― 特集 ―
「ファンタジーアース」は「ゼロ」になって何が変わる? ゲームポットへ直撃インタビュー

Text by 星原昭典 

 1 2 3 

 「ファンタジーアース ゼロ」はMMORPGとストラテジー,そしてアクションゲームを掛け合わせたような独特のスタイルを持つ作品である。2006年10月一杯までスクウェア・エニックスが「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」のタイトルで運営していたが,11月からゲームポットに移管し現在のタイトルになった。
 運営の移管に際し,タイトルのみならず課金体系もパッケージ販売+月額課金制から,月額プレイ料金無料のアイテム課金制へ変更となった(現在はクローズドβテスト中)。
 運営元,そして課金体系の変更は,ゲームにどのような影響を与えるのか。そして,ゲームポットは,どのような方向にサービスを展開していくつもりなのか。同社で本作の舵取りを行っているディレクターの前島一仁氏に話を聞いた。

「ファンタジーアース ゼロ」は,手軽に対人戦を楽しめる

4Gamer:

 本日はよろしくお願いします。  いよいよ「ファンタジーアース ゼロ」(以下,FE0)が始まりますね。元々本作は「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」(以下,FE)のタイトルで,スクウェア・エニックスが運営していました。今回,それがゲームポットに移管されたわけですが,まずは御社が本作のどこに魅力を感じ,運営を手がける決断をしたのか教えてください。

ディレクター 前島一仁氏(前島氏):

 FEはご存じのように,FPSに似たスタイルの対人戦を楽しめるタイトルです。現在,主に基本料金無料のMMORPGをプレイしているようなライト層の中には,「対人戦に興味はあるけれども,ハードルが高くてなかなか踏み込めない」という人達がたくさんいるのではないかと思っているんです。

4Gamer:

 確かにそういう人も多いでしょうね。

前島氏:

 では,そういう人達にとって,興味を持てる対人戦とはどんなものだろうか。これを検討していった結果,ファンタジーアースという作品にはそういう魅力があるな,と判断したわけです。

4Gamer:

 つまり,御社のスタンスとしては,“FEはライトなゲーム”であって,今後のメインとなるターゲットは“ライトユーザー”ということですか?

前島氏:

 ええ,それもあって,基本料金無料のアイテム課金制を採用するというのもあります。
 これまでFEでプレイしていた人の多くは“コアゲーマー”であると認識しているんですよ。まずお店に行ってパッケージを買うという行動をし,さらに月額の料金を支払うという強い意志を持って遊んできたわけですからね。基本料金が無料になることで,これからは“カジュアル”なプレイヤーが増えていくと見ています。

4Gamer:

 ではこれまでのFEは,ゲームに対して強い欲求を持っている人だけが楽しめるようになっていたので,これをもっと広く届けようということですね。

前島氏:

 無料のMMORPGは現在,タイトル数が多く,市場も飽和状態になっていますよね。飽きてきているプレイヤーだって,少なくないと思うんです。そういった方々に,対人戦を楽しめる新しいゲームとして,FE0に興味を持ってもらえればと思います。
 キャラクターのグラフィックも韓国産ゲームとは違って,最初から日本人が日本人のために手がけたものになっていますし,取っつきやすいと思っています。

4Gamer:

 韓国産タイトルのグラフィックスって,もちろん可愛らしいんですけど,日本産のものに比べるとテイストに微妙な差があるんですよね。

前島氏:

 色遣いに関して言えば,韓国産のゲームはハッキリしたものが多いですね。一方,日本産のゲームはFE0を含め,淡色をうまく使っていると思います。このあたりはもう,文化の差以外の何ものでもないでしょう。

4Gamer:

 グラフィックスといえば,イメージイラストが変わりましたね。

前島氏:

 ええ,モチーフは同じなのですが,気分を一新させようということで,これまでとは違うイラストレーターに依頼しました。イメージイラストだけでなく,ゲーム内に登場する王様のイラストなども新しいものに変えていく予定です。今後もアップデートごとに,新たなイメージイラストをお楽しみいただけると思いますよ。

 

基本プレイが無料になるとどう変わる?

