連載 :カジュアル姉さん


カジュアルゲーム

第11回 とぅいんくる

 これまで10週にわたり,今をときめくカジュアルゲームを紹介してきた本連載も,第11回の今回をもって終了。「カジュアル姉さん」という責任と名誉ある肩書も,今回限りで外れることとなった。  さて,そこで大変悩まされたのが,最終回を飾るタイトルをどうするかだ。星の数ほどあるカジュアルゲームの中,担当編集でもあるKawamura氏と共に最終的に選んだのは,「アレ系お嬢様」「うきゃう」といった,従来の日本語にはない新鮮な響きで,ゲーマー達の心を釘付けにしたレースゲーム「とぅいんくる」である。前回実施されたクローズドβテストには参加できず,これまでは「キャラクターが転ぶと『うきゃうっ!』て言うらしいですよ」などの怪情報に頼るのみだったが,いよいよそれを確かめる機会が訪れた。

 

 とぅいんくるは,本連載でも過去に紹介してきた「テイルズランナー」や「カモンベイビー」などと同様,基本はコースをいかに速く走るか,途中で拾得したアイテムをいかに有効活用するか,そしていかに誰よりも先にゴールするかが目的のカジュアルレースゲームだ。
 走行中にゲージが溜まると各キャラ固有の必殺技が出せるといった特徴も含めて,レースゲームとしてのゲームシステムとインタフェースは,かなりオーソドックス。そんなとぅいんくるが,なぜ正式サービス前から注目を集めているかといえば,キャラクターの際立った個性や,そのバックグラウンドに秘密が隠されている。
 とぅいんくるのキャッチコピーにもなっている,「アレ系お嬢様」には,きちんと意味がある。とぅいんくるでレースに参加する各キャラクター達は,アルゴ星座に突如起きた経済危機により,それまでのぬくぬくした生活から放り出された,実は元財閥のお嬢様/お坊ちゃま達なのだ。彼女らはおそらく屋敷ごと没収された思い出の品々を,その手に取り戻すために,宇宙一を決めるレース「とぅいんくる」に参加するのであった。……という,おしんもびっくりの泣けるストーリーが用意されている。

 

ゲームモード

 新規アカウント登録後,すぐに使用できる基本キャラクターは「モモカ」と「ひよっこ」の二人だけ。残りのキャラクターは購入しなければならない。公式サイトには,全員の人間関係を図式化したページもあるので,より詳細を知りたければチェックすべし。

 

モモカ

とぅいんくるの看板娘的ポジションの,カエルが好きで好きでたまらない16歳。運の強さは全キャラクター中最強らしいが,破産している時点で運も尽きたと思われる

ひよっこ

モモカのいとこで,唯一の常識人らしい8歳の少年。帝王学を幼少のみぎりより叩き込まれた,優等生とのことだが,ヒヨコのかぶり物は果たして常識の範疇だろうか

 

レイ

こちらも10歳にしてIQ260という天才児かつ,キノーミ・ラボの一人娘。しかし爆弾の開発に情熱を傾け,現在は植物爆弾を開発中らしい。ろくなお嬢様ではなさそうだ

ナジャ

お姉さんマニア向けに用意されたとおぼしき,20歳のお嬢様。とにかくセレブでゴージャス。バブル崩壊後もなぜかお金に困っていないとは,一体どんな悪事を……

トレイン

大変優秀だが中身は秋葉系という,実際どこかにいそうな設定の,23歳キノーミ研究所スタッフ。そもそもアルゴ星座が舞台なのに,なぜ秋葉が存在するのだろうか?

