連載 : Silent Hunter 4 鉄底海峡冬景色


Silent Hunter 4 鉄底海峡冬景色

第4回:マリアナ沖海戦と空母「大鳳」

 

 潜水艦シム「Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific」で,太平洋戦争の主要な海戦に参加していく本連載,第3回でサイパン島へ向かう輸送船団を待ち伏せしたあとは,必然的に1944年6月のマリアナ沖海戦である。
 サイパン島を中心とするマリアナ諸島は「絶対国防圏」の主要な一画であり,失えば日本本土が戦略爆撃に晒される位置にある。その奪取を目指す米軍は,正規空母エセックス級を中心とした15隻もの空母を動員して,マリアナ諸島方面に来襲する。対する日本軍も,戦列に加わったばかりの装甲空母「大鳳」,歴戦の「翔鶴」「瑞鶴」を中心に9隻の空母を含む総力出撃で,これを迎え撃つ。

 日本の作戦計画が事前に米軍に洩れた海軍乙事件,真珠湾攻撃以来のZ旗掲揚,艦載機の航続距離で勝る日本側が試みた「アウトレンジ戦法」,米軍が用いたVT信管の有効性など有名な逸話の多い海戦だが,結果は日本軍の大敗。空母「大鳳」「翔鶴」はともに米軍潜水艦に雷撃されて,あえない最期を遂げている。サイパン島は失陥し,日本海軍の水上航空戦力は,400機近い損害を出して文字どおり壊滅した。

 

史実どおり,正規空母が大漁すぎ

 

太平洋戦争も押し詰まったこの時期,本来なら戦艦なんてどうでもよいはず。まずは正規空母を狙ってみる

 そんなわけで,マリアナ沖海戦を扱った「Battle of Philippines Sea」ミッションである。ミッションブリーフィングにおける勝利条件は二つ,「Sink Japanese flagship Yamato」(日本側旗艦である大和を撃沈せよ)と「Sink Japanese capital ships」(日本の主要戦闘艦(複数)を撃沈せよ)だ。ミッションをスタートさせると,この二つは「Sink Flagship Yamato」(旗艦「大和」を撃沈せよ)および「Engage enemy fleet」(敵艦隊と交戦せよ)と言い換えられる。
 Primary Objectivesが複数並んだ場合,片方を満たせばよいのか,両方をこなす必要があるかは,とくに説明がない。だが,マリアナ沖海戦の意義を考えるなら,空母を狙うのが先決事項であろう。というわけで「capital ships」(主要戦闘艦)に正規空母が入っていることを祈りつつ,敵艦隊に向けて進撃する。

 大型戦闘艦は普通,周囲に配した小型高速艦艇によって護衛されている。空母機動部隊の場合,それは空母(群)を中心にした輪形陣となるのがセオリーといえよう。ミッションスタート時点で,水平線の彼方に見えるのは駆逐艦群であるが,これらが構成するピケットラインをくぐり抜けて,艦隊中央に斬り込む必要がある。
 そこで前回同様に,深度を200フィートまで取り,無音航走を命じつつ前進3分の1速で直進する。ソナーマンに頻繁に指示を出し,敵艦の動静に耳を澄ませるのはもちろんだ。

 

観測用潜望鏡で捉えた,敵護衛艦群の一部 敵護衛艦の左を通過するタイミングでの聴音結果

 

 護衛艦艇が一定の陣形を保ったまま進んでいると仮定した場合,自艦との距離が詰まるにつれて,個々の敵艦からのスクリュー音同士は,角度が開いていく。それを時々刻々追いつつ,また敵艦との推定距離レベル(ソナーマンにとっては音の大きさ,だが)の変動を追っていき,敵艦が頭上を通過したのを確認したあとに潜望鏡深度まで上昇する。念のため,倍率は低いがより細くて見つかりにくい観測用潜望鏡で,駆逐艦に後方から追跡されていないかをチェックしつつ,主力艦がいるはずの前方を見る。

 

先行する翔鶴級空母と,大鳳級空母を潜望鏡で捉えたところ

 いましたとも。翔鶴級,大鳳級,翔鶴級の順で,なぜか一列縦隊を組んだ正規空母群が。敵艦の針路に合わせて左70度の回頭を行ったあと,深々度潜航中に指示しておいた高速モード/馳走深度11mのMk-14魚雷を,前から順に2本ずつお見舞いする。今回も乗艦はガトー級なので,前部発射管は6門。こうした稼ぎ時には実に頼りになる発射管数だ。
 結果,それぞれの艦に2本,1本,1本の命中をマークして,空母「翔鶴」「大鳳」を撃沈,「瑞鶴」を大破させた。翔鶴級空母2隻は,本当のところどっちがどっちだか分からないのだが,ここはヒストリカルに沈んだほうを「翔鶴」と見なしておこう。

 

 

 この時点で「Engage enemy fleet」(敵艦隊と交戦せよ)の目標を満たしたが,ミッションは終了しない。どうやら勝利条件は,両方の目標を満たすことのようである。

 

雷撃を受けて傾斜する翔鶴級空母と,目標達成を示す画面。しかし,ミッションはこれでは終わらない

 

「大和」迎撃は潜航中の針路がカギ

 

