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SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
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印刷2017/04/08 00:00

レビュー

このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ

SteelSeries Arctis 5

Text by 榎本 涼


Arctis 5
メーカー:SteelSeries
問い合わせ先:問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
実勢価格:1万2400〜1万3900円程度(※2017年4月8日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
 SteelSeriesの新しいゲーマー向けヘッドセットシリーズ「Arctis」(アークティス)。筆者はその中から,USBおよびアナログ接続に対応するワイヤードモデルで,USB接続時には「DTS Headphone:X」ベースのバーチャルサラウンドサウンドに対応する「Arctis 5」を国内発売のタイミングで取りあげて「少なくとも出力品質はSteelSeries史上最高」と述べたが(関連記事),本稿では,それ以外の話,具体的にはハードウェアの仕様詳細や,出力遅延,バーチャルサラウンドサウンド出力,マイク入力といった部分をチェックしていきたいと思う。

 そういう事情なので,本稿では2chアナログ出力品質について,くどくどと繰り返すことはしない。未読という人はぜひファーストインプレッションに目を通してからあらためて本稿へ戻ってきてもらえれば幸いだ。

SteelSeriesの新型ヘッドセット「Arctis 5」ファーストインプレッション。少なくとも出力品質は同社史上最高だ



上品なルックス。ヘッドセット自体はアナログ仕様で,ケーブルの差し替えによりUSB接続に対応


Arctis 5(右手前)とArctis 7(左手前),Arctis 3(左奥)。いずれも黒と白の2モデル展開となる
画像集 No.003のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
 ArctisシリーズではArctis 5のほか,ワイヤレス接続に対応した「Arctis 7」と,アナログ接続のみに対応し,DTS Headphone:XではないSteelSeries独自のバーチャルサラウンドを利用することになる「Arctis 3」が存在する。このあたりもファーストインプレッション記事で言及済みだが,ポイントは,音質を左右する部分のスペックで3製品に違いはないとされている点だ。SteelSeriesは,「音質は同じ。機能でのみ差別化しているから,欲しい機能に合わせて3製品から選べばいい」という立場を取っている。

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Arctis 5と付属品。写真でArctisのすぐ右に見えるのがUSBサウンドデバイス機能&USB ChatMix Dial付きのケーブルだ
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アナログ接続のイメージ。写真の状態でアナログ変換ケーブルを外してUSB ChatMix Dial付きケーブルと本体をつなげばUSB接続になる
 それを踏まえてArctis 5だが,本体自体はピュアな2chステレオヘッドセットである。

 製品ボックスには,実測全長1.2mで専用端子を採用するアナログケーブルと,USBサウンドデバイス付きで実測全長約1.8mの専用端子−USB Type-A変換ケーブル,そして端子部を除いて実測全長約53mmの専用端子−4極3.5mmミニピン変換アダプターが付属している。つまり,アナログ接続時のケーブル長はざっくり1.25m,USB接続時は3mになるわけだ。

 ケーブルは基本的に灰色で,ワンポイント的に黒が入ったもの。実測の直径は約3mmで,細くも太くもない。接続端子にはロック機構が入っているため,少なくとも,通常利用時にケーブルが外れる心配は無用だ。

 なお,USBサウンドデバイス部に載っているダイヤルは「USB ChatMix Dial」と言うが,これについては後述する。

エンクロージャの外装,「SteelSeries」ロゴ入りの平らな部分がラバーのような素材になっており,これがArctis 5の「ミニマル」な雰囲気を際立たせている印象がある
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 本体は黒と白の2モデル展開だが,筆者が入手したのは黒モデル。本体はほぼすべてつや消しの黒という,落ち着いた質感だ。ヘッドバンドの模様とエンクロージャ部のLEDイルミネーションがアクセントになっているデザインで,少なくとも「ゲーマー向けモデルでございます」といった雰囲気はまるでない。スマートフォンなどとアナログ接続して屋外へ持ち出すことへの抵抗は少ないと思われる。
 なお,重量は本体のみで実測約305g。装着時は数字以上に軽く感じた。

 ヘッドバンドを支えるアーチはプラスチック製で,アーチ部分に可動部はなし。ヘッドバンドはベルクロテープで固定するタイプになっており,これを使って長さ調整することになる。

