連載 : Silent Hunter 4 鉄底海峡冬景色


Silent Hunter 4 鉄底海峡冬景色

第3回:サイパン島増援と輸送船団

 

 潜水艦シム「Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific」で,米軍潜水艦に乗っては著名な戦場にお邪魔するこの連載,今回は少し趣向を変えて(?)潜水艦戦の本領である船団襲撃に挑む。MISSION 7「TOKYO-SAIPAN CONVOY,1944」がその舞台だ。
 1944年3月12日,サイパン島の守備に就く陸軍第43師団を載せた輸送船団が,東京湾を出発した。未知の軽巡洋艦を旗艦とする護衛艦群と合流したというこの船団を,伊豆諸島近海で襲撃するのが今回の任務だ。
 ええと,なんだか設定の内訳を語るのが恒例化してきた気もするが,この船団自体は架空のものである。サイパン島の守備を命じられた第43師団の輸送は二次にわたって行われ,その出発はいずれも1944年5月。そもそも第43師団への動員下令が4月7日であるから,3月12日に動かすことは初めから不可能だ。まあ細部はともかく,史実のシチュエーションにおおむね沿ったシナリオということなのである。

 

 話を史実に戻すと,師団主力を載せた第一次輸送隊はほぼ無事にサイパンに到着したのに対して,第二次輸送隊は大きな損害を出した。第43師団所属の第118連隊を載せて5月30日に館山を出発した第二次輸送隊は,米潜水艦「ピンタード」に襲撃され,7隻の輸送船のうち5隻が沈没,1隻が脱落して,サイパンに到着したのはわずか1隻。4000名あまりの人員のうち,上陸できたのが約1000名,うち負傷者が約600名という状況だった。……要するに,その再演が求められているわけだ。

 

前衛をかわして船団に斬り込むノウハウ

 

 そんな,必要以上に細かい背景説明に続いて,早速ミッションに入ろう。プレイヤーが伊豆諸島の青ヶ島沖で輸送船団と接触するのは16時。それも,いきなり「敵艦視認」のダイアログが開き,攻撃する/従前の行動を継続する/潜望鏡深度をとる,の3択からミッション開幕である。
 連載第1回,第2回のシチュエーションと異なり,今回は船団攻撃がテーマである。急いで潜望鏡深度をとってから確認したところ,船団本隊はいま見えている艦よりずっと後ろにいて,駆逐艦数隻が前路掃討グループを作っているようだ。この前衛に見つからないようやり過ごして,前衛と本隊の間に割って入り,進んでくる本隊に直接斬り込むのが船団襲撃のセオリーといえよう。

 

今回は浮上した状況で敵艦を発見したところからミッションスタート。ただしこの段階では,前衛の護衛艦しか捉えられない

 

試しに護衛艦に近づいてみると,こんな感じ。艦橋と煙突の形状から見るに,特型駆逐艦である

 そんなわけで,200フィートくらいまで潜って電動機を停止,無音潜航を命じてソナー員からの報告を追っていく。直近の戦闘艦からのスクリュー音が,右舷方向で90度以上,左舷方向で270度以下の方位から聞こえてくるようになれば,前衛はこちらの頭上を通過したと判断できる。このあたりは実に潜水艦らしい,三次元性を利用した戦術である。
 ソナー員に逐次報告を求め,敵が頭上を過ぎたと判断できたのが,16時30分あたり。無音航走のまま潜望鏡深度まで上昇して,観測用潜望鏡で周囲を確認する。そして,接近してくる商船を攻撃用潜望鏡で,じっくりと狙う。この当時の対潜艦艇が備えるパッシブ/アクティブソナーは,艦首方向にしか機能しない。前衛の後ろに潜り込んでしまえば,そうそう探知されないのだ。

 

じっくり狙って,予備魚雷も叩き込む

 

刻々と近づいてくる敵船団。列の間に割り込んで,前後の発射管から魚雷を放つべく,艦の向きを調整する

 うまい具合に商船団は,我が艦を挟み込む形で通過する。今回扱う潜水艦はかのガトー級で,前部6門,後部4門と実に頼もしい雷装の持ち主である。そこで,無音航走のまま前進3分の1速で90度に近い回頭を行い,前部と後部の発射管でなるべく多くの敵船を狙える体勢をとる。
 ざっと見たところで,敵商船は10隻前後。大型船には複数本を見舞う必要があるだろうが,なるべく多くの船を狙うべく,先頭の船が自艦前方/後方の軸線あたりに来るのを待って,各船に向けて魚雷を放つ。

 

 発射タイミングと距離に応じて各所で命中が生じるなか,総員戦闘配置を命じつつ,無音航走を解除する。予備魚雷を急いで装填するためだ。ただし電動機は止めたままで深度変更も行わない。敵護衛艦の様子をしばらく見ていたところ,なぜか活動性が非常に低かったのがその理由だ。船団への随行を優先しているのか,救助活動を再現しているのかは分からないが,増速してこちらに向かってくる様子も見られない。

 

敵商船を,当たるを幸いに撃沈していく。兵員を多数収容できる大型客船には,複数の魚雷を見舞って確実に仕留める

 

