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SteelSeriesの新型ヘッドセット「Arctis 5」ファーストインプレッション。少なくとも出力品質は同社史上最高だ
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印刷2017/02/24 00:00

テストレポート

SteelSeriesの新型ヘッドセット「Arctis 5」ファーストインプレッション。少なくとも出力品質は同社史上最高だ

Arctis 5
メーカー:SteelSeries
問い合わせ先:問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
実勢価格:1万2500〜1万3900円程度(※2017年2月24日現在)
SteelSeries
 SteelSeriesの新しいゲーマー向けヘッドセットシリーズ「Arctis」(アークティス)に属する3製品「Arctis 7」「Arctis 5」「Arctis 3」が,ついに,2017年2月23日の国内発売日を迎えた。
 採用する40mmスピーカードライバー「S1」と,「エアウィーヴ」素材のイヤーパッド,双方向指向性のマイクといった,音質および装着感を左右する仕様は全モデルで共通としつつ,基本的には接続周りとバーチャルサラウンドサウンド対応周りのみで差別化するという,分かりやすい製品展開が大きな特徴だ。SteelSeriesは,「Arctisでは,エントリーモデルを買おうが,ミドルクラスモデルを買おうが,ハイエンドモデルを買おうが,まったく同じヘッドフォン品質,まったく同じマイク品質,そしてまったく同じクッション素材からなる製品を手に入れられる」とアピールしている(関連記事)。

 今回4Gamerでは,「北米市場では3製品の中で最も人気がある」とSteelSeriesの言うArctis 5,正確を期すと,黒と白の2モデルから黒いほうの「Arctis 5 Black」を発売直前に入手できたので,まずはファーストインプレッション的に,テストできたところまでをお伝えしたいと思う。


まずは3モデルの基本仕様をおさらい


Arctis 5と付属品。本体の右は順番に,USB ChatMix Dial付きのUSBケーブルと,このケーブルと本体をつなぐ「Main Headset Cable」,そしてMain Headset Cableから4極3.5mmミニピンへ変換する「4-Pole 3.5mm Adapter」となる。接続周りは後日,ちゃんとお伝えしたい
SteelSeries
 テストに先立って,3製品の違いを簡単にまとめておくと,今回入手したArctis 5は,USBおよびアナログ接続対応モデルだ。USB接続時は「DTS Headphone:X」ベースのバーチャルサラウンドサウンドに対応し,統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」(以下,Engine 3)から,LEDイルミネーションの設定を行うことができる。また「USB ChatMix Dial」を使うことで,フレンドの音声とそれ以外の音のバランスを調整可能なのも,USB接続時のみのメリットである。
 一方,アナログ接続にあたっては,付属のケーブルを差し替えることにより,4極3.5mm×1のミニピン接続を行えるようになっている。SteelSeriesとしては,PCや据え置き型ゲーム機とはUSBで,モバイル端末とはアナログでというイメージなのだろう。

Arctis 7白モデル(左)と,Arctis 3黒モデル(右)のそれぞれイメージ
SteelSeries SteelSeries
 まだ入手できていないArctis 7とArctis 3だが,前者は基本的に,Arctis 5へ無線接続機能を追加し,LEDイルミネーションを省いたモデルだ。ただし,最上位モデルらしく,ヘッドバンドを支えるアーチの部分が,Arctis 5のプラスチックからアルミ合金に変わっている。また,USB ChatMix Dialの機能はワイヤレス化に伴ってエンクロージャ側へ移動した。
 一方の後者はArctis 5からUSB接続機能を省いたモデルで,そのため,DTS Headphone:XとLEDイルミネーションが無効になり,USB ChatMix Dialも付属しない。ただし,Engine 3側でソフトウェアベースのバーチャルサラウンドサウンドは対応できるとのこと。標準で,4極3.5mmミニピン×1のほかに3極3.5mmミニピン×2でも接続できるようになっている。


