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「G603」が採用する光学センサー「HERO」は,独自開発の完全新作だった。Logicool GのChris Pate氏に,新型マウスの秘密を聞く
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印刷2017/09/20 00:00

インタビュー

「G603」が採用する光学センサー「HERO」は,独自開発の完全新作だった。Logicool GのChris Pate氏に,新型マウスの秘密を聞く

 2017年8月31日に,Logitech International(日本ではロジクール)のゲーマー向け製品ブランドであるLogitech G(日本ではLogicool G)は,ワイヤレスマウスの新製品「G603 LIGHTSPEED Wireless Gaming Mouse」(以下,G603)と,初のワイヤレスメカニカルキーボード「G613 LIGHTSPEED Wireless Mechanical Gaming Keyboard」(以下,G613)を世界市場に向けて発表した。それからほどなく,国内では9月21日に発売予定であることも明らかになっている

G603
Logitech G/Logicool G

Chris Pate氏(Gaming Portfolio Manager, Logitech International)
 日本では,ワイヤレスマウスを充電や電池交換から解放するシステムとして注目を集める「POWERPLAY Wireless Charging System」(以下,POWERPLAY)と同日発売。それゆえ,下位モデル感のする両製品にはそれほどの話題が集まっていない気もするのだが,そんななか,Logitech G/Logicool G部門のナンバー2であるChris Pate(クリス・ペイト)氏に両製品の話を聞く機会を得たのだが,これがトンデモなく興味深かったのである。当初,G603とG613の話はまとめてお伝えするつもりだったのを,あまりにも面白いことから,G603の話題だけでもとにかく発売前にお届けしなければと予定を変えたくらいだ。
 それでも十分過ぎるほど長い話になっているが,ゲーマー向けマウスに興味のある人なら間違いなく刺さる内容だと思うので,ぜひ全部に目を通してもらえればと思う。

 なお,G613の話は,木曜日から東京ゲームショウ2017が開幕してしまうという理由により,最短でも来週後半以降の掲載になるだろう。現実的には再来週ではないか,という気もしている。
 また以下,Pate氏も筆者もインタビュー中,マウスとキーボードの製品名は略称を用いていたことから,記事でもそれに倣う。正式名称は初出時に入れてあるリンク先から確認できるので,気になる人はそちらを見てもらえれば幸いだ。


HEROセンサーは,PixArtとの共同開発ではない


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 Logitech G/Logicool Gはほんの数か月前に,非常に画期的な新製品としてのPOWERPLAYを発表しました。日本だと,そんなPOWERPLAYと,その対応製品としてのワイヤレスマウスが,G603と同時発売になってしまうわけですが,まずはPOWERPLAYと,HEROセンサーを搭載するG603の区別について聞かせてください。

Logitech G/Logicool G
Chris Pate氏:
 ワイヤレスの技術開発においては,2つの相反する要素である性能と効率に対応しなければなりません。性能を高めれば効率が下がり,効率を求めれば性能が下がってしまいます。
 そこで我々が導入したのが,競合のワイヤード製品に匹敵する性能を持つワイヤレス技術としての「LIGHTSPEED」(ライトスピード)であり,もう1つが充電の心配を無用とするPOWERPLAYです。

4Gamer:
 ええ。

Chris Pate氏:
 ですが,POWERPLAYのほうには「価格」という問題があります。POWERPLAY自体が1万8000円(※Pate氏は日本円で説明していた。以下同),G903が2万1000円と,若干高めです。LIGHTSPEEDの素晴らしさをご存じの方には,POWERPLAYシステムはパワフルで素晴らしいものなのですが,まだワイヤレスの性能を100%信じ切ってもらえていない人に「これ最高ですよ。4万円です」と言っても,そこに飛びついてくれるかというと難しいでしょう。
 そこで開発したのがG603であり,HEROセンサーということになります。

Logitech G/Logicool G

4Gamer:
 つまり,HEROセンサーを採用するG603は,十分なワイヤレス性能を持ち,ケーブルを使った充電の煩わしさからユーザーを解放し,それでいて安価というところにターゲットを置いた製品ということですか。

Chris Pate氏:
 そうです。
 少しセンサーの話をさせていただくと,我々はゲーム用途を前提としたセンサーを開発するとき,最低限の指標を22個ほど置いています。これをクリアできなければ「高性能」とは言えない,という指標です。

4Gamer:
 22個もありますか。かなりの数ですね。

Chris Pate氏:
 そうですね。ただ,22個の中でもとくに重要なのは正確さ(Accuracy)と最高速(Max Speed),スムージング(Smoothing),リップル(Ripple)で,この4つはゲーマーが知覚できるものです。

Pate氏の挙げる「とくに重要な4要素」
Logitech G/Logicool G

4Gamer:
 正確さというのは,いわゆる「加速」(Acceleration)のことですか。

Chris Pate氏:
 そう呼ぶユーザーもいますね。これはマウスを動かす速度に関係なく,画面上でカーソルが同じ距離を動くという能力を示すものです。
 このテストは,さまざまな表面の素材と,すべてのDPI設定値,そしてトラッキング速度で実際に行います。そして結果の平均値を取るのではなく,どの条件でも最低指標を下回らないようにするわけです。

