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「Core i7-5775C」を試す。Skylakeまでの“つなぎ”となるCPUを,ゲーマーはどう捉えるべきか
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印刷2015/07/24 00:00

レビュー

Skylakeまでの“つなぎ”となるCPUを,ゲーマーはどう捉えるべきか

Core i7-5775C

Text by 米田 聡


画像集 No.030のサムネイル画像 / 「Core i7-5775C」を試す。Skylakeまでの“つなぎ”となるCPUを,ゲーマーはどう捉えるべきか
 少し前の話になるが,2015年6月2日,COMPUTEX TAIPEI 2015のタイミングで,Intelは第5世代Coreプロセッサの新モデルを発表した(関連記事)。「Broadwell-H(ブロードウェルH)という開発コードネームで呼ばれてきた新製品は,デスクトップPC向けとノートPC向けに展開されるが,デスクトップPC向けは,いずれも4コアCPUでTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が65Wとなり,さらに,デスクトップPC向けCPUとして初めて,統合型グラフィックス機能(以下,iGPU)「GT3e」こと「Iris Pro Graphics 6200」(以下,Iris Pro 6200)を採用するのが大きな特徴となっている。

 現在のPC市場は,7月29日に正式リリースを迎えるWindows 10,そして間もなく登場と噂される第6世代Coreプロセッサ(開発コードネーム「Skylake」)を待ち構えている状況であり,Broadwell-Hに注目している人はほとんどいないというのが正しい現状認識だと思うが,事実上,Skylakeまでのつなぎとして登場したBroadwell-Hは,ゲーマーにとって意味のある選択肢なのだろうか。発表時点の最上位モデルとなる「Core i7-5775C」(以下,i7-5775C)を入手できたので,その特性や3Dゲーム性能をチェックしてみたいと思う。


パッケージはHaswellと同じLGA1150

iGPUはシェーダー増量&eDRAM倍増


 最初に,i7-5775Cの仕様をおさらいしておこう。Broadwell-Hは,製品型番の末尾「C」がLGA1150パッケージ,「R」がマザーボードに直接実装されるBGAパッケージ版を示すため,i7-5775Cは(言うまでもない話ではあるのだが)LGA1150パッケージ版ということになる。
 4コア8スレッド対応で,定格動作クロックは3.3GHz。自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)による最大クロックは3.9GHzとなる。共通L3キャッシュ容量は6MBだ。

i7-5775Cの表面(左)と裏面(右)。Haswellと同じLGA1150パッケージであるため,当然ながら形状やピン配置は変わっていない
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こちらはノートPC向けBroadwell-Hの写真。ヒートスプレッダを取り外したイメージとしてここでは使っているが,写真中央の大きなダイがCPUコアで,その上に見える長方形のダイがeDRAMである
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 冒頭でも紹介したとおり,i7-5775Cは,LGA1150パッケージのCPUとして初めて,Iris ProブランドのiGPUを統合するCPU(の最上位モデル)となる。その最大の特徴は,高速なキャッシュメモリとして機能するDRAM「eDRAM」(embedded DRAM,組み込みDRAM)を,CPUのシリコンダイとは別チップとしてCPUパッケージ内に実装していることで,その容量は64MBとなっている。
 記憶力のいい読者だと,Haswell世代に,BGAパッケージでGT3e「Iris Pro Graphics 5200」(以下,Iris Pro 5200)を統合したデスクトップPC向けCPU「Core i7-4770R」(以下,i7-4770R)があったのを覚えているかもしれないが,Iris Pro 5200で組み合わされたeDRAMは32MBだったので,2倍の容量になっているわけだ。

 ちなみに,GT3eの規模を知る目安となる演算ユニット(Execution Unit,以下 EU)の数はIris Pro 5200が40基だったのに対し,Iris Pro 6200では48基。こちらは1.2倍になった計算である。

 i7-5775Cとi7-4770Rの主なスペック比較したものが表1で,これを見ると,iGPUの動作クロックもi7-5775Cで引き上げられているのが分かるだろう。このあたりは14nmプロセス技術を採用した恩恵と言えるかもしれない。

