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印刷2013/02/25 00:00

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西川善司,PS4にまつわる6つの疑問に答えるそぶりをしてみる〜PS4はPS4.1,PS4.2と進化する!?

PS4本体
 PlayStation 4(以下,PS4)が発表され,まだ絶対量としては少ないものの,具体的なスペックや,ソニー・コンピュータエンタテインメントの戦略らしきものが見えてきた。
 本稿では,「PS4にまつわる疑問と,それに答える形での考察」のスタイルで,ここまでに出てきた情報を整理しつつ,まとめてみることにしよう。


Q:PS4のグラフィックス性能はどれくらいなの?

A:PS3の8倍くらい


PS4はx86 CPUとPC向けGPUを採用すると発表された
PS4本体
 PS4のコアプロセッサとしては,AMDのAPUが採用された。
 APUとは「Accelerated Processing Unit」の略で,消費電力とパフォーマンスのバランスを最重要視して設計された統合型プロセッサである。

 そのGPUコアは,AMDの新世代GPUコアアーキテクチャ「Graphics Core Next」(以下,GCN)を採用することが判明した。CPUコアは「Jaguar」(ジャガーもしくはジャギュア)と呼ばれるアーキテクチャを採用したものだが,こちらについては後述する。

 さて,GCNは,開発コードネーム「Southern Islands」(サザンアイランド)として知られてきたGPUシリーズ,Radeon HD 7000で採用されるアーキテクチャだ。ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)は,PS4のAPUが「18基のコンピュートユニット」を搭載するとしているが,GCNにおいて,コンピュートユニット「GCN Compute Unit」には,32bit浮動小数点スカラプロセッサ(=シェーダコア)「Stream Processor」(以下,SP)が(16基一組として)4組内包されるため,PS4のAPU全体では,16×4×18=1152基のSPを搭載することになる。
 この1152基という数は,Radeon HD 7800シリーズに属する「Radeon HD 7850」(1024基)と「Radeon HD 7870 GHz Edition」(1280基)の中間という計算だ。

Radeon HD 7800シリーズの概要とブロック図
PS4本体

 また,公開されたスペックには,1.84 TFLOPSの演算性能を持つとあるが,SP数が1152基あるという仮定,GCNアーキテクチャではSPが1クロックで1積和算(2 Ops)を行えるという事実を踏まえると,「(1.84 TFLOPS÷2)÷1152」という計算式から,約800MHzという動作クロックも導き出せる。これは,Radeon HD 7850の定格860MHzやRadeon HD 7870 GHz Editionの同1000MHzに近い,現実感のある数字だ。

 ところで,記憶力がいい人だと,「あれ? PS4のGPUのFLOPS値ってPS3のGPUと同じなの!?」と思ったかもしれない。
 というのも,PlayStation 3(以下,PS3)を発表したとき,SCEは,「GeForce 7800 GTX」をベースとするGPU「RSX」の演算性能値を「1.8 TFLOPS」と発表していたからだ。

 ただしこの1.8 TFLOPSという数字は,テクスチャユニットから何から何まで総動員してFLOPS値に含めるという,トンデモ性能値だった。今ではSCE関係者達も笑っているかもしれない。
 せっかくなので,PS4が持つ演算性能値の計算方法と同じやり方で,今さらながらにPS3のGPUのFLOPS値を再計算してみよう。

GeForce 7800 GTX GPU。NVIDIAの現行世代アーキテクチャ「Kepler」(ケプラー)から見ると,おおざっぱな分類でも4世代前の製品となる
PS4本体
 GeForce 7800 GTXは,頂点シェーダが8基,ピクセルシェーダが24基の固定振り分け式で,4-way SIMDのベクトルユニットを,頂点シェーダは1基,ピクセルシェーダは2基(デュアルで)有していた。そのほか,スカラユニットもそれぞれ搭載されているが,ベクトルユニットと同時に稼働できる機会は現実的には低いため,4-way SIMDユニットだけに注目する。もちろんこれも恣意的なものではなく,PS4のFLOPS値計算方法に則ったものだ。
 なお,動作クロックは発表時こそ550MHzだったが,最終的にはひっそりとスペックダウンして500MHz動作となった。以上を踏まえて計算すると,