装着感と音響にこだわった新世代モデル


SteelSeries
 というわけで,Arctis 5だが,装着してすぐに分かるのは,とにかく装着感が良好だということだ。
 とくに柔らかさは特筆もの。スキーのゴーグルで採用されているのと同じ素材だというヘッドバンドは,それ自体に伸縮性があり,頭部への圧力を分散してくれるため,本体の重量からすると驚くほど重さを感じない。
 また,交換してカスタマイズ可能という仕様を実現するため,長さは両端のマジックテープで調整する仕様だが,全体的にアナログなので,ざっくりした調整で構わないのもいい。

 エアウィーヴを用いたイヤーパッド部のクッションが,びっくりするほど柔らかいのも,特筆すべきポイントの1つだ。それを覆うクッションカバーは布製だが,これはいい意味でややドライな肌触りとなっており,長時間のゲームプレイだと汗でべとべとになる,合皮製カバーのような感じはしなかった。ちくちくすることはなく,肌当たりもよいと言える。

ミニマルなデザインが印象的なイヤーキャップ。妙な凹凸がないシンプルな外観は,これまでのSteelSeries製ヘッドセットと一線を画している。一言でまとめるなら「大人なルックス」だ
SteelSeries SteelSeries

SteelSeries
 これまで筆者はさまざまなヘッドセットをテストしてきて,「快適」とその装着感を表現できる製品はいくつもあったが,「当たりが柔らかく,ふわっとしている」とまで感じたのは,Arctis 5が初めてである。もちろん,その分だけ側圧は弱めなので,左右からしっかり押さえつけられるほうが好みという人には向かないが,なら「側圧が弱すぎて,装着時の下側が肌から浮く」かというとそんなことはなく,きちんと耳を覆ってくれる。
 おそらくArctisの装着感におけるSteelSeriesの開発方針は「ふわっとした感じ」なのだろう。これは長時間のゲームプレイに相当“効く”はずで,実機に触れる機会があれば,まず一度装着してみることを勧めたい。これまでのゲーマー向けヘッドセットとは一線を画すかけ心地を体感できるはずだ。


「高品質なホームオーディオヘッドフォン」のような音がするArctis 5


テストに用いるダミーヘッドは「Type2700Pro」のカスタム版。Type2700Proが搭載するマイク「C417PP」で集音し,それを業務用である+4dBの信号レベルでRME製オーディオインタフェース「Fireface UCX」へ入力し,Fireface UCXと接続したMac Pro 2013上のAvid製ソフトウェア「Pro Tools Software」(Version 12.7)で録音のうえ,Waves Audio製アナライザ「PAZ Analyzer」でグラフ化するわけだ。詳細は本文にある2つのリンク先を参照してほしい
SteelSeries
 今回はファーストインプレッションということで,スケジュールの都合から,2chステレオの出力品質のみ検証することになる。遅延とサラウンドサウンド出力,マイク入力については,後日掲載予定のフルレビューを待ってもらえればと思う。

 4Gamerのヘッドフォン出力テストでは,ダミーヘッドを用いた測定と筆者の耳による試聴を行っている。ダミーヘッドによる測定法はいずれ別記事にまとめるつもりだが,現時点における詳細はヘッドセット46製品一斉検証記事,そして「G231 Prodigy Gaming Headset」テストレポートにある説明を参照してもらえれば幸いだ。

カスタムプリセットを選択すると,5バンドイコライザを任意に調整できる
SteelSeries
 さて,まずは周波数特性の波形から確認していくわけだが,Arctis 5はUSB接続とアナログ接続に対応するので,両方をチェックすることになる。USB接続時はEngine 3の「イコライザー」から,5バンドイコライザを自由にカスタマイズできる「カスタム」以外に,標準となる「フラット」,そして「パフォーマンス」「イマージョン」「エンターテインメント」「ミュージック」「ボイス」から切り換えられるので,今回はカスタムを除く全プリセットをチェックしてみたい。
 それに先だって,“素”の出力を確認すべく,「Sound Blaster ZxR」の外付けデバイス「ACM」(Audio Control Module)とアナログ接続した状態を検証する,という流れになる。

Engine 3からプリセットを切り換えたところ。上段左からフラット,パフォーマンス,イマージョン。下段は左からエンターテインメント,ミュージック,ボイスだ
SteelSeries SteelSeries SteelSeries
SteelSeries SteelSeries SteelSeries