アーチ部分は,装着時の横方向へは動く一方,前後方向には動かない仕組み。ベルクロテープによる固定式のヘッドバンドで長さ調整を行う仕様だ
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 アーチとエンクロージャとの接合部も外装はプラスチック製。内部には金属を採用しているようだ。
 この接合部は携帯時に90度傾けてかさばりを抑えることができ,さらに,装着時には±30度くらい傾くようになっており,柔軟性は高い。それでいて無駄な“遊び”はなく,かっちりとした作りになっている。

マネキンに取り付けた状態。ご覧のとおり,エンクロージャは装着時の下側が前に寄った形となっている
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 最長部分の実測で,エンクロージャは装着時の縦方向に約95mm,横方向に80mm。厚みはイヤーパッド込みで約45mmだ。外側から見ると,耳の形状に合わせてエンクロージャに傾斜が付いているのが分かる。筆者が認識している範囲でこのデザインを最もよく多用するのはSennheiser(ゼンハイザー)だが,SteelSeriesもこのアプローチを踏襲したようだ。おかげで,エンクロージャ自体のサイズを抑えつつも,装着時,耳にイヤーパッドが当たったりはしないようになっている。

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 先ほど話に出てきたイヤーパッド部は,ファーストインプレッション記事でもお伝えしたとおり,中に「エアウィーヴ」素材を採用。おかげで包み込むような装着感が得られる。カバーはパンチング加工してあり,通気性がよく,それでいて密度の比較的高い布素材となっており,装着した時のさらっとした感触がよい。
 イヤーパッドの厚みは実測で約20mmあり,内径は装着時の縦方向が同60mm,横方向が実測約50mmで,余裕がある。また,取り外しに対応しており,イヤーパッド部だけ洗濯することも可能だ。

肌触りのよい,エアウィーヴ採用のイヤーパッドが標準だ(左)。多くの人はこれで満足できると思うが,従来型のイヤーパッドをどうしても使いたい場合は,交換用ヘッドバンドともども,直販サイトからユーロ建てで購入して交換できる(※同じものを買い足すことも可能)。SteelSeriesは日本でも買えるようにすると言っていたが(関連記事),少なくとも2017年4月上旬時点ではユーロ建てでしか購入できないようだ(右)
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S1 Speaker Driverは斜めを向いて取り付けられている。ちなみにWindows 10におけるUSB接続時の最大解像度は確認した限り16bit/48kHzだった
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 イヤーパッドを取り外すとちらっと覗き見えるスピーカードライバーは,SteelSeriesオリジナルとされる40mm径モデル「S1 Speaker Driver」。公称周波数特性は20Hz〜22kHzだ。
 なおこのスピーカードライバー,写真でも分かるとおり,目視で10〜15度ほど傾いており,装着時に耳の斜め前から音が聞こえるような仕様になっている。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「プレミアムワイヤレスサラウンドヘッドセット」(型番:CUHJ-15005)のときにも述べたが,この方式は定位感の改善やステレオ感の向上に寄与する可能性が高いので,後段でチェックしたい。

左から順に,3.5mmミニピン端子と,専用ケーブル接続端子,出力音量調整ダイヤル,ミュート切り替えスイッチボタン。本文で触れていない3.5mmミニピン端子はヘッドフォン出力共有用だ。ここにヘッドフォンを接続すると,Arctis 5経由でもう1人のユーザーも音を聞くことができる
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 ヘッドセットの制御系は左耳用エンクロージャ部にあるが,載っているのは出力音量調整ダイアルと,プッシュボタン式のマイクミュート有効/切り換えスイッチのみ。前述のとおり,本体自体はアナログ接続型ヘッドセットなので,出力音量調整ダイヤルはUSB接続時でもWindows側のサウンド出力音量スライダーとは連動しない。

 ボタンのほうは,飛び出した状態となり,ボタンの側面にある橙色が見えている状態がミュート有効(=マイク無効)だ。もちろん装着時にこの場所を見るわけにはいかないが,それもあってか,USB接続時にはミュート有効時にブームマイクの先端が光る仕様も採用している。