  • 頂点シェーダ:(4-way SIMD×2ops)×8基×500MHz=32 GFLOPS
  • ピクセルシェーダ:(4-way SIMD×2ops)×2基(デュアル)×24基×500MHz=192 GFLOPS

で,合計224 GFLOPSとなる。
 なので,あくまで机上の計算におけるものではあるのだが,1.84 TFLOPSというPS4のGPUは,PS3のGPU比でざっくり8倍の性能に達していると見積もれそうだ。

 また,公開された公式スペックの中に書かれていた,GDDR5メモリのバス帯域幅が176GB/sであるという情報からは,メモリ性能も推し量ることができる。Radeon HD 7800シリーズのメモリインタフェースは256bitなので,おそらくPS4のAPUにおけるグラフィックスメモリインタフェースも256bitだろうと“あたり”はつけられるが,仮に128bitだった場合,1bitあたりのデータレートが高くなりすぎる。その点256bitであれば,「176GB/s÷(256÷8)=5.5Gbps」という,それらしい値が求められるので,256bitインタフェースでデータレート5.5Gbps(動作クロック5.5GHz)というのが正解だろう。
 ちなみにRadeon HD 7850とRadeon HD 7870 GHz Editionのグラフィックスメモリが持つデータレートは4.8Gbpsなので,この点はPS4がややがんばっている印象だ。

CPUとGPUでシェアするメモリを合計8GB搭載する
 がんばっていると言えば,メモリ搭載量もそうで,公式スペックによれば8GB。このうちどのくらいをゲームランタイム用(≒ゲームの実行用)に確保できるのかは,OSの規模が見えないうえ,バックグラウンドでどういったタスクが動くのかも分からない現状で評価するのは早すぎるが,「予想よりも多い」という印象はある。
 なお,比較用に挙げておくと,PS3のメインメモリは64bitインタフェース接続で搭載量256MB,帯域幅25.6GB/s。グラフィックスメモリは128bit接続で搭載量256MB,帯域幅20.8GB/sだった。つまり,PS4のメモリ性能は約8.5倍に向上しているわけだ。GPU性能とほぼ同じくらい引き上げられているわけである。


Q:なんでアリモノのAMD製APUを採用したの?

A:それが最良の選択だった。多角的に考えて


いまでは懐かしさの漂う,Cellのイメージカット
PS4本体
 初代PlayStationからPlayStation 2の時代,SCEは,MIPSベースのCPUに,同社と東芝が共同で開発した,独自設計のグラフィックスプロセッサを組み合わせて採用していた。
 現行のPS3では,CPUをSCEと東芝,IBMの三社連合で莫大な費用を投資して開発・製造して搭載した。それが,いわずとしれたCellプロセッサ(「Cell Broadband Engine」)である。

 PS3のGPUは当初,Cellプロセッサをベースに東芝が独自に開発したものを搭載する方向で動いていたことが関係者への取材で判明しているが,これは最終的に採用を見送られ,前述のとおり,GeForce 7800 GTXをデチューンしたRSXを採用する流れとなった。

 そして今回のPS4だが,その開発においてSCEは一時期,Intelの「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)プロセッサを評価するなどしていた。しかし,Intel自体がGPUとしてのLarrabee計画を凍結させたことにより,採用は見送られたようだ。結局SCEは,今世代において,現実的な選択として,“アリモノ”のAMD製APUを選択することとなった。

 今回の「アリモノの選択」は,多角的に考えて,それが最良と判断されたためだ。
 まず,プロセッサ業界では,Cellプロセッサのときのようなロケットサイエンス――難解なテーマへ挑戦するという意の,英語圏における慣用句――への取り組みは,今や割に合わないとされている。極めて微細な製造プロセスに対応した生産ラインの確保や,先端技術を駆使した新鋭プロセッサの新規設計は,たとえそれを必死にがんばって行ったとしても,その分野で長年研究開発してきた専門メーカーによる最新鋭製品に“劣るとも勝らない”リスクが高いのである。

