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西川善司の3DGE:PlayStation事業の戦略軍師,SCE伊藤雅康氏に聞く,PS4進化の方向性。高性能版PS4は登場するのか?
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印刷2015/10/23 05:00

連載

西川善司の3DGE:PlayStation事業の戦略軍師,SCE伊藤雅康氏に聞く,PS4進化の方向性。高性能版PS4は登場するのか?

伊藤雅康氏(ソニー・コンピュータエンタテインメント EVP 兼 PSプロダクト事業部 事業部長 兼 ソフトウェア設計部門 部門長)
 唐突だが,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)の執行副社長にして,PSプロダクト事業部事業部長,そしてソフトウェア設計部門部門長でもある伊藤雅康氏に話を聞く機会を得た。

 伊藤氏はPlayStation事業のハードウェア・ソフトウェア両面の戦略を統括している人物である。せっかくの機会ということで,普段は聞けないことや,これまで筆者が行ってきた予測の真偽を確かめるような内容をテーマとして話を聞いてきたので,今回はその内容をまとめてみたい。


PlayStation VRの隠し球機能「セパレートスクリーンモード」の真実


東京ゲームショウ2015の開催に先駆けて行われたプレスカンファレンスにおいて,SCEジャパンアジアの盛田厚プレジデントは,それまでProject Morpheusと呼ばれてきたヘッドマウントディスプレイの正式名称がPlayStation VRになると発表した
PS4本体
 東京ゲームショウ2015のタイミングで,PlayStationファミリーに属する仮想現実(Virtual Reality,以下 VR)対応ヘッドマウントディスプレイで,開発コードネーム「Project Morpheus」と呼ばれてきた製品の正式名称が,「PlayStation VR」(以下,PSVR)に決定した。正式名称が決まったことで,VRが据え置き型ゲーム機上で展開されることに,いっそうの現実味が出てきたといえるだろう。

 ただ,ユーザー心理としては,正式名称よりも,価格や発売時期のほうに,より大きな関心がある。また,PSVRの場合,ユーザー位置を認識するためには「PlayStation Camera」(以下,PS Camera)が必須であるわけだが,よく知られているように,PlayStation 4(以下,PS4)にはPS Camera同梱の製品ボックス版と,そうでない製品ボックス版があり後者のほうが流通量は多い。それだけに,PSVRがどういう形で流通するのかも気になるところだ。

PSVRのイメージカットにも,PS Cameraは登場している
PS4本体
 PSVRとPS Cameraがワンパッケージ化されると,PS Camera同梱版のPS4を買った人はダブってしまう。かといって「PSVRを購入するときはPS Cameraを一緒に購入してください」と説明して回るのも骨が折れそうである。また,ユーザーがPSVRを買って帰って起動した時点で「PS Cameraを接続してください」というメッセージが表示されてギャフン,という展開になるのも気の毒である。SCEとしてはこの部分をどうするつもりなのだろうか。


伊藤氏:
 価格や発売日は,然るべきときに発表いたします。パッケージング展開も同様ですね。今回は「正式名称」のアナウンスをすることで,SCEのVRに対する意気込みをアピールすることに集中しました。


E3 2015のレポートより,PSVRで1対3の非対称な対戦を行っているところ。PSVRの装着者はPSVRの画面,残る3名(※仕様上は4名まで参加可能)はディスプレイデバイスの画面を見て,ゲームをプレイしている
PS4本体
PS4本体
 予想通りの答えではあった(笑)。話題を切り換えよう。
 E3 2015のレポートでも取り上げたが,PSVRの機能として,「セパレートスクリーンモード」の存在が明らかとなっている。
 一言でまとめるなら,これは「1台のPS4で,PSVR側とテレビ側に異なる映像を出力する機能」ということになるが,応用・活用の観点から言い換えると,「1つのゲーム世界を,PSVRを装着したプレイヤーと,テレビなどのディスプレイデバイスを見て操作するプレイヤーが共存できる」という,新しいゲームスタイルを実現しうる,革新的な機能である。

 ちなみにこのセパレートスクリーンモード,かなり変則的なパイプラインで実現されている。
 技術的詳細はE3 2015のときのレポートを参照してほしいが,簡単に要約すると,PS4はPSVRに対してHDMI経由で映像を出力しつつ,テレビ用となる別視点の映像をレンダリングし,PS4側のAPUに統合されたH.264エンコーダでMPEG-4ビデオストリーム化したうえで,PSVRのインタフェースボックス「Processing Unit」へとUSB経由で伝送するのだ。ストリームデータを受け取ったProcessing Unitは,これをデコードして,その先にあるディスプレイデバイスへとHDMI出力する。
 この技術は確かにすごいのだが,この接続スタイルの場合,ユーザーは,PSVRを使わずにゲームをプレイするときにも,Processing Unitの電源を入れる必要が出てくる。それと,PSVRを使用していないときの,Processing Unit経由のテレビ出力は,表示遅延がないパススルー仕様であることを期待したいが,もし遅延があるとすれば,Processing UnitとディスプレイデバイスをつないでいるHDMIケーブルを,PS4につなぎ換える必要が出てくるだろう。