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 なお,Intelによれば,Broadwell-Hでは,DirectX 12に向けたさまざまな改良も行われているとのことだ。DirectX 12に対応したゲームタイトルが出ていないこともあって,本稿の主題にならないため,詳細は割愛するが,2015年3月に開催されたGame Developers Conference 2015では,Broadwell世代とHaswell世代のiGPUにおける重要な違いが解説されている。興味がある人はレポート記事を見てもらえればと思う。

i7-5775Cの仕様を「CPU-Z」(Version 1.72.1,左)と「GPU-Z」(Version 0.8.4,右)からそれぞれ確認したところ
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既存マザーボードでBroadwellを使うときは

Intel MEのアップデートも必須


 前段で,i7-5775CはLGA1150パッケージのCPUだと紹介した。なので,HaswellコアのLGA1150版CPUに対応したマザーボードなら,Broadwell-H対応UEFI(≒BIOS)にアップデートさえすれば使えるのではないかと考える読者も多いだろうが,実は,そこにちょっとした落とし穴がある。というのも,Broadwell-Hを既存のLGA1150マザーボードで使うためには,UEFIだけでなく,マザーボード上に搭載されているシステム管理用プロセッサ「Intel Management Engine」(以下,Intel ME)のファームウェアアップデートも必要になるのだ。
 Intel MEのアップデートを行わない状態でi7-5775Cを使おうとすると,iGPUが一切認識されないという状況に陥る。そのため,マザーボード上にあるiGPU側のビデオ出力にディスプレイをつないでも,UEFIの画面すら表示されない。しかも,この問題に関する情報が少ないという状況で,なかなか難度が高いのである。

今回のテストに使用したMAXIMUS VII GENE。Broadwell対応のUEFIが提供されているが,筆者がつまずいたアップデート方法に関する説明はなかった
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 Intel MEのファームウェアアップデート方法は,マザーボードによって異なる。筆者は今回のテストにあたり,「Intel Z97」チップセットを採用するASUSTeK Computer製マザーボード「MAXIMUS VII GENE」を使用したのだが,本製品ではBroadwell-H対応版のUEFIにIntel MEのファームウェアが含まれているにも関わらず,UEFIのメニュー画面から行うアップデート方法では,Intel MEのファームウェアをアップデートできなかった。
 MAXIMUS VII GENEでIntel MEのファームウェアをアップデートするには,対象のUEFIイメージをコピーしたUSBフラッシュメモリを用意して,それをマザーボードのUSBポートに接続する。そしてそのうえで,マザーボード上にある[USB Flashback]ボタンを押しながら電源を投入し,強制的にUEFIをアップデートする方法を使わなければならないのだ。

 [USB Flashback]ボタンを使ったアップデートは,画面が表示できなくても利用できるため,i7-5775CのiGPUが認識されていない状態でも行えた。また,グラフィックスカードを接続してある状況であれば,もちろん画面出力にも問題はない。ただ,環境によっては,Broadwell-Hを差した状態だと,起動もUEFIのアップデートもできなくなる状況に陥る可能性が否定できないので,この点はくれぐれも注意してほしいと思う。
 Broadwell-Hを使おうと考えている人は,あらかじめ手持ちのマザーボードにおけるIntel MEのアップデート方法を調べておき,可能なら事前にアップデートしておくほうが安全だろう。


比較対象にはCore i7-4790KとA10-7870Kを選択


 ベンチマークテストへ進む前に,テスト環境をまとめておきたい。今回は比較対象として,「Core i7-4790K」(以下,i7-4790K)と,AMDの「A10-7870K with Radeon R7 Graphics」(以下,A10-7870K)を用意した(表2)。
 i7-4790Kは,「Devil’s Canyon」とも呼ばれていたHaswell世代の製品で,CPUコアの定格動作クロックが4GHz,最大動作クロックは4.4GHzと,i7-5775Cよりも一段上のCPUコア性能を持つ。ただ,iGPUの「Intel HD Graphics 4600」(以下,HD 4600)は,EU数が40基で,eDRAMは非搭載だ。
 一方のA10-7870Kは,「Steamroller Module」を2基(≒CPUコア4基)と,「Graphics Core Next」アーキテクチャに基づくGPU演算ユニット8基を搭載するAPU(≒CPU)で,CPUコアの動作クロックは定格3.9GHz,最大4.1GHz。iGPUの動作クロックは最大866MHzとなっている。
 メモリコントローラはデュアルチャネルDDR3-2133だが,AMD Memory ProfileによりDDR4-2400にも対応する。