使用している信号は同じなのだが,今回,アナログ接続時(上)とUSB接続時(下)では出力レベルに相応の違いが出た。音量レベルが異なるので,それぞれに適した音量レベルのリファレンス波形を用意したわけだ
SteelSeries
SteelSeries
 以下,波形のグラフと,「得られた波形がリファレンスとどれくらい異なるかの差分画像」を並べていきたい。後者は4Gamer独自ツールによりリファレンスと測定結果の差分を取った結果で,リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。
 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

 というわけでアナログ接続時からだが,周波数特性は,1.5kHzあたりが谷になる,分かりやすいドンシャリ傾向だ。差分を取ってみると,12kHzより下の帯域ではほとんど±7dB程度に収まっており,大きな乖離は生じていない。つまり,「リファレンス波形との違いは小さいものの,確実に軽いドンシャリ波形を形成している」わけで,ここがミソである。
 ヘッドセットやヘッドフォンの場合,単純にフラットへ近づけただけだと,たいていの場合はつまらない,あるいは“ぬるい”音になってしまう。そのため,ホームオーディオ製品のメーカーは少しずつ色を付けるのだが,Arctis 5の波形からはまさにそうした「意図的な味付け」が感じられる。

 ゲーマー向けヘッドセットの場合,「どう見てもハードウェアの問題」で特定の周波数が落ち込んでいたり,低域がむやみに大きくなっていたりすることが多いのだが,Arctis 5の波形には,きちんと制御されている印象がある。
 なお,左右のバランス差は約1dB程度なので,左右の音量差問題は生じていないという理解でいいだろう。

1.5kHz付近に谷があるのは本文で指摘したとおり。低域は60〜100Hz付近,プレゼンスとも呼ばれる中高域では4kHzにピークがある。12kHz付近から上では,ゆるやかに落ち込んでいく
SteelSeries SteelSeries

 続いては,USB接続,かつEngine 3側のイコライザを標準のフラットにした状態の周波数特性だが,下の波形を見てもらうと分かるように,出力レベルが全体的に8dBほど下がっている以外は,非常によく似ている。

出力レベルを除くと,びっくりするくらいアナログ接続時と周波数特性が近い。ただ,完璧に同じわけではなく,200Hz以下の低周波が低く,18kHzくらいから上の落ち込みもちょっと大きいため,結果としてアナログ接続時と比べるとややすっきりした音質傾向になる。ただ,アナログ接続時のほうが若干ドンシャリ感が増すのは,出力に使っているサウンドデバイスがSound Blaster ZxRだからではないか,という気もしている
SteelSeries SteelSeries

 先ほど述べたとおり,USB接続時はEngine 3経由でイコライザプリセットを適用できるため,以下,プリセットを適用したときの周波数特性も掲載しておこう。
 総じて言えることは,プリセットによるイコライザ設定の実用性が高いということだ。よくある,極端すぎて使えない設定はないので,購入したら気楽にいろいろ試してみるといい。

パフォーマンスプリセット選択時。上で示したイコライザ設定だとやや低弱かつかなり高強なのだが,実際には「少し高域が強くなった程度」に聞こえる。全体的にイコライザのかかり方は控えめだ
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イマージョン(immersion,没入感)プリセット選択時。60〜100Hz付近の山と,中高域のいわゆるプレゼンスを強くしているが,かかり方は控えめなので,聞きやすい
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エンターテインメントプリセット選択時。低域と高域の出力が等しい,分かりやすいドンシャリだ。耳に来るプレゼンスより高い高域を強調しているため,音を聞き取りやすい。なお,ここで左右の出力は2dBほど異なっているが,これは,高域のイコライザ処理が入ると,PAZ Analyzerがそれを感知するためだ。ほかのイコライザ設定プリセットと同じく,音量差は気にならなかった
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ミュージックプリセット選択時。ドンシャリから重低域を少し抑えたプリセットであり,USB接続時に重低域ではなく低域が足りないという場合は,こちらを選ぶといい。これも実用的だ。ここも左右でdB値の違いがやや大きいものの,その理由はエンターテインメントプリセット選択時と同じで,やはり音量差は気にならない
SteelSeries SteelSeries
ボイスプリセット選択時。VoIPなどにいい設定,ということなのだろう。このプリセットだと,声がもこもこしたり,何を言っているか分かりづらい原因となる帯域をごっそり削るので,「いい音」にはならないが,ボイスチャット相手が(低品質なマイクを使っているときに)話している内容を聞き取りやすくなる
SteelSeries SteelSeries