 実は,世界市場におけるPS4の発売に先立つGDC 2012のこと,あるセッションの聴講のための待機列に並んだところ,SCEワールドワイド・スタジオのプレジデントである吉田修平氏や,PS4のハードウェア開発に携わったエンジニア陣とたまたま隣り合わせになったことがある。「厄介なヤツの近くに並んだな」と思われたに違いないのだが(笑),このとき筆者が,「PS4にはHDMI端子を複数付けてくださいよ。AMDのAPUはハードウェア的に複数出力できますから,異なる画面を複数のテレビに出すのにも使ってもいいし,1つの描画フレームを複数のテレビで横断させるようにスパン表示させても面白い」と熱く語ったことが思い起こされる。

 ただこの発言,筆者の思いつきというわけではない。「複数のHDMI端子を実装する発想」の言い出しっぺは,むしろSCEのほうだったりする。
 PlayStation 3(以下,PS3)発売の1年前,E3 2005のタイミングで,当時の代表取締役会長兼SCEグループCEOの久夛良木健氏が発表した「PS3の公式スペック」には「HDMI端子が2つ」と明記されているのを知っているだろうか? 下がその証拠写真である。

E3 2005で公開された,PS3の公式スペック。I/Oスペックの一覧には「HDMI(Digital Audio/Video) output x2」,ブロック図には2つの「Full HD」と記載されている。当時から多画面マニアだった筆者は,シーンとする発表会場でただ一人「ひゃっほー!」と声を上げて,周囲から睨まれた(笑)
PS4本体 PS4本体

 しかし,翌年発売されたPS3に搭載されていたHDMI出力端子が1系統のみだったことは,皆さんご存じのとおりだ。
 だからこそ,GDC 2012のとき,「久夛良木さんのアイデアを今回こそ実現しましょうよ」と直談判したというわけである。まぁ,筆者個人の要望を,過去の久夛良木さんのプレゼンに当てつけて力説しただけという話もあるが。

 とにかくその後,筆者の要望は聞き入られることはなく,2013年に北米市場を皮切りにリリースされた製品版PS4に,HDMI出力端子は1つだけだった。
 今回のPSVRセパレートスクリーンモードを実現することが最初から想定されていたのであれば,どうせPS4のGPUで2視点分(≒2画面分)描画する負荷は変わらないわけだから,HDMI端子をもう1つ搭載していたほうがシンプルで面倒のないパイプラインを実現できたはずである。先ほど指摘した,「PSVRを接続したうえで,PSVRを使わないとき」のPS4利用スタイルにおいても,面倒は起こらないはずだ。
 そもそも論として,閉じたローカルシステムなのに映像をいったんH.264エンコードして,直後にデコードしてテレビに出力するというのはどう考えてもスマートな実装形態ではない。

GDC 2014にて,PSVRの開発は2010年秋,ソニー製ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」の改造から始まったという
PS4本体
 ところで,GDC 2014のタイミングで掲載した筆者のレポートにもあるように,PSVRの開発は,2010年に始まっていたとされている。
 つまり,「PS4をVRゲームプラットフォームにしよう」という構想(の萌芽)は,2010年の時点に存在していたことになる。HDMI端子の複数実装を,PS4の開発段階から想定していてもよかったのではないか。


伊藤氏:
 はい。おっしゃる通りです(笑)。今となっては,HDMI端子は複数搭載しておいてもよかったとは思います。
 正直言いますと,セパレートスクリーンモードの発想は,PS4の仕様がフィックス(決定)したあとに,VRコンテンツを研究開発している部署から提案されたものでした。
 結果,決定されたPS4の仕様の範疇でセパレートスクリーンモードを実現することとなり,今回のような,H.264エンコーダとH.264デコーダをローカルで駆使するような仕様になったのです。


 筆者は,このセパレートスクリーンモードを駆使したPSVRコンテンツを開発しているエンジニアにも取材を行ったことがあるが,そのエンジニア氏によると,PS4側におけるH.264エンコードの遅延やProcessing Unit側におけるH.264デコードの遅延はそれぞれ微々たるもので,USBを使った伝送までを含むビデオストリームの入出力処理までを踏まえた遅延総量も「そこそこあるが,30fps前提であれば無視できるレベル」だそうだ。現在はその遅延削減チューニングに取り組んでいる最中とのことだった。
 PS4のH.264エンコーダ,PSVRのProcessing Unitに搭載されるH.264デコーダはいずれも1080p/60fpsをサポートしているものの,現実的なセパレートスクリーンモードの活用において,テレビ側は720p/30fpsが「ほどよい落としどころになるだろう」とのことである。


PS4で4K Blu-rayへの対応はあるのか?


