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西川善司の3DGE:AMDの次世代CPU,製品名は「Ryzen」に決定! 性能向上を支える5つの要素も明らかに
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印刷2016/12/14 06:00

連載

西川善司の3DGE:AMDの次世代CPU,製品名は「Ryzen」に決定! 性能向上を支える5つの要素も明らかに

 2016年12月14日6:00,AMDは,「Zen」マイクロアーキテクチャに基づく次世代CPUで,開発コードネーム「Summit Ridge」(サミットリッジ)として予告されてきたデスクトップPC向けプロセッサの製品名が「Ryzen」(ライゼン)になることを発表した。

マイクロアーキテクチャ名を含む製品名となったRyzen。毛書の軌跡を添えるあたりからは,もともとのZenと同じく,オリエンタルな風情を感じる。タグライン(≒キャッチコピー)は「Powerful in Purpose. Efficient in Design」だ
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 その発表に先立ち,AMDはカリフォルニア州ソノマ市でAMD製品の事前技術説明会「AMD TECH SUMMIT」を開催している。今回はそこで得られた情報をまとめてお伝えしてみたい。


製品概要がほんの少しだけ明らかに


Summit RidgeあらためRyzenについて発表する,Lisa Su博士(President and CEO, AMD)
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 リリース時期は,当初の予定から遅れ,2017年第1四半期になるというRyzen。そのラインナップや型番といった詳細は明らかになっていないが,最上位モデルで8コア16スレッド対応になる点や,L2とL3キャッシュ総容量が最大20MBに達する点,動作クロックが3.4GHz以上になる点は判明している。動作クロックは,競合製品の動向を見たうえで最終的な決定を行うようだ。
 いきなり余談で恐縮だが,発表会場に居合わせたデベロッパ関係者は「我々がエンジニアリングサンプルとして入手した個体は3.1GHz動作だった」と語っていたので,製品版ではクロックチューニングが入ると見てまず間違いないだろう。

Ryzenのスペック概要。「SenseMI Technology」という見慣れない技術名があるが,それについては後段で述べる
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ZenマイクロアーキテクチャはRyzenのほか,Naples,Raven Ridgeにも展開となる
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 Zenマイクロアーキテクチャは,今後のCPU製品ラインナップにおいて中核を担うものとAMDは位置づけており,今回同社は,Ryzen(=Summit Ridge)とは別にサーバーおよびデータセンター向け製品「Naples」(ネイプルス,開発コードネーム),そしてノートPCおよび組み込み向け製品「Raven Ridge」(レイヴンリッジ)でも,Zenマイクロアーキテクチャを展開していく方針を明らかにしている。
 なお,今回のAMD TECH SUMMITでは,実動デモこそあったものの,プロセッサパッケージそのもののお披露目はなかった。

Ryzen(=Summit Ridge)による実動デモ。ここでAMDが使っていたのは動画のトランスコードソフト「HandBrake」だ
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AM4プラットフォームはRyzenと組み合わせることで真価を発揮する
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 さて,これはほとんど事実関係の確認だが,Ryzenは,AM4プラットフォームに対応する。すでにAPU「Bristol Ridge」搭載機で最終製品がデビューしているAM4だが,そもそもはZenマイクロアーキテクチャに向けて開発が進められていたプラットフォームであり,DDR4メモリモジュール対応,PCI Express Gen.3対応,USB 3.1 Gen.2対応といった具合に,現行世代の周辺I/Oを広くサポートしたものになっているのが大きな特徴だ。

 AMDの社長兼CEOであるLisa Su(リサ・スー)博士も,「今後,AM4は数年にわたってAMD向けプラットフォームの主役として訴求されることになるだろう」と述べており,期待度は大きいようである。
 AMDはソケットプラットフォームの寿命が長いのだが,CPU周りやI/O周りではIntelプラットフォームと比べて古さが否めなくなっていた。それだけにAMDとしても「やっと刷新できる」という思いがあるに違いない。


Ryzenの高性能を支える,5つの要素技術


Zenマイクロアーキテクチャにおける見どころは「IPCの向上」と「消費電力効率の向上」の2点。毎度CPUアーキテクチャの刷新時には繰り返されてきた決まり文句だったりもする
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 AMD TECH SUMMITでAMDは,「詳細は日をあらためて解説する」としつつ,Zenマイクロアーキテクチャの要素技術について簡単な紹介を行った。本稿ではそれらを整理してまとめてみたいと思うが,ZenでAMDは,クロックあたりの命令実行効率向上(=IPC向上)と,消費電力あたりの性能向上を実現したとのことだ。そしてそこでは新たに開発した5つの要素技術,

  1. Pure Power
  2. Precision Boost
  3. Extended Frequency Range
  4. Neural Net Prediction
  5. Smart Prefetch

が重要なキーになっているとして,これらをまとめ,「SenseMI Technology」――もしくは「SenseMI Technologies」,AMD TECH SUMMITの時点では表記にブレがある――と呼んでいる。

Zenマイクロアーキテクチャを支える5つの新要素技術
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 順番に見ていこう。
 SenseMI Technology(以下,SenseMI)の基本方針は,「合計数百個とも言われる電圧や電流,温度の各種センサーをプロセッサ内に配置し,そのデータを参照しながら,リアルタイムかつ適応型の内部操作処理を行う」というもので,1.のPurePowerはそのうち,電力制御に関わるものとなる。もう少し具体的に言えば,より低電圧で最大性能が得られるよう制御を行うものだ。