4Gamer:
 次の最高速というのは,カタログスペックで最大トラッキング速度として公開されるものですね。

Chris Pate氏:
 ええ。マウスをどれだ速く動かしてもトラッキングを止めない。止まらないということです。
 我々のテストでは,(ローセンシ設定のプレイヤーが多いことで知られる)「Counter-Strike: Global Offensive」のプロゲーマーでも,最大速度は1秒あたり5mでした。そこで私達は,それを大きく超えた7.6m/s,インチ換算で300IPS(Inches Per Second)を最低ラインとして設定し,「これを超えなければならない」としています。

4Gamer:
 5m/sだとだいたい200IPSですから,その1.5倍を最低ラインにしたと。

Chris Pate氏:
 そういうことです。
 そしてスムージングとリップルは相関する要素で,まずリップルはセンサーを用いたトラッキングの特性で,「(ユーザーが)直線を描いているつもりでも,カーソルは少し上下に変動したり歪んだりすることがある」というものです。

4Gamer:
 そのリップルを解決するための技術がスムージングで,得てして「直線補正」としてゲーマーから嫌われるやつですよね。

Chris Pate氏:
 そうです。多くのセンサーはこのリップルをマスキングするためにスムージングを使いますが,スムージングの問題として,計算の遅延が生じるということがあります。比較的新しい世代のゲーム用センサーだと1ms程度ですが,2msとか4ms,(マウス業界全体を見渡すと)なかには60msなどという大変な問題となる遅延を持つセンサーもありますね。

 今回我々は,「リップルをマスキングするため」のスムージングを新しいセンサーの設計には入れていません。
 ですので当然,リップルも低くなければなりません。リップルは1000分の1のトラッキング偏差(※トラッキング量に対するリップル量が1000分の1を超えないということ)でなければならないのです。

4Gamer:
 以前,「マウスのセンサーでは,直線補正を完全には無効化できない。設定ツールから体感レベルで直線補正を感じさせないようにすることはできるが,センサーの仕様上,ゼロにはできないのだ」という話を聞いたことがあります。これはPixArt Imaging(以下,PixArt)製センサーを使っている限り逃れられない宿命のようなものだという認識だったのですが,直線補正は完全にカットできるんですか。

Chris Pate氏:
 その点についてお答えすると,HEROセンサーは,PixArtとの共同開発ではありません。別のベンダーを使っています。

Logitech G/Logicool G
4Gamer:
 なんと……!(※しばし言葉を失う)
 それならそういう設計ができても不思議ではありませんね。ちなみにどこのメーカーなのかは聞いてもよかったりしますか。

Chris Pate氏:
 残念ですが,それは私には許可されていません。ただ,「(Logitech本社のマウス開発部門がある)スイスで製造されている」とはお伝えできます。

4Gamer:
 あとで,「G900の頃は製品ボックスにもPixArtのセンサー型番を入れていたくらいだったのに,なんでまた今回オリジナルのセンサー名を付けたんですか」って聞こうと思っていたんですが,それなら納得です。そもそもPixArtとの共同開発ではなかったのか……。いや,驚きました。
 ちなみに,もう両手両足では足りないくらい質問を受けているとは思いますが(笑),HEROというのはどういう意味なのでしょう。

Chris Pate氏:
 (笑)。「High Efficiency Rating Optical」の頭文字を取ったものです。(High Efficiency Rating Opticalに)「Sensor」も付けて“HEROS”でもよかったのですが,今回はHEROとしました。

4Gamer:
 驚いていて質問を忘れそうですが,話を元に戻しましょう。HEROという新開発のセンサーでLogitech G/Logicool Gは,4つの要素に最低ラインを決めたということですね。

Chris Pate氏:
 ええ。というわけでちょっとこれをご覧ください(※と言って下のスライドを示す)。これは(最近の)センサー設計の歴史と経緯を示しています。一部,競合の(採用するセンサーの)名前が入っていますが,これは批判のためではなく,歴史と,考え方の違いを示すためです。
 見ていただくと分かりますが,2012年頃は多くの会社が「ADNS-9800」(以下,9800)ベースでセンサー開発を行っていました。

Pate氏の示した「ゲーマー向けマウスセンサーの歴史」
Logitech G/Logicool G

4Gamer:
 懐かしいですねえ9800。あの頃はレーザーセンサー全盛でした。

Chris Pate氏:
 人気の理由はいくつかありましたが,(一般ユーザーの目を惹く)DPI値が最大8200と非常に高く,(ゲーム用途で重要な)最大トラッキング速度は200IPSあったということ,そしていま仰ったように,当時は「やっぱりレーザーは光学よりいいよね」的な空気があったということですね。
 そういう事情もあって,我々も9800系の道を追求しました。ただ,「他社とは違うものをやってみたい」として,ほぼ同じタイミングで我々は「ゲーマー向けマウスの本格的なワイヤレス化」に向けた検討を始めています。それが「G602」などで採用した「M000」「M010」です(※)。