CEATEC 2015でパナソニックは,Ultra HD Blu-ray対応レコーダ「DMR-UBZ1」を発表した
PS4本体
 2015 International CES(以下,CES 2015)で,パナソニックが4K Blu-rayこと「Ultra HD Blu-ray」――当初は全部大文字だったが,結局自然な表記に落ち着いた――を発表した(関連記事)。2015年中にも,パナソニックから対応レコーダーとプレーヤーが登場する見込みだが,SCEとしてはどうするつもりなのだろうか。

 PlayStationファミリーは,PlayStation 2(以下,PS2)以降で,新しい世代の映像ディスクメディア普及に大きく貢献した。PS2では,他社に先駆けてDVD-ROMドライブを搭載してDVD-Videoの普及を後押しし,さらにPS3では据え置き型ゲーム機として初めてBlu-ray Discドライブを搭載し,BD-Videoの普及に勢いを与えている。
 2010年に3D Blu-ray規格が立ち上がると,PS3はアップデートによって対応し,2006年に発売された最初期モデルを含む全製品で3D Blu-rayも楽しめるようになった。

 この歴史的事実を順当に踏まえるならば,今年発表されたUltra HD Blu-RayにPS4が対応してくるのは,自然な流れということになる。というか,AV業界からは,「PS4が対応してくれないとUltra HD Blu-Rayは普及しない」という見方すら出てきているほどだ。
 PS4世代におけるUltra HD Blu-Rayの対応について,SCEはどのような見通しを立てているのだろうか。


伊藤氏:
 西川さんには嘘はつけないので(笑),正直にお話ししますが,現行のPS4に搭載されているBlu-ray DiscドライブはBlu-ray Discプレーヤー専用のものなので,Ultra HD Blu-rayで規格化された3層メディアは読めません。ですから,これまでに販売されている現行のPS4で,Ultra HD Blu-rayに対応することはできません。


 ここは補足が必要だろう。
 詳細は2月21日掲載の連載バックナンバーを参照してほしいが,Ultra HD Blu-rayメディアの物理仕様は,2010年に発表されたBlu-rayレコーダー向けのメディア&ドライブ規格である「BDXL」を継承するものとなっている。BDXL規格では,一層当たりの容量が約25GBの従来タイプに加え,約33GBのメディアが規格化されたのだが,Ultra HD Blu-rayではさらに,2層約67GB,3層約100GBのメディアが規格化された。そのため,1層約25GB,2層約50GBのメディアしか読み出せない,伊藤氏の言う「Blu-ray Discプレーヤー専用」となる現行PS4は,Ultra HD Blu-ray非対応ということになるのである。
 BDXL規格に準拠したドライブであれば,Ultra HD Blu-rayをサポートできると見られているが,PlayStationプラットフォームとして,このドライブはサポートしないということなのだろうか。


難しい質問にもざっくばらんに答えてくれた伊藤氏
伊藤氏:
 現在,Ultra HD Blu-rayに対する対応方針は,目下検討中なのです。
 これはあくまで「たとえば」の話として聞いて欲しいのですが(笑),Ultra HD Blu-ray対応可能な上位モデルを設定するという対応の仕方は考えられます。
 ただ,その決断をするためには,「上位版PS4が何台くらい売れるのか」「価格はどう設定するのか」などを慎重かつ多角的に予測・検討しなければなりません。今は,そうした戦略の検討中ということです。


 Ultra HD Blu-rayの再生には4Kテレビが必要だ。
 2015年10月時点の市場価格を見てみると,40インチクラスであれば12万円前後にまで値を下げ,普及に勢いがつき始めている。とはいえ,HDテレビ(720p),フルHDテレビ(1080p)の普及率と比較すればまだまだだ。普及途上の4Kテレビを前提としたUltra HD Blu-rayに対応するためだけに,PS4の次回のマイナーチェンジ時にPS4の本体価格が上昇してしまっては,イメージがよくない。そのあたりを気にしているのかもしれない。
 Ultra HD Blu-rayを読み出すためには,Blu-rayレコーダに搭載されるBDXL系ドライブが必要になるが,BDXL規格は登場してもう5年にもなる。部材としての価格はこなれてきているはずで,BDXL系ドライブの採用が大幅な価格情報にはつながらないだろう。

 あり得るシナリオとしては,2016年,さらに価格が下がったマイナーチェンジ版PS4が登場し,それと合わせて,現行PS4と価格据え置きのUltra HD Blu-ray対応版も登場するといったところだろうか。このあたりがちょうどいい落としどころな気はする。

 仮にその上位版PS4でUltra HD Blu-rayの再生に対応すると仮定した場合,もう1つ,乗り越えるべきハードルがある。Ultra HD Blu-rayの再生には,PS4のAPUに搭載されているH.264デコーダよりも世代の新しいH.265デコーダが必要になるからだ。

 ただ,ここは,それほど問題にならない可能性が高い。というのも,PS4向けAPUの製造プロセス技術は,2016年中に,14nmないしは16nmへ移行する見込みになっており,そのタイミングで“普通に”H.265デコーダを統合してくる可能性が高いからだ。

Carrizoのパッケージ
 PS4用APUの開発元であるAMDは,すでに「Carrizo」(カリーゾ)と呼ばれる世代のPC向けAPUで先行してH.265デコーダを統合済み(関連記事)。
 H.265デコーダのロジックデザインはH.264デコーダの拡張進化版のようなものだったりもするので,PS4用APUのシュリンク時にしれっと搭載するのは難しいことではない。スマートフォンやタブレット向けSoC(System-on-a-Chip)でもH.265デコーダの搭載が進んできており,ビデオストリーミングサービスのコーデックもH.265へシフトしてくる見込みなので,むしろH.264デコーダ搭載に留まる理由もなかったりする。


次回マイチェン時のPS4は「HDR」対応に意欲を見せる!?


