4Gamer:
今日は,嘉陽愛子さんにあれこれお話を聞いてみたいと思います。
嘉陽愛子さん(以下,嘉陽さん):
はい,よろしくお願いします。
4Gamer:
すでにあちこちで語ってきているとは思うのですが,まずは,歌手という仕事に就こうと思ったいきさつから教えてください。
嘉陽さん:
私は小さい頃から歌うことが凄く好きだったんです。小学校1年生ぐらいの頃は年の近いいとこと,おばあちゃんの家で人形を並べて歌ったりしていました。
4Gamer:
人形を並べて……人形劇団みたいな感じですか?
嘉陽さん:
いえいえいえ(笑),人形をお客さんに見立てて,遊びでライブをやったりしていたんです。
それでですね,ちょうど小学生の頃にはSPEEDさんがブームで……。
4Gamer:
え……。SPEEDが小学生時代!?
嘉陽さん:
は〜い(笑)。それで,お友達と4〜5人でグループを組んで,SPEEDさんのマネっこをして,歌ったり踊ったりしていたんです。
4Gamer:
それを人に見せたりとか?
嘉陽さん:
はい。告知して,チラシを配って,先生にも「どうしてもこの時間,体育館を貸してほしいんです」って頼んで。そうしたら,先生が照明やってくれたりとかして。
4Gamer:
理解のある先生ですねぇ。
嘉陽さん:
はい。そういうことをやってきたんで,歌を歌って何かを伝えるようなことに,凄く憧れがあったんですよ。
4Gamer:
小学生らしい夢ではありますよね。
嘉陽さん:
そうなんですよね。でも,テレビの向こうの世界って,遠いイメージだったので,自分にとってリアルな夢ってわけではなかったんです。何をすれば向こう側に行けるのか,全然知らなかったですし。
でも,中学で出会った友達に,芸能プロダクションに所属している子がいたんです。その子から,「オーディションというものがあるんだよ」と教えてもらって……。
4Gamer:
そこに人生の分岐点が。
嘉陽さん:
そうなんですよねぇ。それじゃあ,オーディションを受けてみよう! と思ったんですけれど,実は人見知りだったりもして。こう,一歩踏み出せなかったんです,長いこと。でも,高校一年生になるときに初めてオーディションを受けたんですね。そこから本格的に,7個ぐらいはオーディションを受けました。
4Gamer:
当時は養成所などに所属するでもなく,オーディション情報誌なんかを見て応募していたんですか?
嘉陽さん:
そうですね。雑誌を見て,これならいいかなぁ? とか,歌が歌えないから違うなぁ,とか。
4Gamer:
そのうちの一つが,モーニング娘。の5期オーディションで最終合宿に残ったというやつですね。
嘉陽さん:
そうですそうです(笑)。
あれも本当にびっくりしたんですよねぇ……。ボイストレーニングもやったことないし,ダンスももちろんやったことないし……。ただ,本当に歌が好きで,オーディションを受けていたっていう感じだったので。
4Gamer:
そりゃ,びっくりしますよね。
嘉陽さん:
結局,デビューのきっかけになったのはavexのオーディションで,まずはavex artist academyという養成所に,半年ぐらい通わせてもらえて。
4Gamer:
それでデビューに至ると……。デビューが決まったときって,どんな気分でした?
嘉陽さん:
なんかこう,デビューだよって言われたときに,実感がなかったんですね。それまでの流れが凄く速かったんで。オーディションを受けて,そこからの半年は自分が今まで経験してないことをやっていたので,一つ一つが新鮮で,ウワーッて駆け抜けた感じで。
4Gamer:
何から何までが新しい経験だと,時が経つのはあっという間ですよね。
嘉陽さん:
そうなんですよ。それまでもブースに入って,ほかのアーティストさんの曲を歌ったりはしていたんです。でも,デビュー曲の仮音をもらったときは,「へ? どうしたらいいんだろう?」みたいな感じでした。とにかく驚きっぱなしで。
もちろん最初は,「わー,嬉しい!」ってなったんですけど,すぐに「どうしよう?」って。でもそれからまたすぐに,「こうしよう!」みたいな感じでしたね。
4Gamer:
プレッシャーはありませんでしたか?