赤く光るLEDはマイクがミュートされていることを鬱陶しいくらいガッツリ教えてくれる。マイクを口元に持ってきている場合は必ず視界に入ってしまう仕様で,「ミュート解除を忘れてしゃべり続ける」という不毛な状態を回避できる。万事において控えめなArctis 5だが,ここだけははっきり主張しているわけだ
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実測約4×2mmくらいの空気孔が,口側とその反対側に1か所ずつ空いている。双方向指向性ということで,主にマイクの表と裏の音を集音するからこのような配置になっているのだろう
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 そのブームマイクは,SteelSeries製品らしく,不要なときは先端部を除いて収納できるタイプ。引き出すと,ブーム長は実測約90mm弱あると分かる。
 このブームは,これまたSteelSeriesらしく,先端部のマイクを狙ったところに設置しやすい。

 先端部のマイクは実測で約15(W)×25(D)×9(H)mmという,大きくも小さくもないサイズだ。公称の周波数特性は100Hz〜10kHzで,特性パターン「双方向」(bi-directional)がウリとなっている。

マイクを収納すれば,マイクミュート有効時の赤色LEDは視界を邪魔しなくなる。ブームマイクの扱いやすさは相変わらずトップクラスなので,積極的に出し入れしながら使っていくことになるだろう
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USB ChatMix Dial。PCとのUSB接続を示す白色LEDインジケータも埋め込んであるが,全体のほとんどがダイヤル部だ
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 後述するとしたUSB ChatMix Dialは,それを含む全体の実測サイズが35(W)×42(D)×27(H)mmというサイズになっている。錘(おもり)のようなものはなく,持ってみても軽いものの,底面にあるゴムがきちんと滑り止めとして機能するため,そんなにはあちこち“お散歩する”感じはしない。

 おそらくはダイヤル部の下にUSB接続型D/A&A/Dコンバータが入っているはずだが,USB ChatMix Dial自体は,ノブを回すことで,ボイスチャット相手の音声音量(「CHAT」)と,それ以外の音量(「GAME」)とのバランスを変更するためのものとなる。ノブは中央が標準設定で,右に回すとCHATの音量が上がる……のではなく,GAMEの音量がどんどん小さくなっていく。左に回せば,GAMEの音量はそのまま,CHATの音量がどんどん小さくなる仕様だ。いずれも回しきると,「小さくなっていく」ほうの音は聞こえなくなる。


統合ソフトウェア「Engine 3」はこれまでどおり。ただしDTS Headphone:Xは別ソフト扱いに


Engine 3を導入すると,ファームウェアおよび追加ソフトウェアを導入せよという警告が出た。なお,ファームウェアの更新後は再接続が必要だ
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 DTS Headphone:Xベースのバーチャルサラウンドサウンドなど,各種追加機能を利用するためには,統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」(以下,Engine 3)のインストールが必須だ。完了すると,Engine 3は自動でArctis 5用のデバイスドライバを導入してくれる。
 なお,筆者が確認した限り,Engine 3導入後にはArctis 5のファームウェア更新とDTS Headphone:Xソフトウェアのインストールが必要だった。SteelSeriesは,Arctis 5以降でDTS Headphone:XのアルゴリズムをEngine 3からアップデートできるようにしたと述べているので(関連記事),おそらくはその仕様変更に伴い,「追加ソフトウェア」化したのではなかろうか。

 なお,Engine 3の使い方自体はこれまでと変わっていないので,本稿では「詳細は『Siberia 350』のレビューを参照してほしい」と述べて,詳細の説明を割愛する。この点はご了承を。

Engine 3からは,Arctis 5のイコライザやマイク設定の変更,DTS Headphone:Xの有効/無効切り替え,LEDイルミネーションの変更,それら設定をまとめたプリセットの作成・保存・読み出しが可能だ。「ライブプレビュー」を有効にしておけば、設定変更に伴う音や色の変化をリアルタイムに確認しながら設定作業を行える
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Engine 3からはLEDイルミネーションの光り方と色を指定可能。固定色や色の変化などを設定できる。右は実際に色を変えてみたところで,上段左から順に赤,橙,桃,紫,青。下段左から順に水,緑,黄,白だ。青がちょっと弱い(というか赤みがかっている)ものの,全体として色の出方はキレイだ。白が濁っていない点にも注目したい
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USB接続時の遅延状況はあまり芳しくない。遅延重視ならアナログ接続が正解か


 仕様を一通りチェックしたところで,テストに入ろう。ファーストインプレッションで2chステレオ出力の品質検証は済んでいるため,本稿ではまず,遅延テストから行っていきたい。「用意したい用意したい」と繰り返していた「ダミーヘッドを用いた周波数特性および遅延検証法」のテキストをついに用意できたので,どうやってテストしているかの詳細はそちらを参照してもらえればと思う。