 Ultra HD Blu-rayの対応は,伊藤氏の喩え話のように上位モデルのみの対応になるとして,現在HDMI 1.4a対応のPS4による,HDMI 2.0aへの対応はどうなるのだろうか。

 ここで簡単にHDMI周りの最新情報をまとめておくと,現在は4K/60Hz(60fps)に対応したHDMI 2.0が主流だ。Ultra HD Blu-rayにおいて対応必須の規格である。
 そのHDMI 2.0の進化版であるHDMI 2.0aは,2015年春に規格化されたばかりの最新規格で,Ultra HD Blu-rayとセットで導入されることとなった「ハイダイナミックレンジ」(High definition Dynamic Range,以下 HDR)映像データの伝送方式を規格化したものになる。

 簡単に言うと,HDR映像とは,漆黒の暗闇からまばゆいばかりの高輝度までを再現する映像のことで,HDMI 2.0aでは,最大輝度1万nit(※nitはカンデラと同義。一般的なテレビは400〜500nit程度)のHDR表現を10bit深度で伝送できるようになった。実際の民生向けテレビ製品の輝度スペックだと,ピーク時でも1000nit+α程度なので,実際の表示時にはその輝度スペック範囲に丸め込まれての表示となるはずだが,映像データにHDR情報が含まれていることで,コントラスト表現はよりリアルになることが期待されている。


伊藤氏:
 実はですね。4Kはともかく,PS4でHDRの対応はしなきゃいけないかなぁ,とは思って検討しているんですよ。Ultra HD Blu-rayの発表の影響で,HDRは4Kとセットで考えられがちですけど,HDMI 2.0aの規格上,HDRを1080pと組み合わせることには何の問題もありません。
 ゲームグラフィックスにHDR表現を加えることができたら,さらに進んだ映像表現ができるはずなんです。


 ゲームグラフィックスは,実のところ,PS3&Xbox360時代ですでにHDRレンダリングを実現していた。もっとも当時は,グラフィックス周りの性能限界が低かったこともあって,“疑似”HDRレンダリングも多かったのだが,いずれにせよ,ゲームエンジン内部で,高輝度光源(HDR光源)を設定してのガンマ補正から解放されたリニア輝度次元でのライティングは普通に行われていたのだ。
 それに対し,PS4,Xbox Oneの世代では,“疑似”ではないリアルなHDRレンダリングが行われるようになり,レンダリングは物理ベースマテリアル前提となった。結果,先代機の時代と比べてリアルなHDR表現ができるようになっている。
 ただ最終的には,その映像も,HDR表示に対応していない現状のディスプレイデバイス上で表示することになるため,結局,最大100nit想定となる「スタンダードダイナミックレンジ」(Standard definition Dynamic Range,以下 SDR)に丸め込まれることになるのだった。

 それが,HDMI 2.0a対応のHDR対応ディスプレイデバイスであれば,当該デバイスが表現できる最大輝度の範囲で,HDR映像をHDR表示できるようになる。その映像の見た目のリアリティは各段に向上してくるはずだ。その意味では,マイナーチェンジ版PS4がHDRに対応してきたら面白そうである。

CES 2015ではソニーがHDR対応テレビの試作機を展示した。左がHDR対応のソニー製4Kテレビ試作機における表示だ。HDR映像は,明暗差が現実世界に近い見え方になるため,平面視対応の映像であっても立体感を感じるのが特徴
PS4本体
 伊藤氏がHDR対応に前向きな姿勢を示しているのは,PS4側でGPUの大幅な性能強化をしなくても,そのままでHDR対応ができるからかもしれない。
 繰り返しになるが,もともと近代ゲームグラフィックスは内部的にはHDRレンダリングを実現できている。HDR対応をするということは,現在,レンダリングパイプラインに介入させている「現行のディスプレイデバイスに表示するためのHDR→SDR変換」を省いてHDMI 2.0a出力するだけでよくなるのだ。確かに,ゲームプログラム側の変更も最低限でお手軽に新世代の映像体験をユーザーに授与できるのであれば,コストメリットは大きい。

 すでに,パナソニックやシャープ,東芝など,主要テレビメーカーからHDR対応テレビは発売済み。もちろんSCEのグループ企業であるソニーからもHDR対応のブラビア「X9400C」「X9300C」が発売されている。近未来的にPS4がHDR表示に対応したとしても,受け皿は揃っているのだ。


PS4ではオブジェクトベースオーディオへの対応も検討中


 PS4が進化する方向性としてはもう1つ,伊藤氏が興味深い発言を行っていた。


伊藤氏:
 もう1つ,進化の方向性で検討しているのは「オブジェトベースオーディオ」への対応ですね。これについても対応への議論を重ねています。


 これも,補足説明が必要だろう。
 PS3でも,ユーザーを中心に据えた3D空間上の任意の位置から音を再生する仕組みは提供されていた。PS3の場合,この3Dサウンドを,「Dolby Digital 5.1」準拠の5.1chストリームデータへリアルタイムで変換し,レシーバーとなるAVアンプなど(以下,便宜的に「AVアンプ」で統一)へデジタルインタフェース経由で出力する仕様だ。