 さて,実際にiTunesで楽曲を聴いてみたが,得られたのは,アナログ接続,USB接続とも,何と言うか,「ホームオーディオの音」である。それも,世間一般で言う「価格がやや高め」――つまり実勢価格で1万5000〜3万円くらい――の,いい音だと定評があるホームオーディオ用ヘッドフォンの音が鳴っているのだ。しかも,没個性なものではなく,軽いドンシャリで,低域と高域のバランスがよい,Arctis 5ならではの音になっている。

 とくに印象的だったのは,歪み感がまったくないことだ。歪みがないため,軽いドンシャリなのに,中域の解像度は恐ろしく高い。中域をしっかり出すのは難しいようで,中域が充実しているゲーマー向けヘッドセットにはなかなか出会えていないのだが,Arctis 5はその点で非常に完成度が高い。中域の解像感では間違いなく歴代トップクラスだ。

SteelSeries
 超高域は16kHz以上で丸まっているものの,その丸まり方のバランスもよいため,耳に届く量は必要十分。結果として,ステレオの分離感は非常に高く,「音源が移動すると,そこに“耳が行く”」という感じになる。ゲーム用途において,このステレオの分離感(separation,セパレーション)は重要なので,Arctis 5を導入する理由の1つになると思う。
 最後にとても重要な点として付け加えておくと,Arctis 5は,おそらくスピーカードライバー自体の駆動力が高く,そのため,アナログ,USBと接続形態を問わず,音量は十分に大きい。USB接続型ヘッドセットの場合,電源供給が足りず,音量が小さくなるということもままあるのだが,Arctis 5でその心配は無用だ。
 ちなみに筆者は比較的大きめの音量を好むのだが,USB接続時でシステムボリュームは66,アナログ接続時は45〜55で,十分な音量が得られていた。


SteelSeries起死回生の一撃か


 あくまで筆者の経験に基づく見解だが,ゲーマー向け,とくにPCゲーマー向けヘッドセットの市場は,SteelSeriesとRazerの2強時代が続いた後,最近はLogitech G(日本ではLogicool G)とSennheiser Communicationsの2強時代へ切り替わったと認識している。日本市場において,と前置きすれば,Logitech G/Logicool Gの1強時代と言ってもいいくらいだ。
 はっきり言えば,SteelSeriesの存在感は相対的に低下の一途を辿っており,少なくともここ数年にわたって,パンチの効いたヘッドセット製品は1つも出ていなかった。

SteelSeries
 それだけに,新体制となった同社から,「すべてのテストを行えたわけではないが,少なくとも出力品質はSteelSeries史上最高」と言い切れるヘッドセットが出てきたことは,素直に歓迎したい。テストを終えるどころか,まだ筆者のところには届いてすらいないArctis 7とArctis 3も,出力周りのスペックが同じとされる以上,音質面では大いに期待していいだろう。SteelSeriesという社名になる前から同社製品をテストしてきた人間の一人として,Arctisシリーズの登場を喜びたい。

 また,他社との比較においても,Arctis 5のステレオ出力品質は,最近急激にレベルが上がってきているゲーマー向けヘッドセットの中で間違いなくトップクラスである。しかも,装着感は極めて良好なうえ,SteelSeriesが「スカンジナビアンデザイン」と呼ぶミニマルな外観は,外出時にスマートフォンとつないで持ち出しても違和感のない,よいものだ。

 繰り返すが,まだすべてのテストを終えたわけではない。遅延状況やマイクのテスト結果次第で,評価は変わる可能性がある。なので,最終評価は後日掲載予定のレビューを待ってほしいと思うが,ただ,出力品質は本物だ。発売に合わせて“特攻”する予定の人は参考にしてほしい。

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SteelSeriesのヘッドセット製品情報ページ

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