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「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
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印刷2014/07/17 12:00

レビュー

この夏3万円で買えるミドルクラスRadeonの価値を探ってみた

Radeon R9 280
(MSI R9 280 GAMING 3G)

Text by 宮崎真一


R9 280 GAMING 3G
メーカー:MSI
実勢価格:2万8000〜3万500円程度(※2014年7月17日現在)
画像集#002のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
 もう4か月以上前の話になるのだが,2014年3月5日,AMDは同社のGPU製品リストに「Radeon R9 280」(以下,R9 280)を加えた。モデルナンバーからも容易に想像できるとおり,「Radeon R9 280X」(以下,R9 280X)と「Radeon R9 270X」との間を埋めるGPUだ。
 そういえばレビューしていなかったな……と思っていたところ,唐突にAMDの日本法人であるAMDから「サンプルを用意できた」と連絡があったため,これ幸いと,MSI製の搭載カード「R9 280 GAMING 3G」を借り,テストしてみることにした。本稿では,その結果をお伝えしたいと思う。


HD 7950 with Boostのリフレッシュモデル

最大クロックはちょっぴり高く


画像集#003のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
 R9 280がどんなGPUであるかという話は3月5日の記事を参照してもらえればと思うが,ざっくりまとめておくと,上位モデルであるR9 280Xと同じく,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャに基づくSouthern Islands(サザンアイランド)世代の製品である。演算ユニットとなる「GCN Compute Unit」の数はR9 280Xの32基からR9 280では28基に削減されており,ここが最も大きな違いと言うことができるだろう。GPUコアの最大動作クロックはR9 280Xの1000MHzからR9 280で933MHzと,ここでも差別化が図られている。
 ROP数が32基,メモリインタフェースが384bitというのは上位モデルと同じ一方,メモリクロックはR9 280Xの6000MHz相当(実クロック1500MHz)からR9 280で5000MHz相当(実クロック1250MHz)と,かなり下げられている。ざっくりまとめるなら,全体的にR9 280X比で8割強程度のスペックにまとまったGPUといったところだ。

Catalyst Control Centerからスペック情報をチェックしたところ
画像集#014のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
 ちなみに,記憶力のいい読者ならすでに気づいているかもしれないが,R9 280のスペック自体は,「Radeon HD 7950 with Boost」(以下,HD 7950 wB)とほとんど同じだ。表1は,R9 280とR9 280X,HD 7950 wB,そして競合製品となる「GeForce GTX 760」のスペックをまとめたものとなるが,実際,R9 280とHD 7950 wBのスペックはほとんど同じと述べていい。
 あえていえば,補助電源コネクタの構成がHD 7950 wBの6ピン×2から6ピン+8ピンに変わっているので,そこが最大の違いということになりそうだ。

画像集#018のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた


コアクロックが最大1000MHzに達する

R9 280 GAMING 3G


 今回,貸し出しにあたってカードの分解は許可されていないので,その点をお断りしつつ見ていくが,入手したR9 280 GAMING 3Gのカード長は実測で約268mm(※突起部除く)。HD 7950 wBリファレンスカード――正確には“with Boost化”する前の「Radeon HD 7950」リファレンスカード――は同277mmだったので,若干短くなっている。ただ,マザーボードに差したとき垂直方向のサイズがブラケットの長さよりも20mmほど突き出ており,補助電源コネクタも垂直方向に実装されているため,カード上方の空間が多少なりとも必要にはなるだろう。

カードはマザーボードに対して垂直方向に長め。また,補助電源コネクタもマザーボードに対して垂直方向を向いているので,PCケースのサイズは多少選ぶ
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プロペラブレードに寄ったところ
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MSIが公開している分解イメージ
 GPUクーラーは「Twin Frozr IV Advanced」という名の与えられたMSI独自のもので,2スロット仕様。100mm角相当のファンを2基備えるのが外観上の特徴となっている。ファンは,羽の途中で角度を変えることでより大きな風量を確保するという「Propeller Blade」(プロペラブレード)構造を採用するのが特徴だ。

 採用されるヒートパイプは8mm径が1本と6mm径が4本。MSIの公開している分解イメージでは,メモリチップの熱は補強板兼放熱板で受け止める構造になっている雰囲気なのだが,実際にはそうなっているチップとなっていないチップがあり,覗き込んで後者をチェックすると,グラフィックスメモリチップはSK Hynix製のGDDR5「H5GQ2H24AFR-T2C」(5.0Gbps品)であると確認できた。