 PS4でも,この仕様自体は大きく変わっていない。筆者が関係者へ取材したところによれば,PS4において処理を担当するのは,APUに統合されたCadence Design Systems(のTensilica部門)製DSP(Digital Signal Processor,デジタル信号処理に特化したプロセッサ)だが,3D空間上にある任意の場所に音源を置くと,DSPが,5.1chのDolby Digital 5.1や「DTS Digital Surround」,あるいは7.1chの「Dolby TrueHD」や「DTS-HD Master Audio」準拠のストリームデータへ変換して,AVアンプへと出力するようになっている。

 これら,既存の技術をベースとするサラウンドサウンドシステムだと,もともとゲームシステム上では3D空間上にある任意の位置で音を再生する仕組みがあるのに,再生段階において,そうではなくなってしまう。
 イメージしてもらうと分かりやすいのだが,たとえば5.1chスピーカーセットがあったとして,その配置はユーザーごとにまちまちだ。部屋の大きさも,ユーザーから各サテライトスピーカーまでの距離や角度も異なるわけで,本来,ゲームシステム上から想定した座標位置とは異なるところからサウンドが再生されてしまうことになる。

 こうした課題を克服しようということで登場したのが,「3Dポジショナルサウンド」「オブジェクティブサウンド」とも呼ばれる,オブジェトベースオーディオである。再生する音声ストリームに3D座標データを付加して伝送し,そのユーザーのスピーカーの設置環境ごとに適応型の処理をAVアンプ側で行って,立体音響空間を正確に再現する仕組みという理解でいい。
 AVアンプが,「いま接続されているスピーカーの数や向き,3D座標位置」を把握し,音声再生時にAVアンプ側でどのスピーカーで「どのスピーカーでどう音を鳴らせば正確な立体的な音像再現ができるか」をリアルタイム計算しながら再生するのだ。

 この,オブジェトベースオーディオ規格としては「Dolby Atmos」と「DTS:X」が発表されており,対応AVアンプも登場しつつある。
 オブジェトベースオーディオシステムが柔軟なのは,部屋にスピーカーを置けば置いていくほど,正確な音源定位表現が実現できるようになるところである。つまり,スケーラブルにシステムアップが可能なのだ。たとえば,天井にスピーカーを設置すれば,ちゃんと,音源の上下移動を表現できるようになる。

Dolby AtmosおよびDTS:X対応AVアンプの例。写真はオンキヨー&パイオニア製の「SC-LX59」
 規格の仕様上は,Dolby Atmosが34基,DTS:Xが32基のスピーカーを設置できるのだが,一般家庭用AVアンプが抱える電気的仕様の関係で,現状は12基くらいが最大のようである。
 ちなみに,オブジェクトベースオーディオでは,(サテライトスピーカー.サブウーファ.天井設置あるいは仮想的に天井設置されるスピーカー)といった形で,その数が示される。5.1.4chならサテライト5基,サブウーファ1基,天井設置,あるいは床にあって仮想的に天井設置スピーカーをシミュレートできるスピーカーが4基ということだ。現在市販されている対応AVアンプだと,5.1.4chのほかには,5.1.2ch,7.1.2ch,7.1.4ch,9.1.2chなどのスピーカー配置がサポートされている。

5.1.4chの例。天井のスピーカーは実際に設置してもいいし(左),オブジェクトベースオーディオ対応スピーカーセットであれば,仮想的にも表現できる(右)

 さて,このオブジェクトベースオーディオ機能だが,ハードウェア的には,現行モデルのPS4で対応できる。というのも,オブジェクトベースオーディオ機能のデータ仕様は,HDMI 1.4の規格範囲内で実装されているからだ。
 しかも正確を期せば,対応できるどころではなく,すでに対応している。「音声出力設定」−「音声フォーマット(優先)」設定を「ビットストリーム」設定にするだけで,Dolby AtmosとDTS:Xを利用できる。
 あとはゲームシステム側なりゲームエンジン側なりで,Dolby AtmosやDTS:Xに対応したオブジェクトベースオーディオのストリームデータを生成すればOK。オーディオミックス処理をAVアンプ側でやってもらえる分,むしろ総合的な処理負荷は従来の5.1chや7.1chサラウンドサウンドより低くなるかもしれない。

 Dolby AtmosやDTS:Xに対応したゲームはまだないが,伊藤氏が検討中だと明言している以上,いずれ,出てくる可能性はあるだろう。
 おそらく現在,SCEでは,リアルタイムにゲームサウンドをDolby AtmosやDTS:Xで出力するライブラリの開発を進めているのだと思われる。技術的にも,実装は不可能ではない。


