年内 価格 N/A
 
動作環境 N/A

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