本体側面から見たカット。8mm径のヒートパイプ1本がGPU部から本体後方へ,6mm径のヒートパイプ4本はGPU部から前方後方へと伸びる格好だ
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カード背面側。これといって冷却機構は用意されておらず,メモリチップも置かれていない。配線パターンや半田の状況を見る限り,電源部は8+2フェーズのようだ
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外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D,HDMI(Type A)各1と,mini DisplayPortが2系統。mini DisplayPort―DisplayPort変換アダプターが1つ付属する

 なお,R9 280 GAMING 3Gは,最近のゲーマー向けMSI製品で採用が始まっているソフトウェアツール「Gaming App」に対応しており,Windows上から,標準の「Gaming Mode」と,より静音動作を狙った「Silent Mode」,最も高い性能を狙う「OC Mode」の3パターンで動作モードを切り替えられるようになっている。
 動作モードを変更するとブーストクロックの最大値が変わるようになっており,具体的には標準のGaming Modeが972MHzで,Silent Modeが933MHz,OC Modeが1000MHzだった。つまり,Silent Modeにするとリファレンス相当のスペックとなり,OC Modeではブースト最大クロックが1GHzに到達するわけである。

Gaming Appの各動作モードと対応するブースト最大クロック。Gaming Appは,メーカー保証付きのGPUクロックアップ設定をワンクリックで設定できるツールという理解でいい
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 ただし,Gaming Appの設定で,メモリクロックは連動しない。一般に,GPUコアクロックだけ引き上げても,性能の向上は限定的となるため,本気で性能を上げたければ,自己責任でメモリクロックを引き上げる必要があると思われる。


リファレンス相当のSilent Mode

そしてOC Modeでのテストを実施


MAXIMUS VII RANGER
R.O.G.のエントリー向けZ97マザー
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店)info@tekwind.co.jp
実勢価格:2万1000〜2万4000円程度(※2014年7月17日現在)
画像集#017のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
 今回,R9 280のテスト対象には,表1でその名を挙げたGPUを用意した。先ほど紹介したとおり,R9 280 GAMING 3Gは3つの動作モードを持つため,今回はR9 280リファレンス相当の動作を期待できるSilent Modeと,メーカー保証の範囲内で最も高い性能を期待できるOC Modeの両方を主役として扱いたいと思う。要するに,「Gaming Mode時のスコアは,Silent ModeとOC Modeの間に入るだろう」という推測の下で,R9 280のリファレンス相当で動作させたときの状態と,最も高い性能を期待できる状態を優先したということである。
 以下,性能評価の段では,Silent ModeにしたR9 280 GAMING 3GをR9 280,そしてOC ModeにしたR9 280 GAMING 3Gを「R9 280 OC」と呼んで区別する。

 そのほかテスト環境は表2のとおり。R9 280X搭載カードとして用意したASUSTeK Computerの「R9280X-DC2T-3GD5」と,GTX 760搭載カードとして用意したPalit Microsystemsの「NE5X760H1024-1042」は,いずれもメーカーレベルのクロックアップモデルであるため,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 3.0.1)を用いてリファレンス相当まで下げて利用している。HD 7950 wBは,HD 7950リファレンスカードに“with Boost化VBIOS”を適用したものだ。

 なお,グラフィックスドライバはRadeon勢が「Catalyst 14.6 RC」,GTX 760が「GeForce 340.43 Driver Beta」となる。テスト開始後に「Catalyst 14.7 RC」がリリースされたが,これを用いていないのはスケジュールの都合ということでご容赦を。

※Radeon HD 7950 with BoostのVBIOSを適用
画像集#019のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.2準拠。R9 280Xが2560×1600ドット解像度をターゲットにしたGPUだったので,下位モデルであるR9 280のテスト解像度は1920×1080ドットと2560×1600ドットの2パターンとした。

 最後に,これは筆者のGPUレビューではいつものことだが,組み合わせるCPU側の自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって効果が異なる可能性を排除すべく,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化しているので,これもあらかじめお断りしておきたい。