性能アップした“PS4.x”は出るのか,出ないのか


Cellのイメージカット
PS4本体
 PS3は,東芝とSCE,ソニー,IBMの4社連合が開発した,極めてユニークな異種混合マルチコアプロセッサ「Cell Broadband Engine」(以下,Cell)を採用していた。そして当初の計画だと,PS4は,PS3の進化形,すなわち,Cellアーキテクチャのスケールアップ版プロセッサを搭載し,順当な性能強化を図る計画になっていた。SCEはPlayStationを,PCのように,後方だけでなく前方互換性も持つプラットフォームに育てるつもりだったと言われている。

 しかし,2010年以降,東芝とIBMが相次いでCellプロセッサの開発から手を引くことになり,SCEとしても開発予算と開発期間などの理由もあって,Cellの開発を断念。結果として,x86プロセッサ,具体的にはAMD製APUが採用されたというのは,ご存じのとおりだ。
 そういう経緯であるだけに,いまのPS4のカタチはSCEの本意ではないと思われるが,しかし,ほぼPCといえるシステムになったところで,SCEの当初計画にあった「前方互換性」を実現できる目処が立ったのも確かである。今後,PS4は任意のタイミングで必要な性能強化を取り入れることができるようになったといえるだろう。
 となると気になるのは,今後のPS4で性能強化は行われるのか,行われるとして,どのように行われていくのかという点だ。筆者は2013年の時点で「“PS4.1”的な性能強化版PS4の投入の可能性はある」と予測済みなのだが(関連記事
,実際のところはどうなのだろうか。


伊藤氏:
 「具体的なことは申し上げられない」と前置きをしたうえでお答えすると,x86アーキテクチャを採用した以上,そうした「必要なタイミングでの性能強化」は考えています。つまり,可能性はあるということです。むしろ考えていかなければならないでしょうね。
 PS3では,当初の思惑とは異なり,結果的に世代交代が難しくなってしまったCellアーキテクチャを採用したことから,商品バリエーションというと,「HDDの容量多寡」でしか展開できませんでした。しかし,コンベンショナルなx86アーキテクチャを採用したPS4であれば,過去のゲーム資産を継承しつつ,柔軟な性能強化を図ることは容易です。
 たとえばですが,スタンダード性能版PS4と高性能版PS4を提供する,そういうバリエーション展開の可能性は,考え得るアイデアです。


 繰り返しになるが,もともとSCEとしても,PS3の時代から,アーキテクチャを継続しながらのリニアな性能強化はやりたかった戦略である。それが叶わなかったのは,先ほども指摘したとおり,Cellが続かなかったためだ。PCライクなアーキテクチャを採用したPS4で,ついにSCEのやりたかったことができるようになるのである。

 こういうことを言うと「PS4の買いどきが分からなくなる」という話になりがちだが,実のところ,こうした「リニアな性能強化」はユーザーメリットも大きい。
 手持ちのお気に入りのゲームタイトルがあったとして,ゲーム機のモデルチェンジのたびに買い直す必要はなくなり,長いスパンで手持ちのゲームを将来のゲーム機でも動かし続けられる。
 性能強化版の“PS4.1”的なマシンが出たときには,現行のPS4で30fpsだったものが60fpsでプレイできるようになるかもしれない。“PS4.1”的なマシンが性能強化されたうえで,HDMI 2.0に対応すれば4Kネイティブでプレイできるようになるかもしれない。また,HDMI 2.0aに対応していれば,提供されるパッチを当てることで,手持ちのゲームをHDR対応でプレイできるようになるかもしれない。HDリマスター版のようなリメイク版をフルプライスで買い直さずとも,安価に提供される「PS4.x対応パッチ」で,より優れた映像表現の進化バージョンにアップグレードできるような道筋が提供されるようになるかもしれない。

 「出て2年ばかりのPS4にそこまでして性能強化は必要なのか」「高性能版PS4なんて必要ある?」という疑問を持つ人もいるだろう。
 実は,必要に迫られているのだ。それは,先ほども話に出てきたVRである。

PlayStation Move
PS4本体
 PSVRは,現行のPS4と組み合わせることで必要十分なVR体験ができるようになっている。
 ただ,PSVRのヘッドトラッキング処理負荷,PS Cameraや入力デバイスたる「PlayStation Move」の処理負荷,左右2視点での描画をしつつの最低フレームレート60fps維持など,VRに必要な基本処理だけでプロセッサの性能は相応に喰われてしまう。実際,PSVRコンテンツ制作に従事している開発者に聞くと,「快適なVR体験を提供するためのコンピューティングパワーはPS4に備わっているが,その実現にGPU性能がけっこう食われるので,グラフフィックス表現は直視型テレビ向け想定時の仕様から数段落とす必要がある」とのことだ。


伊藤氏:
 PSVR向けのVRコンテンツは,現行のPS4で十分に楽しめるように開発してもらってはいます。ただ,より高い性能のマシンと組み合わせれば,より素晴らしい体験をできるようになるでしょう。


 VR体験では,フレームレートが高ければ高いほど酔いにくく没入感も高まるとされる。なので,たとえば前出のスタンダード版PS4と高性能版PS4の話をするなら,スタンダード版PS4では60fpsのところ,高性能版PS4では120fpsでVRコンテンツを楽しめる,といった差別化が可能になるだろう。そうなれば,高性能版の価値は高まり,また,VRに興味がないなら積極的にスタンダード版を選択すればよくなる。
 本筋から離れるが,もし高性能版PS4が出るとしたら,それはUltra HD Blu-rayやHDRにも対応したものとなるに違いない。