4Gamer:

 先ほども少し触れましたが,料金体系の変更について詳しく聞かせてください。そもそも,今回のような形に落ち着いたのは,どうしてですか?

前島氏:

 「FEはパッケージが高い」というご意見が圧倒的に多かったんですね。それではまず,そのハードルを低くしましょうということで,基本プレイ料金もクライアントのダウンロードも無料にしました。

4Gamer:

 実際,コンシューマゲームソフトの価格と比較すると,PCパッケージゲームの価格は,割高な印象を受けてしまう人も多いでしょうね。

前島氏:

 そうですね。コンシューマゲームだと「ゲームソフトはパッケージで買うもの」という意識がプレイヤーに根付いていると思うんです。PCの場合,そもそものPCゲーム市場が小さかったところに,オンラインゲームの潮流ができたことで,「ゲームは無料でダウンロードするもの」と思っている人が,大多数になってきつつあると考えているんです。

4Gamer:

 カジュアルなゲーマーにとって,そもそも「お金出してPCゲームを買う」という行為が,一般的ではないと……。う〜ん,確かにそういう風潮は最近ありますね。

前島氏:

 なんと言ってもこのゲームには,人が集まれば集まるほど戦争も活発になり,面白くなるという側面があります。ゲームに参加するためのハードルを低くすれば,より多くの人にログインしてもらえるのではないか,という狙いもあるんです。

4Gamer:

 人が少なくて戦争が楽しめない状況は,このゲームにとって一番致命的ですもんね。
 そういえば,FE0というタイトルの「ゼロ」には,基本プレイ料金が無料という意味が込められているとか。

前島氏:

 そうなんですよ。ほかにも,ゲームの世界では「リング」がキーワードの一つになっているんですね。大陸の配置も輪っかのようになっていますし,ゲーム内通貨に「リング」というものもありますし。で,輪っかって数字の0にも見えるじゃないですか(笑)。

4Gamer:

 とにかくいろいろな意味を込めているわけですね(笑)。
 では話を戻します。実費で購入できるアイテムには,どのようなものが用意されるのでしょうか。

前島氏:

 まずは武器防具などの装備アイテムや,体力回復などの消費アイテム系ですね。ほかにも,新システム“エンチャント”用のアイテムも販売する予定です。

4Gamer:

 おっと,エンチャントについては,あとでじっくり聞かせていただくとして……。
 課金対象になるアイテムと,ゲーム内マネーで購入できるアイテムは,同じものですか?

前島氏:

 “ゲームを長く続けることで獲得できるアイテム”と,“実費で今すぐ入手可能なアイテム”は別です。
 ゲームを長く続けなければ手に入れられないアイテムを持っている人は,必然的に少数になりますから,それを持っていることで優越感を感じられますよね。それと同じものを,お金で買えてしまったら,長く続けようという気持ちも起きなくなってしまうと思うんです。

4Gamer:

 実際のところ,お金をつぎ込んだ人ほど有利になるのでは? と危惧している人も多いと思うんです。

前島氏:

 もちろんそこには気を遣っています。ゲーム内で手に入る最高品質のアイテムは,課金アイテムと比べても最高品質ですから。

前島氏:

 対人戦がメインのゲームですので,バランスには気を配っているんですよ。課金アイテムを導入することによって,ゲームバランスが大きく崩れてしまうような事態は,最も避けなければいけないと考えています。

4Gamer:

 バランス次第ですもんね,このゲーム。
 ところで,FEにはおしゃれアイテムがありましたが,そういったものをFE0で課金アイテムとして用意するのでしょうか?

前島氏:

 ええ,考えています。クエストの報酬やイベントの景品としても,何かを用意するべく計画していますよ。

 1 2 3 

タイトル ファンタジーアース ゼロ
開発元 スクウェア・エニックス 発売元 ゲームポット
発売日 2006/12/21 価格 月額プレイ料金無料(アイテム課金制)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium 4/1.30GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:3GB以上,ネットワーク環境:300kbps以上

(C)2005-2007 SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserved, Licensed to Gamepot Inc.