※G602の搭載するセンサーには,PixArtにセンサー関連資産を売却する前のAvago Technologiesのロゴと,「AM000 N1311T」という刻印があった。当時の4Gamerはこの正体を掴めなかったが(関連記事),そういうことだったようだ。

 そこから知見を得て,さらに9800へのフィードバックから展開,改善を図るべくPixArtと共同開発したのが「PMW3366」(以下,3366)です。

 面白いのは,我々が3366を発売するのと同じ頃に,9800から派生した光学センサー「SDNS-3988」「ADNS-3310」(以下順に,3988,3310)が出てきていることですね。もちろんイルミネーション(※おそらく周辺光量のこと)や(レーザーか光学かという)センサーフォーマットは異なりますが,解体して顕微鏡で見ると,3988と3310は9800と同じシリコンです。

4Gamer:
 そうだったんですか! 3988と3310がどういう経緯で出てきたのかずっと疑問だったんですが,心の底からすっきりしました。そうか,それでこの2つはPixArt型番と旧型番の2つを持ってたのか……。

Chris Pate氏:
 3988も3310も合理的で妥当な,いいセンサーではあると思います。ただ,我々はセンサーの選定にあたり,「前の世代のものをどう改善するか」ではなく,特定の目標を設定して,それをどうすれば達成できるかというスタンスでやっていますので,このタイミングでは(新規開発の)3366という,もっといいセンサーを選んだということになります。

4Gamer:
 なるほど。いまでは3366の派生センサーも出てきていますが,そのタイミングで,いまお話しいただいた哲学に基づいてHEROを投入してきたということなんですね。

Chris Pate氏:
 ええ。そこで話は冒頭に戻るのですが,冒頭でお話しした性能と効率という観点でセンサーを並べたものがこのグラフです(※と言って下のスライドを示す)。このグラフが(HERO開発における)我々の考えのベースですね。

Pate氏の示したグラフ。縦軸が性能,横軸が効率を示す
Logitech G/Logicool G

 まず我々はM000系で,できる限りの効率を追求しました。性能は9800と比べて若干上がりました。具体的には正確性が上がっています。
 最高速はそれほど上がりませんでしたが,ゲーマーにとっては正確性の向上のほうが最高速よりも重要な事項であるという判断から,このセンサーを搭載するG602を開発したわけです。

4Gamer:
 一方で左上を見ると,9800系の改良版となる3310,3988の上に,3366と,その派生形である「PMW3389」および「TrueMove3」(※グラフ表記は「TM3」)が並んでいますね。

Chris Pate氏:
 ええ。9800の派生センサーは,性能が大きく改善する一方で,効率面での進歩はあまりありませんでした。そこで我々はM000系の開発で得た効率性を盛り込み,3366へ投入したわけです。結果として(「G900」や「G403WL」,その後継としての)「G903」「G703」を投入できたということですね。

 ですがワイヤレスを考えると,本当に必要なのは,グラフの右上の位置に到達するセンサーです。

4Gamer:
 HEROは,そこに到達した,と。

Chris Pate氏:
 そういうことです。ただ実測値だと,実のところ,HEROの効率はこのグラフを右に突き抜けます(笑)。グラフに収まらないほどの能力というのが真の姿です。HEROの電力効率は3366の10倍で,しかもそれによる性能の低下はありません。

HERO光学センサーの立ち位置。ただし実際には「右に突き抜ける」(Pate氏)
Logitech G/Logicool G


HEROセンサーでLogitech G/Logicool Gは,すべての要素を再設計


4Gamer:
 完全に新規開発のHEROだからこそこれを実現できたということですか。

Chris Pate氏:
 まさにそのとおりで,HEROに至るまで,我々はゼロからセンサーとその周辺設計を再考し,最適化された性能と電力効率を生み出しました。

 まずは光学系のお話からさせてください。
 先ほどもお話ししたとおり,9800は,悪いシリコンではありません。ただ,根本的な問題として,レーザーはセンサーを扱いづらくしてしまいます。
 レーザーポインターってありますよね。

4Gamer:
 図などを指し示すときに使うアレですよね。

Chris Pate氏:
 ええ。レーザーポインターを壁に当てると,いわゆる「ボイリング効果」(boiling effect)というものが出てきます。レーザーが壁に当たった1点だけではなく,少し踊っているような,あるいは起点が動いているような見え方になるわけです。

4Gamer:
 確かになりますね。

Chris Pate氏:
 センサーも同じです。
 このボイリング効果によってセンサーは,物理的に低い速度帯において,センサーから物理的な速度を得るのが難しくなります。「センサーが得ているデータ」がレーザー強度の変化によるもの,つまり移動によってもたらされたものなのか,単にボイリング効果によって分散しただけなのかを,見極められなくなるのです。
 高速移動時は(サーフェスの移動によるレーザー強度変化のほうが大きいため)問題ないものが,低速のときには問題になります。そのためレーザーセンサーというのものには,原理上,速度に応じて性能のバラツキが出てしまいます。

 レーザーにはレーザーで,多様なサーフェスに対応できるメリットもあるんですけどね。

 ともあれ,この9800で得られた知見から,我々は,HEROセンサーの光学機構「SPECULAR OPTIC SYSTEM」(スペキュラオプティックシステム)において,(バラツキを抑えるための)イルミネーションシステムを赤外線LEDで実装しています。これによって低消費電力かつ,十分な(センサー)周辺光量を得ることができるようになっています。

SPECULAR OPTIC SYSTEMのイメージ
Logitech G/Logicool G

4Gamer:
 SPECULAR OPTIC SYSTEMではどこからどこまでがLogitech G/Logicool Gの設計ですか?