 さて,今回はUSB接続時とアナログ接続時の両方に対してWASAPI排他モードとDirectSoundで計測することにし,DTS Headphone:X有効時もテスト条件に加えているが,得られた結果はのとおり。USB接続時はワイヤードの割に遅延がやや大きい印象だ。遅延が気になる場合は,別途サウンドデバイスを用意してアナログ接続というのも検討対象になるだろう。
 今回,初めてマイナスというテスト結果が出てきたが,そもそもここでの評価は,リファレンス機材と比べてどれくらい遅れたか,もしくは進んでいるかの相対評価である。当然,USB接続を採用したリファレンス機材より遅延状況が良好ということは生じうるので,その場合,スコアはマイナスとなるわけだ。いずれにせよ,アナログ接続時の遅延状況は優秀と述べてよく,遅延重視ならArctis 5は(少なくともいまのところは)アナログ接続が正解ということになるだろう。

 なお,テスト結果でちょっと不思議なのは,USB接続時にWASAPIだとDTS Headphone:Xの有効化によってきっちり1ms遅れるのに対し,DirectSoundだと逆に約5ms進むことだ。どうもDirectSoundは謎が多い。

※DTSHXは「DTS Headphone:X」,WASAPIは「WASAPI排他モード」,DSは「DirectSound」の意味
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サラウンドサウンド出力品質は極めてレベルが高い


 続いては,実際のゲームを用いての試聴テストだ。繰り返すが,ステレオ出力時の出力品質は,波形計測の結果も含めてファーストインプレッションで言及済みである。

画像集 No.025のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
 というわけで今回も「Fallout 4」と「Project CARS」を用いてサラウンドサウンドを聞いていくが,DTS Headphone:Xをを有効化することで,Fallout 4では音源が回転したときの移動をほぼすべて耳で追えるようになった。とくにリアチャネルは優秀だ。スピーカードライバーに少し角度が付いているためか,フロントの定位もSiberia 350より良く,わずかながらより前方に定位してくれる印象である。

 そして何より印象的なのは,ほかのヘッドセットだと聞こえづらいことが多い音が,Arctis 5では聞き取れることだ。おそらく,プレゼンスから高域の歪みが少なく,中域の解像度が競合製品に比べて高いのが主な理由だと思われる。ファーストインプレッションで示したUSB接続時の波形を見ると,300Hz〜1.5kHzあたりがフラットで,さらにそれ以上の帯域で少し落としてあるのが分かるが,それにより歪みを抑えることができているのだろう。

 Project CARSでは,後方のガヤ音と,前方から後方,後方から前方に通過する敵車の音がいずれも非常に把握しやすい。このあたりの聞こえ方も,Arctis 5の持つ音響特性ゆえだろう。
 縁石に乗り上げたときの重低音はDTS Headphone:Xの得意とするところだったりするのだが,単にLFEに信号が入ったときの「ドン」という押し出しが強いだけでなく,自然に聞こえ,バランスがよく感じられた。なかなか印象的な試聴結果である。


USB接続,アナログ接続とも高域までしっかり入力可能。実用的な音質傾向が得られる


 続いてはマイクテストである。マイクテストでは,解説ページの手順どおりに測定を行い,マイクから入力した音声データの試聴も行うが,当然のことながら,ここでもUSB接続時とアナログ接続時の両方で検証を実施することになる。USB接続時,Engine 3側の設定は工場出荷時設定から弄らず,標準のままとしていることをあらかじめお断りしておきたい。

 というわけで,まずはUSB接続時からである。
 波形は下に示したとおりで,ピークは6.5kHz付近にあり,もう1つ,2.5kHz〜10kHzが山となった,右肩上がりの分かりやすい低弱高強だ。100〜125Hzあたりより下と15〜16kHzあたりより上で急激に落ち込んでいるのも分かる。
 双方向指向性のマイクはシングル仕様のようで,位相は完璧だった。

