先日の発表会(関連記事)で,ようやく具体的なゲームシステムが明らかになった「三國志 Online」。その内容を見る限りでは,比較的オーソドックスなMMORPGのように思えた。多くのファンを抱えるシリーズの名を冠しているだけに,できるだけ多くの人がストレスを感じずに遊べるような,プレイしやすい作品へと仕上がりつつあるようだ。
とくに「プレイヤーキャラクターにクラス(職業)はなく,戦闘時の役割はいつでも切り替えることが可能」という仕組みは,うまく機能すれば,かなり興味深いものになりそうである。
さて,この発表会直後,4Gamerでは特別に,控え室で本作のプロデューサー上野彰三氏と,ゲームプランナーのエドワード・テオ氏にインタビューを行うことができた。翌日にはシンガポールに戻らなければならない(当初は,なんとこの日のうちに飛行機に乗る予定だった)というお忙しい二人に,わずか数十分ではあったが,いろいろと話を聞かせてもらえたのでお伝えしたい。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。テオさんは,初めましてですね。
テオ氏:
はい,こちらこそよろしくお願いします。
4Gamer:
上野さんは,たぶん4Gamerでは,
「大航海時代 Online」のインタビューのとき以来ですから,2年半ぶりくらいかもしれませんね。お久しぶりです。
KOEI ENTERTAINMENT SINGAPORE PTE. LTD.でシニアマネージャーを務める上野彰三氏。本作のプロデューサーだ
上野氏:
シンガポールに行って約2年になりますから,ずいぶん久しぶりですね。でもシンガポールから,毎日のように4Gamerをチェックしていますよ。「大航海時代 Online」の,
渥美と竹田のインタビューとか,やはり気になりますし(笑)。
4Gamer:
元々,上野さんを含め3人であれこれ考えて作っていたタイトルですもんね。しかし上野さん,ずいぶん長い間シンガポールで暮らしている割には,あまり日焼けしていませんね。
上野氏:
暑すぎて,昼間に表へ出られないんですよ(笑)。
4Gamer:
な,なるほど。なんだか非常に納得しました。さて,あまり時間もないとのことですので,早速いろいろと聞いていきますね。まずはシンガポールのお話を。本作の開発にあたっている,シンガポールの現地法人 KOEI ENTERTAINMENT SINGAPORE PTE. LTD.(KES)には,現在何人ぐらいのスタッフがいるんですか?
上野氏:
CGのスタッフと開発部隊,全員合わせて80人強ですね。
4Gamer:
今はその全員が三國志 Onlineの開発に携わっているんですか?
上野氏:
ええ,現在はクローズドβ前ということで,全員が三國志 Onlineに注力しています。先ほどの発表会で流した合戦のムービーですが,あれ,実はスタッフ全員で一緒にログインして作ったんですよ。
4Gamer:
なるほど,かなり大勢のキャラクターが同時に戦っていましたものね。開発者同士で戦って,日頃の鬱憤を晴らしていたわけですね(笑)。
ところで,その約80人中,日本人のスタッフは何人くらいなんですか?
上野氏:
日本からは十数人が来てますね。それ以外は現地スタッフです。お国柄,いろんな国籍の人がいます。シンガーポリアン,チャイニーズ,インドネシアン,インディアンと,さまざまな国籍の人が集まって作っているのが,三國志 Onlineなんです。
4Gamer:
なるほど,みなさん育ってきた環境/文化が違うだろうから,いろんな意見が出てきそうですね。その中で,日本人は主にどういったことをされているんでしょうか。
上野氏:
プランニングのとりまとめとか,プログラム関係のとりまとめであるとかが主ですね。具体的に実際のデータを作ったり,プログラミングをする人間もいますよ。
4Gamer:
日本人が中核に多いのであれば,「コーエーらしさ」という部分は,心配する必要なさそうですね。テオさん,日本人スタッフの印象ってどうですか?
テオ氏:
みんな凄くいい先輩です。
上野氏:
ホントかなあ(笑)
4Gamer:
そういういい雰囲気の中で,開発が行われているということですね(笑)。その中で上野さんとテオさんがどういった作業を行っているのかを教えてください。
テオ氏:
こちらはシニア ゲーム デザイナーのエドワード・テオ氏。本作ではゲームプランナーを務めている
私は主にステージングを担当しています。マップのデザインですね。あと合戦システムにも携わっていますし,部曲(ギルド)まわりのデザインも行っています。最近は,公式サイト用の素材作成なども担当しています。
4Gamer:
かなりいろいろな部分を手がけているんですね。テオさんは,これ以前はどういったゲームに関わっていたんですか?
テオ氏:
私はKES立ち上げの2年前に,日本のコーエーでゲーム開発をしていました。信長の野望 OnlineのWindows版の開発にも携わっていますよ。
4Gamer:
おお,そうなんですか。では,上野さんのお仕事の内容もお聞かせください。プロデューサーとして,具体的にどのような作業をされているんですか?
