前作までは,6人組のパーティを編成して,疑似3D(東西南北の4方向のみに移動できる)で構築された街を冒険するスタイルだった。街そのものが迷路になっていて,ところどころにあるダンジョンをクリアしていくという感じだ。バードはキークラスといった扱いで,パーティに一人いれば十分(いなくてもパーティ編成は可能)だった。つまり,準主人公の立場といえる。

オートマッピング機能が搭載されていて,付近の敵はもちろん,目的地(ゴール)も表示されるので迷うことはない
ところが最新作はガラリと生まれ変わっており,バード一人を主人公とする,俯瞰タイプのアクションRPGになっている。
右クリックで移動先を指定(遠くを指定すると走る),左クリックで攻撃(連打で連続技),Spaceバーを押せば剣で敵の攻撃を受け止める。もちろん,楽器を弾いてペットを召喚できる仕様は健在だ。
ペットへの指示は,カーソルキーで行う(↑/↓/→/←が,それぞれ攻撃/退避/追跡/停止に対応)。本作では,パーティを組めない分ペットの存在が重要で,ペットをオトリにしたり,うまく連携して敵と戦ったりする必要が出てくる。楽器は移動しながらも弾けるので,逃げながらペットを召喚して窮地を脱することもできるのはありがたい。
ちなみに,モンスターがドロップするアイテムは,価値に応じて即時にゴールドに変換される。なかなかユニークなシステムだ。
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キャラクターメイキング。ゲームの難易度を変更すると,ボーナスポイントが変化する。主人公として吟遊詩人のオッサンしか選べないのはシブイくてイイ |
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チャプターIIに向かうには,最初のHoutonの村から出る必要がある。村の外のオープンフィールドは,徘徊するモンスターと接触すると戦闘シーンに切り替わる仕組みで,規定の数を倒せばマップ画面に戻る |

武器屋で購入できるアイテムは少ない。ドロップアイテムは自動ですべて換金されるので,アイテム集めの楽しみは皆無だ
主人公のバードは,モンスターの討伐やクエストの攻略で得た経験値を一定の値まで溜めると,ステータスポイントを獲得できる。それをStrength,Vitality,Luck,Dexterity,Charisma,Rhythmといったステータスに割り振ることで,能力を強化していく。
またスキルも習得でき,Two-Handed Weapons,Dual Wield,Flail,Shield Bash,Shield Charge,Power Shot,Critical Strike,Treasure Hunterという8種類のスキルを習得することで,キャラクターの個性を演出できる。つまり,剣に巧みな吟遊詩人なども育成可能なのだ。
シリーズ従来作の経験者にとって気になるであろうシナリオは,一応オープニングで前作までの流れらしきものが説明されるものの,あまり関係はないようだ。残念ながらUltimaやWizardryとの関連性もない。シナリオの進行はチャプター形式で,“流れ者の吟遊詩人”がお金のために冒険するといった感じである。
エンディングまで遊んでいないのでまだなんともいえないが,こういった普通ぽい主人公も,ロールプレイしやすくてなかなか良い。
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オープニングムービーは,なんだかぼやっとしていて心配になったが,単なる回想シーンだった。本編はキレイなのでご安心を |

序盤でネズミ退治をするが,子ネズミを倒したら,なんと親ネズミが現れて……
2005年末に渡米したときに,急に本作を思い出し,ぜひまた“あの”The Bard's Taleを遊んでみたくなってPCゲームショップに駆け込んだ。しかし実際に遊んでみると,最新作はアクションゲーム化されているなど,従来作の面影はあまりなく,完全に別物だったといえる。
だが,だからといって楽しめなかったわけではない。ゲームに流れる退廃的なムードは,どことなく“あの世界”を感じさせるし,ちょっとユーモラスな会話やまるで某遊園地のアトラクションのように(?)NPCが歌ったりするシーンなどは,今まで以上にバードらしさが強調されたものとなっている。
今のゲーマーの嗜好に合わせて,バードを主人公にしたRPGを作るとこうなるという好例だろう。これらは,オリジナル版を手がけたスタッフやプロデューサーが開発に参加していることも手伝っての結果に違いない。
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ゲーム中にはNPCが歌うシーンも。カラオケのように歌詞の色が変わっていく。まるでディ○ニー映画のよう |
捕らえられた3人の村人を救出するクエスト。レバーの組み合わせ次第では,全員助からないことも。こういったところがシビアなのは,同シリーズらしい |
本作をプレイするに当たっての最大の難関は,英語力だった。本作を遊ぶなら,やはりある程度の英語力があったほうがより楽しめるだろう。英語がトホホな筆者としては,シナリオを100%理解できないのが残念だったのだ。とはいえ,字幕やクエストログを表示できたり,音声と文字でパラメータやスキルなどが説明されたり,オートマップ上に目的地が表示されたりなど,かなりの親切設計であるため,ゲームの進行にはさほど問題がなかった。

ペットと共に敵と戦う。写真のペットは,Thunder Spiderだ。スタン能力を持ったペットなので重宝する
まあシナリオで読ませるタイプのRPGではないので(分かったほうがより面白いだろうが),戦闘を繰り返しながらクエストログを読んでいけば,なんとなく進められる。またセーブポイントも多いことから,問題のある選択肢を選んでしまっても,すぐにやり直せるのはありがたい。英語なんか理解できなくたって,体当たりでなんとかなるものだ。
ちなみに,いつだったか,ローカライズを検討しているメーカーがあるような噂もチラホラと聞いたが,その後音沙汰がないところを見ると,検討だけで終わってしまったのかもしれない。もしくはCD6枚組の大ボリュームだけに,苦戦しているのかもしれない。もしも水面下で進行しているなら,早急にローカライズを進めてもらいたいものだ。なお英語版ではオリジナルのI〜IIIも同梱されているので,それも日本語化してくれると嬉しいなあ。
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序盤で召喚できるペット。ペットによって遠隔攻撃やスタンなど,さまざまな攻撃方法を持っている |
今のところは,日本語版どころか「日本語マニュアル付き英語版」の発売さえ予定されておらず,きっとこのままだと,日本では名を知られることもなく,埋もれてしまうだろう。またもや,ほとんど話題に上ることのない,孤独なタイトルとなってしまうはずだ。
もちろん,初代を遊んだときと同じように,周りでプレイしているヤツなど一人もいない。ゲーム仲間に「面白れーぜ!」と言っても,仕事が忙しいのか,あまり取り合ってくれなかったりする。
そういう意味では孤独感はあるけど,自分にとって面白いものを見つける喜びはやっぱり良いなあと思う。孤独であっても楽しければOK。“自分だけの名作ゲーム”で遊ぶ孤独感ってのは,ぜひ多くの人に味わってもらいたいものだ。いや,決して負け惜しみじゃないですよ。