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 表3は,テスト機材の一覧をまとめたものだ。なお,今回は実使用に近い環境でのテストをするため,Intel製CPUはTurbo Boostを,A10-7870Kは自動クロックアップ機能である「AMD Turbo CORE Technology」をそれぞれオンにした。

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 なお今回の検証においては,まず,PC情報表示ツール兼ベンチマーク「Sandra 2015.SP2」(Version 21.34,以下 Sandra)を使ってi7-5775Cとi7-4790Kの基本性能を比較し,その後,A10-7870Kを加え,3Dベンチマークや3Dゲームアプリケーションを用いてのテストを行うことにした。


iGPUを中心にi7-5775Cの基本性能をチェック

eDRAMの効果がチラ見え


 では,Sandraの結果から見ていこう。
 グラフ1は,CPUコアの演算性能を計る「Processor Arithmetic」に含まれる3種類のテスト結果をまとめたものだ。動作クロック比から考えれば,i7-5775Cとi7-4790Kのスコア差は20%前後と推定できるので,それがスコアを見る目安になるだろう。

 まず,SSE4の整数演算を計る「Dhrystone Integer Native SSE4.2」だが,
i7-5775Cはi7-4790K比で約93%というスコアになった。動作クロック比以上に健闘しているといえる。
 一方,AVX命令で単精度浮動小数点演算を行う「Whetstone Single-Float AVX」はi7-4790K比で約62%,倍精度浮動小数点演算の「Whetstone Double-Float AVX」では約73%という結果だ。動作クロックよりもスコア差は開く結果になったわけである。

 平均すると,動作クロック差から見ればおおむね順当ともいえるので,スコアのブレは,Turbo Boost Technologyによって生じたものと推測している。いずれにせよこの結果からは,i7-5775Cでクロックあたりの性能が向上したかどうかを語るのは難しい。

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 グラフ2はメインメモリの帯域幅を計る「Memory Bandwidth」の結果で,こちらは明らかな傾向の違いが見られる。テストでは同じメモリとメモリ設定になっていることもあってか,スコア差は約1%,誤差程度の違いしかしかないのだ。
 広い範囲のメモリにアクセスするメインメモリ帯域幅のテストでは,eDRAMの効果は現れないということだろう。

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 それに対して,2kBから1GBまで,ブロック単位でメモリ帯域幅を計る「Cache and Memory」では,とても興味深い結果が得られた(グラフ3)。i7-5775Cは6MB以下,i7-4790Kでは8MB以下という,共有L3キャッシュに収まるブロックサイズで比較すると,内部クロックの高いi7-4790Kがi7-5775Cに対して優勢だ。しかし,L3キャッシュ容量を超えた16MBのブロックサイズだと,i7-5775Cがi7-4790K比で約1.61倍,64MBでは同じく約2.94倍という,圧倒的なスコア差をつけているのである。
 eDRAM容量を超える256MB以上では,両CPUの差がわずかとなっているので,これは明らかにeDRAMの効果ということになる。

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 続いてはiGPUの演算性能だ。OpenCLを使ってシェーダの演算性能を見る「GP(GPU/CPU/APU) Processing」の総合スコア,「Aggregate Shader Performance」をまとめたのがグラフ4である。
 i7-5775Cはi7-4790Kに対して約2.4倍と,圧倒的なスコアを記録した。EU数と動作クロックの違いだけでは,とても説明がつかないレベルの違いなので,これもeDRAMの搭載効果ということになるだろう(※グラフィックスパイプラインの効率改善効果も,多少はあるかもしれないが)。