Chris Pate氏:
 我々がシステムのメカニズム全体を設計しています。社内の光学エンジニアがシミュレートし,3Dでデザインし……といった感じです。
 LEDユニット自体は我々の設計ではありませんが,非常に緻密に指示を出しており,それに基づいてベンダーが設計しています。

 SPECULAR OPTIC SYSTEMは,HEROの機能をサポートする形でできあがっているのもポイントと言えるでしょう。光学設計は非常に難解で,私も完璧には理解できていませんが。

4Gamer:
 気になったのは「光学系の最適化で消費電力が下がる」という部分なのですが,どのようにして実現しているのでしょうか。

Chris Pate氏:
 従来型ですと,光をある角度で(サーフェスへ)照射し,その反射光を(センサーが)真上から見る構造になっていました。サーフェス上の凹凸を(光と影で)強調し,その特徴や影の動き方を見ていたわけです。

4Gamer:
 はい。

Chris Pate氏:
 それに対してSPECULAR OPTIC SYSTEMですと,光をサーフェスに照射したうえで,「IMAGING LENS」(の中央)を通します。このやり方により,HEROセンサー側で光の反射を受ける部分の面積を,照射されたサーフェス上の面積と同じにするわけです。これにより,サーフェスの特徴を,これまでとは違う形で見ることになるのです。
 そのため,従来よりも消費電力の低いLEDで済みます。より低消費電力の赤外線LEDで済むようになり,結果として消費電力を低減できているというわけです。

4Gamer:
 よく分からないのが,「サーフェス上に照射される光の面積と,センサー側で受ける反射の面積を1対1にすると,より消費電力の低いLEDで済む」という部分なのですが。

Chris Pate氏:
 光学設計の専門家ではないので,私の理解している限りでの回答になりますが,(面積を1対1の関係にするという)設計自体は真新しいものではありません。SPECULAR OPTIC SYSTEMで重要なのは,設計が新しいのではなく,この設計で十分なトラッキング性能と十分な省電力性を両立し,HEROという高性能なセンサーに最適化させたという部分です。
 先ほど赤外線LEDの低消費電力化というお話もしましたが,これも目新しいものではありません。「画期的な新システム」ではなく,個々のパーツを限りなく最適化したものと理解してください。

4Gamer:
 分かりました。ただ,以前3366の説明をいただいたときには,光学系の説明はなかったと記憶しています。部分ではなく全体について「3366時代とはどう変わったのか」を聞かせてもらえませんか。

Chris Pate氏:
 その部分については調べてからお答えしたいと思います。少なくとも3366と組み合わせるレンズは我々ではなくメーカー(=PixArt)が設計したと,ほぼ確信を持っているのですが,100%ではないので。

4Gamer:
 お願いします。
 さて,光学設計でも消費電力の低減は実現していますが,“本丸”は当然,HEROセンサーのほうですよね。

Chris Pate氏:
 そのとおりです。HEROセンサーにおいて我々は,すべての要素を再設計しています。
 一番重要なのは,「すべてが始まる」アナログフロントエンドです。トラッキングにおいて,すべてのデータを補足するのはここだからですね。「Garbage in, Garbage out」(入るものがゴミなら,出てくるものもゴミだ)という言葉がありますが,そのとおり,ここで悪いデータが入ってくると,システム全体のデータが悪いものになってしまいます。

HEROセンサーの模式図
Logitech G/Logicool G

4Gamer:
 模式図にはピクセルアレイ(PIXEL ARRAY)も見えますが,これがいわゆるセンサーと呼ばれるものの本体ですよね?

Chris Pate氏:
 そうですね。
 アナログフロントエンドの最初のステージがピクセルアレイで,ピクセル(※ここでは光学センサーのこと)を16個束ねたセンサーモジュールとなっています。

 我々はクルマのエンジンと同様に,一番基本的なところから設計をスタートさせました。つまりは個々のピクセルです。クルマのエンジンで言えばピストンから始めた,みたいなものです。
 ピストンであれば,「シリンダーの容量は」「質量は」「構造は」と,それぞれを望まれる水準までもっていきますよね。それと同じようなアプローチで,我々は個々のピクセルを設計していったわけです。

4Gamer:
 はい。

Chris Pate氏:
 ピクセルは,光子を電子に変換し,読み出すセンサーです。
 光子を捕捉するためには,アクティブエリアができる限り大きいことが理想です。しかし,アクティブエリアが全体を占めることはできません。というのは,ピクセルエリアの中で,「それぞれのピクセルの情報をやりとりする部分」が必要になるからです。