R9 280Xとの性能差は1割強といったところ

HD 7950 wBからは最大で5%前後の性能向上を実現


 テスト結果を順に見ていこう。グラフ1は「3DMark」(Version 1.3.708)の総合スコアをまとめたものだ。R9 280は,R9 280Xの約89%,HD 7950 wBの106〜110%程度というスコアにまとまった。
 先に表1で示したとおり,R9 280とHD 7950 wBのスペック差は,ブースト最大クロックの8MHzだけだ。なのになぜ,これだけのスコア差が生まれているのだろうか。

画像集#020のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた

 それを探るべく今回は,R9 280とHD 7950 wBにおける3DMark実行中のコアクロック変動を,「GPU-Z」(Version 0.7.8)から追ってみることにした。それがグラフ2である。
 50秒過ぎと115秒過ぎ,140秒過ぎにある大きな落ち込みは「次のテストを読み出している間,GPU負荷が極めて低くなっている」ためだが,それ以外の,GPU負荷がかかっているところを見てみると,HD 7950 wBはクロックの変動が激しく,最大クロックである925MHzに貼り付いている時間がそれほどないのに対し,R9 280はほぼ933MHzに貼り付いているのが分かる。自動クロックアップ機能「AMD PowerTune Technology with Boost」(以下,PowerTune with Boost)の効果に両製品で明らかな違いがあり,これが,最大で約10%ものスコアを生んでいるようだ。この時点では断言できないが,Twin Frozr IV Advancedクーラーの冷却能力が高く,R9 280ではPowerTune with Boostが効果を最大限発揮しているのではなかろうか(※もちろん,Radeon R9シリーズでPowerTune with Boostの挙動がブラッシュアップされた可能性もある)。
 気になるのは,GPU負荷が低く,CPU負荷の高い局面で,R9 280の動作クロックが972MHzにまで上がっている点だが,これはおそらく,Gaming App側の不具合だと思われる。

画像集#021のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた

 グラフ3,4は,「Battlefield 4」(以下,BF4)のテスト結果である。
 3DMarkと同じく,R9 280のスコアはR9 280XとHD 7950 wBの間に収まっているが,スコア差を見てみると,対R9 280Xでは86〜89%程度なのに対し,対HD 7950 wBでは105〜108%程度と,若干HD 7950 wB寄りとなった。GTX 760の比較では,「標準設定」だと12〜14%程度高いスコアを残すものの,「高負荷設定」ではその差が0〜5%と大きく縮まっている。もっともこれは,GPU負荷が高くなりすぎて,ミドルクラスGPUでは処理しきれなくなり,スコアが丸まった結果と見るほうが正しいだろうが。

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 Radeon間での力関係は,グラフ5,6の「Crysis 3」でも同様だ。R9 280とHD 7950 wBとのスコア差は2〜5%程度まで縮んでいる。描画負荷が高いと,動作クロックよりも,GPU規模のほうが“効く”という,当たり前のことを再確認することになった格好だ。
 3DMarkやBF4と大きく異なるのは,対GTX 760でR9 280のスコアが劣勢にあること。3DMarkやBF4ほど最適化の進んでいないタイトルでは,こんな感じになるということなのかもしれない。

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 続いては描画負荷の比較的軽い「BioShock Infinite」である。テスト結果はグラフ7,8にまとめたとおりだが,Radeon間での立ち位置はBF4と似たものになった。ただ,BioShock InfiniteはAMD製GPUに最適化されているので,それを考えると,GTX 760に若干ながら置いて行かれているのは気になるところでもある。

画像集#026のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
画像集#027のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた

 グラフ9,10の「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)は,このクラスのGPUにとって描画負荷が低すぎるため,標準設定ではCPUがボトルネックが生じ,スコアの頭打ちが発生してしまった。そこで「Ultra設定」に絞って見ていくが,Radeon勢におけるR9 280の立ち位置は3DMarkとよく似ている。
 GTX 760に対して互角以上に立ち回れているのは,240GB/s対192.3GB/sというメモリバス帯域幅の違いが,グラフィックスメモリ負荷を高めてあるSkyrimにおいて大きく出ている結果と見ていいだろう。