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 グラフ5は,GPUのメモリバス帯域幅をテストする「GP(GPU/CPU/APU) Bandwidth」の結果だ。こちらは,総合スコアにあたる「Aggregate Memory Performance」で,i7-5775Cのスコアがi7-4790Kより約18%高いという結果になった。

 面白いのは,グラフィックスメモリの帯域幅をテストする「Internal Memory Bandwidth」だと約25%というスコア差が生じているのに対し,グラフィクスメモリとメインメモリ間のデータ転送帯域幅をテストする「Interface Transfer Bandwidth」では約17%となり,スコアの差がやや異なるところだ。
 グラフィクスメモリといっても,iGPUの場合,実際にはメインメモリへのアクセスが使われているわけだが,グラフィックス処理用に確保されるメモリサイズは,通常,128MB以下に収まる。つまり,eDRAMがキャッシュとして十分に機能を果たすことになるわけで,それが,i7-5775CのInternal Memory Bandwidthのスコアを押し上げているのだと思われる。

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 一方で,グラフィックスメモリのレイテンシを調べる「GP Latency」(グラフ6)だと,グラフィックスメモリ領域全域にわたってi7-5775Cのほうがi7-4790Kよりもレイテンシが大きい結果となっている。おそらくは,eDRAMが介在することによって,GPUとメインメモリとの間にあるメモリ階層が深くなるためではないかと思う。

 一般的なGPUというのは,メモリ階層が深くてレイテンシも大きいのだが,i7-4790Kだと,128kB Range以下のサイズでは,レイテンシがほぼ半減するという,GPUらしくない挙動を見せていた。一方,i7-5775だと,そういった極端な変化は見られないので,半ば専用ともいえるキャッシュメモリを搭載することで,GT3eは単体GPUに近い振る舞いをするようになっているといえそうだ。

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 Sandraの結果をまとめると,CPUの演算性能にはそれほど影響しないものの,メモリまわりでは,明らかにeDRAMの効果があると確認できる。また,Iris Pro 6200はシェーダの実効性能でHD 4600に大きく勝る,といったところか。


多くのタイトルでプレイ可能なフレームレートを実現するが問題もあり


 では,これらがゲームグラフィックスにおいて,どの程度の差をもたらすのかを確認してみよう。先述したとおり,ここからはA10-7870Kのスコアとも比較していきたい。

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション16.0準拠。最新版は17.0なのだが,今回はテスト開始時点の16.0を使うので,この点はお断りしておきたいと思う。ただし,「ファイナルファンタジーXIV」の公式ベンチマークソフトだけは,レギュレーション17.0に準拠する形で,「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルドベンチ)に入れ替えている。

 テスト解像度は,iGPUの性能を考慮し,1280×720ドットと1600×900ドットを選択。また,「Crysis 3」と「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)「GRID Autosport」では,レギュレーションで規定される「標準設定」でも負荷が高すぎるため,今回はグラフィックス品質を大きく下げた「特別設定」を用いることにした。その詳細は個別に説明したい。

 というわけでグラフ7は,「3DMark」(Version 1.5.915)の「Fire Strike」と「Fire Strike Extreme」プリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。i7-5775Cは,i7-4790Kに対して108〜112%程度高いという,圧倒的なスコア差をつけた。
 対A10-7870K比でも,Fire Strikeでは約8%高いスコアを示しているが,より描画負荷の高いFire Strike Extremeだと,ほぼ互角というスコアになっている。負荷が高いプリセットになるほど,DDR4-2400による高いメモリバス帯域幅を持つA10-7870Kが有利になるというわけだ。

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 グラフ8,9は,Fire StrikeとFire Strike Extremeそれぞれのスコア詳細をまとめたものになる。GPU性能を見る「Graphics Score」では,i7-5775CとA10-7870Kが同程度となっているのだが,CPUの演算性能を見る「Physics Score」でi7-5775Cが圧倒しているので,これが,よりCPU性能がスコアを左右しやすいFire Strikeの総合スコアにおけるi7-5775Cの優勢ぶりにつながっているのだろう。
 ただ,i7-5775CがGraphics ScoreでもA10-7870Kといい勝負を演じている点は注目に値する。