嘉陽さん:
プレッシャー……は,そんなになかったですね。それより,嬉しさが大きかったです。本当に夢が叶うなんて思ってなかったから,一つ一つていねいにがんばろう! って,かなり前向きにスタートしました。
4Gamer:
で,デビュー曲「瞳の中の迷宮」が,2003年12月10日にリリースと。この曲については,ご自身で,犬のスピッツみたいな声って言ってましたよね。
嘉陽さん:
ああ,はい,そうですね(笑)。
実は,自分の声があまり好きではなかったんです。まあ,小さい頃はそこまで言われなかったんですけど,小学校の頃には先生からも,「声優さんのお仕事が向いてるんじゃない?」なんて言われて(笑)。
4Gamer:
いわゆるアニメ声という。
嘉陽さん:
そうなんですよね。ず〜っとそういう風に言われてきたので,やっぱり,コンプレックスがあったんです。CDやラジオで,自分の声を聞いたときに,とても違和感があって。
4Gamer:
自分で聞こえている声と違いますからね。
嘉陽さん:
そうなんですよね! 自分で話してて聞いている声と,ほかの人が聞いている私の声って全然違うじゃないですか。だから悩んだ時期もあったんですけど,でも,これをプラスに変えていこうというか,個性にしていこうという考えになったのも,このお仕事ができたからかな? って思ってます。
4Gamer:
本当に前向きなんですねぇ。
このデビュー曲は,アニメ「ヤミと帽子と本の旅人」のオープニングテーマになったんですよね。
嘉陽さん:
はい,第一回のオンエアのときには,2分前からテレビの前で待っていたんです。でも,見たいんだけど……見たくないような……っていうもどかしさがあったんですよ。だから,始まった瞬間に,「うわーっ!」って思って,一瞬で消しちゃって。
4Gamer:
消しちゃったんですか?
嘉陽さん:
そうなんです。でも記念すべき第一回だしと思って見て……。あのときは,やっぱり嬉しかったですね。
4Gamer:
デビュー曲のリリースだったり,テレビで流れたりっていうとき,お友達なんかに話はしてました?
嘉陽さん:
私,今でもそうなんですけど,自分の仕事を,友達とか家族とかにあんまり見てほしくないんですね。ちょっと恥ずかしくて。
だから自分からは,ほとんど言わないんですけど,やっぱこのご時世,PCがあるじゃないですか。
4Gamer:
ええ,そういうご時世です。
嘉陽さん:
インターネットで調べたりとかしてくれていて,私より詳しいこともあるんですね。「いついつにイベントが〜」とか,「いついつの雑誌に載ってたよね?」とか。「へ? 私知らない!」みたいなことがしょっちゅうあって。
4Gamer:
なんでみんな私のことを私よりも知ってるの? ってところでしょうか。想像つかないなぁ……。
以降,歌手としては順調にリリースを重ね,2004年11月から12月にかけては,「Fantasy」「いえないコトバ」「ring!Ring!!RING!!!」「traveller」と,4週連続リリースなんてものがあったり。
嘉陽さん:
あれも本当にびっくりしましたよ〜。毎週新しいCDがお店に並ぶわけじゃないですか。
4Gamer:
CDが発売されたときなんかは,CDショップに見に行ったりするんですか?
嘉陽さん:
うーん……。CDショップで見たのは……。いつだったかなぁ……。デビューシングルのときも見られなかったんですよね。自分ではどうしても行けなくて。いつ行ったんだろうなぁ……。ちゃんと見に行ったことって,ないかもしれないですね。
4Gamer:
何かのついでに,ちらっと見るぐらいですか?
嘉陽さん:
レンタルショップで見たことはありますけど……。あ! 渋谷にあるレコード店にお仕事で行ったときに,並べていただいていて,それを見たときには感動しましたね。
4Gamer:
それまで見に行けなかった分,そのときはさぞかし感動したんでしょうねぇ……。