水中聴音のためか,速度を落とした海防艦も餌食に。艦型が小さいので,魚雷1発で文字どおり粉砕される

 護衛艦艇は阿賀野級軽巡洋艦を旗艦として,峯風級駆逐艦と特型(吹雪級)駆逐艦が合わせて4隻程度,海防艦(駆潜艇)が5〜6隻程度と,船団規模の割には充実している。海防艦を船団に貼り付けて,高速な軽巡洋艦と駆逐艦できっちりハンター/キラー戦術をとられたらかなりマズいのだが,なぜだか敵はそうしてこない。
 そこで潜望鏡深度のまま警戒を厳にしつつ,魚雷の装填が完了するたびに最寄りの商船に叩き込んでいく。予備魚雷をすべて使い果たすまでに,兵員を多数収容した(と思われる)大型徴用客船を含む6隻の商船と2隻の護衛艦艇,合計3万1000t余りを海中に葬った。史実における「ピンタード」に遜色のない戦果だろう。

 

ミッション達成条件は,船団全滅?

 

前部発射管の予備魚雷はあと2本。最後から2番めの魚雷を装填しているところ

 魚雷を使い果たしたら,あとは離脱を試みるばかりだ。潜望鏡で見ていると,あまり適切な戦術行動をとっていないように見える敵護衛艦だが,こちらが深深度に潜ると,とたんにやたら精度の高い爆雷攻撃が始まる。
 海中で聞いていると,だいたい投下爆雷の2連めくらいには早くも何らかの損害を被るので,いろいろ納得がいかない気もするが,とにかく前回も述べたとおり,離脱はなかなかの難事である。
 爆雷で被った浸水を止め,ポンプを修理して,といった応急処置をとりつつ,どうにかこうにか敵船団の後方に距離をとるまでには,すっかり夜になっていた。

 

爆雷攻撃を受ける段になると,このゲームにおける敵護衛艦は突如優秀な働きを見せるのが,なかなか厄介なところ。耐圧隔壁を修理して浸水を止めたら,ポンプの修理にかかる

 

航海日誌で,戦果を確認してみる。商船6隻,戦闘艦2隻で3万tを超える戦果なのだが,なぜかミッション完了にならない

 それはさておき,今回のミッションでどうにも困ったことがある。それは,ミッションの達成条件がさっぱり分からないことだ。ミッションブリーフィングの段階では「Inflict Heavy losses on the convoy heading for Saipan」(サイパンに向かう船団に重篤な損害を与えよ)とあり,ゲーム操作パネル(Game Control Panel)から確認すると,いつものように「Engage Japanese convoy heading for Saipan」(サイパンへ向かう日本の船団と交戦せよ)とあるだけだ。

 

 逃した商船は,貨物/人員混載船1隻と,小型タンカー2隻程度のはずで,十分に重篤な損害を与えたつもりなのだが,ミッションについては最後まで「Incomplete」のままだった。試しに護衛艦隊旗艦である阿賀野級軽巡洋艦を含めて3万tオーバーの戦果を挙げてみても,事態は変化しなかった。
 東京湾からサイパン島までは,貨物船でわずか1週間の行程であるから,随行するタンカーを沈めても,船団の運行そのものに影響が出るとは思えない。“Heavy losses”どころか,船団を壊滅させるくらいの勢いでないとダメなのだろうか?

 

 

 護衛艦の挙動を含めて,いろいろ謎が多いこのミッションだが,前衛突破後の時間は,手動照準の練習にはもってこいのシチュエーションと見た。また,夕闇をどう味方に付けるかも,船団攻撃には重要な論点といえよう。ミッションの達成とはまた別に,そうした練習にも応用できそうである。

 

せっかく戦争末期のガトー級潜水艦なので,離脱後にレーダーの動作試験をしてみる。敵船団からは十分な距離がとれたようだ

 

敵船員の働きぶり二態。この船団の商船は小口径ながら砲を積んでいるので,水上砲撃を仕掛けようとすると面倒なことに。また,沈没した船からはカッターやゴムボートで船員が脱出する。ここは日本近海だし,無事に救出されるとよいが

 

 

■■Guevarista(ホビーベース級)■■
4Gamerのサブマリン担当編集者。戦車好きの松本隆一を除き,Guevaristaの軍事ネタにはスタッフの誰もがついていけないことは一部で有名である。先日,それでも共通の話題をなんとか絞りだそうと,潜水艦つながりで「Yellow Submarine」の話を振ってみたら,「そういえば店舗にはしばらく行ってませんね……メインタンクブロー」と,秋葉原のほうを向いてつぶやいていた。お目当てはどの店舗なのか,興味津々である。
タイトル Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 イーフロンティア
発売日 2007/04/27 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP/Vista,CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:1GB以上[2GB以上推奨],HDD空き容量:6GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9およびPixcel Shader 2.0 対応製品,グラフィックスメモリ:128MB以上

(C)2007 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Silent Hunter, Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific, Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.


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http://www.4gamer.net/weekly/silenthunter4/003/silenthunter4_003.shtml



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