 アクティブエリアの大きさに制限がありますから,ピクセルが1フレームあたりで読み取れる光子は,2〜3くらいです。なので,個々のピクセルの出力は,増幅器を通して,十分に読み取れるレベルの電流へと変換しなければなりません。
 この増幅器は,1秒あたり1万7000フレーム(=1万7000fps)という仕様に対応するため,可能な限り高速でありながら,ノイズ量は少ない必要があります。ノイズが多いと,トラッキングの精度が非常に悪くなるからです。

 もちろん,個々のピクセルも十分に高速でなければなりません。ピクセルは光子によって励起(Excitation)した電子を読み取っています。そのため,次のフレームを読み取るためにはいったんピクセルをリセットしなければなりません。リセットを行わないと,前のフレームのデータと混ざってしまい,ゴミのような情報にしかならないのです。

4Gamer:
 ああ,仰っている内容が見えてきました。つまりそういう個々の要素を,ピストンよろしく個別に最適化したということですね。

Chris Pate氏:
 そういうことです。これらピクセルや増幅器といった個々の要素を設計して,それをまとめてピクセルアレイを構成しているわけです。ピクセルアレイの出力をロジックバックエンドで読み取って,前のフレームと比較することにより,トラッキングの情報を得ているわけですね。
 具体的には,「マウスがどの方向に進んでいるのか」ということを,フレームごとのイメージを比較して得ているわけです。

 ちなみに,HEROの素晴らしい点としては,このロジックバックエンドを我々が完全にカスタマイズできることが挙げられます。
 (3366を含む)従来のセンサーですと,アルゴリズムが完全に保護されていて,かつROMに焼き付けられていますが,HEROではアルゴリズム自体を自由に変えることができるのです。

4Gamer:
 おお,それは素晴らしい。
 それってつまりSROM(Shadow ROM,ファームウェア自体はROMに格納しておき,動作時にはROMからDRAMに転送して動作させること)のことだと思いますが,SROMってPixArtの専権事項でしたよね。
 それこそLogitech G/Logicool GのようなビッグブランドでもSROMには手出しができず,せいぜい多少のカスタマイズができる程度だと聞いたことがあります。

Chris Pate氏:
 そのとおりで,固定のアルゴリズム(がDRAMに展開された時点で,それ)に対して変数を挿入することはできましたが,アルゴリズムそのものは変更できませんでした。
 ですので,将来のサポートという観点に立ったとき,アルゴリズムまで変えられるHEROは,非常に面白い存在だと言うことができるでしょう。

4Gamer:
 本当に面白いですよね。極論,他社が画期的な新要素を投入してきたときに,後からHEROへ同じ機能を追加できる可能性すらあります(笑)。

Chris Pate氏:
 (笑)。
 すでにトラッキングアルゴリズム自体はいいものができていて,G603として提供することもできていると思いますが,たとえば将来新しいサーフェスが登場したとか,何か画期的なトラッキング方法が見つかったとかいうことがあれば,センサーそのものをアップデートできます。

4Gamer:
 分かりました。
 ええとすいません,各ブロックの話の途中でしたね。

Chris Pate氏:
 続けましょう。
 HEROにおいて最も消費電力を削減できたのはA/D変換のところです。
 アナログフロントエンドは,ピクセルの光の量に応じたアナログ電圧を出力します。一方のロジックバックエンドが扱うのは(デジタル的な)0と1のレポートに過ぎません。ですので,これら2つがやり取りをするためにはA/D変換が必要なわけです。

4Gamer:
 ですね。

Chris Pate氏:
 従来,このA/D変換にはより多くの消費電力が必要でした。というのも,マウスにおいて常時稼働していたからです。

4Gamer:
 ということは……。

Chris Pate氏:
 先ほど1万7000fpsだというお話をしましたが,HEROのA/D変換ブロックは,フレーム間で適宜スリープに入る設計になっています。常時,全開の1万7000fpsなのではなく,間でスリープステートに入っているのです。
 ここだけで相当な消費電力低減を図れています。

4Gamer:
 分かります。常時稼働だったのがスリープに入るようになれば,その影響は大きいでしょう。

Chris Pate氏:
 次はボルテージレギュレータ(Voltage Regulator)。これは(HEROセンサーを構成する)すべてのコンポーネントが「適正な電圧をもらえる」のを担保するものです。目を見張る何か,ではありませんが,適切な電力を供給するのにはとても重要ですね。
 次に発信器(Oscillator,オシレータ)です。これも何か素晴らしい技術が編み出された結果というわけではありませんが,「あまり電力を使いすぎないこと」を担保するものです。オシレータでシリコンの製造上のバラつきに対応するため作動速度(※おそらくセンサーからのデータの読み取り速度)を調整することもできるようになっています。
 最後はメモリとインタフェースですね。メモリはフレームのデータを一時的に保存し,次のフレームと比較するためにに使います。

 インタフェースも目新しいものではありませんが,バックエンドからの情報をSPI(Serial Peripheral Interface,IC間のクロック同期式通信に使われる,業界標準のシリアルインタフェース)経由でマイクロコントローラへ送ることになります。

4Gamer:
 いやあ,本当に面白いですね。ここまで詳細にセンサーの解説をいただいたことは記憶にないので,とても勉強になります。
 ところで一点確認なのですが,HEROというセンサーで,「3366的な要素」(※3366から引き継いだ仕様や技術のこと)はどれくらい入っているのでしょうか。