SCEは,PS3の販売価格が製造価格を下回る状態,俗にいう「逆ざや」を解消するのに,4年近い時間を要した
 かつての据え置き型ゲーム機では,立ち上げ時に多少の赤字を覚悟して安価に販売し,数年ごとにそのゲーム機のプロセッサを微細化したり,1チップへの集約化を行ったりしてコストを下げていくのが常套手段だった。年を経るごとに対応ゲームタイトルが増え,ユーザーが増え,ゲームがたくさん売れて,関連周辺機器が売れて,ゲーム機メーカー(=プラットフォーマー)は長期的にライセンスフィー(=ロイヤリティ)で潤うというのが,従来型のゲーム機におけるビジネスモデルなのだ。

 しかし,世界経済事情やソニーグループが持つ台所事情の変化,据え置き型ゲーム機が持つ「人々を惹きつける力」の低下――「ゲーム機離れ」というよりは,スマートフォンの台頭など,ゲームのあり方の多様化が原因となる,相対的な低下だと思われるが,今回その点に関する議論はしない――など,さまざまな要因により,そうしたビジネスモデルの確実性が薄まってきている。

PS4本体
 先頃発表されたNVIDIAの携帯ゲーム機(型Android端末)「Project SHIELD」は,そうしたビジネスモデルから脱却し,ほぼ毎年新ハードを投入することで,「ハードウェアそのもので儲けるビジネスモデル」に活路を見出そうとしている。

 Project SHIELDが成功できるかどうかはともかく,重要なのは,現在,莫大なコストをかけて見たこともない夢のマシンを作り出すことが,現実的な選択肢ではなくなってきたということだ。据え置き型ゲーム機のあり方が変わってきているために,SCEは現実的な選択として「よくできたアリモノ」に行き着いたのである。

 ちなみに,PS2は2000年発売当時,価格設定が3万9800円(税込)だった。PS3は2006年における発表当初の価格がHDD 20GBモデルで6万2790円(税込)だったが,もし仮に「PS4は8万円」ということになれば,多くの読者が「それはないって〜」と笑うだろう。
 筆者もそう思う。そしてSCEもそう思うからこそ,アリモノのコアアーキテクチャを採択したわけなのだ。今回の発表で,価格についての説明は何もなかったが,実際,PS4の価格が7万円とか8万円とかいった金額になる可能性はまずないだろう。

 ならなぜ,ARMアーキテクチャのCPUコアとGeForceコアの組み合わせとか,Core iプロセッサと同CPUに統合されたグラフィックス機能との組み合わせとか,あるいはAMD製CPUにしても「AMD FX」Radeonの組み合わせを採用しなかったのか。その点について,残念ながら明確な根拠を持って語ることはできないが,おそらく,ビジネス的な要因や,性能評価結果,供給面の条件,筐体に組み入れたときの熱設計要件,将来的なプロセスシュリンクのロードマップの見通しなどにおいて,AMDのAPUでうまく折り合いが付いたことが理由だと思われる。

 ちなみに,SCEの公式見解としての「AMD APUを採用した理由」は,「開発者にヒアリングした結果,最も作りやすく馴染みやすいPCコアアーキテクチャであると結論づけられたため」だ。
 PCゲームの世界ではAMDの競合たるNVIDIA製GPU・GeForceのほうが人気は高いのだが,「64bit対応のx86系マルチコアCPUと,高性能なDirectX 11.1世代のGPU」という組み合わせを提供できるのは,世界広しといえどもAMDしかおらず,その意味ではまったくもって悪い選択ではない。


Q:CPUコアの性能があまり高くなさそうな件について

A:確かに。だがそれには理由がある


 APUというのはAMDがマーケティング的に用いている言葉であって,GPUコアとCPUコアといったような,異なる種類のコアを複数個統合して1チップ化構成とした異種混合型マルチプロセッサという観点において,PS4のAPUにもPS3のCellにも違いはない。
 Cellはシリアルロジックを実行することに長けたPowerPCコアと,パラレルロジックを実行することに長けた複数の「SPE」(Synergistic Processor Element)コアを1チップに集約させたものだった。