画像集#028のサムネイル/「Radeon R9 280」をテスト。この夏3万円で買えるミドルクラスGPUの価値を探ってみた
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 いま指摘したメモリバス帯域幅の優位性は,グラフ11,12にテスト結果を示した「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)でも確認できる。R9 280は,「標準品質(デスクトップPC)」でGTX 760といい勝負を演じている一方,よりグラフィックスメモリ負荷が高くなる「最高品質」では5〜9%程度という有意なスコア差を付けているのだ。
 ただ,最高品質の2560×1600ドットでは,スクウェア・エニックスの示す指針における最上評価「非常に快適」のラインであるスコア7000を,R9 280Xがクリアしているのに対し,R9 280 OCもあと一歩届かないのも見て取れる。GPUの規模が小さくなっている影響は,こんなところからも確認できよう。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 「GRID 2」のテスト結果がグラフ13,14で,ここでは標準設定か「ULTRA設定」かを問わず,1920×1080ドットではR9 280がGTX 760に遅れを取る一方,2560×1600ドットでは逆転する。1920×1080ドットではR9 280 OCがR9 280Xにあと一歩のところまで迫っている点も押さえておきたい。

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PowerTune with Boost効果で消費電力は増大

R9 280 GAMING 3GのGPUクーラーは実に優秀だ


 前述のとおり,R9 280では,補助電源コネクタが6ピン+8ピンという構成になり,HD 7950 wBから変わっている。となると,消費電力の増大は容易に想像できるわけだが,実際のところはどの程度なのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力で比較してみたい。
 テストにあたっては,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,アプリケーションごとの実行時としている。

 その結果がグラフ14で,アイドル時の消費電力はR9 280Xと大差ないが,HD 7950 wBやGTX 760と比べると高め。もちろん,今回用いているR9 280はMSIオリジナルカードで,HD 7950 wBはAMDのリファレンスカードという違いがあるので,横並びの比較には向かないが,R9 280のアイドル時における消費電力が多少高いとは言えるかもしれない。なお,アイドル状態が続いたときにディスプレイ出力が無効化されるよう設定した場合,R9 280搭載システム全体の消費電力は75Wまで下がることを確認している。

 一方のアプリケーション実行時は,カードデザインの違いを考慮しても「R9 280の消費電力はHD 7950 wBより明らか高い」と断言できる結果になった。スコア差は実に11〜44W。より高いクロックで安定的に動作する影響は意外と大きいわけである。

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 3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,両時点におけるGPU温度をGPU-Zから取得したものがグラフ15だ。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いたときの結果となる。

 それぞれGPUクーラーが異なるうえ,温度の取得,あるいはファン回転数の制御方法もや温度センシング法も別々なので,横並びの比較にあまり意味はない。そのためここではR9 280 GAMING 3GのGPUクーラーがどの程度の冷却性能を有しているのかを見るに留めるが,R9 280 OCすら高負荷時に70℃で留めているあたり,なかなか優秀と述べていい。
 PowerTune with Boostの効果が高く,より高い性能を発揮できて,消費電力も上がっているのは,R9 280 GAMING 3Gが搭載するクーラーの能力によるものということを,あらためて確認できたわけである。

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 気になるクーラーの動作音だが,毎度毎度筆者の主観であることを断ったうえで述べると,静音性はかなり高い印象だ。少なくとも,HD 7950 wBのリファレンスカードと比べて明らかに静かで,静音性を重視するユーザーでも満足いくレベルと評していいのではなかろうか。


3万円未満の税込価格ならアリ

GTX 760対抗として意味のある存在だ


R9 280 GAMING 3Gの製品ボックス
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 以上,消費電力的な懸念がないわけではないものの,R9 280の立ち位置は,R9 280Xの下位モデルとして,順当なものになっているといえるだろう。このクラスのGPUはテスト次第で勝ったり負けたりが常ながら,総合的にはGTX 760と互角以上に立ち回っている点もグッドだ。

 比較対象の実勢価格を見てみると,R9 280X搭載カードは,一部の特価品を除くと同3万4000〜3万8000円程度が相場で,GTX 760カードは同2万6000〜3万円程度だ(※いずれも2014年7月17日現在)。それに対してR9 280カードは同2万8000〜3万3000円程度となっているので,とりあえず税込3万円以下で買えるなら,R9 280はコストパフォーマンス的にアリだと言ってよさそうである。
 とくにR9 280 GAMING 3Gは3万円以下での購入が可能であり,クーラーの能力も高いため,積極的に検討していいのではなかろうか。

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AMDのRadeon R9シリーズ情報ページ

MSIのR9 280 GAMING 3G製品情報ページ

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    Radeon R9 200

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