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i7-5775CでFire Strike Ultraを実行すると,このようにエラーが出てしまう
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 もっとも,i7-5775Cを駆動するグラフィックスドライバ側には,少々問題もあるようだ。Intelは,Broadwell-Hの特徴として,3840×2160ドット,いわゆる4K解像度への対応をアピールしているため,4K解像度のテストとなる「Fire Strike Ultra」を実行してみたのだが,右に掲載したエラーが表示されて,テストを完走できなかった。
 ちなみに,同じエラーはi7-4790Kでも出る。どうやらバッファの確保に失敗しているようで,ドライバソフト側が原因とみて間違いない。4K解像度対応を謳うBroadwell-Hだが,3Dグラフィックスは対象外ということなのだろう。

 さて,次は「Battlefield 4」(以下,BF4)である。
 BF4ではエントリークラスのGPUが対象となる「エントリー設定」で計測を行った。結果はグラフ10のとおりで,i7-5775Cは,i7-4790K比で67〜73%程度高いスコアを記録した。対A10-7870Kのスコアも8〜12%程度高い。
 実フレームレートだと,4Gamerで合格ラインとする平均65fpsには届いていないが,それでも平均50fpsは出ているので,「プレイできなくもない」レベルにあるとはいえる。

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Crysis 3の「ADVANCED GRAPHICS OPTIONS」。特別設定ではこのようにした
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 Crysis 3では,アンチエイリアシングを無効化したうえで,「ADVANCED GRAPHICS OPTIONS」の設定を基本的に「MEDIUM」とし,「WATER」を「LOW」,「ANISOTROPIC FILTERING」を「1X」まで落としたものを特別設定とした。

 その結果はグラフ11のとおりだ。対i7-4790だと,i7-5775Cのスコアは1280×720ドットで約57%,1600×900ドットで約116%高い。A10-7870Kと比べても最大で約42%高いスコアとなった。
 どうしてここまでのスコア差が付いたのか,正直,分からないのだが,Crysis 3はGPU負荷が高いタイトルなので,eDRAMが有効に作用しているのかもしれない。

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Inquisitionにおける特別設定
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 続くInquisitionも「標準設定」ではまったくプレイアブルなフレームレートに届かないため,グラフィック設定プリセットの「中品質」をベースに,グラフィックス品質を再指定した。
 その結果がグラフ12で,テスト前は,BF4と同じ「Frostbite 3」エンジンベースなので,BF4と同じような傾向になるのだろうと思っていたのだが,ご覧のとおり,出てきたスコアはかなり異なるものになった。i7-4790K比では102114%程度,A10-7870K比でも55〜58%程度高いフレームレートで,i7-5775Cが飛び抜けているのだ。

 InquisitionはBF4に比べ,GPUとCPUのどちらにもやや高い負荷がかかるゲームである。そのため,対i7-4790KではGPU性能,対A10-7870KではCPU性能で,比較対象を引き離したといった感じだろうか。プレイアブルかどうかの目安となる平均40fpsを,i7-5775Cが解像度1280×720ドット条件で上回っている点にも注目しておきたい。

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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果は,グラフ13,14にまとめた。
 ここで目を惹くのは,「標準品質(デスクトップPC)」の1280×720ドット時に,i7-5775Cのスコアが6000を上回り,スクウェア・エニックスの示す指標で上から2番めの「とても快適」に達していることだろう。同じ指標の枠内に入っているA10-7870Kと比べてもスコア,フレームレートともに高い。
 一方,負荷の高い「最高品質」だと,i7-5775Cのスコアは1280×720ドット時に3000(フレームレート20fps台)で,指標は「やや快適」になった。i7-4790Kだと,事実上プレイできないことを示す「設定変更を推奨」止まりなので,大きな改善を見せたとはいえる。