Chris Pate氏:
 PixArtとの共同開発ではありませんから,回答としては「センサーの各ブロックに,PixArtの技術は使っていません」というものになります。
 もちろん,PixArtのセンサーを長年使ってきていますから,「知識」としては駆使していますけれども,IP(Intellectual Property,知的財産権)は侵害していません。

 非常にお話しづらいところではありますが,何か「すでにあるもの」を持ってきてよりよくしたのではなく,優れたセンサーというコンセプトを持ってきて,そのコンセプトを実現すべく,各ブロックをできる限り最適化したイメージです。

4Gamer:
 センサーについては最後にあと1つだけ。
 HEROセンサーが登場したタイミングですが,なぜいまだったのでしょうか。以前スイスの研究所を見せていただいたとき,「これほどの設備があるなら,センサーくらい自前で作れるんじゃないか」と思っていたら,やっぱり出てきたというのが正直なところだったりもしていまして。

Chris Pate氏:
 「出し惜しみしているのでは?」と思われているのだとすれば,それは我々の技術力を褒められていることと同義ですので,とても幸いに思います。
 ただ,理解していただきたいのは,我々のスタンスが「できたものはできる限り早く出す」ということです。先のタイミングでは,LIGHTSPEEDという技術が完成したので,とにかくそれをゲーマーの方々に享受いただきたかった。それが今回はHEROセンサーである,ということなのです。

 我々の内部では,複数の技術開発を,常に並行して走らせています。HEROセンサーも2年ほど開発を進め,このタイミングで製品を出荷する準備が整ったという話なんですよ。

 LIGHTSPEEDとHEROは,まったく異なるメンバー達が,まったく異なる経路でそれぞれ開発しています。技術が結実したら,その時点で最新の製品にまず盛り込んで,そして適切なタイミングでそれらを組み合わせていくことになります。


G603が持つ,切り換えられる動作モードと,天板カバーの秘密


4Gamer:
 センサーの話がひととおり済んだところで,それ以外の部分についても聞かせてください。
 G603は「HI」と「LO」の2モードがあって,前者では連続動作時間が最大500時間,後者では最大18か月だという説明があります。また,リリースですと,HIモードではレポートレートが1ms,LOモードでは8msといった感じの記載もありますが,125Hzに落としただけで18か月のバッテリー駆動時間を実現できるとも思えないので,もっと大幅に動作モードは切り替わっているはずです。この部分はどういう挙動になっているのでしょうか。

G603の底面。写真向かって左に「HI」「LO」(と電源オフ)を切り換えるスライドスイッチがある。詳細は後段で出てくるが,右はLIGHTSPEEDとBluetoothの切り換えボタンだ
Logitech G/Logicool G

Chris Pate氏:
 回答としてお伝えできることは2つで,まず,HIモードで,センサーは最大限の性能を発揮しますが,Logicoolゲームソフトウェア(日本以外ではLogitech Gaming Software,以下 LGS)を使えばレポートレートは最小8msの設定も可能です(※「レポートレート」と言うときは8msではなく「125Hz」とするのが正しいような気もするが,ここはPate氏の表現に倣う。以下同)。1msで固定というわけではありません。
 もう1つは,LOモードにするということは,ただレポートレートを下げるだけでなく,さまざまなものが(内部的に)切り替わることを意味します。

4Gamer:
 おおむね想像していたとおりのご回答です。

Chris Pate氏:
 そこに付け加えると,LOモードとBluetoothモードに切り替わると,HEROセンサーは内部的に「オフィスマウスモード」に切り変わります。想像いただけると思いますが,オフィスマウスモードに切り替わった状態のHEROセンサーは,もはやゲーム用マウスの性能を持ちません。ビジネスユースでは問題のないレベルにまで性能を下げて,消費電力も大幅に下げるわけです。

4Gamer:
 つまりG603は,1つのマウスの中に,ゲーマー向けマウスと一般ユーザー向けマウスの2つがあって切り換えられるってことですね。

Chris Pate氏:
 そうです。なので,「なぜゲーム用途ではゲーマー向けマウスを選ぶべきなのか」を考えたり観察したりするのに面白いかもしれません。

4Gamer:
 確かに。

Chris Pate氏:
 真のゲーマー向けマウスを使ったことがない人だと,「なぜわざわざゲームのためにマウスを買うのか。理解できない」と思うこともあるでしょう。トラッキングがスムーズであるとか,操作に対する応答性が段違いであるとか,「ゲーマー向けマウスってのはこういうものなんだよ」という部分は,同じ物理形状でテストしないと,人間,バイアスがかかってしまうので,なかなか分かりにくいものなのです。
 なので今回は,意図的に動作モードを2つ,Bluetoothも入れると3つ用意しています。HIとそれ以外の動作モードでは,操作体験がまったく異なるものになりますね。

 もちろん,多くのユーザーは「ゲーム用にこのマウス,それ以外ではあのマウス」といった使い分けをしていませんから,できる限り電池を長持ちさせながら2つの異なる用途で使えるように,消費電力を用途別に最適化したというのはあります。
 あるいはゲーム配信者が,ゲームPCではLIGHTSPEEDでつなぎつつ,ストリーミングをモニタリングする端末ではBluetooth接続にして,1台の入力デバイスでまかなうというのもあるでしょう。