黄緑がリファレンス波形,橙がArctis 5のUSB接続時におけるテスト波形だ。アナログ接続時の周波数特性はプレゼンスの山がUSB接続と似ている。というか,16kHz以上の帯域をカットして,さらにハイパスフィルターで中域以下を削るとUSB接続の波形になる印象である
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 USB接続なのに,サンプリングレートが16kHzではなく32kHzになっているのは(※1),非常に珍しいと言っていいだろう。当然だが,その分高域までしっかりと入力できる。
 実際,声を録音してみると,若干鼻づまり感は感じるものの,USB接続型ヘッドセットによくあるサンプリングレート16kHz仕様のマイクが持つ「ザラザラした音」とはだいぶ違う。低弱高強できっちりプレゼンス帯域(※2)付近を聴かせているので,ネットワーク経由でも何を言っているか聴き取りやすいはずだ。

画像集 No.033のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
 また,双方向指向性マイクを採用し,周辺にあるノイズを拾いにくくしており,かつEngine 3側では標準で「ノイズ除去」が「ミディアム」の設定となり,低域をカットしてだめ押し気味にノイズリダクションも行っているため,環境ノイズはほぼ聞こえない。

※1 「あるオーディオ波形を正確にサンプリング(=標本化,データ化)するためには,当該波形の周波数成分よりも2倍以上高い周波数を用いる必要がある」という「サンプリング定理」に基づいた解釈。ここでは「15〜16kHzまで信号がきちんと入っている」ことから「サンプリングレートは32kHz」と判断している。
※2 1.4〜4kHz程度の中高域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

Engine 3とサウンドのコントロールパネルの両方でマイク入力を最大に指定した例
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 ただしUSB接続の場合,入力レベルが感度が低いため,十分な音量で入力できない可能性がある。幸いにして,Windowsのサウンドコントロールパネル上の入力レベルとEngine 3の入力レベルは連動していないので,両方を上げるといいだろう。
 両方とも最大にまで引き上げてもノイズはほぼ聞こえなかったので,安心して,適切な音量まで上げてしまって構わない。

 続いてはアナログ接続時の波形だ。下がそのスクリーンショットだが,2〜9kHzあたりが高域の山,40〜200Hzあたりが低域の山になっている。
 位相はこちらも正確だ。

黄緑がリファレンス波形,橙がArctis 5のアナログ接続時におけるテスト波形。★本文と絡めて,かつ同じにならないように周波数特性への言及をください
画像集 No.028のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ

 USB接続時と同じように低弱高強だが,USB接続時のような「ほぼ一直線の右肩上がり」ではなく,中域がいったん落ち込んだ,高域の「シャリ」が強いドンシャリ形状となっている。ドンシャリとはいえ低弱高強なので,「アナログ接続だと,ネットワークを経由したボイスチャットで何を言っているか聞き取りにくい」ということはなさそうだ。

 筆者が自分の声を録音してみたところ,フロアノイズの重低域こそ拾うものの,会話で気になる,重低域より高い低域以上の帯域はまったく拾っていない。波形を見ても低域は十分に存在するのだが,その割に低域のノイズは少なめで,双方向指向性マイクが持つハードウェアレベルのノイズ減衰効果をはっきりと確認できる。また,周波数帯域がUSB接続時以上に広がるため,USB接続時と比べても鼻づまり感はさらに弱くなり,聞き取りやすくなる。


USB接続時の遅延状況だけはマイナスだが,Arctis 5はSteelSeries会心の一撃だ


製品ボックス
画像集 No.029のサムネイル画像 / SteelSeries「Arctis 5」レビュー。このUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットは会心の一撃だ
 最近はゲーマー向けヘッドセットの品質向上が著しいが,Arctis 5は,その流れに乗った製品というよりも,むしろ積極的に牽引する勢いを感じる製品だというのが,ファーストインプレッションから始まって,今回,すべてのテストを終えての感想である。
 唯一残念なのは,最近のワイヤレスヘッドセットと比較しても遅いという,USB接続時の遅延である。USB接続時の遅延はドライバ次第で遅くも速くもなるので,ここは早急に改善してほしい。

 ただ,そこを差し引いても,Arctis 5はSteelSeriesにとって久しぶりとなる会心の一撃であり,同時に,同社史上最高のゲーマー向けヘッドセットだ。とくに本格的な出力品質を求めるプレイヤーや,デザインのよいヘッドセットを携帯してモバイルデバイスにも接続したいというユーザーには,まず検討すべき製品の1つであると言い切っていいだろう。
 Arctisシリーズによって,SteelSeriesがゲーマー向けヘッドセット市場の最前線へ帰還したことを嬉しく思う。

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