第1世代AMD E-Seriesから,「E-350」という製品の写真
PS4本体
 これに対して,PS4のCPUコアアーキテクチャがJaguarと呼ばれるものであることは本稿の冒頭で一言だけ触れておいたが,これは,「AMD E-Series」と呼ばれるAPU用に開発されたものだ。より細かく述べると,40nmプロセス技術を用いて製造される第1世代AMD E-Seriesで採用されていた「Bobcat」アーキテクチャの後継にあたるもので,シリアルロジックを実行することに長けた64bitコアアーキテクチャである。
 PS4のコアプロセッサには,そんなJaguarコアベースのCPUコアが8基と,前述したRadeonベースのGPUコアが集約される。PS3では最後期モデルでも1チップ化できなかった「CPUとGPUの1チップ化」を,PS4では最初から実現しているわけだ。その意味では,同じ「異種混合型プロセッサ」でも,CellとPS4のAPUでは,中身がかなり異なる。

2013年1月時点におけるAMDのAPUロードマップ。Jaguar世代のCPUコアは後半に登場の予定だ
PS4本体

 なお,Jaguarアーキテクチャは,省電力性に焦点を当てた設計が行われており,高クロックでの動作が想定されていない。PS4に採用されるものもおそらく,動作クロックは2GHzかそれよりやや高いくらいになると思われる。
 少なくとも,3.2GHz動作していたPS3のCellと比べると,PS4のCPUコアクロックは低くなるはずだ。

 ちなみにこの「Jaguarベースで8基のCPUコアと,SP数1152基のGPUコア」という設定のAPUは,2013年2月時点におけるAMDの製品ラインナップに存在しない。前段で「アリモノ」と紹介したPS4のAPUだが,一応は近未来のアーキテクチャを採用した形ではあるのだ。ただ,極めて近い未来に,これに近いAPUがAMDから登場し,ノートPCなどに搭載されるだろう。

PS4本体
 PlayStation Vita(以下,PS Vita)は2011年の発売時,(当時の立場で見た)将来のスマートフォンにおけるコアアーキテクチャを先取りした感じのハードウェアになっていたが,その意味でPS4はPS Vitaとよく似ている。
 ちなみにPS Vitaのハードウェアスペックは,その先進面において,2013年に登場する多くのスマートフォンに抜かれる見通しだが,これは予想されていた未来である。そしてこれは,1〜2年以内に,PS4にも同じことが起こり得るという話であり,これもまた,予想された未来である。そもそも,ハイエンドクラスのゲームPCと比較した場合,PS4では今の時点でもまったく歯が立たない。

 「じゃあ,PCでいいじゃん」という意見が出てきかねないのだが,意外にそうとも言い切れないのが,ゲーム機の面白いところだ。
 たとえば現行世代機で考えてみよう。PS3のGPUがGeForce 7800 GTXのデチューン版であることはすでにお伝えしたとおりだが,このグラフィックス機能はDirectX 9世代で,Shader Modelにしても3.0に留まっていた。そしてこのスペックは,PS3の発売から1年経った2007年には,先端のものではなくなった。2007年には,PC向けGPUとして,DirectX 10世代,Shader Model 4.0対応のものが登場したからだ。

 しかし,ハードウェアスペックだけ見たら完全に“枯れた”GPU上で動くPS3のゲームタイトルに,読者は,2007年以降も驚かされたり興奮したりしたはずだ。これはまぎれもなく,ゲーム開発技術の進化,いわばソフトウェア技術の進化があったからこそ実現されたものである。
 これと同じことがPS4の時代も起こることは容易に想像できるわけで,ハードウェアスペックがゲームPCに劣っていたとしても,また1〜2年以内にスペックが陳腐化するとしても,ゲーム表現やゲーム体験は進化するのだ。
 「でもなあ……。より性能が高ければ,もっとすごいものが出てくるだろうし……」という人もいるだろう。その点については次節で話してみたい。


Q:PCアーキテクチャなら,PCそのものでいいのでは?