4Gamer:
 すごくよく分かりますが,だとすると,底面のスイッチというのは不便じゃないですか? いちいちマウスを持ち上げてスイッチを切り換えるというのは面倒な気がします。「LGSで設定しておけば,さくっとキーボードショートカットで切り換えられる」くらいのほうが便利だと思うのですけれども。

Chris Pate氏:
 的を射ている質問だと思います。ただ,私の経験上,ユーザーはこの手の機能を物理的にコントロールしたいと思う傾向が強いんですよ。「いまどちらのモードに入っているか」を,実際に底面のスイッチで確認できることを好むというわけです。
 ご指摘のように,大半のゲーマーにとってこのスイッチ機構がよい決定でなかったというフィードバック結果が得られた場合,それを教訓にして,将来の製品で調整したいと考えています。

4Gamer:
 そういう事情だったんですね。

Chris Pate氏:
 あとは仕様上のお話として,LGSがBluetooth接続をサポートしていない(から,LIGHTSPEEDとBluetoothモードの間で相互切り替えは物理的に行えない)というのがあります。

4Gamer:
 あ,そうなんですか。それだとスイッチ式のほうが確かにいいですね。
 ちょっと試したときに,LGSのウインドウを開いた状態だと接続をLIGHTSPEEDからBluetoothに切り換えられなかったので,自分の環境が悪いのか,仕様なのかお尋ねしようと思っていたんですが,合点がいきました。

 バッテリー駆動時間の話に戻りますが,HIモードのままバッテリー駆動時間を延ばす裏技的なものはあったりしますか? たとえば「HIモードでレポートレートを125Hzに落とす」とか。

Chris Pate氏:
 マイクロコントローラのレポート頻度が落ちるだけで,フレームレートなどセンサーの内部設定は高いままですから,仮に125Hzまで落としても(バッテリー駆動時間は)ほとんど変わらないですね。
 追加でお伝えしておくと,500時間というのは,「DPI設定1万2000でレポートレート1ms」という条件における実測値です。G602の場合,レポートレート2msで250時間でした。G602のユーザーは体感的にご存じだと思いますが,単3型乾電池2個で電池寿命はおおむね2〜3か月でした。ですから現実的に見て,G603(のHIモード)なら単3型乾電池2個で4〜6か月の駆動時間は見込めると思います。

4Gamer:
 それはイメージしやすいですね。
 一方,Bluetoothモードの連続動作時間は公式には出ていなかったと思いますが,先ほどの説明からすると,LOモードと同じだという理解でいいでしょうか。

Chris Pate氏:
 はい。正確に言うと数時間の違いはありますが,「18か月」の中の数時間ですから,無視できるレベルでしょう。

天板を外した状態のG603。単3型乾電池は最大2個搭載可能で,どちらか片方にだけ取り付けた状態でも利用できる
Logitech G/Logicool G
4Gamer:
 バッテリー駆動時間に関して続けると,G602から引き続き,乾電池は1本だけでも使えますね。1本だけとなると,どうしても重心が偏ってしまうのが不安だったりもするのですが,G602の仕様を引き継いだ理由を聞かせてください。

Chris Pate氏:
 ゲーマーが,自分に合う,望みどおりのフィーリングを得られるようにするために,柔軟性を確保したということです。まず,懸念いただいている重心ですが,左と右,どちらか片方にだけ乾電池を挿入した場合のズレはわずかに4mmです。プレイフィールを大きく損なうほどのズレだとは考えていません。

4Gamer:
 その程度なんですね。

Chris Pate氏:
 ですので,重量とバッテリー駆動時間のバランスを取れるようにすることを優先したわけです。
 たとえば単3型乾電池と一口に言っても,リチウム電池は最も軽くて14gですが,アルカリ電池は21〜22g程度ですし,「エネループ」系のニッケルマンガン充電池だと25〜28g程度あります。ですので,G603を極限まで軽くしたければリチウム電池1本にすることで,総重量を103gにまで下げることができます。重くしたければエネループ2本差しで150gオーバーです。この柔軟性が重要なのです。

4Gamer:
 Logitech G/Logicool G伝統の,重量調整機構も兼ねているわけですか。

Pate氏が自身の使っているG603から取り出して見せてくれたUSBポート付き単3型充電池。けっこう便利そうだが……
Logitech G/Logicool G
Chris Pate氏:
 あと,あくまでも選択肢を提示するだけだと断ってからお伝えすると,北米市場では「USBケーブルで充電できる単3型充電池」というのがあるんですよ。30分くらいで充電できまして,私はいまG602でこれを使っています。