空母襲撃時に捉えた「大和」の艦影。しかし,7000フィートの彼方では,魚雷の命中はおぼつかない

 そうと決まったからには,戦艦「大和」を沈めにいくしかない。実を言うと「大和」は,先ほど狙った空母群のさらに向こうに見えていたのだが,自艦との距離は7000フィート以上あって,魚雷を高速モードに設定すると,馳走限界距離を超える。さりとて低速モードで発射したのでは,測定/照準誤差がより大きく影響し,ほとんど命中を見込めないのだ。
 「大和」を狙うには,ミッション開始時点からまったく異なるアプローチが必要になる。敵護衛艦群を視認したあと,それを突破するために,200フィート以下まで潜航して進撃するところまでは同様なのだが,ソナーマンからの報告を,より細かく読み解く必要があるのだ。
 現状とソナーマンの報告を注意深く勘案すると,スクリュー音は大きく3種類に分類できるはずだ。

  • 護衛艦群
  • 敵艦隊主力
  • 敵艦隊主力に随伴するタンカー

 1.の護衛艦群は近距離にいるので,聞こえてくるスクリュー音の方向が聴音のたびに比較的大きく変わる。それに対して2と3は,遠くにいるので聞こえてくる方位があまり大きく変化しないはずである。
 これを基準にして,艦隊主力のスクリュー音に見当をつける。すると,自艦正面よりやや右舷寄りから敵艦隊主力が,随伴タンカーがそれよりもさらに右から聞こえ,それらが左舷方向に移動していくのが分かるはずだ。
 こちらが敵護衛艦群の下をくぐり抜けるには,それなりの時間がかかる。現時点で敵主力を自艦正面に捉えていたのでは,潜望鏡深度を取れたときにはすでに,敵主力は左舷はるかに過ぎ去ったあと,ということになる。

 

敵の針路を割り出し,2700フィートの距離で捉えた「大和」。画面右下の自艦針路が,「SW」(南西)でなく「S」(南)になっているのがポイントだ

 そこで,比較的早期に左舷方向に舵をきって進むというのが,話のキモだ。問題は護衛艦群をくぐり抜けるタイミングということになるが,例えば左に向かう敵艦隊と自艦が直交する状態から左舷に60度回頭した場合,30度/60度/90度の三角定規と同じように,敵艦の針路と交差するまでの距離は,2倍になる計算だ。
 敵護衛艦群との距離は,最初に潜望鏡で捉えられるように4000から5000フィートといったところだろう。その場合,8000から1万フィート進んだところで,敵護衛艦の航路の下を通過する計算になる。1フィートは0.3048m,1ノットは1.852km/hなのでそれぞれ代入し,かつ,敵艦隊と自艦が正確に直交していたわけではないし,敵の速度と針路が一定とは限らない……といった推測を加えて,余裕を持たせる形で潜望鏡深度に戻れば,敵護衛艦群を回避しつつ,本隊に斬り込めるはずである。

 

艦が巨大なため,4,5本の魚雷を見舞う必要あり。ただし,被雷による速度低下が小さいためか,魚雷は最初の照準のままで続々と命中する

 「大和」との距離を6000フィート未満まで詰め,互いの針路が直交するよう調整すれば,魚雷を高速モードで発射でき,ほぼ必中が見込めるだろう。とはいえ,そこはさすがに史上最大の戦艦「大和」,魚雷を4,5本叩き込まないとダメなので,心してほしい。
 こうして「大和」を沈めると,ミッション目標「Sink Flagship Yamato」(旗艦「大和」を撃沈せよ)が満たされるのはもちろんなのだが,「Engage enemy fleet」(敵艦隊と交戦せよ)も,自動的に達成される。6万3200tの巨艦ともなれば,それはそうだよなと思う一方で,「それなら,勝利条件は大和だけでいいじゃん!」というツッコミを禁じ得ないのも事実である。

 

 そんなわけで,史実的勝利条件とゲーム的勝利条件がみごとに乖離したミッションではあるが,「大和」を仕留めるための思考過程は実に潜水艦戦らしく,このゲームのプレイ全般に応用できるものだ。速度を上げすぎて敵に見つかったり,敵護衛艦の直近で深度を戻してしまったりしつつも,いろいろ試してみてほしい。

 

「大和」さえ沈めれば,このミッションは完了である。二つめの目標に意味がない気もするが,史実に対する配慮の産物かもしれない 飛行甲板にまで防御装甲を施した,期待の新鋭空母だった「大鳳」。だが史実では,潜水艦の雷撃でガソリン庫に亀裂が入り,爆発して沈んだ

 

 

■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
食玩やフィギュアの収集家である,さるスタッフから,何やら怪しげな箱を渡されたGuevarista。「メ,メインタンクブロー!?」と言いつつ開けてみると,タカラトミーの「海上自衛隊潜水艦史」なる1/700の潜水艦フィギュアであった。潜水艦の連載を執筆しているGuevaristaへの,ささやかなプレゼントだったのだが,「縮尺はよいとして,涙滴型の艦は今一つだなあ」というGuevaristaの感想に,「何言ってるのかさっぱり分からないけど,喜んではもらえなかったようだ」と,すっかりしょげかえるスタッフであった。
タイトル Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 イーフロンティア
発売日 2007/04/27 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP/Vista,CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:1GB以上[2GB以上推奨],HDD空き容量:6GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9およびPixcel Shader 2.0 対応製品,グラフィックスメモリ:128MB以上

(C)2007 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Silent Hunter, Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific, Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.


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http://www.4gamer.net/weekly/silenthunter4/004/silenthunter4_004.shtml



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