伊藤氏:
 PCアーキテクチャに近いカタチとなったPS4ですが,我々としては,PlayStationプラットフォームとして展開していく以上,独自OSや独自サービスによるエコシステムの維持にはこだわっていきたいですね。そこがAndroidやWindowsと違うところですし,PlayStationプラットフォームとして最も差別化できる部分ですから。


 そう,Windows PCは,ハードウェアのバリエーションが自由すぎて,ゲームやアプリケーションの動作保証が難しいのだ。
 ほぼPCアーキテクチャとなったPS4に対して「もうPCでいいじゃん」というヤジが浴びせられることはよくあるが,PlayStationプラットフォームという括りでやっていく以上は,「動作保証」や「体験の品質保証」の側面から,ある程度の仕様画一化は必要だ。そして,その「画一化された仕様」に魅力を打ち出していくためには,総合的なサービスに魅力がなければならない。伊藤氏が「独自OSと独自サービスにこだわりたい」と述べてたのは,この部分にこそPlayStationとしての魅力のコアがあると考えているからなのだろう。


PS Vitaはどうなるのか


 今後のPlayStationプラットフォームにおけるPlayStation Vita(以下,PS Vita)の扱いはどうなっていくのだろう。


伊藤氏:
 当時は20代以上の高い年齢層にしか響かなかったPS Vitaですが,今では状況が変わってきていて,低年齢層への普及が進んでいます。その後押しとなっているのが「Minecraft: PlayStation Vita Edition」ですね。
 ほかにも,さまざまなサードパーティ製ゲームが今後もリリースされる予定ですし,この流れをさらに加速させるべく,今秋はPS Vitaの新色をリリースすることにしました。


 「今後も現行のPS Vitaビジネスを継続していく」という戦略という理解でいいのだろうか。


伊藤氏:
 はい。登場当時はハイスペックだったPS Vitaですが,いまや,最新のハイエンドスマートフォンよりも非力なのは認めざる得ないところです。しかし,アーキテクチャを変えて作り直すというのは,正直,このタイミングではどうかな……と思うところがありまして(笑)。


初代PS Vita(PCH-1000)。現行モデルはPCH-2000だが,プロセッサの仕様に変更はない
PS4本体
 PS Vitaが発売されたのは2011年末。「Cortex-A9」プロセッサ4基をCPUとして統合し,GPUとしては「PowerVR SGX543MP4+」を組み合わせ,さらに,映像パネルには960×540ドットの有機ELディスプレイを採用するなど,当時としてはかなりハイスペックな存在であった。
 関係者への取材によれば,PS Vitaはもともと,北米市場におけるPlayStation Portable(以下,PSP)へのテコ入れとしてSCE America(以下,SCEA)で発案されたプロジェクトだったとのこと。2010年頃,PSPは北米で低迷しきっていたのに対し,日本ではモンスターハンターシリーズが流行したり,キャラクターゲームがサードパーティから続々投入されるなど,一定の盛り上がりを見せていたため,当時のSCEジャパン(現SCEジャパンアジア)としては,PS Vitaの投入は先延ばしにしたかったようだ。
 「今はその時期ではない」とコメントした伊藤氏の脳裏には,あの頃の苦い決断の記憶がよぎっていたのかもしれない。

 さて,SCEAに押し切られる形で投入されることになったPS Vitaだが,せっかく北米市場を意識して投入されたにもかかわらず,北米市場においては依然として成功を収められずにいる。2015年10月下旬時点における北米市場での販売台数は,ざっくり日本市場比で6分の1程度止まりとなっており,市場規模を考えると,隔たりは大きい。
 なお,PSPの盛り上がりに水を差されたことにへそを曲げたわけではないだろうが,PSPブームの“仕掛け人”だったモンスターハンターシリーズは,プラットフォームをニンテンドー3DSへと転換。そのため,発売からしばらくの間,PS Vitaは低空飛行を続けたのだが,マイクラ効果もあって,日本では往時のPSP並みの盛り上がりを見せるまでに復活した。

 ただ,PS Vita向けのファーストパーティタイトルが最近ではまったくと言っていいほどなくなってしまったのは気になるところだ。筆者が掴んでいる範囲だと,2015年10月時点で,ファーストパーティが開発を進めているPS Vita向け新作タイトルは1本もない。PS Vitaの名作「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」の続編「GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択」も,PS4専用となってしまった。


伊藤氏:
 現在,ファーストパーティが制作しているPS Vita向けタイトルはありません。PS Vitaは,サードパーティさんが大変がんばっておられるので,SCEとしては,新プラットフォームであるPS4の盛り立てに注力する戦略をとった次第です。