Pure Powerは電力供給を制御する新要素技術。右のグラフは「より低消費電力で同一性能を実現させる」ことを表したものだ
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CPUレイトレーシングを行ったデモ。Ryzenの場合,システム全体の消費電力は180W前後を推移していたが(左),同じデモをBroadwell-Eコアの「Core i7-6900K」で実行させると,消費電力は190W前後に達していた(右)。Ryzenのほうが消費電力は少ないというアピールだ
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Jim Anderson氏(SVP & GM, Computing & Graphics, AMD)
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 2.のPrecision Boostは,Pure Powerと相互連携して動作するもので,プロセッサの動作クロックと駆動電圧を連動させながらリアルタイムで制御する仕組みだ。5つの要素技術について解説してくれたAMDのJim Anderson氏は,「競合の似たような技術は100MHz単位の制御になっているが,SenseMIでは25MHz単位の精度で制御を行う」と述べ,優位性をアピールしていた。

Precision BoostはPure Powerと連携して動作クロック周波数を制御する
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 以上の2つは,これまでもあったものの拡張的な技術だが,3.のExtended Frequency Range(以下,XFR)は少し面白い。

 最近のCPUでは,定格動作クロックとは別に,最大性能を発揮するためのブーストクロックが設定されているケースが多いわけだが,ブーストクロック以上の動作クロックを実現したい場合は,BIOSから設定を弄ったり,いわゆるオーバークロックツールなどを駆使する必要があった。
 それに対してXFRは,プロセッサの冷却条件が良好であれば,ブースト動作クロックを上回る動作クロックへ自動的に入る機能なのである。Anderson氏も「XFRはオーバークロッカー達を熱くさせる機能となるだろう」と興奮気味で説明していた。

冷却条件が良好なら,ブーストクロックを超えた動作クロックへ自動的に到達するXFR。AMDはこれを,オーバークロッカー達にとっては待望の機能と位置づけている
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 4.のNeural Net Predicionは,分岐予測に関連した新技術だ。
 一般に,CPUの命令実行系統は多段パイプラインになっており,条件分岐命令に遭遇した場合は,「実際に条件命令の判断を行って分岐先が確定する」のを待たず,分岐先を予測して,その分岐先の命令実行に取りかかるようになる。そのとき,予測が当たっていれば,パイプライン動作を崩すことなく命令の実行を続けられて「めでたしめでたし」なのだが,予測が外れていると命令実行のやり直しになるため,パイプライン動作が崩れ,結果的に命令の実行に余計な時間が掛かってしまうことになる。

 Zenマイクロアーキテクチャでは,この分岐予測にあたって,ニューラルネット技術を活用する新技術を採用したのだ。

 なんだか「分岐予測に人工知能(AI)が採用された」みたいな字面でスゴイ感じがするものの,実際にはテキサス大学のDaniel A. Jiménez氏らが発表した「Dynamic Branch Prediction with Perceptrons」(パーセプトロンを応用した動的な分岐予測技術,リンクをクリックするとpdfファイルのダウンロードが始まります)という論文がベースになっていると推察される。
 簡単に言えば,従来からある分岐履歴ベースの分岐予測技術に,予測結果の合否をフィードバックさせて次回以降の分岐予測精度を上げていくような仕組みである。

Neural Net Predictionの実現にあたって,従来のAMD製CPU比で2倍もの分岐履歴レジスタを実装したとAnderson氏
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 5.のSmart Prefetchも,その名のとおり,予測関連だが,こちらはメモリの先読み技術となる。
 CPU命令の実行において,条件分岐と同等か,それ以上に厄介なのが,メモリアクセスに伴うパイプライン崩れだ。メモリアクセスはCPUの動作サイクルの時間感覚からするととてつもなく時間の掛かる作業であり,ここを短縮することでCPUの実行効率は相応に引き上がる。

 そこでSmart Prefetchは,前述したような予測結果合否フィードバック技術――AMDはこれを「自己学習機能」と呼んでいるが――を用い,「これから実行される命令」に必要なデータを先読みしてキャッシュメモリにセットしておく。プログラムコードの実行によって生じるメモリアクセスパターンを学習し,その結果からデータの先読みを行うとのことだ。

Smart Prefetchは,命令語の先読みではなく,実行中のプログラムが使いそうなデータを先読みしてキャッシュ側に用意しておく技術
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「あと知りたいのは性能と価格,発売日」というところまできたZen


 AMDは2016年を通じて,Zenマイクロアーキテクチャ,そしてSummit Ridgeの技術概要を小出しにしてきた。そしてついに今回,Summit Ridgeの製品名を明らかにして,さらに新要素となるSenseMIの存在も公表した,ということになる。あと知りたいのは,性能と価格,そして発売日というところまで辿り着いた,とも言えるだろう。

 いずれにせよAMDは,次世代CPUの性能面に相当な自信を見せている。2017年1月の市場投入が見込まれているIntelの4コア版「KabyLake」に,直接,ぶつけてくることになるのだろう。
 最終製品の性能が明らかになるタイミングは,何年ぶりかの盛り上がりを見せそうである。今から楽しみだ。

今回のカンファレンスでAMDはさまざまな実動デモを公開したが,デモブースで競合製品との比較を行うことはなかった。比較があったのは,ステージ上で披露された,HandBrakeとレイトレーシングのみである
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AMD公式Webサイト

AMDの次世代を担う新CPUアーキテクチャ「Zen」の詳細を解説。IPCを40%も向上させた工夫とは

AMD,次世代マイクロアーキテクチャ「Zen」の技術概要を明らかに。デスクトップCPU「Summit Ridge」は「Broadwell-Eと戦える」

  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen,Zen+)

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