4Gamer:
 (まじまじと見ながら)これ,ロジクールさんでオプションとして売れないんですか(笑)。

Chris Pate氏:
 安全性を担保できないんですよ(笑)。なのであくまでも「1つの情報」としてだけ受け取ってください。選択肢があるということです。

天板は左右メインボタンと一体化している
Logitech G/Logicool G
4Gamer:
 さて,バッテリーの交換システム周りでは,「ここまで天板を大きく開ける必要があったのか」という疑問もあります。
 G603はG703やG403WLと基本的には同形状ですが,G703とG403WLで左右メインボタンはセパレート型でした。ですが,天板がバッテリー交換システムのカバーを兼ねているG603ではワンピース型となりました。当然,ボタンの押下感が変わってくると思いますが,セパレート型を維持しなかった理由はなんでしょうか。

Chris Pate氏:
 ご指摘のとおり,セパレート型のボタンデザインには,長い時間をかけて,成果物としてのマウスを多く出してきました。ですが今回は新しいデザインを採用したということです。実際,G603のほうがすっきりして見えていいと言う人もいますし。

4Gamer:
 ですがゲーム用途だと気になるのは見栄えよりも押下感です。ストロークやテンションはどれくらい異なるというデータをお持ちですか。

Chris Pate氏:
 もちろんワンピース型ということで,まったく同じにはなりませんが,ストロークやテンションの公差はG603とG703で同じです。また,金属製のテンションシステムも,新設計のものを天板側に入れてあります。これにより剛性を確保しているわけです。
 ただ,新作のG603で採用したから,ワンピース型がベストだというわけではありません。(セパレート型のG703と)両方を提供できるのがベターだと考えています。

インタビューを受けるPate氏の前に置いてあるG603に注目。天板がカスタムデザインになっている
Logitech G/Logicool G
4Gamer:
 ところで,お使いのG603って,カバーが特別仕様ですよね。それはそういうバリエーションモデルの展開を考えているということですか。たとえばプロゲームチームや特定のゲームタイトルとのコラボとか。

Chris Pate氏:
 可能性はあります。こういうクールなことができるのは,ワンピース型天板を採用したことによる副次的な効果ですね。

4Gamer:
 天板周りについてはもう1つ。これは確認ですが,LEDイルミネーションがないのは,バッテリー駆動時間を確保するためということでいいでしょうか。

Chris Pate氏:
 それが最大の理由です。ただ,DPIのインジケータが天板部,動作モードのインジケータが底面部にはありますね。
 LEDが有効な状態では,センサーよりも多くの消費電力を使います。ということで,電池寿命を最適化するために,この仕様を採用した次第です。

4Gamer:
 LIGHTSPEEDのことも聞かせてください。G900以来のワイヤレス技術ですが,ここは基本的に同じですか。それとも,何か消費電力を下げる仕掛けが入っているのでしょうか。

Chris Pate氏:
 G603とG903,G703は同じアルゴリズムを採用しています。ただ,チップセットはG603だけ少し異なります。
 G603だけ異なるのは,G603にはワイヤードモードがないためですね。結果としてG603のほうが若干高速です。

4Gamer:
 あ,速いんですね。

Chris Pate氏:
 しかし違いは1mm/s未満ですよ。「より速い,よりよい」と言っても,ここまでくると,プレイヤーレベルで認識できる話ではもはやありません。G900のとき,確かに我々はワイヤードマウスよりも速いという表現を使いましたが,ならワイヤードは遅くてダメかというと,そんなことを言っている人はいませんよね。

4Gamer:
 ええ。

Chris Pate氏:
 なので,分かる範囲の話ではないところで改良が入っている,ということです。アルゴリズムも,たとえばG900やG403WLとは若干異なりますが,信号の信頼性というところで(G603とG903,G703の第2世代グループと,G900およびG403WLからなる第1世代グループとの間に)意味のある違いはありません。

 どの世代においても,私達はできる限りの改善を図るべく努力をしています。それが実際の操作において意味があるかどうかに関わらずです。実際我々は,一般的なオフィスと比べて150倍のノイズがある環境で,12時間ぶっ通しで「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」をプレイするテストを行っていますが,LIGHTSPEED対応マウスは(世代を問わず)それでも大丈夫でした。

4Gamer:
 最後に価格の話です。北米市場では69.99ドル(税別),日本市場では8750円(税別)と,G603の直販価格はワイヤードのG403と同じですよね。これだとブランド内で競合してしまうのではないかと思うのですが,この点についての見解を聞かせてください。

Chris Pate氏:
 確かに競合はあるかもしれません。ただ,ワイヤードのマウスが欲しい,ワイヤレスはイヤだというのであればG403になりますし,ワイヤレスが欲しいならG603ですから,そういう意味では(選択にあたって価格で迷うということはあまりなく,ユーザーにとって)分かりやすいと思いますよ。

 また,G403には側面にあるラバーシートがG603にはないとか,ご指摘のとおりG403はセパレート型ボタンなのに対してG603はワンピース型であるとか,G403が搭載するセンサーは実績ある3366であるのに対してG603はまったく新しいHEROであるとかいった違いはあります。すでにお話ししたとおり,センサー性能自体は3366とHEROでほぼ同じですが,「でも違うでしょ。自分はPixArtのセンサーがいい」と信じている人もいるでしょう。
 皆さんの主義,嗜好が異なるので,我々としては選択肢を提示しているのです。


(※インタビュー,構成:佐々山薫郁,構成協力:米田 聡)

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