上野氏:
全体の指揮を執っています。なにか問題が持ち上がっていると聞けば,その部署に行って,それを解決するという作業が多いですね。あとはバランスを最終的にどうしよう,というところで相談を受けています。
私が具体的にこうしろというのではなくて,どうしてそう考えているのかとか,プレイヤーはこう遊べるときっと楽しいよねとか,そういうサジェスションをして,それをみんなでまた考えるというやりとりをしながら,ゲームを作っています。
4Gamer:
では,ゲーム自体について聞いていきますね。まずは,その世界設定について。小説「三国志演義」の世界観を採用しているというのは当然として,では,何年頃なのか,モンスターが存在するなどのファンタジー要素はあるのか,といったところが気になります。
発表会の映像では,巨大な聖獣「白虎」や,ボスモンスター「牛魔王」などが映っていました。三國志シリーズはヒストリカルなストラテジーですが,MMORPGである三國志 Onlineの世界は,だいぶファンタジー色の強いものになっていそうですね。
上野氏:
まず年代ですが,これは大まかに「三国時代」と考えてください。年代を決めてしまうと,登場する有名武将が,限られてしまいますので。
それとファンタジー要素ですが,確かに映像ではそういったものもお見せしましたが,基本的には,「あの時代に生きていた人が普通に信じていたもの」を出していきたいと思っています。
4Gamer:
ああ,なるほど。コーエーの今までのタイトルもそのような感じですよね。
上野氏:
三國志 Onlineは,三國志の世界と古代幻想中国の融合を目指していますので,妖術はありますし,牛魔王のような,その当時信じられていたであろう怪物が存在します。大航海時代 Onlineの“クラーケン”と同じですね。
三國志 Onlineの世界や敵は,その頃,一般に信じられていた数々の現象などをベースに作っています。春秋時代など,三國志より前の時代にあったとされているいろいろなものを参考にしています。発表会の映像では青龍と白虎が出てきましたが,残り三つ,朱雀,玄武,麒麟も登場します。
4Gamer:
残り三つ? 四聖獣ではないんですね。
上野氏:
信長の野望 Onlineでは四つなんですよね。三國志 Onlineは,陰陽五行説をベースにしているので,聖獣も五つなんです。
4Gamer:
なるほど,分かりました。あと,先ほど有名武将の話が出てきましたが,そういった武将を,合戦の時に“招聘”できるというシステムも,発表会で話されていましたね。しかし,多くのプレイヤーが好き勝手に招聘できると,同じ武将があっちにもこっちにもいる,という状況になりませんか?
上野氏:
招聘といっても,もちろんずっとその武将を連れ回せるようなものではありません。合戦中にのみ招聘可能で,ここぞというところで助けを求めると,有名武将が疾風のように現れて,大活躍して,すぐに疾風のように去っていく,そんなイメージです。
4Gamer:
大規模対人戦のさなかに現れ,一暴れして去っていく……と。当然敵側が招聘した場合は,有名武将と戦うことになるわけですね。
上野氏:
はい,そうなります。とはいえ,一騎討ちで倒す/倒されるという感じではなく,そうですね,一般的なMMORPGの,強力な攻撃魔法のようなものだと考えてもらってもいいかもしれません。活躍だけして,すぐに去っていきますから(笑)。
4Gamer:
攻撃方法のバリエーションの一つが,有名武将の招聘,という感じなんですね。
いつぞやのインタビューで,松原さんが「三國志 Onlineは,プレイしていて自分と武将との関わりがより強く感じられるようなものになる」と話していたことの意味がようやく分かりました。普段から関羽と懇意にしていれば,いざってときに助けに来てくれる,と。
そういえば,招聘するには,普段からその武将と仲良くしている必要があるとのことですが,具体的にはどうすればよいのでしょう。その武将のくれるクエストを数多くこなす,とかでしょうか?
テオ氏:
クエストもありますが,“日頃の積み重ね”が一番重要です。例えば“普段から話しかける”とかですね。
4Gamer:
何度も訪ねることで親密になれるというのは,いかにも三國志らしいですね。
上野氏:
三國志に限らず,コーエーらしいと言えるかもしれませんね。大航海時代 Onlineでも,酒場女に毎日話しかけるといいことがあったりしますよね(笑)。
4Gamer:
確かにそうですね。
4Gamer:
発表会で画面を見た限りでは,やはり信長の野望 Onlineに似ているな,という印象を受けました。
上野氏:
ベースとなるMMOのフレームは引き継いでいますが,バトルシステムなど一から作成しています。もちろん,いろいろなところに三國志 Onlineならではの要素を加えていますよ。
4Gamer:
描画エンジンは同じものですか?
テオ氏:
いえ,また別のエンジンです。
4Gamer:
それは,オリジナルのエンジンですか?
上野氏:
そうです。性能の高いグラフィックスカードをお持ちの方なら,HDR(ハイ・ダイナミックレンジ・レンダリング)とか,ソフトシャドウとかを有効にすることもできますよ。
ただ,これはMMOなので,例えば合戦の部分でHDRを利かせて,さらにキャラクターを全部描画……なんてやろうとすると,どんなにいいマシンでもフレーム落ちはします。だからそこは調整して遊んでいただきたいと思います。
4Gamer:
そういえば,発表会では,家庭用ゲーム機への展開は未定だと話していましたね。
上野氏:
まずWindows版でしっかりとした土台が築けないと,先のことは分からないですね。コンシューマはいろいろな点で大変です。プレイステーション3にしてもXbox 360にしても,それなりの基盤ができあがってからでないと。とくにオンラインゲームは難しいです。
4Gamer:
信長の野望 Onlineは,まずプレイステーション2でリリースしましたよね。だからその性能に合わせるために,グラフィックス的には我慢していた部分があったと思うんです。今回はそれがないので,遠慮せずに絵作りができたんじゃないでしょうか。
上野氏:
それはありますね。ただ,本当にグラフィックスに遠慮しないでMMOを作ると,プレイできる環境を持つ人が,とても少なくなってしまいます。ある程度のスペックで大勢の方に遊んでいただけるようなものを,実現しなければなりません。
4Gamer:
では動作に必要なマシンスペックは低く抑えられているんですね。
上野氏:
なるべく抑えていきます。ですが3Dグラフィックスを使ったMMOである以上,ある程度の性能は必要ですね。そのラインをどこに置くかは,最後まで検討/調整することになるでしょう。