A:ゲーム技術の基準として,据え置き型ゲーム機は必要。ただし,より短いスパンでの“PS4.1”登場はあり得る


PS4の特徴としてSCEの挙げたキーワード。シンプル,ソーシャルなど,イマドキの単語が並ぶ
PS4本体
 いくらソフトウェア技術によってゲーム表現やゲーム体験が進化するといっても,やはりハードウェアスペックの限界というものはある。
 PS3も登場後,6〜7年という時間の経過を経て,PS3というハードウェアの中でできることにも限界が見えてきた。グラフィックス表現やゲーム体験,サービス面と,あらゆる面で刷新の必要性が高まってきたために登場したのがPS4というわけである。

 確かに,ハイエンドPCアーキテクチャの方が先進的であれば,ハイエンドPCでゲームプラットフォームを提供したほうがすごいものを提供できるはずだ。しかし,ハイエンドPCはまず高価。また,仕様に多様性があり過ぎるし,しかもその仕様は流動的だしといった具合で,万人向けとはとても言えない。
 真の意味でよいことではないのかもしれないが,安定した品質のグラフィックス表現やゲーム体験,サービスを提供するためには,どうしてもハードウェア仕様の画一化が必要となる。「プレイする人がいっぱいいてのゲームビジネス」を考えると,やはり,ユーザーの数を圧倒的に多く見込める据え置き型ゲーム機が現実的な選択となるのだ。そしてそれは,据え置き型ゲーム機のハードウェアアーキテクチャが,どうしてもゲーム技術の基準になってくるという意味でもある。

 ただ今回,AMDのAPUという“PC向けプロセッサそのもの”を選択したことで,APUというフレームワークの進化とともに,PlayStationプラットフォームの進化が許容される可能性はある。
 つまり,これまでのような据え置き型の6〜7年という長いスパンごとの進化ではなく,2年とか3年とか,そういうスパンでPS4がスペックアップする可能性が否定できない,ということだ。

 仮に“PS4.1”や“PS4.2”が出てきたとして,PS4.2向けのゲームは,PS4.xにおけるAPUフレームワークの中でスケーラブルに動作できるので,描画品質を若干落とせば,PS4.0やPS4.1でも動作させることが可能だ。いや,動作できるようにPS4.xプラットフォームを規定することだろう。
 「PC」というくくりでは,あまりにも仕様の多様性と流動性が激しすぎるが,SCEの規定する「PlayStationプラットフォーム」というくくりの中における,ある程度のスペックの多様性を認めることは,十分にあり得ると考えている。

ASUSTeK ComputerのAndroidタブレット「Nexus 7」(左)と,AppleのiOSスマートフォン「iPhone 5」(右)
※両製品の縮尺は異なっています
PS4本体
 単一プラットフォームでありながら,ある程度の年次更新的スペックアップを実現しているものが,我々の身近にはある。iOSやAndroidといったスマートフォンおよびタブレット端末のプラットフォームだ。
 Androidはやや多様性が強く,iPhoneも,iPhoneというファミリーネームがあっても初代機と最新世代機ではスペックの違いがありすぎるが,PlayStationプラットフォームでもiPhone的な進化を許容するなら,そのあたりのコントロールは可能だろう。だからこそ,技術進化の見通しが立てやすいPCに近いアーキテクチャを取ったという読み方もできる。

 この妄想をベースとしてさらに深読みを続けると,そういう事情だから,PS4.0のイニシャルスタートは,現行のハイエンドPCに及ばないスペックにしてあるという可能性も考えられる。つまり,ハードウェアの進化を初めから想定しているというわけだ。


Q:PS4世代のゲームはどう進化するの?

A:DX11.1世代の技術がすべて使えるようになる


 PS3が登場した頃というのは,ゲームプログラミング技法としてのマルチスレッドプログラミング(=並列プログラミング)が浸透する前の時代であり,グラフィックスに関しても,プログラマブルシェーダアーキテクチャがやっと市民権を得つつあるような状況だった。

Radeon HD 7800 GPU。2013年2月時点における中の上,もしくは上の下といえる3D性能と最新のAPIが,PlayStationプラットフォームにもたらされる
PS4本体
 その点,PS4のAPUは,エントリークラスとはいえ8コアプロセッサだ。こちらは「もう少し性能が欲しい」と言うゲームデベロッパが出てきても不思議ではないが,GPUの機能面,性能面の向上は文句なしに圧倒的であり,ここ7〜8年の間にPCゲーム業界で起こった技術的なジャンプがゲーム業界へ一気に押し寄せることは間違いない。ゲーム開発シーンでは,この点について,大きな歓迎ムードが漂っている。