 

フィ&ムゥ

大自然とテレパシーで会話ができちゃう,13歳の不思議系美少女でしかも双子。彼女達だけは,ショップ画面でもロックがかかった状態で,何か必要条件があるようだ

とぅいんくる

本タイトルの名前にもなっている,かつては上流階級の乗り物として愛用された,星型の生物だ。「キノーミ」を食べさせることで成長し,進化した姿もあるらしい

ゲームモード

 現在のところゲームモードは,コース上のアイテムを上手に使いながら1位を目指すという,定番のものが一つ存在するのみ。ただし,ルーム作成時には「アイテムなし」「必殺技なし」「初心者のみ」といった制限がかけられる。次に,レースを行う「惑星」を三つの中から選ぶのだが,惑星によって水エリアが多かったり乾燥した砂漠であったりと,環境が異なる。
 さらにこのあとコースを選ぶのだが,一つの惑星の中に「Alice」「Betty」「Catherine」の3パターンが用意されており,それぞれ地形,グラフィックス,難度が異なっている。基本的にAliceが初心者向け,Catherineが最も複雑で上級者向けと思われるのだが,現在はなぜか3コースとも「ノーマル」と表示されており,レースゲームの苦手な筆者としては,ちょっと違いが分かりづらいかも。

 

・Naos(Catherine)

 

・MIAPLACIDUS(Betty)

 

・Eta Carinae(Alice)

対決

 いよいよこの「編集者vs.筆者」の対決も,最終戦を迎えることとなった。いわば今回登場するのは,4Gamer編集部のラスボスにあたる存在だ。いつもは対決相手を指定させてくれたり,事前に教えてくれたりするKawamura氏だが,今回は「まぁ,お楽しみに」と言うばかり。対戦の日取りもKawamura氏が仲介役で決めるという,徹底的な秘密主義に首をかしげていた。
 そして当日,ゲーム内ロビーに現れたのは,4Gamerのデザイナー,マッテル氏の名前がついたキャラクターであった。

 

「いつもいつも麻生さんの原稿が遅いせいで,僕らデザイナーがどれだけ苦労させられているかなんて,考えたこともないでしょう。最終回はデザイナー代表として,きっちりケジメ取らせてもらいます」

 

麻生ちはや
全11回という自身最長記録の週刊連載を終え,来週から暇を持て余す予定のフリーライター。仕方がないので,400頭のアルパカと戯れられる栃木の「アルパカ牧場」へ,癒しを求めて行くつもりらしい。しかしこの季節,アルパカ牧場がある那須高原はすでに極寒の地だ

マッテル
4Gamer編集部デザイナー。この「カジュアル姉さん」のほか,過去に「ベルアイルな女たち」でも麻生氏の連載記事をデザインしている。あの連載で,K君やらN君やらZ君やらといった男性キャラの顔を,薔薇で取り囲んだ張本人。「麻生」の名を聞くたびに,いつも複雑な表情をする

 

 

 高らかに勝利宣言をするマッテル氏。しかも身に覚えがある発言内容だけに,筆者も強く反論できず。確かにある種のラスボス登場だよなぁ,これは……。しかし勝負は勝負。ましてやゲーム勝負で,デザイナー相手に専業ゲームライターが負けるとでも思っていて?(アレ系お嬢様風に)

 

 初戦に選んだのは,一番シンプルかつ難度が低いコース「NAOS」(Alice)だ。対決当日は仕事もそっちのけで,昼間からずっと練習をしていたというマッテル氏。さぞかしうまいのだろうと怯えたが,よく聞けば「練習中,一度も6位以上になったことがありません」とのこと。あまりプレッシャーもなく挑んだ1戦め,確かにマッテル氏の操作は特別上手ではない。レースの走行そのものは決してうまくないのに,どうして爆弾だけは正確に当ててくるのだろうか?
 とぅいんくるで入手できるアイテムのうち爆弾には,自分の後方へ放り投げ,次のLAPで回ってきた敵を吹き飛ばす設置タイプと,前方を走る相手に投げつけるタイプの2種類がある。後者の爆弾は,直線コースで飛ぶためよく狙って投げる必要があり,ある程度距離を詰めないとなかなかうまく当たらないのだが,マッテル氏は,惚れ惚れするほど正確に当ててくるではないか。一度ならず,二度も三度も!
 反撃を試みるものの,元々が単純なトラックなので一度遅れを取ると巻き返しが難しく,結局そのまま負けてしまった。