 なお,比較対象に対して与えたスコア差は,i7-4790K比で71〜76%程度,A10-7870K比で10〜33%程度となった。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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GRID Autosportにおける特別設定
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 最後はGRID Autosportの結果を見てみよう。標準設定ではプレイアブルなスコアが得られないので,今回はグラフィック品質のプリセット「ハイ」をベースとする特別設定を採用している。
 結果はグラフ15のとおり。i7-5775Cは,i7-4790Kに対して88〜96%程度,A10-7870Kに対して約25%高いものとなった。1600×900ドットで,プレイアブルの目安となる平均40fpsを超えているのは評価できよう。

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 ベンチマークテスト結果をまとめると,i7-5775Cはi7-4790Kを大きく上回るグラフィックス性能を有しており,高解像度ほどスコア差は広がりやすい特徴があるといえよう。EU数の差が1.2倍でしかないことを考えると,この結果に与えているeDRAMの影響は大きいと考えられる。
 また,A10-7870Kに対して,多くの場面で優位に立ち回っている点も押さえておきたい。最新世代の3Dゲームタイトルであっても,グラフィックス設定を下げることで,プレイアブル,あるいはまずまずプレイアブルといえる平均フレームレートが出るようになっているのもポイントで,Intelも伊達に「グラフィックス性能に対するニーズの8割をカバーできる」とアピールしているわけではない,ということになる。


高性能の代償か,消費電力はかなり高めに


 最後は消費電力だ。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で,システム全体の消費電力を比較してみたい。
 テストにあたっては,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したときに記録した,最大の消費電力を各タイトルごとの消費電力としている。

 結果はグラフ16のとおりだ。
 端的に述べて,i7-5775Cの消費電力はかなり高い。アイドル時を除いたテスト中の平均消費電力は約159Wにもなり,i7-4790Kの平均約123Wに比べて36W,A10-7870Kの平均約142Wと比べても17W高い結果だ。「Extreme」セグメントではないIntel製CPUとしては,珍しく消費電力の大きなCPUになっているといえる。
 気になるのは,アイドル時の消費電力も高い点である。今回はWindows 7の電力設定を「高パフォーマンス」にして,CPUクロックが下がらない状況で使っているとはいえ,i7-5775Cを搭載するシステムの消費電力は50Wを超えており,i7-4790Kに対して10W,A10-7870Kに対しては12Wも高くなってしまった。データを保持するためにリフレッシュ動作が必要で,待機電力が大きいeDRAMを搭載していることが,消費電力面では不利に働いているのだろう。あるいは,Broadwellマイクロアーキテクチャで採用される14nmプロセスの消費電力がやや大きい,という可能性もあるかもしれない。

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 いずれにしても,消費電力という点では,i7-5775Cはあまり感心したものではない。iGPU性能が高い分だけ消費電力も高いと評価せざるを得ないようだ。


“軽め”のゲームなら十分にプレイできる性能は評価に値するが……


Core i7-5775Cの製品ボックス
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 ベンチマークテストを通じて,i7-5775Cのグラフィックス性能は,最新世代のAPUを上回るということが分かった。これだけの性能なら,グラフィックス負荷の軽いものを中心に,多くのゲームタイトルをiGPUで楽しむことができそうだ。
 気になる点があるとすれば,やはり消費電力だろう。消費電力が大きいということは発熱も大きいわけで,TDP 65Wの枠に収まっているとはいえ,放熱には気をつけるべき製品といえる。

 また,登場したタイミングも悪い。「ローエンド市場向けはもちろんのこと,エントリー市場向けのGPUをも不要とするだけの性能を持っており,しかも,AMD自慢のAPUよりも3D性能が高い」というのは,十分に大きなトピックなのだが,世間の注目はSkylakeへ移ってしまった。Skylakeの登場までわずかというタイミングで登場してしまったことが,i7-5775Cにとっての最大の不幸と言えるかもしれない。

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Intel 日本語公式Webサイト

  • 関連タイトル:

    Core i7・i5・i3・M(Broadwell)

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