 とくにグラフィックスでは,DirectX 9世代のShader Model 3.0仕様から,DirectX 11.1のShader Model 5.0へと“ワープ”するので,急激な変化が訪れるはずだ。
 PS3の時代に用意されていたプログラマブルシェーダは頂点とピクセルしかなかったが,これがPS4では,ジオメトリにハル,ドメイン,演算(Compute)の各シェーダとテッセレータが一気に追加される。

PS4への対応表明がなされたUnreal Engine 4は,GPUパーティクルシステムを実装済みだ。画面ショットは100万個のパーティクルの描画と挙動制御をGPUだけで行っているデモより
PS4本体
 ジオメトリシェーダはポリゴンのプログラマブル増減や発現,消失までを,CPUの手を借りることなく,GPU単体で制御できるものだ。形状がはっきりしない気体(ガス)や炎,水,霧といったようなものを,GPUだけでシミュレーションして描画できるようになる。こうしたシステムは「GPUパーティクルシステム」と呼ばれるが,今回のPS4発表会でPS4への対応が公式アナウンスされたEpic Games製の新世代ゲームエンジン「Unreal Engine 4」や,スクウェア・エニックスの新世代ゲームエンジン「Lumionus Studio」では,このGPUパーティクルシステムが実際に稼働している。

 ハルシェーダとテッセレータ,ドメインシェーダの3つはひとまとめにして「テッセレーションステージ」と呼ばれる。ここは,状況に応じてポリゴンモデルを必要な詳細度に曲面化したり,あるいは異なる形状に変形させたりすることができる機能を提供する。
 テッセレーションステージをうまく活用することで,「ポリゴン数の少ない,粗い形状の3Dモデルでシミュレーションや姿勢制御を行ってから,その結果に対し,視点からの遠近に応じた適切な詳細度のポリゴン数で3Dモデルを描画する」ような仕組みが実現できるようになる。PS3の世代では,近距離での表示用に多ポリゴンモデルを,遠距離での表示用に低ポリゴンモデルをと2種類用意して,状況に応じて切り替えたりしていたのだが,こうした冗長な実装が不要になるのだ。
 また,顔面や人体の変形表現,毛髪の自然な動きなどにもテッセレーションステージが活用できるとされている。

 なお,「トイストーリー」で有名なPixar Animation Studios(ピクサー)は,このテッセレーション技術の主流手法であるCatmull-Clark(カトマル-クラーク)法に関わる広範囲の技術を特許として押さえていたが,2012年夏,なんとこれをライセンスフリーとして,ゲーム業界を含めて自由に使えるようにした(関連記事)。「OpenSubdiv」と呼ばれる本プロジェクトの発表がPS4と関係している……というのはいくら何でも邪推が過ぎるとしても,この影響はゲーム業界でも大きかったはずだ。
 実際,今回のPS4発表会で公開されたカプコンの新世代ゲームエンジン「Panta Rhei」(パンタレイ)では,コンテンツパイプライン部分からエンジンのランタイムに至るまで,テッセレーションステージが高効率に活用されているという。

PS4本体
Pixar Animation Studiosは,テッセレーション技法の1つであるCatmull-Clark法に関する特許をライセンスフリーとした。これで,ゲーム業界でも自由に使えるようになった
カプコンの次世代ゲームエンジン・Panta Rheiは,テッセレーションステージのディープな活用がなされていると言われる。MTフレームワークとは別系譜の新エンジンだ


Q:CellがなくてPS4は本当に大丈夫なの?

