― プレイレポート ―
可愛らしいキャラクターと独特のシステムが魅力のライトMMORPG
エミル・クロニクル・オンライン
第一次クローズドβテスト プレイレポート
Text by 岡村淳司
2005年8月11日
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 2005年8月1日から9日にかけて,ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下ガンホー)最新のMMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」(以下ECO)の第一次クローズドβテストが行われた。短期間ながら募集人数は2万人。初日から大盛況で,どこに行っても人・人・人の大混雑状態だった。
 それゆえか,サーバー負荷やバグレポートに対処するための緊急メンテナンスなどで,序盤は頻繁なサーバーダウンが生じたが,昼夜を問わぬ作業によって,2日目あたりからはバグフィックスを反映するためのサーバーダウンこそあるものの,比較的快適にプレイできるようになった。
 ご存じのようにECOは,ガンホーがサービスを,ブロッコリーがキャラクターデザインを,ヘッドロックが開発をそれぞれ担当する。この3社=トリオ・ECOが提供する純国産のファンタジーMMORPGだ。機械文明が一度滅びたアクロニア大陸を舞台に,人間,天使,悪魔の三部族のいずれかとなって冒険を繰り広げる。
 カートゥーンシェーディングを使った可愛らしいキャラクターと,自分のキャラクターがアイテムに乗り移る"憑依",自分の分身として行動する人形の"マリオネット"など,独特のシステムで注目されており,ガンホー的には「ラグナロクオンライン」の後継として期待する(プレイヤー層もそうズレないだろう)作品でもある。

 

 第一次クローズドβテストの段階でプレイしてみた印象を手短に述べると,「やや煮え切らないところを残しつつも,ライトMMORPGとしてよく工夫され,まとまっている」感じ。
 視点の角度が限られていて遠くが見渡せない,戦闘のペースはよいが経験値稼ぎはけっこう大変,インベントリが極端に小さくて,手に入れたアイテムを売り払うべく街近辺と狩り場をかなり頻繁に往復する必要があるなど,いくつかの問題も感じるが,これらはいずれも本作の新機軸に関連する部分であり,βテストを重ねる段階で調整が進むことだろう。実際,操作に関してはテスト中のアップデートで大きく改善された。

 本稿では第一次クローズドβテストで確認できた各要素を,可能な限り詳しくお届けする。少々取り散らかした感じの構成で恐縮だが,ご容赦いただきたい。

 

 

■ログアウト中にもプレイが進む「憑依」と「マリオネット」

 

 さて,まずはECO独特のシステムである,「憑依」と「マリオネット」について説明しよう。どちらも自分がログアウトしている間にもプレイが進む仕組みで,プレイヤーが忙しいときにもレベル上げやアイテム集め,アイテムの露天販売などが可能なシステムだ。

 

●自キャラがアイテムに乗り移る憑依システム

 

憑依された装備は「equip」表示で赤く色がつく。この状態で装備を解除すると,憑依も解除される

 憑依システムは,友達のキャラクターが持っている武器や防具に乗り移る,または,自分が装備しているアイテムに乗り移ってフィールド上に"転がして"おき,それを使ってもらうことで経験値が得られるというシステムだ。
 さすがに普通にプレイした場合と同等の経験値が得られるわけではないが,運がよければ憑依中にも普通にレベルアップできる。  憑依可能なアイテムは,右手に装備する武器,左手に装備する盾,鎧の上半身装備部分,胸に着けるアクセサリーの4か所で,同時に3か所まで憑依できる。また,憑依する側とされる側は近いレベルである必要がある。一人のプレイで合計4人が成長していくというのは,考えてみるとすごい話だ。
 憑依した側がログアウトしても,憑依された側が武器や防具などを装備し直さない限り憑依状態は続く。また,憑依した状態でチャットも可能だ。いきなり自分が"借用"している剣やアクセサリーから話しかけられるのは,なかなか新鮮な体験である。
 憑依状態といえども戦闘に参加する以上,まったく危険がないわけではない。憑依した部位への攻撃判定が稀にあるらしく,戦闘を行っていると憑依したキャラクターのHPが減る場合がある。ただしそれを憑依されているプレイヤーが確認する手だては用意されていないため,憑依していたはずのキャラクターが戦闘中に死んでしまうこともある。ちなみに憑依する側の防御力には,そのとき自身が身に着けている防具の効果も勘案されるので,武装を固めた状態で憑依状態になったほうがよい。

 