PowerVR Series7XTのブロック図
PS4本体
 PS Vitaは,x86アーキテクチャではないものの,組み込み機器としては定番のARM製CPUコアと,採用例の多いPowerVRという組み合わせなので,過去のゲーム資産を維持しつつ,性能強化を図ることは容易である。
 PS Vitaで採用されるCortex-A9は32bitアーキテクチャだったが,現在,ARMは64bitアーキテクチャで,かつCortex-A9世代の32bit命令セットをそのまま動かすことのできる「Cortex-A57」「Cortex-A53」を訴求している。また,GPUはPowerVR Series5だったが,こちらも最新版は,同系アーキテクチャベースの機能・性能強化版となるPowerVR Series7XTになっている。PowerVR Series5だとOpenGL 3.x(=DirectX 9)相当だったのが,PowerVR Series7XTではOpenGL 4.x相当(=DirectX 11.x)相当となった。

 あくまで机上論ではあるが,PS Vitaも,PS4と同様,任意のタイミングで性能強化版を出すことはできる。現在のSCEは,じっくりと新世代機の開発検討を行っているという状況なのかもしれない。
 PlayStation携帯機は,PSP,PS Vitaと二度も北米市場で失敗しているため,SCEAも今度ばかりは「そろそろモデルチェンジしようよ」という無理強いをしてこない可能性もあり,いよいよ急かされてはいない可能性もある。


PlayStation Nowはうまくいくのか


PS4本体
 SCEがスタートさせた,PlayStationプラットフォームとしてのクラウドゲームサービス,「PlayStation Now」(以下,PS Now)。関係者への取材によれば。PS Nowのバックエンドは現在のところPS3基板そのもので構成されており,それこそ「1ユーザー:1台のPS3」という実装形態になっているようだ。一般的なクラウドゲームサービスでは,1台のハイスペックなコンピュータ上に複数の仮想マシンを走らせてそれを複数のユーザーに割り当てる実装形態のほうが普通なので,やや変わってはいる。
 PS Nowには「独自のクラウドゲームサービス」の側面と,「エミュレーション実行が難しいPS3タイトル資産の提供手段」の側面があるわけだが,今後,PS Nowはどのような展開があるのだろうか。


伊藤氏:
 正直,PS Nowは手探りな部分もあります。まだ始まったばかりですから,ユーザーの反応を見つつ,サービスの充実化を図っていきたいと考えています。
 現在はPS4とPS Vita,PlayStation Vita TV(以下,PS Vita TV)に対応していますが,今後はソニー製のテレビであるブラビアやBlu-ray Discプレーヤーでも利用できるようになります。
 オフコンソール展開,すなわち,テレビのようなゲーム機以外でのPS Now対応をどこまで広げていくかをいろいろと検討しているところです。


 オフコンソール展開は,今後,Xperiaブランドのスマートフォンやタブレット端末もターゲットになると見られる。北米市場ではSamsung Electronics製のテレビでも利用できるようになっており,今後,ソニーグループの製品かどうかを問わず,どこまで対象が広がっていくかが課題となるだろう。
 テレビ製品はインターネット接続機能を有するようになってスマート化を加速化させており,そうしたテレビ製品に実装されるオンラインサービスにはクラウドゲームがラインナップされつつある。直近だと,シャープのAQUOSがクラウドゲームサービス「G-Cluster」を採用したことが話題にもなった。
 PS Nowを,今後,どの程度の汎用のクラウドゲームサービスとして提供していくのかは気になるところではある。


おわりに


 PSVRという「性能食い」の新デバイスの登場と,Ultra HD Blu-rayという新メディアへの対応が迫られたことで,x86アーキテクチャ採用のメリットを活かした「高性能版PS4登場の可能性」にSCEの偉い人が言及したことが,今回のインタビューにおける最大の収穫だった。PSVRをより進化発展させていくための方策として,高性能版PS4というのは,腑に落ちるところがある。

PS Vita TVは1080p出力に対応していない。ビデオクライアントとしてはつらい仕様
PS4本体
 PS Vitaは,PSPからの入れ替えタイミングにおける「痛い思い出」があるので,新世代機へのスイッチにはやや腰が重いようだ。ゲームプラットフォームとしては「サードパーティにおまかせ」という状況だが,ある種それは,ゲームプラットフォームとしては成功していることの証でもある。
 ただ,筆者のようなPS Vita TVファンとしては,本製品の1080p出力未対応(※上限は1080i)という仕様には改善を求めたいところだったりする。PS Vita TVはSony Entertainment Network(SEN)の映像配信サービスでクライアントとして利用できるのだが,1080iまでの対応というのは,映像表示品質面で気になる弱点だからだ。

 インタビューの最後で取り上げたPS Nowは,現在も有料βサービスという位置付けであることもあってか,今後の方針はSCEも決めかねている雰囲気が伊藤氏の発言からも伝わってきた。
 クラウドゲームサービスとして展開し,幅広いユーザーの獲得に注力していくならば,近未来的には,現状の「PS3タイトル提供オンリー」の状態から脱却し「PS4の人気タイトルの提供」もしていかなければならないだろう。しかし,そうすると,実機としてのPS4の存在価値が希薄になってしまう。PS Nowには難しいジレンマが存在する。

 いずれにせよ,短い時間ではあったが,かなり興味深い話を聞けたインタビューであった。

PlayStation公式Webサイト

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