A:GPGPUがCellに取って代わる


 繰り返しになるが,PS4にはCellが搭載されない。では,高度なデータ並列コンピューティングや並列アルゴリズムの実践を行う術がなくなってしまったのか。
 これは,前段の話題との関連性も強いテーマだが,DirectX 11世代,Shader Model 5.0仕様のアーキテクチャによって提供される演算シェーダ(Compute Shader)に取って代わられる格好となる。

 CellのSPEは,それぞれが持つ容量256kBのローカルメモリ上で,各自が完全に個別なプログラムを超高速に実行できるという,ユニークなアーキテクチャであったが,いかんせんユニーク過ぎた。時代の先端を行き過ぎたのだ。
 ただ,このCellは新たな動きを呼んだ。Cellの発表以降,データ並列コンピューティングをGPUで実践しようという動きが強くなり,これが,GPUを汎用目的で活用しようとする「GPGPU」(General Purpose GPU)というソフトウェアパラダイムを誕生させたのである。

 この後,紆余曲折あって,NVIDIAが「CUDA」(クーダ)という独自GPGPUプラットフォームを成功させ,組み込み機器系では「OpenCL」というオープンスタンダードなGPGPUプラットフォームまでが誕生した。そして,DirectX 11.1やOpenGL 4.3といった最新世代の3DグラフィックスAPIでは,GPGPUソリューションとしてのCompute Shaderをサポートするに至っている。

 PS4の開発キットがDirectXベースなのか(※まずあり得ない),OpenGL(もしくはOpenGL ES)ベースなのかは不明だが,いずれにせよ,どちらも最新版はCompute Shaderをサポートしている。また,AMDはOpenCLに注力しているメーカーの一社なので,OpenCLも利用できるはずである。
 Compute ShaderとOpenCLの使い分けだが,これはグラフィックスに近い処理系をGPGPUでやるならばCompute Shaderを使い,より汎用ロジックに近い処理を行うならばOpenCLを使うことになるだろう。ちなみにOpenGL 4.3なら,両者が共存できる。

Havokによる物理シミュレーションのデモ。GPUベースで動作している
PS4本体
 今回のPS4発表会では,物理シミュレーションのミドルウェアベンダーとして著名で,Intelの子会社としても知られるHavokの大局物理シミュレーションのデモが公開されたが,これはGPGPUベースで動作するものになる。
 またGPGPUは,物理シミュレーション以外に,AI(人工知能)やアニメーション処理(=モーション制御)の実現にも有効とされている。とくに,PS3世代のゲームは,グラフィックスこそ進化したが,キャラクターの動きに知性が感じられないと指摘されたり,キャプチャしたモーション単体はリアルなのだが,連続した動きになるとぎこちなかったりといったことがあった。

 「次世代ゲームにおける最重要テーマは『知性』と『動き』だ」と主張するゲーム開発者は多く,GDCやCEDECなどのゲーム開発者会議でも関連テーマの発表やディスカッションはかなり加熱してきている。

「Max Payne 3」は,Naturalmotion製のプロシージャルアニメーションミドルウェア「Euphoria」を採用したことで話題になった。「Euphoria」は,人体解剖学や物理シミュレーションに基づき,自然な人体挙動を半自動生成するものだ。PS4世代には当然,GPGPUへの対応がなされるはずである
PS4本体


終わりに


 かつてPS3やXbox 360が登場したとき,日本のゲーム開発シーンはマルチスレッドプログラミングとプログラマブルシェーダアーキテクチャに戸惑った。この分野に先行していた欧米ゲームスタジオと比較すると,日本のゲーム開発シーンはやや立ち後れていた部分が否定できなかった。
 最終的に,その遅れを取り戻すことはできたが,スタートダッシュに出遅れた感はどうしても否めなかった。

 しかし,PS4の時代に,そういうことはなさそうだ。
 今回の発表会では,スクウェア・エニックスとカプコンが,次世代ゲーム開発技術に対応済みであることを高らかに宣言した。また,PS4発表会での登壇こそなかったが,コナミの「FOX ENGINE」も,次世代ゲームエンジンを銘打っている以上は,まず間違いなく対応済みのはずである。

 今後出てくるはずである次世代Xboxの動向も気になるが,新世代ゲームの時代がもう間もなく始まることと,その新世代ゲームの開発に日本のゲームスタジオが万全の準備を備えていることには,正直,大いに期待している。

 おそらく今後,ほかのゲームスタジオからも,次世代ゲームエンジンや,PS4ゲームタイトルのアナウンスが続くことだろう。ゲームファンにとって,今年はいろいろと盛り上がる年になりそうだ。

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