 

あまりに悔しかったので,爆弾を投げ返した瞬間のスクリーンショットを掲載。前方を走るマッテル氏を吹き飛ばしたが,追いつくことはできなかった

 控えめに,しかしハッキリと「僕,本当に大してうまくないのに,どうして負けるんですか」などとのたまうマッテル氏。いや,今のはちょっと油断しただけですよと笑いながら2戦めを当然申し込む。最終回まで負け戦では,たまったものではない。次に選んだのは,コースの大部分を滝や水路が占める美しいマップ「MIAPLACIDUS」(Alice)。画面右下のコースだけを見る限り,シンプルなトラックに見える。しかし高低差がかなり激しくカーブもキツイうえに,コースのところどころには障害となるブロックが配置されており,実は難度高め。急カーブをジャンプしながらの方向転換で切り抜け,ミスを最小限に抑えることで,このコースは何とか勝つことができた……何とか?

 

水上コースには女の子なら「カワイー」とでも言いそうな,カエルやとぅいんくるの置物が。実はこいつら,ぶつかると跳ね返される憎たらしい障害物なのだ 騎乗生物とぅいんくるを背中に,勝利のポーズを決めてみる。よく見ると,タイム的にはギリギリなことがばれてしまうので,あまり偉そうにはできない

 

 そして勝敗が決まる3戦めの舞台には,SF風マップ「ETA CARINAE」が選ばれた。
 途中キツめのカーブがある以外,さして難しくはない中級レベルのコースといえるだろう。それなのに,結果からいえば負けたのだ。つまり最終回も負けたまま終わるのだ。マッテル氏はレース終了後「姉さん,弱すぎ」の一言を残してログアウトするし,もうやってられませんよ!

 

いい感じの接戦で,次に爆弾アイテムを取ったら投げつけようと後方から狙っていたところ,逆に視界を塞がれるアイテムで妨害をくらう。これが後々までレースに響き,ついに負けが決定した

 

 

 

 カジュアルゲームの伝道師として活動してきた筆者だが,カジュアル姉さんとしての役目は今回でおしまい。この連載を通じて,オコチャマゲームと思ってスルーしてきた読者のうち,一人でも多くがカジュアルゲームに興味を持ってくれたなら,お姉さんは嬉しい。またワクワクするようなタイトルがたくさん溜まってきたら,皆様と再会することになるかもです。

 

 

■■麻生ちはや(ライター・お姉さん)■■
苦手なジャンルは「レースゲーム」「スポーツゲーム」「アクションゲーム全般」という,カジュアルゲームの大半を苦手とするところに目をつけられ,「100年に一人の逸材」「ゲームセンターCXを超える」などと言われて,執筆担当に抜擢されたのは2006年夏の話。9月からスタートした連載も,とうとう最終回を迎えた。最近は取材先で「ああ,あのカジュアル姉さんですね」と爆笑されるほど顔も広くなり,すっかり仕事がやりやすくなったような,やりづらくなったような,複雑な心境のようだ。
タイトル とぅいんくる
開発元 リヴィールラボラトリ 発売元 ガイアックス
発売日 2007年内 価格 基本プレイ料金無料
 
動作環境 対応OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以降),Pentium III 1.2GHz以上[Pentium 4 1.5GHz以上推奨],HDD空き容量:1GB以上[1.5GB以上推奨],メモリ512M[768MB以上推奨],GeForce2MX(グラフィックスメモリ32MB)以上[グラフィックスメモリ64MB以上推奨],DirecX 9.0以降対応のサウンド環境,ADSL1.5Mbps以上の通信環境[ADSL 24Mbps以上推奨]

(C)2007 UTD Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved.
(C)GTE. Reveal Games 2007


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/casualgame/011/casualgame_011.shtml