自分の持っている武器や防具に憑依するためには,自分を右クリックして「自分に憑依」を選択する。ここでどの部位のアイテムに憑依するかを指定すれば憑依が可能だ。憑依後はアイテムの脇に他人から見えない状態でたたずむことになる。運よく拾ってもらえれば経験値も稼げる

 

 ログインしたまま憑依を続けているなら,減った体力は食料などで回復可能だし,スキルで戦闘を助けたりもできる。さらに,誰かが憑依しているアイテムは,通常状態よりも若干性能が上がるため,戦闘を有利に進められる。
 プレイ時間が完全に一致しない友達同士で,互いに憑依したりされたりをうまくやっていけば,比較的近いレベル帯で効率よくプレイを進められる。また,ログアウト時に自分のアイテムに憑依して道端に置いておき,ログオンしたら見知らぬ誰かと一緒に戦っていたり,どこか知らない土地に移動していたりといった,思わぬ展開になるのも面白い。
 憑依する者/される者の間にはレベル制限があるし,キャラクターには(試せた範囲では)デスペナルティがなく,死んだときにも自分が決めた場所に戻れるなど,現状で憑依に関連して格別不愉快な思いをする危険は大きくないとは思う。だが,まったく新しいシステムだけに心配なのも事実。開発陣にはさまざまな事態を想定した配慮を望みたいところだ。


憑依する相手の横に立ち,その人を右クリックして「この人に憑依」を選択。どの部位に憑依するかを選択したら完了だ。この場合,憑依後に自分の姿は見えなくなる 例えば右手装備に憑依していると,右手がしゃべっているようなふき出しが付く

 

●ベンダーや素材集めに使えるマリオネット

 

現在アイテムとして「マリオネット・xxxxx」(ここではエレキテル)を所持しており,これをダブルクリックすることでマリオネットに憑依できる

 ECOが持つもう一つのユニークなシステムが「マリオネット」だ。名前のとおり一種の人形なのだが,専用の"マリオネットアイテム"を使用することで,さまざまな特殊能力を持った人形に乗り移って行動できる。
 マリオネットアイテムはクエストなどで入手できるが,一定回数の使用で壊れてしまうため多用は難しい。また,変身の継続時間は3分間で,その後5分間は変身できないなど制限もつく。
 マリオネットには,水中で呼吸できるものや火に強いものなどがあり,変身中はHPが増えたり,特殊能力が使えるようになったりするが,NPCとの会話や買い物などは普段と同じようにできる。ただし,憑依システムとの併用は不可能だ。
 マリオネットの使い方はもう一つある。変身している状態でログアウトするときに命令を出しておき,ログアウト中にアイテム採集をさせたり,アイテム販売の露店を開いておくといったことが可能なのだ。採集をさせる場合,戦闘になることもあるが,憑依システムと異なり,そこで経験値は得られない。
 ゲーム世界の中心であるアクロポリスシティのうち,「アップタウン」へ行けるようになれば,NPCと会話することでマリオネットアイテムが一つ手に入るので,ぜひ試してみたいところだ。

 

マリオネットはそれぞれ異なるステータスを持ち合わせている。エレキテルでは電気系の攻撃スキルと高いHPを持ち合わせ,攻撃力も上がる。座るなどの動作も可能だ 現在のところ,用意されているマリオネットは4種類。アップタウンでどれか一つのマリオネットアイテムをもらうことで変身可能となる。消耗品なので使いすぎに注意しよう

 

 これらのシステムは,とくに時間のないプレイヤーにはありがたいものだ。武器に憑依して道端に落ちていれば,拾って使ってもらえる可能性もある。うまくいけばログアウトしている間にもキャラがある程度育つ。また,マリオネットに露店を開かせておけば,貴重なプレイ時間をアイテム販売に費やす必要がない。まだプレイしてみた期間が短いため,アイテム採集の実用性は判断しづらいが,これらをうまく使うことが,時間の足りないプレイヤーにとっては,プレイの幅を広げるためのキーとなるだろう。

 

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タイトル エミル・クロニクル・オンライン
開発元 ヘッドロック 発売元 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
発売日 2005/12/09 価格 1500円(税込)/30日間
 
動作環境 Windows 2000/XP,DirectX 8.1,Windows Media Player 9.0,CPU:PentiumIII/1GHz,メモリ:256MB,HDD:2GB,グラフィックスカード:32MB以上のグラフィックスメモリを有する3Dアクセラレーターチップ搭載ボード,回線:ADSL 1Mbps以上のインターネット接続が常時可能な環境

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